創作內容

4 GP

文庫03附錄番外篇

作者:SPT草包│2020-03-07 18:27:10│巴幣:106│人氣:893
魔導具師ダリヤはうつむかない
魔導具師妲莉雅不會低頭
作者:甘岸久弥
父と娘の魔導具開発記録~妖精結晶のランタン~
父與女的魔導具開發紀錄~妖精結晶的提燈~

本篇寫有妲莉雅媽媽的行蹤。觀看注意!
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 三月は春間近だというが、朝晩の冷え込みはまだ厳しい。
 雖說三月已臨近春天,早晚的降溫還是很嚴酷。
 ここ、緑の塔は石造りである。深夜の階段は、一度ベッドに入って温めた足先をすぐ冷やしてしまった。
 這裡、綠之塔是石造的。深夜的樓梯讓進入過被窩一次的溫暖腳尖馬上就變冷了。
 前世があるとはいえ、初等学院生の自分には、暗い階段はちょっぴり怖い。それでも、ダリヤはできるだけ足音を忍ばせ、一階の作業場に向かう。
 雖說有前世,但對初等學院生的自己,昏暗的樓梯還是有點恐怖。儘管如此,妲莉雅也盡可能的藏起腳步聲,朝向一樓的工作區。
 今日、作業場に置かれた小さな妖精結晶は、机の上、七色の光をまたたかせていた。
 今天,被放在工作區裡的小小妖精結晶,在桌子上閃耀著七色的光芒。
「今晩は、急ぎで妖精結晶のランタンを作らなきゃいけないから、夜仕事だ」
「因為今晚必須要趕緊製作妖精結晶的提燈,要晚上工作」
 夕方、そう言った父は、どこか気分が悪そうで。体調が悪いのではないかと気になった。
 傍晚,如此說了的父親,心情似乎有哪裡不好。很擔心身體狀況是不是不好。
 自分が妖精結晶のランタンを作るのを見たいと言っても、徹夜になるかもしれないから断られた。一度だけ食い下がってみたが、『ダリヤには今度作るときに見せるからな』と微笑まれた。
 就算說了自己想要看製做妖精結晶的提燈,也因為或許會變得要熬夜而被拒絕。雖然只試過一次咬住不放,但被微笑說『下次製做的時候就會讓妲莉雅妳看了呢』。
 いつもと違う静かな笑顔に、なぜか何も言えなくなった。
 對與平時不同的平靜笑容,不知為何什麼都說不出口。
 妖精結晶のランタンとは、妖精結晶の粉を付与し、灯りと共に幻影を映し出す魔導具だ。
 所謂妖精結晶的提燈,是賦予了妖精結晶的粉末,與燈火一起映照出幻影的魔導具。
 その詳細な作り方を自分はまだ知らない。
 自己還不知道那個的詳細作法。
 妖精結晶は、一般的に妖精が隠れるための魔力が固まったと言われ、認識阻害の効果がある。
 妖精結晶,一般被說是妖精為了隱藏的魔力凝結,有認知妨礙的效果。
 希少故に高価であり、加工には繊細な魔力制御が必要になると、魔導具師向けの本にはあった。
 在魔導具師向的書上有說過,稀少故而昂貴,在加工上必須要會纖細的魔力控制。
 水晶に七色の虹を閉じ込めたような妖精結晶は、いつか使ってみたい、憧れの素材である。
 彷彿是將七色彩虹封進水晶裡的妖精結晶,是總有一天會想使用看看、憧憬的素材。

 階段の上からこっそり作業場をのぞくと、父は作業机に突っ伏して寝ていた。
 從樓梯上偷偷窺探工作區後,父親趴在工作桌上睡著了。
 その目の前、淡く虹色の輝きを放っているのが、妖精結晶のランタンだろう。
 那眼前,釋放著淡淡彩虹色光輝的,是妖精結晶提燈吧。
 小さめのランタンは金色で、持ち手は蝶と蔓草の彫金で飾られている。いつも見る魔導ランタンとは違い、高級そうだった。
 小小的提燈是金色,且提把以蝴蝶與蔓草的雕金裝飾著。與經常看到的魔導提燈不同,似乎很高級。
 そっと近づき、父のいる側からランタンを見ると、空中に浮く幻が見えた。
 悄悄靠近,從父親所在的一側看著提燈後,看到了浮在空中的幻象。
 五十センチほどの円の中に見えるのは、どこまでも続く青空と花畑だ。
 在五十公分左右的圓裡面看到的,是無邊無際的藍天與花田。
 青空には小鳥達が飛んでいき、真っ白い雲がゆっくりと移動している。その下の花畑を見れば、色とりどりの大輪のダリアが咲いていた。その間を白い蝶が幾匹も舞い、たまに鱗吹くそよ風に、あでやかな花と緑の葉がゆらゆらと揺れている。
 在藍天上小鳥們飛翔著,雪白的雲朵緩緩移動著。看到其下的花田,正盛開著色彩斑斕的大朵大麗菊。幾隻白色蝴蝶舞動期間,偶爾吹起粼粼微風,艷麗的花朵與綠葉陣陣搖曳著。
 どこかに本当にある景色なのだろうか。それとも父の想像の風景だろうか。半透明で見えるそれは、見惚れるほどに美しい。
 是在哪裡真的存在的景色吧。或者是父親想像的風景吧。看起來半透明的那個,是令人著迷般的美麗。
 妖精結晶のランタンそのものにではなく、その光で幻影を宙空に写すなど、考えもしなかった。
 並不是妖精結晶提燈那種東西,用那光芒把幻影投射到空中之類,想都沒想過。
 さすが、凄腕魔導具師の父である。
 不愧是能幹的魔導具師的父親。
 ダリヤはその青空と花畑に、長く見入っていた。
 妲莉雅對那藍天與花田,久久看得出神。

