本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~以下犯上的書癡~為了成為圖書管理員而不擇手段~
作者:香月美夜
第一部兵士の娘 木簡作るよ第一部士兵的女兒 製作木簡吧
原文連結 トゥーリが初めての見習い仕事に行ったその日、わたしは愕然としていた。任された手伝いがどれもこれもろくにできない。 圖麗去了初次實習工作的那一天,我震驚不已。被委託的幫忙不論哪個都做得不像樣。
現代知識があるし、その気になればできると思っていたけれど、知識なんて何の役にも立たない。 雖然說想過有著現代知識,有那心思的話就能做到,但知識什麼的派不上什麼用場。
トゥーリは偉大な姉だった。 圖麗是個偉大的姊姊。
まず、わたしには水が運べなかった。井戸から汲めないのだ。力がなさすぎて。 首先,我搬不了水。是無法從水井打水。太過無力了。
ほんのちょっとずつしか汲み上げられず、階段を上がるのも大変で、桶一杯の水を運ぶのに、5往復しなければならなかった。もちろん、必要な水は桶一杯ではない。水瓶いっぱいだ。 只能少許少許地打水上來,因為爬上樓梯也很辛苦,搬運一整桶的水的話,就必須要5個往返。當然,需要的水不只一整桶。是滿滿的水缸。
母が一緒に水を運んでいたが、母が水瓶を一杯にするのとわたしが桶を一杯にするのが同じペースだった。 母親一起搬運著水,只不過媽媽將水缸裝滿跟我將木桶裝滿是同樣的步調。
わたし、使えない。 我,好沒有用。
お昼の準備をするから、竈に火をつけてと言われた。 因為要做午餐的準備,所以被叫去在爐灶上點火。
学生時代の宿泊訓練で習ったから、薪を組むのはできる。太めの木と燃えやすい細い木を組み合わせて、空気の通り道を作って、種火が付けやすいように乾燥した草を置く。そこまではできた。 因為在學生時代的住宿訓練學過了,所以可以搭組木柴。組合著較粗的木頭與容易燃燒較細的木頭,製做空氣的通道,為了讓火種容易添加而放置乾襙的草。到那為止都能完成。
しかし、火がつけられない。宿泊訓練で使ったのはチャッカマンだった。火打石を使った経験はない。トゥーリがやっているのを見よう見まねでやってみた。 但是,火點不了。在住宿訓練使用的是點火器。沒有使用打火石的經驗。試著將圖麗所做的依樣畫葫蘆照做。
「うひゃっ!?」「嗚呀!?」
勢いよく石と石を打ち合わせたら、当たり前だが、火花が散った。目の前でチカッと光った火花にビックリして思わず石を取り落とした。まるで花火みたいで火傷しそうと思ったら、その後は、怖くて勢いよく打ちつけることができなくなった。 氣勢十足地將石頭與石頭互打的話,理所當然的,火花四散。被在眼前啪嚓地發光的火花嚇了一下不由自主地讓石頭掉了下去。想著簡直就好像煙火一樣快要被燒傷了,那之後,就變得很害怕而無法氣勢十足地打下去了。
結局、母に途中で取り上げられた。 結果,被母親在中途接手了。
わたし、マジ使えない。 我,真的好沒有用。
料理の手伝いならできる。そう思ったが、出来なかった。 如果是料理的幫忙就辦得到。我是那麼想的,但是做不到。
包丁が重すぎて、両手じゃないと持ち上げられない。締められている鳥を見ると、固まってしまう。 菜刀太重了,不用雙手就拿不起來。看著被綁住的鳥時,就僵在那了。
わたしにできるのは、ある程度まで切ってくれた食材を小さなナイフで切ったり、レシピを提供したりするくらいだ。自分でできることはごく少ない。身長が足りないので、台に乗っても鍋を掻き回せない。 我能做到的是,用小刀切著切到某個程度的食材,或提供食譜之類的。自己能做到的非常少。由於身高不夠,就算登上檯桌也無法攪拌鍋子。
母はレシピを褒めてくれたが、自分の不出来さに正直凹む。 母親雖然稱讚了食譜,但對自己做不好的老實說很低落。
わたし、ホント役立たず。 我,真是個廢物。
「どうしたの、マイン?」「怎麼了嗎,瑪茵?」
初めてのお仕事から帰ってきたトゥーリが、どんよりと凹んでいるわたしに声をかけた。凹むわたしの代わりに母が苦笑しながら、答える。 從初次工作回來了的圖麗,出聲叫著比什麼都還低落的我。母親代替低落的我一邊苦笑,一邊回答著。
