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第二部神殿的實習巫女 神官長的邀請函

作者:SPT草包│2018-10-16 21:47:07│巴幣:0│人氣:223
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~
以下犯上的書癡~為了成為圖書管理員而不擇手段~
作者:香月美夜
第二部神殿の巫女見習い 神官長の招待状
第二部神殿的實習巫女 神官長的邀請函
原文連結

「……ン。……マイン。こら、聞いているのか?」
「……茵。……瑪茵。喂,聽得到嗎?」

 肩を揺さぶられてハッとしたわたしは、神官長を見上げた。こめかみをぐりぐりと押さえながら、わたしを見下ろす神官長がトントンと石板を指差す。
 被搖晃著肩膀突然驚醒的我,抬頭看著神官長。一邊轉壓著太陽穴,俯視著我的神官長一邊咚咚地用手指著石板。

「全く進んでいないようだが?」
「好像完全沒進展呢?」
「あ、申し訳ありません」
「啊,非常抱歉」

 謝った後、わたしは計算を再開した。カツカツと石筆を動かして計算が一段落すると、溜息が出る。
 道歉之後,我重新開始計算。咯吱咯吱地動起了石筆計算告一個段落後,嘆息就出現了。

 ……ルッツ、どうしよう?
 ……路茲,該怎麼辦?

 家出してしまったルッツの現状を何とかするには、ルッツとルッツの家族がしっかりと向き合って話をして、それぞれの思いを伝え合って和解できるのが一番良いと思う。お互いが言いたいことを胸に秘めているような状況で伝わっていないから、ルッツとルッツの家族は完全にすれ違っているのだ。
 對於要想辦法解決離家出走的路茲的現狀,我認為路茲和路茲的家人好好地面對面說話,互相傳達各自的思想能和解是最好的。因為以彼此將想說的話藏在胸中的狀態是無法傳達的,路茲和路茲的家人完全地交錯著。

 このままで良いわけがないと思うのは、わたしが家族に恵まれているからだろうか。家族と一緒にいるのが辛いなら離れてしまった方がルッツにとっては良いのだろうか。そこが難しい。
 會認為這樣下去並不好,是因為我受惠於家人嗎。如果與家人在一起很痛苦離開對路茲來說會比較好嗎。那邊很難。

「マイン、手が止まっている」
「瑪茵,手停下了」
「え? あ、これは終わりました」
「咦? 啊,這個結束了」
「では、これを……」
「那麼,將這個……」
「はい」
「是」

 現状打破するだけなら、ベンノと養子縁組をするのが一番の近道だと思う。仕事に打ち込むこともできるし、仕事上の強固な後ろ盾も得られる。生活面でも心配はなくなる。ただ、両親の許可がなければ、養子縁組はできない。そして、今回はベンノが手出ししないと明言していた。
 如果只是打破現狀,我認為與班諾做養子收養是最近的近路。能打進工作,工作上堅固的後盾也能得到。在生活面上也變得不用擔心。只是,若沒有雙親的許可的話,是無法收為養子的。還有,這次班諾言明不會插手。

 話し合いの場を設けて、ルッツの両親とルッツとベンノを呼びだして、きっちりと話をしてもらうことも考えたが、わたしが「みんなで腹を割ってお話しましょう」と言ったところでみんなが集まってくれるとは思えない。
 雖然設置協商的地點,叫出路茲的雙親和路茲和班諾,請恰當地對話的事情也考慮過,但不認為我在說了「大家推心置腹來談吧」的時候大家就會來聚集。
 そして、話し合いがヒートアップしすぎて、ベンノやルッツの父親が暴走し始めたとしても収拾をつけることができない。どう考えても好転する未来が全く見えなかった。
 還有,協商太過白熱化,班諾或路茲的父親開始暴走也無法能夠收拾。就算怎樣考慮都完全看不到好轉的未來。

「……ホントにわたし、全然役に立たない……」
「……我真的,完全沒有用……」
「その通りだ。君の意見は正しい」
「就是如此。妳的意見是正確的」
「え?」
「咦?」

 独り言に反応が返ってきたことに驚いて顔を上げると、神官長が怖い目でわたしを見下ろし、くいっと顎でベッドの方を示した。
 對於自言自語返回了反映的事抬起吃驚的臉後,神官長用恐怖的眼神俯視著我,用擺動的下巴表示床的方向。

「マイン、こちらに来なさい」
「瑪茵,請過來這邊」
「あの、神官長。お仕事はよろしいのですか?」
「那個,神官長。工作好了嗎?」
「計算機の整備が先だ。来なさい」
「計算機的整備優先。請過來」
「……はい」
「……好的」