「ガー、ガー……」
「嘎、嘎……」
 どのぐらい見つめていたものか、感動を破壊し尽くすほどの父の大イビキに、我に返る。
 到底是注視了多久呢,因把感動破壞殆盡般的父親大大的鼾聲返回自我。
 作業台の上を確認し、ため息をつきつつ納得した。
 確認了工作桌上,一面嘆了口氣一面理解了。
「もう、父さんたら、お酒の飲みすぎ……」
「爸爸真是的,酒喝太多了……」
 作業机の上に並んだ三本の赤ワイン瓶。すべてカラだ。
 工作桌上擺著三瓶紅葡萄酒瓶。全都空了。
 瓶から直接飲んで、グラスも使っていなかったらしい。行儀悪いことこの上ない。
 似乎是直接從瓶子裡喝,沒有使用杯子。沒有比這更沒禮貌的了。
 その上、作業着一枚で寝落ちるとは困ったものだ。まだ寒いこの時期、風邪をひいたらどうするのだ。先月も飲んで寝落ち、鼻風邪をひいたばかりではないか。
 再加上,只穿一件工作服就睡著很讓人頭疼呀。還很寒冷的這個時期,感冒的話該怎麼辦呀。上個月不是也喝到睡著,剛得了輕感冒嗎。
 ダリヤは作業場の端から仮眠用の毛布をよろよろと持ってくると、父の背中にかけようとする。
 妲莉雅從工作區邊緣把小睡用的毛毯搖搖晃晃的拿了過來後,打算披在父親背上。

 しかし、少しばかり自分の背丈が足らずに届かない。
 可是,自己的身高稍嫌不足搆不到。
 仕方なく、勢いをつけて毛布を父の背にかけた。
 沒有辦法,就借勢披到父親的背上。
「よいしょ! ……あ!」
「嘿咻! ……啊!」
 毛布で風が起きてしまったのだろう。浮き上がった白い紙が床にひらりと落ち、慌てて拾った。魔導具の仕様書や設計図は大切なものだ、汚すわけにはいかない。
 因毛毯引起了風吧。浮起來的白紙飄落於地上,慌忙撿起。魔導具的規格書或設計圖示眾要的東西。不可以弄髒。
「これって……」
「這個是……」
 拾ったのは、白い封筒と四つ折りの便箋だった。
 撿起來的是,白色信封與四折的信紙。
 封筒は、白地の縁を黒い刺繍がぐるりと囲んでいる。確か、貴族が葬儀を知らせるものだ。
 信封是黑色刺繡團團包圍起白底的邊緣。我記得,是貴族通知葬禮的東西。
 酒を飲みすぎたのは、もしや同じ男爵の魔導具師仲間や、貴族の友人が亡くなったのではないだろうか? そう思って父の顔を見れば、その頬にまだ乾かぬ涙の跡があった。
 喝太多酒,會不會也許是同為男爵的魔導具師夥伴或、貴族的友人死去了呢? 如此想著看到父親的臉,那臉頰上還有著未乾的淚痕。
 亡くなったのは自分も知っている人だろうか、塔に来たことのある人だろうか——つい心配になり、ダリヤは四つ折りの便箋を開く。
 死去的是自己也知道的人嗎,有來過塔的人嗎——無意間變得擔心了,妲莉雅打開四折的信紙。
「……テリーザが、旅立ったことをお知らせ致します……」
「……在此通知您,泰莉莎啟程了……」
 テリーザ・ランベルティ。
 泰莉莎・蘭貝魯堤。
 名前しか知らぬ母が、文字となってそこにいた。
 只知道名字的母親,化成了文字在那裡。
 続く文字は、母が病死し、葬儀が終わったこと、そして、貴族墓地にある墓の場所。それだけだ。
 接下來的文字是,母親病死了,葬禮結束了,然後,在貴族墓地裡的墳墓所在。只有那樣。
 差出人は、現ランベルティ伯爵。母の実家に婿入りしたという、再婚相手である。
 寄件者是,現蘭貝魯堤伯爵。說是入贅了母親的老家,是再婚對象。
「……ふざけてる」
「……開什麼玩笑」
 胸がひどくムカムカした。
 胸口過於作噁。
 今さらなんだというのだ。
 事到如今還說什麼呀。
 父と母はずっと昔に別れ、交流もなかった。
 父親與母親很久以前就分手了,也沒有交流了。
 なのに、わざわざその死を知らせ、墓の場所まで教えてくるなんて、どんな嫌がらせだ。
 然而,卻故意通知她的死,連墳墓的所在都告知了,多麼的令人厭惡啊。
 お前は未練があるだろうと言わんばかりの所業ではないか。
 不就是幾乎要說出你還有所留戀吧的行徑嗎。
 しかも、病が重くなったときや、亡くなってすぐの連絡ではない。葬儀が終わり、母が灰になってから連絡してくるのはひどすぎる。
 而且,還不是病情加重或、死了立刻聯絡。葬禮結束,母親化為灰了之後才來聯絡真是太過分了。
「もう……!」
「夠了……!」
 思わず便箋をビリビリに破きそうになりつつも、どうにか踏みとどまった。
 不由得要把信紙給撕得粉碎,卻也設法打消了念頭。
 父が破いていなかったのに、自分が破いてはいけないだろう。
 明明父親沒有撕掉,自己卻撕掉了是不行的吧。
「……父さん」
「……父親」
 父の頬をもう一度見て、ダリヤは唇をきつく噛む。
 再看一次父親的臉頰,妲莉雅緊緊咬著嘴唇。
 父は、一人で隠れて泣いていた。
 父親一個人藏起來在哭。
 もしかすると父は——まだ母を愛しているのかもしれない。
 或許父親——還愛著母親也說不定。
 自分には言わないだけで、再婚しないのもそのせいかもしれない。
 只是沒有對自己說,沒有再婚也是那個緣故也說不定。
 別れても、再婚されても、長い時間を経ても、それでも母を愛し続けているのかもしれない。
 就算分手、就算讓她再婚、就算經過了漫長的時間,儘管如此也繼續愛著母親也說不定。
 復縁できないどころか、もう二度と会えぬ母なのに、今も泣くほどに好きなのかもしれない。
 不要說無法復合,明明是不會再見到的母親,現在也是哭了般的喜歡著也說不定。
 前世があるというのに、今世の年齢にひきずられているのか、じわりと涙が出た。
 明明是有著前世,卻被今世的年齡牽著走嗎,淚水慢慢湧出。
 父がかわいそうなのか、それとも軽く見られているようで悔しいのか、よくわからない。
 父親很可憐嗎,還是說是被輕視般的後悔呢,我不是很明白。
 ダリヤはにじむ涙をこらえ、便箋をたたんだ。ゴミ箱に放り込みたいのをなんとか堪便箋を封筒に入れる。そして、父の腕の下にそっと滑り込ませた。
 妲莉雅忍著滲出的淚水,折起信紙。總算忍住想要丟進垃圾桶裡把信紙放入信封裡。然後,輕輕的滑入父親的手臂下。