「……今日、お手伝いをさせたんだけど、自分が何もできなかったことに落ち込んでるみたい」「……今天,雖然幫忙做了家務,但好像對自己什麼都做不到而沮喪。」
「え? 今更?」「哎? 現在才知道?」
そう、今更だ。 沒錯,是現在才知道。
今更だけど、思い知った。 雖然現在才知道,但深深領會到了。
わたし、役に立たない。 我,派不上用場。
「……色々やってみたけど、全然できなかった」「……雖然做了各種嘗試,但完全做不到」
「まぁ、現状がわかったなら、努力すればいいんじゃない?」「算了,如果知道現狀,努力過的話就好了不是嗎?」
「それに、お掃除だけはマインが一番だよ」「而且,只有打掃是瑪茵最棒了喔」
ほうきで掃いて、雑巾で拭くだけなら、経験があるし、それほど力がなくても何とかなる。気合入れ過ぎると熱出るけど。 如果只是用掃帚掃地、用抹布擦拭,有過經驗的,那些就算沒有力量也總有辦法的。雖然太過加把勁後就會發燒。
それに、掃除はわたしにとってお手伝いじゃない。わたしが不潔な環境に耐えられなかっただけ。ただでさえ病弱なのに、さらに病状を悪化させそうな環境を改善しただけ。自分のためであって、家族のためじゃない。 而且,打掃對我來說並不是幫忙。只是我受不了骯髒的環境。明明本來就體弱多病了,只是改善了那種會讓病情更加惡化的環境。是為了自己,而不是為了家人。
現代日本では全部機械任せだったので、掃除も洗濯も料理も一通りできたけれど、ここでは何の役にも立たない。 由於在現代日本全部都交給機械了,雖然說打掃洗衣料理大抵都能做到,但在這裡派不上什麼用場。
正直、あんなに大変だとは思わなかった。一歳違いのトゥーリにできるのに、わたしはどうしてこんなに貧弱な身体で、役立たずなんだろう。 老實說,沒想過會那麼地辛苦。明明差異一歲的圖麗能做到,我為什麼會是這麼瘦弱的身體,且是個廢物呢。
どうせ転生するなら、もっと丈夫な体がよかった。せめて、足手まといにならないくらいの。 反正如果要轉生,更加強健的身體就好了。至少,不要成為累贅之類的。
「ははは、マイン。役立たずって、お前、そんなことを気にしていたのか?」「哈哈哈,瑪茵。說是個廢物,妳,很介意那種事情嗎?」
「……気にするよ」「……很在意唷」
「まぁ、そうだが……。父さんはもともとマインに期待はしてないからなぁ」「不過,是那樣啊……。爸爸原本就不對瑪茵有所期待呢」
「え?」「咦?」
あれ? なんか笑顔で意外とひどいこと言われてない? 奇怪? 不覺得是被用笑容說了意外過分的事情嗎?
期待されるような人間だとは思っていなかったけれど、この親馬鹿の父に面と向かって「もともと期待していない」なんて言われるのは予想外だった。 雖然說不認為像是會被期待的人,但被這個笨蛋父母的父親當面說了「原本就沒有期待」什麼的是出乎預料的啊。
呆然としているわたしの頭をポンポンと軽く叩きながら、父は何故か目に涙をにじませ始めた。 儘管砰砰地輕輕敲著失落茫然的我的頭,但父親不知何故眼中開始滲出淚水。
「いつ死ぬか、今度倒れたら駄目かもしれない。ずっとそう思っていたから、今元気になっていくだけで十分だ」「何時會死呢,這一次倒下的話搞不好就不行了。因為一直都那麼想著,只要現在變得很有精神就足夠了」
父の言葉に肩を竦めたのはトゥーリだった。 對父親的話語聳著肩的圖麗。
「父さんの言うとおりだと思うけど、このままじゃどこもマインを雇ってくれないよ? だって、マインは何にもできないじゃない」「雖然認為如同爸爸所說,但這樣下去哪裡都不會雇用瑪茵唷? 因為,瑪茵不是什麼都做不到嗎」
トゥーリの言葉に父がふるりと首を振った。 對圖麗的話語父親搖晃地搖著頭。
「いや、門で雇える」「不,可以在門雇用」
「え? マインに何の仕事ができるの?」「哎? 瑪茵可以做什麼工作嗎?」
トゥーリと母が不思議そうに首を傾げるけれど、わたしはどうして不思議そうにするのか、理解できない。 雖然說圖麗與母親不可思議似地疑惑不解,但我卻是為什麼會那麼不可思議呢,而無法理解。
今までだって、門で何をしているのか話をしたことがあるのに聞いていなかったってこと? それとも、本当だと思ってなかったってこと? 就連至今,明明有說過在門做了些什麼卻都沒聽進去嗎? 還是說,從沒想過是真的嗎?