 計算機というのはあまりにひどい言い草ではないか、と心の中で文句を垂れながら、わたしは神官長の後をついて行き、部屋に入った。
 叫成計算機不是相當過分的措辭嗎,一邊在胸中那樣抱怨,我一邊跟在神官長的後面走,進入房間。
 相変わらずごちゃごちゃと物がある部屋の中、わたしは長椅子の物を端に寄せて、座る場所を確保する。
 老樣子有著亂糟糟地東西的房間裡面,我把長椅子的東西拉到一端,確保能坐的地方。
 神官長は自分の椅子を持ってきて、苛立たしげにドスンと座ると、わたしをじろりと睨んだ。ここに来ると神官長が少々感情的になるので、さっきより2倍くらい眼光が鋭い。
 神官長拿來自己的椅子,煩躁地咚地坐下後,直瞪著我。由於來到這裡後的神官長變得稍微情緒化,目光比剛才銳利2倍。

「一体何を考え込んでいる? 先程から辛気臭い溜息ばかり吐いているようだが」
「到底在沉思著什麼? 雖然從剛才開始似乎就在吐著盡是鬱悶的嘆息」
「……神官長には全く関係のないことです。すみません。もうちょっと頑張ります」
「……對神官長來說是完全沒有關係的事情。對不起。會再稍微努力的」

 ルッツのことが心配で仕事が手に付きません、なんて言ったら、お説教が長引きそうだ。反省しているところを見せて、お説教を手短に終わらせようとしたら、神官長は椅子の肘かけに頬杖をついて、忌々しげにわたしを見据えた。
 因擔心路茲的事情而無法著手於工作,之類的說了的話,說教似乎會拖長。顯露反省著的地方,打算讓說教簡短地結束的話,神官長把手架在椅子的扶手上托腮,深重地直視著我。

「執務が滞る以上、全くの無関係ではない」
「既然辦公延誤了,並非是完全沒有關係」

 おっしゃるとおりでございます。
 誠如您所說。
 薄く細められた金色の瞳からわたしはそっと視線を逸らす。考え無しと言われているわたしはなるべく喋らない方が良い。
 我偷偷地把視線從薄薄的被瞇起的金色的瞳孔那岔開。被說是從不考慮的我盡可能不要說會比較好。
 わたしが口を噤んでいると、軽く溜息を吐いた神官長が立ち上がり、わたしの前に立ったかと思うと、わたしの頬をぐにっとつまんだ。
 我噤口不提後,神官長輕輕嘆了一口氣站了起來,想著是要站在我面前嗎後,捏開了我的臉頰。

「ハッキリと言いなさい。子供がうじうじうだうだとしていたら、気になって執務が捗らないであろう」
「請說清楚。小孩子猶豫不決囉哩八嗦的話,會很在意而辦公無法順利進行吧」

 計算機扱いする態度からはよくわからなかったが、どうやら心配されていたらしい。回りくどくてわかりにくい神官長をじっと見上げる。
 雖從當計算機對待的態度上不太明白,但看來似乎被擔心著。抬頭直望著拐彎抹角很難懂的神官長。
 そういえば、神官長は貴族として教育も受けた人だった。政変の粛清で貴族が減って、神殿の貴族が婚姻や養子縁組でたくさん移動したと聞いたけれど、神官長は養子縁組に詳しいのだろうか。
 說起來,神官長是作為貴族接受教育的人。雖然聽過因政變的肅清貴族減少了,神殿的貴族因婚姻或收養養子有很多移動了,但神官長對收養養子會詳細嗎。

「神官長は、親の許可を得ずに養子縁組をする方法をご存知ですか?」
「神官長,知道不獲得父母的許可收為養子的方法嗎?」

 わたしの質問に神官長は驚いたように軽く片方の眉を上げた。
 神官長對我的提問像是吃驚般輕輕揚起單邊的眉毛。

「何だ? あの家族から離れる決心でもついたのか?」
「什麼? 也有了從那個家庭離開的決心了嗎?」
「わたしのことじゃないし!」
「才不是我的事情!」

 神官長のビックリ発言に思わず敬語も何もかも忘れてしまったが、神官長は「だろうな」と軽く呟いただけで、済ませてしまった。椅子に座り直し、ひじ掛けにそれぞれ肘を乗せて、お腹の前で指を組む。
 雖對神官長嚇到的發言不由得敬語或什麼都忘了,但神官長指示輕輕嘟噥著「也是呢」,就結束了。重新坐上椅子,各自將手肘放到扶手上,在肚子前面交叉手指。

