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第一部士兵的女兒 與芙莉妲的契約

作者:SPT草包│2017-06-27 23:29:16│巴幣:2│人氣:184
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~
以下犯上的書癡~為了成為圖書管理員而不擇手段~
作者:香月美夜
第一部兵士の娘 フリーダとの契約
第一部士兵的女兒 與芙莉妲的契約
原文連結

 雨です。見間違えようもない雨です。
 下雨了。肯定沒有看錯下雨了。

 窓の板戸にパタパタと当たる雨粒の音に肩を落としながら、わたしは朝食を食べる。フリーダがニッコリと笑った通り、ベンノが低く唸った通り、雨が降ってしまった。
 一邊因啪嗒啪嗒地打在窗戶木板窗上的雨點聲垂下了肩膀,我一邊吃著早餐。如同芙莉妲在微微地笑著,如同班諾低沉的呻吟,雨降下來了。
 仕方がない。フリーダの家に行くことが確定してしまった以上、少しでも有益な情報が手に入るように頑張りたいと思う。
 沒辦法。既然已經確定要去芙莉妲的家了,我認為多少都想要為了獲得友誼的情報而努力。

 ルッツも一緒だから、大丈夫だよね。
 因為路茲也一起,所以不要緊呢。

 咀嚼しにくい雑穀パンを、夕飯の残りのスープでふやかしながら、もしゃもしゃと噛みしめる。パンで皿を拭うようにして、朝食を終えたわたしはぐるりとウチの中を見回して、溜息を吐いた。
 一邊將難以咀嚼的雜糧麵包、用晚飯剩下的湯浸泡,一邊亂七八糟地啃咬著。做著像是用麵包擦拭盤子,結束早餐的我環視一圈我家裡面,嘆了一口氣。

「手土産、持っていきたいけど、あの家に持っていける物なんてないんだよね……」
「雖然想要帶著、伴手禮,但這個家裡沒有能帶過去的東西之類的呢……」

 貴族の屋敷にある物をいくつも取り入れているような、何でもあるフリーダの家に手土産として持っていける物がウチにはない。
 我家沒有能作為伴手禮帶過去像是採用了一些存在於貴族宅邸裡的東西、什麼都有的芙莉妲的家的東西。
 トゥーリがクピッと水を飲んだ後、わたしの方を見て、首を傾げた。
 圖麗仰頭喝了水之後,看了看我,歪頭疑惑著。

「カンイチャンリンシャンは? 前に持っていって喜んでもらえたんでしょ?」
「減益論喜計如何? 之前拿了過去受到了喜歡對吧?」
「ん~、売り出し始めたから、自分で使う分を作るくらいならともかく、安易に配るなってベンノさんに言われたの」
「嗯~因為開始發售了,如果像是自己製做了使用的份姑且不論,變成輕易分配是會被班諾先生唸的」
「そっか。雨だから花も摘みにも行けないし、困ったね」
「對喔。因為下雨也不能去摘花,傷腦筋呢」

 トゥーリは水瓶から少しだけ水を使って、皿を洗いながらそう言った。皿を洗った後は仕事に出かける準備で忙しそうだ。
 圖麗使用了從水缸裡只有一點的水,一邊洗盤子一邊那樣說。洗完盤子之後似乎因出去工作的準備而忙碌著。
 もう母は仕事に出かけてしまったし、父は夜勤だったので寝てしまった。わたしもあまり大きな音を立てないように水瓶の水を使って皿を洗う。
 母親已經出去工作了,父親由於是夜班而去睡了。我也為了不要發出太大的聲音而使用水缸的水洗著盤子。

「せめて、何日か前に約束が決まっていて、晴れてる日があったら、森で果物を摘むくらいはできたのになぁ……」
「至少,在幾天之前就決定好約定,有著放晴的日子的話,就像是能在森林裡摘取水果了呢……」