「何の仕事って、書類仕事だ。今でも門に行ったら、一応オットーの手伝いしてるんだよ。……半分以上は字を教えてもらってるけどな」「要說是什麼工作,是文書工作。即使現在去門的話,姑且也在做著歐拓的幫手喔。……雖然一半以上是在請教文字呢」
「えぇ!? いつも休憩だけするために門に行ってたわけじゃないんだ?」「哎!? 不是只是為了經常能休息而去門的嗎?」
「マインが大袈裟に言ってたわけじゃなかったのね!?」「並不是瑪茵說得太誇張了的嗎!?」
トゥーリ、なんでそんなにビックリしてるの? それに、母さん、ひどい。 圖麗,為什麼那麼地吃驚呢? 而且,媽媽,好過分。
二人の正直すぎる反応に胸が痛いよ。 對兩人太過老實的反應很痛心唷。
「マインは特に計算仕事に関する評価は高いんだ。マインに希望がなければ洗礼式の後は門で働けばいい。マインだって父さんと一緒に働きたいよな?」「瑪茵特別是關係到計算工作的評價是很高的。若瑪茵希望的話在洗禮式後在門工作就好了。瑪茵也想要跟爸爸一起工作的吧?」
「え? やだ。だって、わたし、『本屋』か『司書』になるから」「咦? 不要。因為,我,是要成為『書店』或『圖書管理員』」
わたしの将来の予定に、門番の書類仕事をするために父と出勤するという項目は、残念ながら皆無だ。 在我的將來預定上,名為為了做門衛的文書工作而跟父親一起上班的項目,雖然很遺憾但完全沒有。
しかし、こちらで一度も見かけていない本屋も司書も、案の定、通じなかったようで、みんなが首を傾げている。 可是,在這邊一次都沒有看過書店或圖書管理員,果不其然,就像無法通曉般,大家都大惑不解著。
「……あ~、マイン。それは一体何だ?」「……啊~,瑪茵。那個到底是什麼?」
「本を売る人……だから、商人? うーん、商人って柄でもないんだけど、本に係わる仕事をする」「是賣書人……所以算,商人? 嗯,雖然也算不上是商人,但卻是做著有關書本的工作」
「まぁ、よくわからんが、やりたいことができたならいい。とりあえず、できることからやればいい。半年前のマインは森まで歩けなかった。外に出るのも嫌がってた。今は自分で行って帰ってこられるんだからな」「算了,也不是很明白,如果能做想做的事情也很好。總而言之,從能做的事情開始去做就好了。半年前的瑪茵是走不到森林的。也討厭去到外面。而現在能靠自己去跟回來了呢」
「……うん」「……嗯」
今日は薪を頑張って拾っておいで、と言われて、トゥーリも一緒に籠を背負って家を出た。 今天來加油撿拾木柴吧,那樣說著,圖麗也一起揹起籃子從家裡出去了。
家族が言うとおり、森まで歩けるようにはなったが、到着したら休憩しないと動けないし、かなり気をつけて動かないと次の日には寝込むことになる。 如同家人所說,變得像是能走到森林了,但到達的話不休息是動不了的,不相當小心而亂動的話是會造成隔天要臥床的。
虚弱すぎるこの身体が憎い。 憎恨著這太過虛弱的身體。
森に着いて、息が整ってきたら、薪を拾い始めた。わたしは落ちているのを探して拾うだけだが、トゥーリは枝ぶりを見て、鉈のような刃物で切れる。コンコン、スパーン! って! 到達森林,調整呼吸的話,就要開始撿拾木柴了。我只能尋找掉落下的去撿拾,但圖麗看見樹枝型態,就用柴刀似的刀具砍下去。吭吭、嘶磅! 這樣!。
「トゥーリはすごいなぁ」「圖麗好厲害呢」
トゥーリの手際の良さを改めて感じる。再次感受到圖麗的優異技巧。
「わたしも、できるところからコツコツとやるしかないよね」「我也,只能從做得到的地方埋頭苦幹了呢」
枝を拾っていると息が上がってきた。 撿拾樹枝之後喘了起來。
石に座って休憩しながら、早速木簡を作るためにナイフを取り出す。 一邊坐在石頭上休息,一邊為了趕快製做木簡而拿出了小刀。
「う、結構重い」「嗚,相當的重」
鈍く光るナイフを手にとって、わたしは溜息を吐いた。 將又鈍又亮的小刀拿在手上,我嘆了一口氣。
刃物を扱ったことが全くないわけではない。日本でだって包丁は使っていたし、カッターくらいは日常生活で使っていた。 並不是完全沒有使用過刀具。就連在日本也使用過菜刀,美工刀之類的在日常生活上也用過。