 父カルロは、自分に一度も涙を見せたことがない。
 父親卡爾羅一次都沒對自己展現過淚水。
 うれし涙や笑いすぎた涙、ふざけた嘘泣きなどはあったけれど、悲しみの涙を見せたことはなかった。
 雖然有過高興的眼淚或笑過頭的眼淚、開玩笑的假哭之類,但沒有展現過悲傷的淚水。
 少し前、魔導具師の先輩が亡くなったときは深く悲しんでいたが、塔の中、ダリヤの前で泣きはしなかった。
 不久之前,魔導具師的前輩死了的時候雖然傷心欲絕,但在塔中,沒有在妲莉雅的面前哭過。
 だが、大人でも辛いことはある。父だって、今日のように泣きたいときはきっとあるだろう。
 但是,即便是大人也會有痛苦。即使是父親,一定也會有像今天一樣想哭的時候吧。

 そして、ふと思い返す。前世の父もそうだったのかもしれない。
 然後,忽然回想起。前世的父親或許也是如此。
 仕事が忙しく、深夜に帰ってきても、翌日の休みは家族と一緒に出かけてくれた。
 就算工作繁忙,在深夜才回來,隔天的休假也會與家人一起出去。
 自分が中学のとき、転職して会社を移ったと聞いたが、それまでとそう変わらない様子だった。だが、不況の時期の転職は、とても大変だったのではないだろうか。
 自己中學的時候,雖然聽到換工作轉了公司,但是與以前都沒什麼改變的樣子。
 それでも、娘の自分には愚痴も泣き言も言わず、苦労を悟らせもせず、ただ黙ってその肩にすべてを背負っていたのかもしれない。
 儘管如此,也沒對女兒的自己發牢騷或抱怨,沒讓我領會辛勞,只是默默的將一切背負在那肩膀上也說不定。
 前世の母も同じだ。自分に苦労を語ることも、先の不安を語ることもなかった。
 前世的母親也一樣。沒有對自己訴說過辛勞或未來的不安。
 前世の自分は、父母には守られるまま、親孝行のひとつもせずに終わった。
 前世的自己,依然被父母保護,一件孝行都沒做就結束了。
 今世こそ、きちんと大人になって、親孝行をしたいものだ。
 今世,正是要好好的長大成人,想要進行孝行。
 せめて、一人前だと安心してもらい、父に愚痴をこぼしてもらえるぐらいにはなりたい。
 至少,要獨當一面讓他安心,想要變得能讓父親發發牢騷。
 たった二人の家族なのだ。できるなら、一人で泣かずにいてほしい。
 是只有兩個人的家族。可以的話,希望不要一個人哭泣。
 でも、今の子供すぎる自分では、まだまだ頼りなくて無理だろう。
 但是,現在太過小孩的自己,還無法依靠不可能的吧。

 ふと思い返すのは、魔導具の本の一文。
 忽然回想起,魔導具書裡的一句話。
『妖精結晶を付与したランタンやランプを作れるようになったら、魔導具師として一人前だと言われています』
『變得能製作出賦予了妖精結晶的提燈或燈的話,作為魔導具師就能被說是獨當一面了』
 妖精結晶は、それほどに加工や付与が難しい素材らしい。
 妖精結晶,似乎就是那麼難以加工及賦予的素材。
「一人前……」
「獨當一面……」
 一人前の魔導具師になれば、きっと父も認めてくれるはずだ。
 成為獨當一面的魔導具師的話,父親一定應該會承認的。
 父の隣に立てるよう、初等学院を一日も早く卒業し、高等学院で魔導具師の勉強をしよう。
 為了站在父親旁邊,盡快從初等學院畢業,在高等學院學習當魔導具師。
 魔導具師としての仕事を手伝い、覚え、魔力と腕を磨こう。
 幫忙、記住作為魔導具師的工作,磨練魔力與本領吧。
 いつか自分の手で、これと同じ妖精結晶のランタンを仕上げょう。
 遲早會用自己的手,完成與這個一樣的妖精結晶的提燈。
 そして、『ダリヤは一人前の魔導具師だ』そう父に認めさせ、頼りにしてもらうのだ。
 然後,『妲莉雅是獨當一面的魔導具師了』被父親如此承認,讓他依靠。

「一人前の、魔導具師になる……!」
「我要成為,獨當一面的魔導具師……!」
 小さい拳を強く強く握りしめ、ダリヤは父の寝顔に誓った。
 用力緊握小小的拳頭,妲莉雅對父親的睡臉發誓。