 ベンノはルッツにも便宜を図ってくれたり、わたしに新商品を考えるためのマイン工房を提案してくれたり、何かと便宜を図ってくれるので、極力怒られそうなことは避けたいと常々思っている。
 班諾又是替路茲謀求方便,又是為我提案了為了思考新商品的瑪茵工坊,由於謀求了些方便,我常常認為想要避免極力被怒罵那樣的情況。
 よくポロッと喋ってしまったり、自分の欲求に負けて作ったりすることはあるが、わざとではない。怒られたくてしているわけではないのだ。
 雖然有著又是經常口風不緊地聊著天著、又是做了輸給了自己的欲求而製做的情況,但並不是故意的。並不是想要被罵呀。
 ただ、ベンノの怒りを回避しようとすると、リンシャンはダメ。紙に関するものもダメになる。新しいお菓子のレシピでも持っていけば、フリーダもイルゼも喜んでくれると思うけれど、ベンノには絶対に怒られると思う。
 只是,打算要迴避班諾的憤怒的話,凜香是不行的。有關紙張的東西也會變得不行。即便帶了新的點心的食譜過去的話,雖然說我認為芙莉妲與依露潔都會很高興,但我認為絕對會被班諾怒斥。

 まぁ、見習いになるのは止めたから、お菓子のレシピをどこに流そうがわたしの自由だとは思うんだけど、面倒な事にはなるだろうなぁ。
 算了,因為停止成為實習了,雖然認為把點心的食譜流到哪裡是我的自由,但會變成麻煩事的吧。

 うんぬぅ、と考え込んでいると、コンコンと誰かがドアを叩く音がした。油や蝋を塗りこんで、できるだけ防水加工した厚手の帆布のようなマントを羽織って、仕事に出ようとしていたトゥーリが顔を上げて、ドアのところへと向かう。
 嗯呶、地沉思著時,想起了某人叩叩地敲門聲。披上了塗進了油或蠟、盡可能做了防水加工的厚重帆布般的斗篷,正打算要出去工作的圖麗抬起了頭,轉往門的所在。

「はーい、どなた?」
「來了,是哪位?」

 ちょっと早いけれど、ルッツが来てくれたかなと思いながら、わたしが洗った皿を片づけていると、トゥーリのビックリした声が家中に響いた。
 雖然說有點早,一邊認為會不會是路茲過來了,我一邊收拾著洗好的盤子時,圖麗嚇到的聲音在家裡面響起。

「フリーダちゃん!? どうしたの!?」
「小芙莉妲!? 怎麼了嗎!?」

 思わぬ言葉に驚いて振り返ると、ドアの向こうにはフリーダが、従者を従えて立っていた。雨だというのに余所行きの服を身にまとって着飾ったフリーダときっちりとしたお仕着せを着ている従者と貧しい我が家の背景があまりにもちぐはぐで、正直ウチの貧しさが際立って見える。
 驚訝於意想不到的話語而回頭的話,在門的方向雖然是芙莉妲,但率領了隨從站在那。由於明明稱之為下雨卻身穿著正裝的打扮的芙莉妲與作為恰當地穿著工作服的隨從跟貧窮的我家的背景太過不協調了,老實說我家的貧窮看起來很突出。

「わたくし、起きた時から楽しみで、待ちきれなくて、マインを迎えに参りましたの」
「我,因為從起來的時候就很期待,等不了了,就來迎接瑪茵了」

 ニコリと笑って言われた言葉が「逃がしませんよ?」と聞こえて、ぞくっとする。回れ右をしたいけれど、トゥーリを置いて逃げるわけにもいかない。
 被微微地笑著說著的話語聽起來像「不會讓妳逃走的唷?」,打了個冷顫。雖然說想要向右迴轉,但做不到放著圖麗逃跑。
 トゥーリは「雨の中、わざわざ迎えに来てくれるくらい楽しみにしてくれてるよ」なんて、にこにこと笑いながらわたしを振りかえった。
 圖麗是「做出了在雨裡面,特意過來迎接般的期待唷」之類的,一邊嘻嘻地笑著一邊把我轉回去。

 トゥーリ、マジ天使。その純粋さを失わないで。
 圖麗,真的是天使。別失去了那份純真。

「雨なので、身体の弱いマインに外を歩かせるわけにはいきませんもの。大通りに馬車を待たせてありますわ」
「因為是下雨,對讓身體虛弱瑪茵是不能走到外面去的。在大街上有等候著的馬車」

 熱を出すから雨の中を出歩きたくない、と拒まれると考えたのだろう。フリーダの手回しの良さに感心するばかりだ。
 因為會發燒而不想在雨中外出走動,是考慮過被那樣拒絕的吧。淨是佩服著芙莉妲的安排周到。