「……では、誰のことだ? 状況によるが、全く方法がないわけではない」
「……那麼,是誰的事情? 根據狀況,並不是完全沒有方法」
「あるんですか!?」
「是有的嗎!?」

 わたしが思わず立ち上がると、軽く手を振って座り直すように示しながら、神官長は頷いた。
 我不由得站了起來後,一邊輕輕揮揮手像是重新坐好般的表示,神官長一邊點頭。

「私に権力がある以上、多少の抜け道はある。権力を使う相手は見極めさせてもらうが」
「既然我有權利,多少有對策。請讓我看清使用權力的對象」
「ルッツとベンノさんの養子縁組です」
「路茲和班諾先生的收養養子」

 ルッツの現状改善にわずかな光明が見えた。わたしは座り直しながら、期待に満ちた目で神官長を見つめる。
 看到在路茲的改善現狀上些微的光明。我一邊重新坐好,一邊用充滿期待的眼神凝視神官長。

「どちらも君にとって重要人物だな?……詳しく話しなさい」
「哪邊都是對妳來說的重要人物呢?……請詳細的說」

 神官長に軽くあらましを話したところ、次々と質問をされ、質問に答えている間にかなり詳しく事情を説明することになった。
 將簡單的大概說給神官長的地方,被不斷地提問,變成在回答著提問的期間說明著相當詳細的情形的事情。
 満足するまで質問をしたらしい神官長は、情報を一度整理するように軽く目を閉じた後、ゆっくりと目を開けた。
 似乎直到滿足前都會提問的神官長,像是整理一次情報般輕輕閉上眼睛之後,慢慢地睜該眼睛。

「ふむ。ルッツが商人見習いとなることに反対され、今また街の外に仕事で出ることに反対され、家での待遇に不満を持ち、家出した。ベンノは将来有望なルッツを養子としたいが、これにも親が反対している。マインはルッツの生活環境を何とかしたいというのが、一番の希望で、最良は家族との和解。最速はベンノとの養子縁組だと考えている。ここまでで問題はないか?」
「唔。路茲成為實習商人的是被反對,現在因工作去到城鎮外頭的事又被反對,對在家裡的待遇擁有不滿,離家出走。班諾雖想將前途光明的路茲當養子,但這個也是父母反對著。瑪茵雖說想想辦法解決路茲的生活環境,但最大的希望且、最好的是與家人的和解。最快是考慮著和班諾的收養養子。到這裡都沒有問題吧?」
「ないです」
「沒有」

 メモも取らず、しっかりと情報を覚えてまとめられるなんて、実は神官長はものすごく記憶力が良いのではないだろうか。わたしが変なところで感心していると、神官長は更に続ける。
 也不記筆記,就能好好將情報記住歸納什麼的,其實神官長記憶力不是非常好的嗎。我在奇怪的地方佩服著時,神官長再接再厲。

「家出したルッツについて、仕事に行っているなら放っておけ、と父親は言っているんだな? 出て行けとか、帰ってくるなとは、一言も言っていないのか?」
「關於離家出走的路茲,父親有說過,如果去工作就放著不管對吧? 滾出去之類,或別回來了,一句都沒說過嗎?」
「……多分。わたしもトゥーリの話を聞いただけなので、はっきりとはわかりませんけれど」
「……大概。由於我也只是聽了圖麗的說法,雖然不是清楚明白」

 そう、今回神官長に説明する上で一番痛感したのが、ルッツの両親の意見が又聞きばかりで全くわからないということだ。ルッツとは話をするし、ベンノの意見も聞いた。けれど、ルッツの両親についてはルッツやラルフやトゥーリから聞いた話ばかりで、わたし自身は聞いたことがない。
 沒錯,在這次對神官長做說明之上最為深切感受的是,路茲的雙親的意見盡是間接聽來完全不明白這回事。

「……状況的には少し弱いが、親から捨てられ、孤児院に保護された子という扱いにすれば、孤児院の院長が親代わりにサインすることで孤児を引き取りたいと申し出たベンノと養子縁組は可能になる」
「……雖狀況上稍微弱,但當所謂被父母拋棄、被孤兒院保護著的孩子處理的話,孤兒院的院長以代替父母簽名的事和提出想要領取孤兒的班諾收養養子是變成了可能」
「えぇ!? 孤児院の院長ってわたしじゃないですか! じゃあ、早速ルッツを孤児院に……」
「咦!? 是說孤兒院的院長不就是我嗎! 那麼,趕快讓路茲到孤兒院……」