でも、木を削った経験がほとんどない。 但是,削木頭的經驗幾乎沒有。
そういえば、小学生の時に小刀で鉛筆削る、なんて課題があった。鉛筆なんて鉛筆削りで削ればいいなんて言って、ろくに触ってこなかったのを、今、切実に後悔している。這麼說來,在小學生的時代用小刀削鉛筆,有過那樣的功課。是說鉛筆什麼的用削筆器去削的話就好了,沒有好好地接觸過,現在,切實地後悔著。
我ながら危なっかしくて、木簡を作ろうにもナイフがろくに使えないんですけど! 儘管我覺得危險,但在製做木簡上也無法正經地使用小刀吧!
へっぴり腰で鉛筆を削ったことしかないのに、こんなナイフをうまく扱えるわけがない。本当に木簡が作れるのだろうか。 明明只能戰戰競競地削著鉛筆,是無法善用這種小刀的。真的能製做木簡嗎。
試しに、拾った枝の中でも細い枝をちょっと削ってみた。 試著,將撿拾的樹枝中也算細小的樹枝稍微削一下看看。
力がない小さい手なので苦労したが、木の皮がはがれて、中の色が見えた。 由於是沒有力量的小手而做得很辛苦,剝下樹皮,看得見裡面的顏色。
あ、ちょっと苦労するけど、何とかなりそう! 啊,雖然有點辛苦,但好歹做到了!
ナイフの練習にもなるし、木簡もできるし、一石二鳥だ。 既可以練習小刀,也可以完成木簡,一石二鳥啊。
わたしはうきうきしながら拾ってきた木を、ナイフで平らに削っていく。同じくらいの長さに揃えて切った細長い木切れをたくさん作り始めた。それを紐で結んでいけば、立派な木簡だ。メモ用紙代わりにはなるだろう。 我一邊喜不自勝一邊將撿起來的木頭,用小刀削平。開始製作很多切齊成相同長度的細長木片。可以將那些用繩子綁住的話,就是出色的木簡了。可以成為便條的代替的吧。
古代中国&ご先祖様、素晴らしい知恵をありがとう。 古代中國與祖先大人,謝謝你們這美妙的智慧。
父さん、母さん、素敵なナイフをありがとう。おかげで木簡が作れます。 謝謝爸爸、媽媽、美好的小刀。多虧如此才能製做木簡。
枝を拾って削ればいいので、ちまちまと繊維を編んだパピルスもどきや土から掘り出す粘土板に比べると労力もそれほどではない。 由於撿樹枝去削就好了,相比緩慢持續地編織纖維的仿造紙莎草或從泥土開始挖出的黏土板還不用那麼費力。
これはいい。 這個很好。
手元にある木をシュッシュッと少しずつ削って、書くための面をなるべく平らにする。スパーンと一発で削れるような力と技があればいいけれど、無い物ねだりしても仕方ない。 將在手頭上的木頭咻咻地一點一滴的削著,將為了書寫的那面盡量做得平滑。雖然說有爆發似地一次性刨削般的力量與技巧的話就好了,但就算強求沒有的東西也是沒辦法的。
地道に削って、次々と木簡を増やしていく。今のわたしの手では細い枝しか削れず、一本の木簡につき一行しか書けないので、数が大事だ。 踏實地削著,不斷地增加著木簡。現在的我的手只能削著細小的樹枝,由於一片木簡只能書寫一行,所以數量是很重要的。
「マイン、粘土板の代わりに今度は何を始めたんだ?」「瑪茵,黏土板的代替這一次是要開始什麼呢?」
薪を集め終わったらしいルッツがわたしの手元を覗きこんで問いかけてきた。 似乎收集完木柴的路茲望向我的手頭提問了起來。
予想外な問いかけにわたしは首を傾げる。 對出乎預料的提問我歪頭不解著。
「……え? なんで、これが粘土板の代わりってわかったの?」「……咦? 為什麼,會知道這個是黏土板的代替呢?」
「だって、マイン、すっげぇ楽しそうじゃん?」「因為,瑪茵,好像非常快樂呢?」
「え? 楽しそう?」「哎? 很快樂嗎?」
「今にも木に頬ずりしそうな顔してる。粘土板の時も粘土見てうっとりしてただろ?」「現在也是一副臉頰蹭著木頭那樣的表情。黏土板的時候也是看著黏土陶醉了起來對吧?」
え? 今にも頬ずりしそうな顔で、一人シャコシャコ木を削ってるってこと? それって変人っぽくない? 哎? 現在也是用蹭著臉頰那樣的表情,一個人刮來刮去削著木頭? 那樣不就是個怪人了?