  ●●●●●●

「痛た……」
「好痛……」
 起きようとした瞬間、情けない声が出た。
 打算起來的瞬間,發出了慘不忍睹的聲音。
 おかしな体勢で寝たせいか、肩から腕にかけて痺れと鈍い痛みがある。飲みすぎで頭痛もする。
 是以奇怪的姿勢睡著之故嗎,從肩膀到手臂都有麻痺與鈍痛。也有因喝過頭的頭痛。
 カルロはこめかみを押さえ、ようやく二日酔いの頭を少し持ち上げた。すぐには立ち上がれそうにない。
 卡爾羅壓著太陽穴,終於稍微抬起宿醉的頭。不能馬上站起來。
 作業机の上には、薄ぼんやりとついたままの妖精結晶のランタンがある。
 在工作桌上,有著依然帶點模糊的妖精結晶的提燈。
 目の前に見えるのは、明るい青空とダリアの花々。その情景に、元妻の死が再度認識され、斬りつけられるように胸が痛んだ。
 看起來在眼前的是,明亮的藍天與大麗菊的花朵。那副情境,讓他再度認知到前妻的死,胸口彷彿被砍到般疼痛。

 昨夜、妖精結晶に思いきり多量の魔力を流し、わざと粉にして幻を見た。
 昨晚,盡情對妖精結晶流入大量的魔力,故意弄成粉末看著幻象。
 妖精結晶は加工が難しく、クセのある素材だ。
 妖精結晶很難加工,是有癖性的素材。
 魔力を入れると、幻影やその人間にとっての悪夢を見せることが多く、集中力を切らして魔力をゆるがせれば、四散して粉になる。
 注入魔力後,很多會展現幻影或對那人來說的惡夢,分散掉注意力疏忽了魔力的話,就會四散成為粉末。
 魔導具の付与素材として使うときは、大きい小さいにかかわらず、付与者の魔力をきっちり半分は持っていく。うっかり二回連続で付与すれば魔力枯渇が待っている。
 作為魔導具的賦予素材使用的時候,不論大小,都會精準帶走一半賦予者的魔力。不留神連續賦予兩次的話魔力枯竭就正等待著。
 カルロはそれをよく知りながら、妖精結晶を両手で持ち、思いきり魔力を入れた。
 卡爾羅儘管很清楚那點,也用雙手拿著妖精結晶,盡情注入魔力。
 強い魔力に反応し、七色に砕けていく妖精結晶の向こう、大切な者達の幻影が見えた。
 對強大魔力反應,逐漸碎裂成七種顏色的妖精結晶的對面,看得到重要的人們的幻影。
 明るく笑う別れた当時の妻、そして、今一緒に暮らしている初等学院生のダリヤ。
 開懷大笑著當時分手的妻子,還有,現在一起生活著的初等學院生的妲莉雅。
 時間軸的には合わない二人が寄り添い、楽しげに笑いかけてくる。絶対にありえない光景だ。
 時間軸配不上的兩人緊靠著,愉快地笑了起來。是絕對不可能的光景。
 それでも、カルロにはとても幸せな夢だった。
 儘管如此,對卡爾羅也是非常幸福的夢。
 そして、覚悟はしていたが悪夢は来た。両者が一度に消え、あたりは漆黒の闇になった。
 然後,雖做好覺悟惡夢還是來了。兩者同時消失,附近成了漆黑的幽暗。
 だが、何も聞こえない、何も感じない冷えた闇の中でも、カルロは笑えた。
 但是,即便是什麼都聽不到、什麼都感覺不到的冰冷幽暗中,卡爾羅笑了。
 瞼の裏にはまだ、二人の鮮明な笑顔が思い出せたからだ。
 是因為在眼皮裡,還能回憶起兩人鮮明的笑容。
 カルロは笑いながら、そして、泣きながら、完全な幸福の幻影を見続けた。
 卡爾羅一邊笑,然後,一邊哭,繼續看著完全幸福的幻影。

 その後、魔力ポーションを一気飲みし、粉の妖精結晶を付与し、一つのランタンを仕上げた。
 那之後,一口氣喝掉魔力回復藥,賦予了粉末妖精結晶,完成了一個提燈。
 妖精結晶のランタンに仕込んだ情景は、テリーザと出かけた、夏の終わりのダリア園だ。
 裝進妖精結晶的提燈裡的情景,是與泰莉莎正要出去的,夏末的大麗菊園。
 彼女と初めての遠出だったが、あいにくの雨で、翌年また来ようと約束した。
 雖是與她第一次的遠門,但因不湊巧的雨,約定了隔年再來吧。
 そして、翌年、ロセッティとなった彼女と行った。そのときも、翌年また来ようと約束した。
 然後,隔年,與成了羅瑟提的她去了。那個時候,也約定了隔年再來吧。
 だが、約束は守れぬまま、それから一度も足を運んではいない。
 但是,約定沒有被遵守,那之後一次都沒有前往了。
 ダリア園の花畑は確かに美しかった。
 大麗菊園的花田的確很美麗。
 だが、カルロが覚えているのは、それよりも美しいテリーザだ。
 但是,卡爾羅記得的是,比那個更美麗的泰莉莎。
 カルロはずっと、花よりも彼女を見ていた。
 卡爾羅比起花,更是一直看著她。
 テリーザは、華やかで、優しくて、強くて、脆くて——赤い髪と赤い目の、美しい女だった。
 泰莉莎是,華麗且、溫柔、強大、脆弱——紅髮與紅眼的美麗女人。
 カルロは赤ワインを飲みながら、ただただ、彼女を偲んだ。
 卡爾羅一邊喝著紅葡萄酒,一邊單單只是緬懷著她。