「わぁ、馬車だって!? いいなぁ、マイン」
「哇,說是馬車!? 好好喔,瑪茵」

 仕事に行くための荷物を持って、無邪気に羨ましがるトゥーリを見たフリーダが、少しばかり首を傾げた。
 看著拿著為了去工作的行李、天真地羨慕著的圖麗的芙莉妲,稍微歪了一下頭。

「あら? マインのお姉様はお仕事?」
「啊啦? 瑪茵的姊姊是要去工作?」
「そうなの。そろそろ行かなくちゃ」
「就是那樣。差不多必須要去了」

 残念だけど、とトゥーリが言うと、フリーダは何かを考えるようにほんの一瞬視線を上に向けた後、パンと手の平を合わせて意味ありそうな笑みを浮かべた。
 雖然很可惜,圖麗那樣說後,芙莉妲向是思考著什麼僅僅一瞬間把視線朝向上面之後,啪地合起了手掌浮現出了意義深遠的笑容。

「でしたら、途中までお送りしますわ」
「可以的話,就送妳到途中吧」
「え!? わたしもいいの!? 馬車に乗れるの!?」
「哎!? 我也可以嗎!? 能坐上馬車嗎!?」

 パァッとトゥーリの顔が輝いた。馬車なんてわたし達みたいな貧民は一生乗れないような乗り物である。トゥーリのテンションが上がるのは理解できる。急いで外出の準備をするしかなさそうだ。
 圖麗猛然喜上眉梢。馬車之類的是像是我們般的貧民一輩子都乘坐不了的交通工具。圖麗的情緒會高漲是能理解的。似乎做不到加快外出的準備。

「トゥーリ、ルッツを呼んで来なくちゃ」
「圖麗,必須要去呼喊路茲了」
「あ、そうだね。わたし、行ってくるよ」
「啊,沒錯呢。我,去去就來唷」
「あの、でも、ルッツさんが来られると、お姉様の乗る場所が……」
「那個,但是,路茲來了的話,姊姊的乘坐地方就……」

 トゥーリが荷物を置いて駆けだそうとしたところを、申し訳なさそうにフリーダが止める。わたしが外出する時は、ルッツのお目付が付くことになっている。ルッツが来てしまうと、トゥーリが乗れなくなるなら、トゥーリは身を引くしかなくなる。
 圖麗放下行李正打算要跑出去的時點,似乎過意不去的芙莉妲阻止了。我出門的時候,都會變成附上路茲的監視。如果路茲來了的話,圖麗就變得無法乘坐了,圖麗只能退出。

「え? え?……じゃあ、わたし、ダメなの?」
「咦? 咦?……那麼,我,不行嗎?」

 一度期待を持っただけに失望は大きくなる。今にも泣きそうな顔でトゥーリがしょぼんと項垂れた。
 正因為有過一次期待失望就會變得很大。圖麗現在也用快要哭了的臉無精打采地低著頭。
 何と言って慰めればいいのかとあわあわしているわたしの前にフリーダの手が入ってくる。そのままトゥーリの手を取って、それは、それは、優しそうな笑みを浮かべた。
 芙莉妲在不知道該說什麼去安慰才好呢而正不知所措的我面前插手了。就那樣拉起圖麗的手,浮現出那還、真是、溫柔似的笑容。

「マインのお姉様、今日はわたくしが責任を持って、ルッツさんの代わりにマインを送り迎えいたしますわ。マインが倒れないように気を付けると約束します。ですから、馬車で一緒に参りましょう?」
「瑪茵的姊姊,今天我有著責任,有著要代替路茲接送瑪茵喔。為了不讓瑪茵倒下跟妳約定會留意的。因此,要一起搭馬車嗎?」
「……馬車で移動すれば、マイン、疲れないし、雨にも濡れないよね? ルッツいなくても大丈夫だよね?」
「……搭馬車移動的話,瑪茵,就不會累了,也不會被雨給淋濕了呢? 就算路茲不在也不要緊呢?」

 大丈夫じゃないよ!
 才不是不要緊唷!