……うひぃっ! 無自覚って最悪! 恥ずかしい! ……嗚唏! 毫無自覺最糟糕了! 太羞恥了!
予想外の指摘をされた恥ずかしさに、心の中だけでわたしがのたうっていると、ルッツはわたしが削った木簡をしげしげと観察する。 對出乎預料被指摘的羞恥,只是在心中我痛苦得翻騰時,路茲頻繁地觀察著我削的木簡。
「で、何作ってるんだ?」「那麼,是在做什麼呢?」
「……『木簡』作ってる」「……在製作『木簡』」
「モッカン? 今度はこれに字を書くのか?」「目撿? 這一次要在這個上面寫字嗎?」
「そう。だから、いっぱいいるの。わたしの力じゃ板みたいに大きいのは作れないから」「沒錯。所以,要有很多。因為我的力量是做不出像木板一樣大的」
わたしは再度ナイフを構えて、枝を削り始める。 我再次握起小刀,開始削著樹枝。
ルッツが隣に座り込んで、ちょっと太めの枝を手に取った。 路茲在旁邊坐了下來,將稍粗的樹枝拿在手上。
「手伝ってやるよ。その代りさ……前にマインが言ってたオットーさんって人に会わせてくれねぇ?」「我會幫忙的唷。作為交換……替我引薦一下之前瑪茵說過叫歐拓先生的人吧?」
「なんで?」「為什麼呢?」
「旅商人の話、聞いてみたくてさ……」「旅行商人的話,很想聽看看啊……」
ルッツが周りの目をはばかり、小さい声でぽそぽそと付け加える様子は前にも見たことがあった。あの時、ルッツは将来、旅商人や吟遊詩人のようにこの街を出て、色々な場所に行ってみたいと言っていたはずだ。 路茲顧忌著周圍的目光,用小小的聲音碎碎唸著地補充的樣子在以前也有見過。那個時候,路茲應該是說著想試著像旅行商人或吟遊詩人般離開城市、去到各式各樣的地方吧。
人目を気にしたり、声をひそめたりするのだから、この世界で旅商人や吟遊詩人はあまり褒められない職業なのだろうか。よくわからない。 正因為在意著他人目光、刻意壓低了聲音,所以在這個世界裡旅行商人或吟遊詩人是相當不受讚揚的職業吧。不是很明白。
常識知らずのわたしの勝手な意見よりは、オットーの意見を聞かせてもらう方が、ルッツのためになるはずだ。 比起不懂常識的我自私的意見,接受聆聽歐拓的意見,應該才是為路茲好的。
「忙しそうな人だけど、一応聞いてみるよ。断られたらごめんね」「雖然說是個很忙碌的人,但姑且會去打聽看看的唷。被拒絕的話就抱歉了呢」
「それでもいい」「那樣也可以」
ホッとしたように息を吐いたルッツは重荷を下ろしたような顔をしている。今まで誰にも相談できなかったのが、何となく伝わってきた。 吐了像是放心的一口氣的路茲做出了像是卸下重擔般的表情。是至今都沒跟任何人商量過嗎,總覺得這麼傳達著。
その後は何となく会話が少ないまま、二人でせこせこ木簡を作る。ルッツはやはりトゥーリと同じような鉈のようなものを持っていて、太めの枝から何枚かの大きな木簡を作ってくれた。 那之後總覺得沒多少對話地,兩個人急躁忙亂的製做著木簡。路茲果然帶著像是跟圖麗一樣柴刀般的東西,用粗的樹枝做出了幾片大的木簡。
わたしはナイフでその表面をショリショリと削って、整えていく。木簡にするための板は増えたが、両面共に真っ白だ。 我用小刀磨來磨去地削著,整理著。為了當作木簡的木板增加了,但兩面都是雪白的。
門で使ってるインク、分けてもらったり、譲ってもらったりできるかな? 在門使用著的墨水,是否能分點呢,還是可以出讓呢?