 二日酔いの頭を横に動かすと、棚にある魔法付与をした銀板に、情けない顔をした自分が映っていた。幸い、目の赤さと腫れはない。
 左右動著宿醉的頭後,在架子上做了魔法賦予的銀板裡,映照出一臉慘不忍睹的自己。
 『男は泣き顔を女に見せるな。目の赤さ、泣いた涙を見せたくないときは、ハンカチに氷の魔石を包んで冷やしながら泣け』——そう子供時代の自分に教えたのは父である。
 『男人別讓女人看到哭臉。不想讓人看到通紅的眼睛、哭泣的眼淚的時候,就用包著冰魔石的手帕一邊冷敷一邊哭』——對孩提時害的自己如此教導的是父親。
 そのときは、男ならそもそも泣かなければいいではないか、自分にそんな日が来るものかと笑い飛ばした。
 那個時候,是男人的話最初就不要哭不就好了嗎,或那種日子怎會對自己來到呢的一笑置之。
 けれど、思春期も成人後も、泣きたいことは予想外にあった。失恋に別離、己の力不足で、泣かざるをえないことも多々あった。
 但是,思春期或成人後,出乎意料地也會有想哭的事情。失戀加上別離,因自己的能力不足,不得不哭的事情也有很多。
 ズボンのポケットには、氷の魔石を包んだ、白いハンカチが入っている。一昨年、ダリヤが指に傷を作りながら刺繍をしてくれたものである。
 在褲子的口袋裡,放入了包著冰魔石的白色手帕。是前年,妲莉雅一邊在手指上造出傷口一邊給我刺繡的東西。
 まだ幼い子供の言うことだ。欲しいとは言ったが、まさか本当に刺繍をしたハンカチを現渡されるとは思わなかった。
 是還年幼的孩子所說的話。雖然說了想要,但是沒想到竟然真的被交付了做了刺繡的手帕。
 赤い糸で描かれた花らしき刺繍は、けして上手ではなかったけれど、ダリヤの髪と同じように美しいと思えた。
 被用紅線描繪的像花的刺繡,雖然絕非高明,但我認為與妲莉雅的頭髮同樣的美麗。
 そして自分はありがたく丁寧に受け取ったものの、驚きと照れから娘の頭をがしがしとなで、冬祭りのために整えていた髪をひどく乱してしまった。近所のイルマが朝から来て、気合いを入れてきれいにしてくれたのに、である。
 然後雖說自己心懷感激的恭敬地收下了,但因為驚訝與害羞用力摸著的女兒的頭,把為了冬祭而梳理好的頭髮弄得非常亂。明明就是鄰居伊露瑪從早上就來,鼓起幹勁給弄漂亮的。
「せっかくきれいにしたのに! カルロさんは女の子の扱いがなってないです!」
「我好不容易才弄漂亮的! 卡爾羅先生對待女孩子太不像話了。」
 午後に差し入れを持って再度やってきたイルマに猛抗議され、頭を深く下げた記憶がある。
 有著被午後拿著慰勞品再次來到的伊露瑪猛烈抗議,深深低下頭的記憶。
 彼女の言うことに思い当たる節がありすぎ、しみじみと反省もした。
 對她所說的事能想到的片段有太多,也深切的反省了。
 なお、再度ダリヤの髪を結い直してくれたイルマには、最新型のドライヤーで許してもでらった。
 另外,對再次重新梳理妲莉雅頭髮的伊露瑪,用最新型的吹風機取得了原諒。
 だが、このハンカチをもらったときは、本当にうれしかったのだ。
 但是,收到這條手帕的時候,是真的很高興。
 少々情けないが、刺繍入りの白いハンカチは生まれて初めてもらった。
 雖然有些難為情,但加了刺繡的白手帕是有生以來第一次收到。
 ましてやくれたのは、最愛の娘である。
 何況給的是,最愛的女兒。
 ダリヤにはとても言えないが、受け取った後、他の階に移動して叫んでしまったほどだ。
 雖然不是很能對妲莉雅說,但收下之後,是移動到其他樓層叫喊著的程度。
「娘からの刺繍入りの白ハンカチ、このすばらしき希少価値! 俺は未来の婿に勝った!」
「來自女兒的刺繡白手帕,這份美妙是稀有價值! 我贏過了未來的女婿了!」
 ただし、廊下にはちょうど洗濯籠を持った、メイドのソフィアがいた。
 只是,在走廊有著正好拿著洗衣籃的女僕蘇菲亞在。
「カルロさん、あなたって人は……」
「卡爾羅先生,你這人啊……」
 呆れ果てた声で言われ、その日一日、冷えきった視線を向けられた記憶がある。
 有著被用驚愕的聲音說著,那一整天,被投以冰冷視線的記憶。
「……寒っ」
「……好冷」
 完全に上半身を起こしたとき、背中の毛布が床に滑り落ちた。
 完全讓上半身起來的時候,被後的毛毯滑落到地板上。
 そして、初めて朝の冷え込みに気づく。昨日、自分で毛布をかぶった覚えはない。
 然後,第一次注意到早上的降溫。不記得昨天自己有蓋上毛毯。
 妖精結晶のランタンを仕上げ、飲みながら映し出される情景を見ていた——残る記憶はそこまでだ。ということは、この毛布をかけたのは、ダリヤの可能性がある。
 完成妖精結晶的提燈,一邊喝酒一邊看著被映照出來的情景——殘留的記憶到此為止。也就是說,蓋上這條毛毯的,有是妲莉雅的可能性。
「まずいな……見られたか?」
「糟糕了呢……被看到了嗎?」
 封筒を慌てて探し、自分の腕の下にあるのに安心しかけるが、違和感を覚えた。
 急忙尋找信封,雖然對在自己手臂之下很安心,但感到了違和感。
 自分は確か、便箋をテーブルに置いたままで寝落ちた。封筒に戻した記憶はない。そう思いつつ封筒を開けると、便箋の向きが送られてきたときと逆だった。
 自己的確是把信紙放在桌子上就那樣睡著了。沒有放回信封裡的記憶。一邊如此想一邊打開信封後,信紙的方向與被送來的時候相反了。
 便箋の真横、わずかな切れ目と、斜めに残った皺。
 信紙的正側邊,有些微的裂痕與,歪斜地殘留的皺紋。
 引っぱったものの、ためらって破けず、そして封筒にそっと戻したであろう娘が思い浮かび、思わず顔をしかめた。
 浮現出雖然拉了出來,卻猶豫沒有撕掉,然後輕輕放回信封裡的女兒,不由得皺起臉來。
 一番知らせたくはない、そしていずれ知らせなくてはいけない相手だ。
 是最不想被知道,然後遲早不讓她知道不行的對象。
 混乱しかかっていると、階段を下りてくる聞き慣れた足音がした。
 正感到混亂時,發出了從樓梯上下來聽慣的腳步聲。
「おはよう、父さん、朝食よ」
「早安,爸爸,吃早餐了」
「おはよう、ダリヤ。俺はここで寝てしまったか……」
「早安,妲莉亞。我在這裡睡著了嗎……」
 とっさに、今起きたばかりのふりをし、伸びをしてみせる。
 立刻假裝成現在剛起來,伸著懶腰給她看。
 だが、ダリヤは寝落ちた自分を責めもせず、妖精結晶のランタンについても聞かなかった。いつもなら絶対に食いついてくる魔導具のはずなのに、だ。
 但是,妲莉雅沒有責備睡著的自己,也沒過問關於妖精結晶的提燈。若是平時明明應該是絕對會撲上來的魔導具。
「まだ冷えるな。寝ぼけて毛布を持ってくるとは……」
「還很冷呢。睡迷糊了就把毛毯拿了過來……」
「……風邪ひかないで……」
「……不要感冒了……」
 ちょっとぼかして言ってみると、少し眠そうな緑の目がためらいがちに向き、すぐに泳いだ。
 試著稍微曖昧的說了後,有點想睡的綠色眼睛猶豫地轉過來,馬上就游移了。
 声も微妙に揺れている。本当に嘘や誤魔化しが下手な子である。
 聲音也微妙地動搖著。真是的很不擅長說謊及糊弄的孩子。
 そして、そんなことをさせているのが、この自分だ。
 然後,讓她做了那種事的,是我自己。
 反省のしようもない、娘に気を使わせる駄目親父である。
 是連反省都沒有,讓女兒操心的沒用老爹。
 だが、本当に申し訳ないが、今日は何もなかったことにさせてくれ。父として虚勢をはらせてくれ——カルロは内で頭を下げて謝罪する。
 但是,雖然真的很抱歉,但就讓今天什麼事都沒有吧。作為父親就讓我虛張聲勢吧——卡爾羅在心裡低頭謝罪。
 白状すれば、元妻の死は大変にショックだ。
 坦白說的話,前妻的死令我相當震驚。
 辛さも、悲しさも、いまだ波のように内で荒れくるっている。
 痛苦與、悲傷,現在也如波濤般在心裡洶湧翻騰。
 できることなら壁に拳を打ちつけて叫び、浴びるほど酒を飲んで大泣きしたい。
 可能的話想要把拳頭砸到牆壁上大叫,喝著海量的酒大哭一場。
 しかし、ダリヤの前で泣いたら、父として負けである。これ以上、不甲斐ない様はさらせない。
 可是,在妲莉雅面前哭的話,作為父親就輸了。不能暴露出更加窩囊的樣子。
「ふわぁ……さすがに徹夜は眠いな」
「呼哇……畢竟熬夜都沒睡呢」
 カルロは大きく欠伸が出たのを理由に、目尻の涙をきつく拭った。
 卡爾羅以打出大大的呵欠為理由,用力擦拭眼角的淚水。
「父さん!」
「爸爸!」
 いきなりダリヤが、声大きく自分を呼んだ。
 突然妲莉雅大聲的呼喊著自己。
「なんだ、ダリヤ?」
「怎麼了,妲莉雅?」
「私、一日も早く魔導具師になりたいから、初等学院を早く卒業して、高等学院の魔導具科に行くわ。そして、父さんを手伝って覚えて、一人前の魔導具師になる!」
「因為我想盡早成為魔導具師,會快點初等學院畢業,去高等學院的魔導具師喔。然後,幫忙父親來學習,成為獨當一面的魔導具師!」
 突然の宣言に驚き、確信する。ダリヤはやはり手紙を見ていた。
 對突如其來的宣言感到吃驚、確信。妲莉雅果然看過信。
 それなのに、一言も母について聞きもせず、父である自分をただ気遣って。
 儘管那樣,卻一句話都沒提起過母親,只是顧慮著身為父親的自己。
 娘に守ろうとされる己の、なんと不甲斐ないことか。
 被女兒保護的自己,是多麼的窩囊啊。
 カルロは奥歯を噛み、とっさに上着に両手を入れた。
 卡爾羅咬緊牙關,立刻把雙手放入外套裡。
 ポケットに隠した両拳、その手のひらに爪が刺さる。そのままきつく握りしめ、カルロは全力で笑顔を作った。
 隱藏在口袋裡的雙拳,指甲刺入其手掌內。就這樣用力緊握著,卡爾羅全力做出了笑容。
「そりゃあ助かる。大いに期待してるぞ、我が愛しの娘!」
「那真是幫大忙了。我大大地期待著喔。我親愛的女兒!」
「もう、私は真面目に話してるのに……」
「夠了,明明我很認真在說的……」
「いや、俺も真面目に言っているぞ。本当に期待するからよろしくな!」
「不,我也是很認真在說喔。我是真的很期待請多關照呢!」
 ダリヤはちょっとだけふくれたが、その後、花開くように笑った。
 妲莉雅雖然有點嘟嘴,但那之後,像花開般笑了。
 その笑みに元妻の面影が重なり、カルロは目を細める。
 那笑容上重疊著前妻的面容,卡爾羅瞇起了眼睛。