 すごい、わたし! 孤児院の院長をやっててよかった!
 好厲害,我! 幹起孤兒院的院長太好了!
 心が浮き立ってガタッと立ち上がると、神官長はまた座り直すように手を振る。
 內心興奮嘎嗒地站起來後,神官長像是再重新做好般搖著手。

「待ちなさい。マイン、君は話を最後まで聞くように。早合点したり、聞いていなかったりと君に失敗が多いのはそのせいではないのか?」
「請等下。瑪茵,妳要能把話聽到最後。又是自以為是,又是沒有聽到妳很多的失敗不就是那個原因嗎?」
「……」
「……」

 至極冷静に指摘されて、わたしはぐぅの音も出ずに座り直す。何だろう。神官長が着々とわたしの性格をつかんでいるような気がする。
 被冷靜至極地指責,我咕的聲音都沒發出就重新坐好。是什麼呢。感覺神官長逐步地抓住了我的性格。

「孤児院の院長という役職に就いているとはいえ、君は未成年だ。君のサインだけでは養子縁組をするには不十分だ」
「雖說就任名為孤兒院的院長的職務,但妳是未成年。就只有妳的簽名是不足夠收為養子的」
「……じゃあ、本当に孤児を引き取りたいという人が来たらどうするんですか?」
「……那麼,所謂真正地想要領取孤兒的人來了的話是怎麼做的?」

 孤児院の院長なのに、サインでさえ役立たずだなんて……。
 明明是孤兒院的院長,連用簽名都沒有用處什麼的……。
 しょぼんと肩を落とすが、保護者がいなければ何もできない年齢の子供にそんな責任を負わせられるわけがないことも頭の片隅では冷静に判断していた。
 垂頭喪氣地垂下肩膀,對保護者不在的話什麼都做不到的年齡的小孩子並沒有被迫承擔那種責任的事也在腦袋的一腳冷靜地判斷著。

「君にできない以上、上司である私のサインが必要になる」
「既然妳做不到,身為上司的我的簽名就變得必要」
「神官長、お願いします。ルッツの養子縁組にサインしてください」
「神官長,拜託了。請在路茲的收養養子上簽名」

 わたしが神官長に頼むと、神官長はゆっくりと息を吐いた。
 我請求神官長後,神官長慢慢地吐了一口氣。

「サインをしないわけではない。だが、今の君の言い分は、全て子供であるルッツの視点で語られたものだ。子供の言い分だけで、親から捨てられたと判断することはできない。親に捨てられた子供として孤児院で保護するために、私は彼の両親の話を聞きたい」
「並不是不簽名。但是,現在的妳的主張,全部是被用身為小孩子的路茲的視點說的。就只是小孩子的主張,無法判斷為是被父母拋棄的事。為了作為被父母拋棄的小孩子在孤兒院保護,我想聽聽他的雙親的說法」
「え? あの、どうやって?」
「咦? 那個,要怎麼做?」

 簡単に聞きたいと言われても、どうすればいいのかわからない。首を傾げるわたしを、神官長は不思議な物を見るような目で見た。
 就算被簡單地說了想聽,也不知道該怎麼做才好。神官長把歪頭不解的我,用像看到不可思議的東西的眼神看著。

「どうとは? 話聞きたければ、相手を召喚すれば良いだろう? 君は何言っているんだ?」
「怎麼是? 想聽聽說法的話,召喚對方就可以的吧? 妳在說什麼啊?」
「……権力というものの力を目の当たりにしました」
「……親眼看到名為權力的東西的力量」

 話を聞きたくなったら相手を呼びつければいい。それが神殿の常識だった。自分の両親が招待状を受け取って呼び出されたことを思い出して、わたしは肩を落とす。話し合いの場を設置したくてもできないと悩んでいたわたしは一体何だったのか。
 變得想要聽聽說法的話叫來對方就好了。那就是神殿的常識。回想起自己的雙親收下邀請函被呼喊出來的事情,我垂下了肩膀。煩惱著就想設置協商的地點也做不到的我到底算什麼啊。

「私が立ち会う前で全てを詳らかにし、納得できれば、ベンノとの養子縁組に協力しよう」
「我要在列席之前弄清楚一切,能理解的話,會協助與班諾的收養養子」
「ありがとう存じます」
「非常感謝您」