インクは基本的に紙と一緒に使うものだから、その辺りの店には売っていない。 因為墨水基本上是跟紙張一起使用的東西,那附近的店家裡沒有販售。
そういえば、インクは羊皮紙と一緒に厳重に保管されている。もしかしたら、紙だけじゃなくて、インクも高いのかもしれない。這麼說來,墨水是跟羊皮紙一樣被嚴格地保管著。難道說,不光只是紙張,墨水搞不好也是很貴的。
できれば、オットーに以後の給料を石筆ではなく、インクにしてもらえないか交渉してみよう。ついでに、ルッツのお願いも伝えておこう。 可以的話,試著跟歐拓說以後的薪水不要石筆,改成墨水可以嗎來交涉看看吧。
明日は門だ。 明天是在門。
トゥーリがお仕事に行く日は、お目付役がいないので、わたしも門でお勉強だ。最近は日常で使う単語も増えてきたので、とても楽しい。 圖麗去工作的日子,由於沒有監視者,所以我也要在門學習。最近因為在日常使用的單字增加了,而非常地快樂。
そういえば、今日からトゥーリ達と同期の兵士見習いが三人入ってきた。 這麼說來,從今天開始跟圖麗他們同期的實習士兵進來了三個人。
彼らにまた文字と数字を教えなければならないオットーは忙しい。新人の教育を終えて、宿直室に戻ってから、普段の仕事を片付けなければならないのだから。 必須要再教他們文字與數字的歐拓很忙碌。因為結束新人的教育、回到值班室後,又必須要完成平時的工作。
わたしは単語の練習をしたり、頼まれた計算をしたりしながら、話ができそうな機会を伺っていた。 我一邊又是做著單字的練習、與被委託的計算,一邊打探能說話的機會。
書類仕事が一段落したのか、オットーがインクを片付け始めたのを機会に、声をかける。 是文書工作告一段落了嗎,看準歐拓開始收拾起墨水的機會,叫出聲來。
「オットーさん、質問があるんですけど、いいですか?」「歐拓先生,雖然有個疑問,但可以問嗎?」
「いいよ?」「可以唷?」
「旅商人って、どうやってなるんですか?」「旅行商人,要怎麼做才能當上呢?」
「ハァ!? マインちゃん、旅商人になりたいのか!? え? ちょっと待って! それって、もしかして俺のせいか? 班長に殺される!」「吓!? 小瑪茵,想當旅行商人嗎!? 哎? 稍等一下! 那是說,難道是我的錯嗎? 會被班長殺的!」
大きく目を見開いて、オットーが机に身を乗り出すようにして、素っ頓狂な声を上げた。 大大地張開了眼睛,歐拓將身體探出桌子上,發出了瘋狂的聲音。
あまりの驚き様に、わたしの方がビックリだ。慌ててパタパタと手を振って、否定する。 對那過於驚恐的樣子,我嚇到了。慌慌張張不斷輕拍地揮著手,否定著。
「いえ、わたしじゃなくて、友達が」「不,才不是我,是朋友」
「なんだ。じゃあ、止めた方がいいって教えてやって」「什麼呀。那麼,告訴他最好住手吧」
「あ、やっぱり?」「啊,果然嗎?」
オットーの簡潔な返事から、旅商人というのは、反対される職業らしいことが確定した。 從歐拓的簡潔回答,確定了所謂旅行商人,似乎是會被反對的職業。
「やっぱりって、どういうこと?」「說是果然,是怎麼回事?」
わたしの反応にオットーがすっと目を細める。 歐拓對我的反應迅速地瞇起了眼睛。
どう説明したら伝えやすいか考えながら、わたしは口を開いた。 儘管考慮著該怎麼說明的話才能容易傳達,但我還是開口了。
「えーと、その子が話をする時に人目をはばかったり、声を潜めたりしていたから、なりたいって言ったら反対される職業なのかな、と思ってたんです」「呃,因為那孩子說話的時候又是顧忌著他人目光,又是壓低了聲音,是不是說了想當的話就會被反對的職業呢,我是這樣想的」
「まぁ、親からは大目玉食らうだろうな」「也是,會遭雙親白眼的吧」