 そう言いたかったけれど、トゥーリのすがるような視線に、わたしは負けた。
 雖然說想那樣說,但對圖麗哀求般的視線,我認輸了。
 ルッツがいないと困るから、トゥーリは歩いて行けなんて言えない。馬車に乗れるとはしゃいでいたトゥーリの顔を見ているだけに、無碍になんてできない。一人でフリーダの家に行きたくないけど、断れなかった。
 因為路茲不在會很困擾,圖麗走路過去什麼的說不出口。正因為看到能搭乘馬車而歡騰著的圖麗的臉,阻礙之類的做不到。雖然不想一個人走到芙莉妲的家,但無法拒絕。

「……大丈夫。トゥーリ、一緒に行こう」
「……不要緊。圖麗,一起去吧」
「ありがとう、マイン。わたしがルッツに伝えてくるから、マインは準備してね」
「謝謝妳,瑪茵。因為我要去傳達給路茲,瑪茵去準備吧」

 トゥーリがうきうきで足取り軽くルッツの家へ出ていった。トゥーリの足音が小さくなってくると、聞こえるのは雨の音だけだ。
 圖麗喜不自勝地腳步輕盈往路茲的家過去了。圖麗的腳步聲變小了之後,就只能聽見雨聲。
 うまくトゥーリを使ってルッツを排除したフリーダをわたしはじとっと睨む。
 我睥睨著很好地使用著圖麗來排除路茲的芙莉妲。

「フリーダ……」
「芙莉妲……」
「お姉様、嬉しそうでしたわね?」
「姊姊,好像很高興呢?」
「そうだね。……ハァ、仕方ないなぁ。選んだのはわたしだし」
「沒錯呢。……哈,沒辦法呢。選擇的是我」

 トゥーリを切り捨てられなかったのはわたしだから、フリーダをこれ以上責めても仕方ない。ルッツとベンノにまた考え無しだと怒られそうだと思いながら、わたしはトートバッグを準備する。
 正因為無法割捨圖麗的是我,就算這之後責備芙莉妲也沒有用。一邊認為會似乎會被路茲與班諾怒斥又沒在考慮了,我一邊準備著手提包。

「実はね、手土産が準備できてないんだよ」
「其實呢,沒能準備伴手禮唷」
「あら、今日一日、マインの時間をいただくのですもの。マインがわたくしとお話してくださるだけで十分よ?」
「啊啦,今天一整天,收下了瑪茵的時間了。只要瑪茵肯跟我說說話就足夠了唷?」

 嬉しそうにふんわりと笑った顔はお友達が遊びに来るのが嬉しくて仕方ない幼女のものだが、フリーダは無邪気なだけの幼女でないことはよく知っている。
 高興似地輕飄飄地笑著的臉是朋友來玩了而高興到毫無辦法的小女孩的東西,但芙莉妲不只是天真無邪的小女孩這件事是清楚明白的。

「マイン、カルラおばさんに伝言してきたよ。さぁ、行こう。遅れちゃう」
「瑪茵,傳話給卡露菈阿姨了唷。來吧,走吧。要遲到了」

 わたしとフリーダの間にあった重苦しい雰囲気が、足取り軽く飛び込んできたトゥーリの笑顔で霧散する。
 雖然在我與芙莉妲之間有著沉悶的氛圍,但因腳步輕快飛進來的圖麗的笑容而煙消雲散了。

「では、行きましょう」
「那麼,我們走吧」

 戸締りをして、外に出る。厚手のマントとつばの広い帽子がここの雨具だ。もちろん、完全に防げるわけではなく、大雨や長時間当たっていると染み込んでくる。今のように細い路地を抜けて大通りの馬車に入るまでなら、染み込むような心配はないけれど。
 關好了門窗,來到外面。厚重的斗篷與帽沿寬廣的帽子是這裡的雨具。當然,並不能完全防禦,碰上大雨或長時間的話就會滲透進去。如果像現在穿過細小的巷道直到進入大街的馬車為止,不會有滲透般的擔心就是了。

「さぁ、早く乗って」
「好了,快點坐上去」

 大通りで待機している馬車に急いで乗りこむと、マントと帽子を取って端の方に置いた。従者は御者の隣に座るので、中に入ったのはわたし達だけだ。
 加緊搭乘進在大街待命著的馬車裡後,拿起斗篷與帽子放在邊邊。由於隨從坐到了馬伕的隔壁,進入裡面的只有我們。