 わたしは晴れやかな気分で顔を上げた。
 我用爽朗的心情抬起頭。
 珍しく神官長が笑った。しかし、その笑顔は爽やかでも何でもなく、何かちょっと悪いことを思いついた時のようなニヤリとした笑顔だ。
 神官長很稀奇的笑了。可是,那個笑臉既不是清爽也不是什麼,是想到有什麼稍微不好的時候般的冷笑的笑臉。

「そのために君は午後からも執務に励まなければならない。図書室はお預けだ」
「因此妳從下午開始必須要辛勤於辦公。圖書室暫時保留」
「……はひ?」
「……是?」

 わたしが呆然としていると、神官長はさらに愉しげに目を細めた。
 我發著呆時,神官長更加愉悅地瞇起了眼睛。

「フランに聞いた。君には反省室より効果があると」
「從弗蘭那聽來。對你來說比反省室更有效果」
「のぉっ!?」
「不!?」

 ……フランのバカバカ!
 ……弗蘭這個笨蛋!

 わたしが泣く泣く午後からの執務に励むと、神官長は約束通り招待状をしたためてくれた。ルッツの両親とベンノとルッツの分だ。
 我不情願的辛勤於從下午開始的辦公後,神官長如同約定寫了邀請函。路茲的雙親和班諾和路茲的份。

「これを渡しなさい」
「請交付這個」

 ルッツの現状が少しでも改善するための大事な木札を、わたしは満面の笑みで受け取った。
 為了多少改善路茲的現狀的重要木牌,我用滿臉的笑容收下了。



 ルッツは送り迎えしてくれなくなったので、わたしはフランと一緒に帰る。神官長から預かった招待状を渡すのに、ギルと一緒に行けば子供のお使いにしか見えないからだ。成人しているフランがいれば、ルッツの両親もちゃんと受け取ってくれるだろう。
 由於路茲變得無法來迎送,我與弗蘭一起回去。因為明明是要交付從神官長那保管的邀請函,和基魯一起去的話只能看到小孩子的跑腿。成年的弗蘭在的話,路茲的雙親也會好好接受的吧。

「では、ベンノ様とルッツに渡してしまいましょう」
「那麼,來交付給班諾大人和路茲吧」

 フランに促されて、わたしはギルベルタ商会へと寄った。マルクに奥の部屋へ通してもらい、ルッツも呼んでもらう。
 被弗蘭催促,我往基魯貝路塔商會靠近。請馬爾克讓我進去裡面的房間,也請叫來路茲。

「ベンノさ~ん。褒めて、褒めて。ほら、これ!」
「班諾先~生。稱讚我,稱讚我。你看,這個!」

 わたしは弾む足取りでベンノところへと駆けて行き、ビシッと木札を差し出した。訝しげな顔で木札を受け取ったベンノはざっと目を通した途端、顔色を変えて雷を落とす。
 我用彈跳的腳步往班諾那跑過去,猛然地初木牌。用可疑的臉收下木牌的班諾才剛粗略地瀏覽,就臉色大變大發雷霆了。

「……神官長からの招待状だと!? お前、今度は何をやらかした!?」
「……竟是來自神官長的邀請函!? 妳,這次做了什麼!?」
「えーと、その、ルッツの家出と養子縁組の抜け道について神官長に相談したら、こうなったんですけど?」
「呃,那個,關於路茲的離家出走和收養養子的對策對神官長商量的話,就變成了這樣了?」

 今回はとても役に立つことをやり遂げた気分だったので、いきなり雷を落とされたことに目を瞬いて首を傾げる。
 由於這次是完成了非常有用的事情的心情,對突然被大發雷霆的事情眨著眼歪頭不解。

「何て事をするんだ!?」
「是做了何等的事啊!?」
「え? え? 何がいけなかったの?」
「咦? 咦? 有什麼不行的嗎?」
「お貴族様をこんな問題に係わらせるな! どんな結末になるかわからんだろうが!」
「別讓貴族大人牽連到這種問題上! 難道不知道會成為怎樣的後果嗎!」

 ベンノが激昂するが、わたしにはいまいちその理由がわからない。神官長は確かにお貴族様だが、話せばわかってくれるし、回りくどくてわかりにくいが、わたしを心配してくれただけだ。
 雖班諾很激昂,但我一點都不明白那個理由。神官長雖然的確是貴族大人,但說了的話就會明白,雖拐彎抹角很難懂,但就只是擔心著我。