「それに、旅商人って、ずっと移動する生活でしょ? ここで何を仕入れて、こっちには何を卸すって考えながら、広い地域を行ったり来たりするんでしょ? 定住とは生活が根本から違うだろうし、親から子へ伝えられるコネとか、お得意さんだってあるだろうし、街の子供がなりたいと思っていきなりなれるものじゃないのかなって……」「而且,要說旅行商人,是要一直移動生活的對吧? 要一邊考慮著在這裡購入些什麼、在這邊批發些什麼,一邊往來於廣大的地區不是嗎? 是不是說生活從根本就與定居不一樣呢,該說是從雙親那傳給孩子的門路嗎、或者就連常客也是會有的吧,並不是城市的小孩突然想說要當就能當成的東西呢……」
その地への定住が決まっている農民の子供が、自由に土地を動きまわる遊牧民に憧れるようなものだと思う。生活の基本が全く違うし、自分の中の常識が全く通じない中で生活して、仕事をするのは予想以上に厳しい。 我認為是決定定居在那片大地上的農民小孩,憧憬著自由地輾轉於土地上的遊牧民族般的東西。生活的基本完全不一樣,在自己所知的常識完全不通下生活著、做著工作是超出預期的嚴苛。
良かれと思ってやったことが裏目に出ることが日常で、どうしてそれが裏目になるのかわからない。何もしないのが正解に思えるけれど、何もしなくても責められる。 因為想得太美而適得其反是日常,但不知道為什麼會在那裡出錯了。雖然我認為什麼都不做才是正確答案,但就算什麼都不做也會被責備。
日常の中で積み重ねられてきた暗黙のルールにはマニュアルがない。 在日常之中被累積起來的潛規則是沒有使用說明的。
突然の異世界で何をすれば正解かわからなくて、引きこもりたいわたしには、常識の壁の厚みがよくわかる。 在突然的異世界裡不知道做什麼才是正確答案,想閉門不出的我,非常明白常識之壁的厚度。
まぁ、わたしは引きこもるにも本がないとどうしようもないから、仕方なく外に出てるけど。 反正,因為我閉門不出也沒有書本什麼都不能做,沒有辦法就只能外出了。
「……そこまでわかってるなら、言ってあげれば?」「……如果明白到那裡,怎麼不去說呢?」
「うーん、同じように街に住んでるわたしが言うより、オットーさんが現実を教えてあげた方が素直に聞ける気がして。それに、父さんが言ってたけど、オットーさんは商業ギルドに多少繋がりがあるんでしょ? 旅商人は無理でも、商人見習いになれば買い付けで街を出るくらいならできるようになるんじゃないかなと思ったの」「嗯,比起住在同座城市的我來說,由歐拓先生來告知現實會比較坦率地聽下去吧。而且,爸爸說過了,歐拓先生跟商業公會多少有所聯繫的對吧? 我想即便旅行商人不行,但如果成為實習商人的話會為了採購而出城之類的就變得好像能做到了不是嗎」
家族にとっては未知の世界となる放浪の旅に出るのではなく、定住する地を持ちながら、仕事で出張なら、家族だってそれほど反対はしないと思う。 對家人來說並不是去作為未知世界的流浪之旅,而是一邊持有著居住地,一邊因工作而出差的話,我想就連家人也不會那麼反對的吧。
「ふぅん、なるほどね。わざわざ口利きをするってことは、その子はマインちゃんのお気に入りかい?」「嚄,原來如此呢。特意跑來斡旋是,那個孩子很得小瑪茵的歡心嗎?」
ニヤニヤとオットーさんの口元がつり上がる。恋バナを嗅ぎ分けて面白がる顔に、わたしは軽く肩を竦めた。 歐拓先生獰笑地嘴角上揚了。對聞到了戀愛話題而感到有趣的臉,我輕輕地聳著肩。
「お気に入りっていうよりは、ルッツには常にお世話になってるから、返せる時に恩返ししないと恩ばかりが積み重なっちゃって大変なんです」「比起說是很中意,不如說是因為經常受路茲關照,能還的時候不報恩的話恩情累積起來是很糟糕的」
「マインちゃんがお世話になってるってことは、あの金髪の坊やかな?」「是說關照著小瑪茵的,是不是那個金髮小男孩?」