 ダリヤが勉学に励むのは、その未来を考えても、いいことだ。
 就算考慮到妲莉雅會勤勉向學的那個未來,也是件好事。
 この先、どんな進路を選ぶにしても、勉強は無駄にはならないだろう。
 就算未來會選擇怎樣的出路,學習也不會變得白忙一場吧。
 自分を思って早く魔導具師になりたいと言ってくれるのも、本当にうれしい。
 為自己著想說了想要早點成為魔導具師,也真的令我高興。
 ぜひ、腕のいい一人前の魔導具師になってもらいたいものだ。
 務必是,真的想要成為本領很好的獨當一面的魔導具師。
 魔導具師を目指すのであれば、自分が一人前になるまでは教えてやれるだろうという自負もある。
 要以魔導具師為目標的話,自己也是有著名為在成為獨當一面之前都能教導她吧的自負。
 魔導具師としてしっかりとした腕を持てば、まず食いっぱぐれる心配はない。親としては安心できる話だ。
 作為魔導具師擁有確實的本領的話,首先就不用擔心無法謀生了。是作為父母也能安心的話。
 しかし、である。
 可是呀。
 ダリヤには悪いが、この先、初等学院を早く卒業しようが、高等学院の魔導具科でいかに優秀な成績を取ろうが、知識が豊富になろうが、開発の発想が飛び抜けようが、制作の腕を思いきり上げようが、魔法の付与がうまくなろうが——絶対に追い越されたくない。
 雖然對妲莉雅不好意思,但是未來,是要快點初等學院畢業,又或是在高等學院的魔導具科取得怎樣優秀的成績,還是說魔法的賦予變高明了——也絕對不想要被追過去。
 ダリヤにだけは、魔導具師として、死ぬまで越えられるわけにはいかないのだ。
 作為魔導具師,只有對妲莉雅,到死也不能被超越過去的。
 先輩魔導具師としての、薄っぺらい矜持もある。
 也有作為前輩魔導具師的,膚淺的矜持。
 何より、父としての背中は見せても、娘の背中は見たくない。
 更何況,就算展現作為父親的背後,也不想看到女兒的背後。
 この命ある限り、魔導具師カルロとして、魔導具師ダリヤの先を行く。
 只要這條命還在,就會作為魔導具師卡爾羅,走在魔導具師妲莉雅的前方。
 これは目標などではない、父としての誓いだ。
 這並不是目標之類,而是作為父親的誓言。