「だって、神官長が、計算機整備のためだから仕方ないって……それに、ルッツのために何かしたかったんだもん」
「可是,神官長說了,因為要為了計算機的整備沒有辦法……而且,為了路茲就是想做些什麼咩」
「マイン、気持ちは嬉しいけどさ。こんな招待状もらったら、普通怖いから」
「瑪茵,雖然心情很高興。因為收到這種邀請函的話,普通是很可怕的」

 ルッツが手渡された招待状を見て、ガックリと項垂れる。ベンノも同じように項垂れて頭を抱えた。
 路茲看到被面交的邀請函,突然無力地垂下頭。班諾也同樣地垂頭煩惱著。

「お前がルッツのために動いたら、神官長からの招待状か……ハァ」
「妳為了路茲而行動的話,是來自神官長的邀請函嗎……唉」
「だって、今回はベンノさんが手を出せないって言ったから、わたしにとって身近な大人に相談しただけなのに」
「可是,因為這次班諾先生說了不會插手,對我來說明明只是跟身邊的大人商量」

 むぅっと唇を尖らせると、ベンノが赤褐色の目に凶暴な光を宿してわたしを睨んだ。
 唔地嘟起嘴唇後,班諾將兇暴的莊忙住宿於紅褐色的眼裡瞪著我。

「そうか。俺が全力で権力を行使して、ルッツの家族を脅して、無理やりにでも養子縁組を進めれば、こんなことにはならなかったのか……」
「是嗎。我全力行使權力,威脅路茲的家人,即便強逼也要進行收養養子的話,就不會變成這種事情了嗎……」
「な、何て怖いことを言っているんですか!?」
「在、在說什麼恐怕的事情啊!?」
「……マイン、旦那様は本当にやろうと思えば、それくらいはできるんだよ。ウチの家族は店に迷惑をかけたわけだし、ウチの両親と旦那様のどっちが強いかなんて考えなくてもわかるだろ?」
「……瑪茵,老爺真想做的話,那種是能做到的喔。我家的家人為店裡添了麻煩,就算不考慮我家的雙親和老爺哪邊強之類的也能明白吧?」

 ルッツの言葉にわたしはハッとした。自分は気軽に出入りしているギルベルタ商会だが、トゥーリは北の方へ出向くだけでも緊張すると言っていたし、当初は自分達の生活圏との違いを明確に感じていたはずだ。
 我對路茲的話語恍然大悟。雖然是自己隨意地進出的基魯貝路塔商會,但圖麗說過即便只是前往北方也很緊張,當初應該是明確地感受到與我們自己的生活圈的不同。

 カルラおばさんがルッツを返してほしいと直談判したのも、相当な勇気がいる行為だっただろうし、店に迷惑をかけたルッツの家族が何の罰も受けていないなら、ベンノが寛大に許したということになる。
 卡露菈阿姨直接談判希望路茲回來也是,是有相當勇氣的行為吧,如果給店裡添麻煩的路茲的家人沒有受到什麼罰則,就變成是班諾寬大地允許這種事了。

「こっちがルッツのためにも穏便に済ませようと思っている時にお前は……」
「在這邊想著為了路茲也要溫和地搞定的時候妳……」
「神官長だって穏便ですよ! 養子縁組する手段だってちゃんと考えてくれたんですから」
「即便是神官長也很溫和喔! 因為收為養子的手段也好好地去考慮了」
「何?」
「什麼?」
「マジで!?」
「真的嗎!?」

 ベンノとルッツが揃ってこちらを向いた。わたしは頷いて、神官長が言っていた方法を二人に説明する。
 班諾和路茲整齊地轉向這邊。我點點頭,對兩人說明神官長說過的方法。

「親に捨てられたということでルッツが孤児院へ来て保護を求めて、ベンノさんが孤児であるルッツを引き取ることにしたという状況なら、孤児院とベンノさんのサインで養子縁組が成立するって……」
「說是如果是所謂路茲以被父母拋棄這種事來孤兒院尋求保護,班諾先生決定領取身為孤兒的路茲的狀態,收養養子以孤兒院和班諾先生的簽名得以成立……」
「孤児院長はお前か」
「孤兒院長是妳嗎」

 ベンノがニヤリとしながらわたしを見た。期待されているところ悪いけれど、わたしのサインには意味がないのだ。
 班諾一邊奸笑一邊看著我。雖然被期待的地方不好,但就我的簽名來說是沒有意義的。