「へぇ、馬車の中ってこんな風になってるんだ?」
「嘿,是說馬車裡面變成了這樣樣子呀?」
「さぁ、座って。中央広場の近くでよろしいの?」
「好了,坐下來。在中央廣場的附近可以嗎?」
「うん、職人通りの中でも一番中央広場に近いんだよ」
「嗯,即便是工匠街裡面也是最靠近中央廣場的唷」

 馬車の中を見回してはしゃぐトゥーリにフリーダが座るように促し、わたしを真ん中に並んで座る。大人が二人乗れるように作られた馬車も子供なら三人座っても少し余裕があった。
 芙莉妲催促著環視著馬車裡面喧鬧的圖麗坐下,讓我排在正中間坐著。被做成為了搭乘大人兩個人的馬車如果是小孩子就算三個人坐也稍有餘裕。
 馬車が動きだすとやはり結構揺れるけれど、ギルド長やベンノと乗った時と違って、きちんと席に座れているので、席から飛び出すほどではない。
 雖然說馬車開始動了後果然相當搖晃,但跟公會長或班諾搭乘時不一樣,由於扎實地坐滿了座位,不會從座位上飛出去的時程度。

「もうじき洗礼式でしょう? マインはどんな衣装かしら?」
「已經要是洗禮式了對吧? 瑪茵會是怎樣的服裝呢?」
「マインの衣装はわたしのお直しだけど、お直しとは思えないくらい豪華なんだよ」
「雖然瑪茵的服裝是我的修改,但卻是不認為是修改般的豪華唷」

 フリーダの言葉にトゥーリが自分のことのように胸を張って答える。冬にお直しをしてからも時々トゥーリと母が手を入れているようで、ちょっとずつ装飾が増えていた。
 圖麗對芙莉妲的話語像是自己的事情般挺起胸膛回答著。似乎因為在冬天做著修改圖麗與母親不時會做修正,裝飾一點點地增加起來。

「……豪華?」
「……豪華?」
「説明するのが難しいんだけど、ちょっと変わった感じになってると思う。母さんが頑張ってくれたから、可愛いよ」
「雖然要說明很難,但我認為變成有點奇怪的感覺。因為媽媽很努力,很可愛唷」

 ウチを見た後では、豪華な衣装を思い浮かべるのは難しいだろう。フリーダが不思議そうな顔をしているけれど、嘘は言っていない。そして、ここでのお直しと、わたしがしたお直しが違うので、説明するのも難しいのだ。
 在看到我家之後,要想像豪華的服裝是很困難的吧。雖然說芙莉妲做出不可思議般的表情,但沒有說謊。而且,由於在這裡的修改跟,我所做的修改不一樣,要說明是很難的。

「フリーダちゃんの衣装もすごくふわふわしていて素敵だったよね。わたしもあんな服着てみたい」
「小芙莉妲的服裝也非常輕飄飄的很棒呢。我也想穿看看那樣的衣服」
「まぁ、ありがとうざいます。では、新しい髪飾りも作ったのかしら?」
「哎呀,非常感謝妳。那麼,新的髮飾也製作了嗎?」

 トゥーリの言葉に嬉しそうに笑ったフリーダが髪飾りに話題を向けた。フリーダに作った髪飾り以外は、どれも色が違うだけでデザインは同じだ。けれど、わたしが自分のために作るのが他と同じだとは思えなくて、気になるのだろう。
 對圖麗的話語很高興似地笑著的芙莉妲將話題轉向了髮飾。為芙莉妲製做的髮飾以外,哪一個都只是顏色不一樣而設計一樣的。但是呢,我為了自己所製做的不認為與其他一樣,而很在意的吧。

「マインへのお祝いだからね。わたし、頑張って作ったんだよ。フリーダちゃんに作ったのと同じ大きい花を3つね」
「因為是給瑪茵的祝賀呢。我,很努力地製做了唷。跟做給小芙莉妲的一樣3朵大大的花呢」
「では、マインの髪飾りはわたくしとお揃いということかしら?」
「那麼,瑪茵的髮飾能說是跟我湊成對了嗎?」