 テリーザの墓参りには、いずれこっそりと一人で行こう。
 遲早會一個人,偷偷的去掃泰莉莎的墓吧。
 夕闇に紛れ、赤いダリアの花束を持ち、彼女の好きだった妖精結晶のランタンを輝かせよう。
 混入黃昏中,帶著紅色大麗菊的花束,讓她喜歡的妖精結晶的提燈閃閃發光吧。
 そして、赤ワインを一本空ける時間だけ、娘の自慢話をしてくればいい。
 然後,只要喝光一瓶紅葡萄酒的時間,給她說說炫耀女兒的話就可以了。
 いつか大人になったダリヤにすべてを話せる日が来たら、そのときは二人でテリーザの墓参りを——そう思いかけて、カルロは口元の笑みを微妙に崩す。
 總有一天將一切說給長大成人的妲莉雅聽的日子來臨的話,那個時候就兩個人來掃泰莉莎的墓——如此想像著,卡爾羅微妙地垮下了嘴角的笑容。
 そのときは、ダリヤの隣、自分より近くに立つ男がいるのかもしれない。
 那個時候,妲莉雅的旁邊,會有站得比自己還近的男人也說不定。
 まだまだまだ、ずっとずっと先の話だとは思うのだが、なんとも気になるところである。
 雖然認為還尚且是遙遠的很的話題,但卻有非常令人在意的地方。
 ダリヤの隣に立つ男には、ぜひ願いたいことがある。
 對站在妲莉雅旁邊的男人,有務必想要拜託的事。
 娘を大切に守ってくれ。優しく穏やかで理知的な性格で、なんといっても健康、できればダリヤよりも長生きするぐらい。そして、安定した職業で経済力があり、国外に行く可能性はなく、相手家族にも親戚にも問題がなく……
 要珍重地去保護女兒。體貼溫和且理性的性格,不管怎麼說都要健康,可能的話要活得比妲莉雅還久。然後,有穩定的職業且有經濟能力,沒有去國外的可能性,不管是對方家人還是親戚都沒有問題……
 親としての希望は、とどまるところを知らない。自分のことは完全に棚に上げて、である。
 作為父母的希望,是不知道盡頭的。是完全把自己給束之高閣的。
 そして、周囲にはよく、『お父さん似』と言われるダリヤだが、なんとしても似ないで縛ほしいことがある。自分の恋愛運というか、結婚運というか——
 然後,雖然是經常被周圍說是『很像爸爸』的妲莉雅,但還是有希望不相似的束縛在。像是說自己的戀愛運啊,或是說自己的結婚運啊——
 とにかく、娘には末永く、死ぬまでパートナーと幸せであってほしいのだ。
 總而言之,希望女兒永遠的、直到死去都與伴侶幸福。
 なお、ダリヤのパートナーに関しては断固として、浮気も早死にも許さん。
 另外,有關妲莉雅的伴侶,斷然絕不允許外遇或早死。