「わたしは子供だから、神官長がサインすることになるんです。だから、ルッツの両親も交えて、事情を聞いた上で判断するって。その招待状なんです」
「因為我是小孩子,會變成神官長簽名。所以,說是路茲的雙親也要攙和,在聽過情況之後做判斷。就是那個邀請函」

 ベンノは手に持ったままだった木札を見て、眉を寄せたままゆっくりと顎を撫でる。
 班諾看著依然拿在手上的木牌,依然皺著眉頭緩緩地撫摸下巴。

「お前、ずいぶん神官長に気に入られていないか? 普通、お貴族様は俺達のことに関与などしないぞ?」
「妳,不是十分被神官長中意嗎? 普通,貴族大人是不會過問我們的事情的喔?」
「大事な計算機らしいです。わたしが機能するかどうかで、仕事効率が違うそうですよ」
「似乎是重要的計算機。以我是不是有起作用,工作效率很不同喔」
「そういえば、オットーもそんなことを言っていたな。今回はマインに感謝するべきなのかも知れんが、感謝したくない。何だろうな、この徒労感は……」
「那麼說來,歐拓也說過那樣的事呢。這次雖不知該不該感謝瑪茵,但不想感謝。是什麼呢,這個徒勞感……」

 ハァ、と疲れたようにベンノが溜息を吐いてガシガシと頭を掻いた。
 唉、地好像很累似地班諾嘆了一口氣猛烈地搔著頭。

「ルッツの両親にはお前が渡しておけよ」
「路茲的雙親妳先去交付吧」
「はい」
「好的」
「悪いな、マイン」
「抱歉呢,瑪茵」
「ううん、いいよ。カルラおばさんにはどうせ報告に行くはずだったし。ただね、ルッツが両親に捨てられたと主張して孤児院に来たという設定だから、明日から孤児院に来てね」
「不,可以喔。反正都應該要去報告給卡露菈阿姨。但是呢,因為是所謂路茲主張被雙親拋棄來到了孤兒院的設定,明天開始要來孤兒院呢」

 ちゃんと来てね、とルッツに手を振って店を出て、わたしはフランと一緒に帰途に着く。
 要好好來呢、地向路茲揮揮手離開店家,我與弗蘭一起踏上歸途。
 ルッツの家に向かおうと思っていたら、井戸の広場でうろうろしているカルラおばさんの姿が目に入った。
 想著要朝向路茲的家的話,在水井的廣場轉來轉去的卡露菈阿姨的身影進入了眼中。

「カルラおばさん!」
「卡露菈阿姨!」

 わたしが声をかけると、おばさんは弾かれたように顔を上げて、こちらに駆け寄ってきた。丸かった顔がやつれて細くなり、目元が少しくぼんで見える。
 我發出聲音後,阿姨像是被彈開般抬起頭,跑過來這邊。圓圓的臉變得消瘦細小,看得見眼睛稍微凹陷。

「マイン、遅かったね。ルッツには会ったかい? どんな様子だった?」
「瑪茵,好慢呢。看到路茲了嗎? 是怎樣的情況?」
「真面目にお仕事してたよ。元気そうだった」
「認真地工作著喔。似乎很有精神」
「そうかい」
「是嗎」

 ホッと安堵の息を吐くカルラおばさんからはルッツを案じる気持ちが痛いほどに伝わってきた。簡単に養子縁組に応じないのは当たり前かもしれない。
 來自放心地吐了安心的氣息的卡露菈阿姨擔憂路茲的親情疼痛般地傳了過來。不會簡單地配合收養養子是理所當然的也說不定。

「おばさん、これね、神殿の神官長からの招待状なの」
「阿姨,這個呢,是來自神殿的神官長的邀請函」

 わたしは木札を取り出して、カルラおばさんに差し出す。おばさんは信じられないと目を大きく見開いて、顔色を真っ青にして、木札を見た。
 我拿出木牌,遞出給卡露菈阿姨。阿姨無法置信地大大的睜大了眼睛,面色鐵青,看著木牌。

「……何だって神殿から?」
「……妳說什麼來自神殿?」
「ルッツ、孤児院に保護を求めたの。親に捨てられたって」
「路茲,對孤兒院尋求保護。說是被父母拋棄」
「勝手に出て行ったのはあの子だよ!?」
「擅自出去的是那個孩子喔!?」

 ぎょっとしたようにおばさんは叫んだが、それをここで叫んでも招待状はなくならない。貴族である神官長からの招待状は絶対のものだ。
 雖然阿姨像是大吃一驚般叫著,但在這裡叫喊那個邀請函也不會變不見。來自深為貴族的神官長的邀請函是絕對的東西。