森の帰りにへろへろになっているわたしのペースメーカーをしているルッツは、門で父さんにその日の行動を報告してお小遣いをもらっているので、オットーも見たことがあるのだろう。 作為從森林回來而變得虛脫無力的我的陪跑員的路茲,因為會對在門的父親報告那一天的行動而得到零用錢,所以歐拓也有見過的吧。
「そうです。でも、新人教育が増えて、オットーさん、忙しそうだし、無理なら……」「沒錯。但是,新人教育增加了,歐拓先生,好像很忙碌,如果不行…」
「今が一番暇な季節だから、この季節ならいいよ。次の休日でどうだい?」「因為現在是最閒的季節,如果是這個季節可以唷。在下個休息日如何?」
「ありがとう、オットーさん!」「謝謝你,歐拓先生!」
それにしても、雑務がこれだけある今の季節が一番暇ということは、わたしに手伝いを頼んできた会計報告&予算編成の時期の仕事量はどれだけだろうか。わたしもお手伝いが決まっているだけに、考えたくないことだ。 儘管如此,所謂雜務只有這些的現在的季節是最閒的,那拜託我幫忙完成的會計報告與預算編列的時候的工作量算是多少呢。只是我也決定會幫忙了,不想再思考下去了。
「あ! もう一つ聞きたいことがあるんですけど、このインクって、少し譲ってもらうこと、できますか?」「啊! 還有一個想打聽的事情,是說這個墨水,稍微出讓一些,可以嗎?」
「インクって、これだよな?」「墨水嗎,是這個嗎?」
眉を寄せたオットーが蓋を閉めたインク壺を指でトントンと叩いた。ガラスの向こうの黒い液体がわずか揺れるのを見ながら、わたしは大きく頷く。 皺著眉頭的歐拓用手指咚咚地敲著蓋上蓋子的墨水瓶。一邊看像玻璃對面那微微晃動的黑色液體,我一邊大大地點頭。
「お給料、石筆じゃなくて、今度からインクにすることってできませんか?」「薪水,不要是石筆,從這一次開始可不可以用墨水呢?」
「三年ただ働き。前借り不可」「要做三年白工。不可以預支」
「へ!?」「唉!?」
さらっと言われたことが理解できなくて、思わず目を瞬いた。聞き間違いであってほしいが、オットーは真剣な目で指折り何かを数え始める。 無法理解被輕易說出的事情,不假思索地眨著眼睛。希望是我聽錯了,但歐拓用認真的眼神開始屈指算著什麼。
「お手伝いから見習いになれば、給与が変わるけど、今のお手伝いじゃあ、予算の時の特別給料も含めて三年分くらいかな?」「從幫手成為實習的話,雖然薪資會改變,但現在的幫手、預算時的特別加給也包含在內的三年分左右嗎?」
「三年!?……高ッ!」「三年!?……好貴!」
まさかそこまで高いとは思わなかったわたしの反応に、オットーが苦笑混じりに「今度は予算項目の単語覚えような」と言う。 對沒想過怎麼可能會那麼貴的我的反映,歐拓混雜著苦笑地說著「這一次是要記住預算項目的單字」。
「ここでも貴族相手の書類の時しか基本的に使わないだろ? 子供のおもちゃにはできない値段だ」「在這裡也只有以貴族為對象的文件時基本上才會用到的吧? 是不能作為小孩子的玩具的價錢」
つまり、今のわたしには全然手が届かないってことですね。了解です。 也就是說,是現在的我完全搆不到的東西吧。了解了。
……だったら、木簡には何を使って書けばいいんだろう? ……這樣的話,要用什麼來書寫在木簡上才好呢?
板だけあっても、書けなきゃ意味ないんだけど? 雖然說就算只有板子,但寫不了的話就沒意義了?
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木簡の形だけはできました。形だけね。 只有木簡的外形完成了。只有外形呢。
見習い以下のお手伝いであるマインの給料では、残念ながらインクは手に入りませんでした。 作為實習以下的幫手的瑪茵的薪水,儘管很遺憾但墨水沒能得到。
次回はインク作りに奮闘です。 下回是為製作墨水而奮鬥。