「これに関してだけは、俺に似ないでくれよ……」
「只有關於這點,不要跟我很像喔……」
「父さん、何か言った?」
「爸爸,你說了什麼嗎?」
 祈りにも似たつぶやきに、ダリヤは緑の目を丸くする。
 對類似於祈禱的呢喃,妲莉雅瞪大了綠色眼睛。
 自分のこんな心配はまだ早い。そうだ、早すぎる上にいらぬ心配だ、きっと。
 自己的這種擔心還很早。沒錯,不需要過早的擔心,一定。
「いや、何も——さあ、朝飯を食べに行こう」
「不,沒什麼——好了,來去吃早餐吧」
 立ち上がったカルロは、妖精結晶のランタンの灯りを消す。
 站起來的卡爾羅,熄掉了妖精結晶提燈的燈火。
 ダリヤがちょっとだけ、もったいなさそうな表情をした。
 妲莉雅做出一絲絲可惜似的表情。

「さて、未来の魔導具師様、お手をどうぞ」
「那麼,未來的魔導具師大人,請伸出手」
 声を整え、貴族の型で格好をつけ、ダリヤに手を差し出す。
 調整聲音,以貴族的形式裝出樣子,對妲莉雅伸出手來。
 思いきり吹き出した娘だが、素直に手はつないでくれた。
 雖然是狠狠噴了出來的女兒,但還是坦率地過來牽手。
 あたたかな手はまだ小さく、自分の手にすっぽりと入る。
 溫暖的手還很小,完全的伸進自己的手中。
 はたして、こうして娘と手をつなげるのは、あと何年ぐらいか。そう長くはないだろうが——
 到底,還有多少年能像這樣與女兒牽著手了呢。雖然沒有那麼久了吧——
 カルロはその考えを振り払い、ダリヤの歩調に合わせて階段を上っていく。
 卡爾羅甩去那種想法,配合著妲莉雅的步伐逐漸爬上樓梯。
 窓からの陽光に昨日の二人を思い出し、つい振り返りそうになったが、やめた。
 來自窗戶的陽光讓我回想起昨天的兩個人,雖然無意間要回過頭去,但放棄了。
 完全な幸福の幻影はもう見えない。
 已經看不到完全幸福的幻影了。
 だが、幸せは今、この手の中にある。
 但是,幸福現在,就在這手中。

 虹色のランタンは再び灯される刻を待ち、眠るようにそこにあった。
 彩虹色的提燈等待著再次被點亮的時刻,沉眠般地就在那裡。
—————————————————————
很糟糕,我突然有種媽媽是為了生繼承者而離開的感覺,
例如娘家遭故又不想讓卡爾羅入贅,所以就另外找了個登徒子生了弟弟這樣=_=,
希望不要是插旗啊,不過番外要翻正應該很難吧,應該不會吧,
還有,卡爾羅爸爸發話了,那表示我們可以打托比亞斯了吧ˋˊ。
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留言共 8 篇留言

KL
插旗是指什麼

妲莉亞被生母娘家強行怎樣的旗嗎

啊...

不管理由為何

妲莉亞的母親某種程度也是讓妲莉亞變成現在這樣的原因之一啊

03-07 18:53

SPT草包
就是指娘家蹦出來搞事的意思啦。03-07 19:30
KL
看來肯定會

就看娘家是哪一勢力占優勢了

03-07 19:37

BOBO
看到信時也是這麼猜測繼承人大概不在,才要母親回去…不過這作者的伏筆都會埋很久,果然那邊會搞事

03-08 01:54

SPT草包
在番外篇插旗是犯規啊!03-08 13:24
冰瑤
這個流向...媽媽當初完全是被老家抓回去的吧…
然後感覺媽媽入贅的後夫後面會搞事...
就是不知道弟弟能否成為己方...

03-08 05:36

SPT草包
果然大家想的都跟我一樣嗎T^T。03-08 13:24
卿卿卿清
原本以為貴族媽媽是另結新歡
結果發現媽媽本家爵位挺高,所以之前之所以能跟平民結婚應該是沒有優先繼承權,但是再婚對象繼承了媽媽家的爵位,感覺真的像SPT大說的是本家遭故所以才分手的耶......
卡爾羅因為是平民可能沒有達到伯爵家想要的魔力量,但是再婚對象真的感覺很故意,連老婆去世這件事都要特意拿來酸老婆的前任,不像是忌妒的炫耀,感覺就是想噁心別人

03-08 17:31

SPT草包
所以我翻這篇翻得挺憂鬱的Orz。03-08 17:37
卿卿卿清
另外,斷然絕不允許外遇或早死......
卡爾羅:(從墳墓爬出來)不可原諒......
前婚約者:老、老師......?!!
腦中,出現了這樣的畫面(。
激動地想跑操場的爸爸好可愛喔

03-08 17:32

冰瑤
其實我一開始就覺得應該有隱情
因為爸爸的態度感覺不像是媽媽外遇

03-08 18:39

SPT草包
我也是覺得有隱情,因為一開始就是媽媽直接找上爸爸的,但是…沒想到…,那男的是我繼托比亞斯後第一討厭的="=,翻這段時胃在翻騰啊,另外這篇在惠版第5話21頁有作為回憶出現喔。03-08 20:20
職業量地官
偶總覺得這條線會被作者收回,大慨在紅花晉爵前後、以同母異父弟弟出場方式……只是會是相對攻擊向、還是諒解向機會各半,要看作者取向……如果外公還在就可能是攻擊向,到時就是考驗紅花的"貴族交友圈"的"戰鬥力"了、若果外公已經不在由弟弟當家就可能是諒解向,讓父母兩家的恩怨放水流……

04-12 02:16

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