 フリーダが少し疑わしそうにわたしを見ながら首を傾げる。トゥーリは何と説明すればいいのかわからないようで、困ったようにわたしの袖をつかんだ。
 芙莉妲一邊看著稍微可疑似的我一邊歪頭不解。圖麗似乎不明白要怎麼說明才好呢,困擾似地抓著我的袖子。

「色も白だし、揺れるし、大きな花は同じだけど、お揃いとはちょっと違うよね、マイン?」
「顏色也是白的,搖曳著,雖然大大的花飾一樣,但跟成對稍微不一樣呢,瑪茵?」
「生成りの糸だから、クリーム色っぽいけど遠目に見ると白だね。小さな小花を付けたけど、フリーダの髪飾りとはまた違う感じだよ。どんな髪飾りかは当日のお楽しみ。ね、トゥーリ」
「因為是無染色的線,雖然是米黃色般但在遠處看的話是白的呢。雖然添加了小小的小花,但跟芙莉妲的髮飾又是不一樣的感覺唷。是怎樣的髮飾呢是當天的樂趣。對吧,圖麗」
「全部話しちゃうと当日の楽しみがなくなっちゃうもんね」
「全部說完的話當天的樂趣就是會變不見的東西呢」

 トゥーリがそう言って口元を覆うと、秘密だよと悪戯っぽく笑った。フリーダもつられたように笑顔を零す。
 圖麗掩蓋住那樣說的嘴角後,是秘密唷地惡作劇般地笑了。芙莉妲也像是受到了影響灑落了笑容。

「まぁ、本当に楽しみね。わたくし、外まで見に行くわ」
「哇,真的很期待呢。我,去外面看看喔」

 洗礼式の話をしているうちに、工房が立ち並ぶ一角にあるトゥーリの仕事場が見えてきた。馬車を止めてもらったトゥーリはマントを羽織って、帽子を被る。道具の入ったバッグを持って、ちらりと心配そうにわたしを振り返った。
 在說著洗禮式的話題時,看到了存在於工坊排列的一角圖麗的工作場所。圖麗讓馬車停下披上斗篷,戴上帽子。拿著放入工具的包包,一瞬間擔心似地回頭望著我。

「ご心配なく。マインはわたくしが責任を持ってお預かりいたしますわ」
「請別擔心。瑪茵我有責任負責保管喔」
「トゥーリ、お仕事頑張ってね」
「圖麗,工作加油呢」
「馬車に乗せてくれてありがとう、フリーダちゃん。わたしは行くけど、迷惑かけないようにね、マイン」
「感謝讓我搭乘馬車,小芙莉妲。雖然我要走了,但不能添麻煩呢,瑪茵」

 大きく手を振って、工房へと駆けていくトゥーリを見送った後、馬車はまたゴトゴトと動き始めた。
 大大揮著手,送別了往工坊跑過去的圖麗之後,馬車再次叩叩地開始動了。


「いらっしゃい、マイン。よく来たね。カトルカールを焼いて待っていたよ。是非、感想を聞かせておくれ」
「歡迎,瑪茵。真的來了呢。我烤了磅蛋糕在等候著喔。務必,讓我聽聽感想」

 フリーダの家に着くと、料理人のイルゼが待ち構えていた。
 到達芙莉妲的家後,廚師依露潔正等候著。
 応接室に通されて、お茶とカトルカールがテーブルに並べられる。一口食べて、わたしは相好を崩した。しっとりとした生地に程よい焼き色で、オーブンの癖をつかんだのか、以前よりずっとおいしくなっている。
 進到接待室,茶與磅蛋糕被擺放著。吃了一口,我表情就融化了。以作為濕潤的質地烤到剛好的色澤,是抓到了烤箱的習性嗎,變得比以前還美味得多起來。

「おいし~。前よりずっとおいしくなってる。焼き加減が絶妙ですね」
「好好吃~。變得比之前還美味得多。燒烤程度很絕妙呢」
「そう言ってもらえてよかったよ。何か改善できるところがないか、気になっていたんだ」
「能受到妳那麼說真是太好了喔。有沒有什麼能改進的地方呢,我很在意的呀」
「改善点?……うーん、十分おいしいと思うけど?」
「改良點?……沒喔,雖然我認為十分美味了?」