「それで、神官長がルッツを本当に孤児院で保護するかどうか、決めるために両親の話が聞きたいって……。おじさんとおばさん、二人で来て。お仕事を休む都合もあるだろうから、三日後になってる。三日後の3の鐘までに神殿へ来てほしいって」
「還有,神官長說了在孤兒院是不是真的能保護路茲,為了決定想要聽聽雙親的說法……。叔叔和阿姨,兩個人過來。因為也有要讓工作休息的情況吧,到了三天後。說是希望在三天後的3之鐘之前過來神殿」

 字が読めないおばさんにわたしは招待状の内容を伝える。差し出されたままの木札を握りしめて、おばさんはわたしを見返した。
 我對不會讀字的阿姨傳達邀請函的內容。緊握著依然被遞出的木牌,阿姨回看著我。

「……三日後の3の鐘だね?」
「……是三天後的3之鐘吧?」
「そう。この木札を門番に見せれば、案内してくれるから」
「沒錯。因為將這個木牌展示給門衛的話,就會去帶路」



 わたしはそわそわしながら、三日後の召集日を迎えた。
 我一邊心神不寧,一邊迎接三天後的召集日。
 早目に神殿へと行って、青の衣に着替えて、神官長の部屋に向かう。わたしの側仕え部屋に泊っていたルッツも見習い服で一緒だ。一階の側仕え部屋に泊めたのは、養子縁組で出て行くルッツの姿を見せると、他の孤児達に無用な希望を抱かせることになるかもしれないと神官長が言ったからだ。
 提早往神殿去,稱換成藍衣,朝向神官長的房間。住宿在我的近侍房間的路茲也以實習服一起。因為神官長說了看到住宿在一樓的近侍房間的是,因收養養子而出去的路茲的身影後,會讓其他的孤兒們變得抱有無用的希望也說不定。

「すっげぇ緊張するな」
「緊張的很呢」
「……家族会議にしては壮大すぎるよね」
「……做為家族會議壯觀過頭了呢」

 わたしとルッツが神官長の部屋に着いた時には、ベンノとマルクが到着したという連絡が入った後だったようで、すぐに神官長の部屋へと二人が灰色神官に案内されてやってきた。
 在我和路茲到達神官長的房間的時候,似乎是班諾和馬爾克到達的這種聯絡進入之後,馬上兩個人被灰色神官帶路往神官長的房間過來。
 ベンノが貴族に向けるためのだらだらとした長ったらしい挨拶を終える頃、ルッツの両親がやってきた。
 班諾結束似乎是面向貴族的拖拖拉拉很冗長的問候的時候,路茲的雙親過來了。

 建築関係の仕事をしていると聞いていた通り、ルッツの父親の身体はそれほど大柄ではないが、がっちりとしている。よく日に焼けていて、外で汗水を流して働く労働者の風貌だった。頑固そうな性格をよく表しているのは眉間に刻まれた皺とギョロリとした翡翠の目で、白に近い感じの金髪のせいで少し年を食っているように見える。
 如同聽到的做著建築關係的工作,路茲的父親的身體雖並沒有那麼魁梧,但很健壯。是經常曬著太陽,在外頭流著汗水工作的勞動者的風貌。將頑固似的性格好好表示著的是被刻在眉間的皺紋和凝視著的翡翠眼睛,且因感覺接近白色的金髮的緣故看起來好像上了年紀。

 ルッツの父親は一瞬ルッツを見て、フンと鼻を鳴らした後、神官長に簡単な挨拶をした。勧められた席に着く時に、カルラおばさんはすでに正面の席に着いているベンノとマルクを見て、ビクリとする。
 路茲的父親一瞬間看到路茲,哼響了鼻子之後,對神官長簡單地打了招呼。在被勸說坐到位子上的時候,卡露菈阿姨看到已經坐在正面的位子的班諾和馬爾克,嚇了一跳。

 マルクさん、マジで何したの? 何言ったの? すでに脅したあとでしょう?
 馬爾克先生,說真的做了什麼? 說了什麼? 已經是威脅之後對吧?

 全員が神官長の部屋に揃ったところで、高らかに3の鐘が鳴り響いた。
 在全員齊聚在神官長的房間的時點,3之鐘宏亮地迴響著。

======================================================================
 今回は神官長のターンでした。
 這次是神官長的換場。
 やっとルッツの父さんが登場です。
 終於路茲的爸爸登場了。

 次回は、全員でのお話し合いです。
 下回是,全員的協商。
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