 パクリと口に放り込んで、甘いお菓子を味わいながら、わたしは考え込んだ。
 一邊放進張大的口裡、品味著甘甜的點心,我一邊沉思著。
 皿に盛った時の見た目を豪華にするとか、ドライフルーツを入れたり、柑橘系の皮をすりおろして混ぜて、違う味を楽しむとか、思い当たることはあるのだが、これがベンノに怒られる情報提供になるのかどうかわからない。
 該說是將盛入盤子的時候的外觀弄得很豪華呢,還是說放入乾燥水果、將柑橘系的皮磨碎混和、享受不同的味道呢,雖然有想到,但不知道這個會不會變成被班諾怒斥的情報提供呢。

 うーん、何してもベンノさんには怒られそうだし、シンプルに食べてもおいしいから黙っていても問題はないんだけど、やる気になっている職人さんは応援したくなるんだよね。
 唔嗯,似乎就算做什麼都會被班諾先生怒斥,雖然因為就算簡單地吃也很美味而沉默也沒有問題,但變得想要支援變成很有幹勁的匠人小姐呢。

「改善点って程でもないんだけど……お砂糖一袋と引き換えなら、教えるよ?」
「雖然還不到生為改良點的程度……如果和砂糖一袋交換,我會告訴妳唷?」

 前に厨房で見た1キロくらいの砂糖が入っている袋を思い出して、わたしがそう交渉すると、イルゼは決定権を持つフリーダに視線を向けた。
 回想起之前在廚房看到放進了一公斤左右的砂糖的袋子,我那樣交涉後,依露潔將視線轉向擁有決定權的芙莉妲。

「砂糖一袋……。マインに渡してしまってもいいですか、お嬢様?」
「砂糖一袋……。交給瑪茵可以嗎,大小姐?」
「えぇ、いいわよ」
「好的,可以唷」
「お嬢様からの許可は頂いたよ。さぁ!」
「收到了來自大小姐的許可了喔。來吧!」

 食らいついてくるようなイルゼの迫力に、ぅひっと息を呑みながら、わたしは口を開いた。
 一邊對像是咬住不放的依露潔的魄力,唏地喘不過氣,我一邊開口了。

「フェリジーネの皮をすりおろして生地に加えると香りと味が変わっておいしくなります。他にも何か入れることで味は変わります。何をどんな比率で入れたらおいしくなるかは、自分で研究してみてください。これはおまけ情報ですけど、もし、お貴族様相手に出すようなことがあるなら、よく泡立てた生クリームや飾り切りした果物を添えると、見た目が豪華になりますよ」
「將翡里吉涅的皮磨碎加進麵糊裡香氣跟味道會改變而變得美味。其他也是味道會因放入什麼而改變。將什麼用怎樣的比例放進去的話會變得美味嗎,請自己去研究。雖然這個是附贈情報,但假如,如果有要拿出給貴族對象的情況,添加上好好打發的鮮奶油或裝飾切好的水果後,外觀就會變得很豪華唷」
「っ!? やってみよう」
「!? 我去試試」

 イルゼは息を呑んだ後、すぐさま立ち上がって部屋から出ていった。残されたわたしとフリーダは何度か瞬きした後、苦笑する。
 依露潔吞了一口氣之後,馬上站起來從房間裡出去了。被留下來的我與芙莉妲眨了好幾次眼之後,苦笑著。

「ごめんなさいね、マイン。お客様にあんな姿を見せてしまって。イルゼも普段は冷静なのだけれど、新しいレシピには目がなくて……」
「很抱歉呢,瑪茵。讓客人看見那樣的身姿。雖然說依露潔平時很冷靜的,但對新的食譜就顧不上了……」
「研究熱心なのはいいことだよ。イルゼさんが頑張ってくれたら、それだけおいしいものが増えるもんね?」
「熱心研究是好事唷。依露潔女士努力的話,只是那樣美味的東西就會增加了呢?」

 勉強熱心で感心な事だ。世界においしいものが広がるのは、わたしにとっても嬉しいことなので、ぜひ色々と研究して新しい甘味を作っていってほしい。
 是因熱心學習而佩服的事情。由於在世界上推廣美味的東西,對我來說是很高興的事情,希望務必做各式各樣的研究製做出新的甜食。

「そういえば、フリーダはどうして商業ギルドで見習いなんてしているの? 将来は貴族街でお店を持つんでしょ? 職員にはならないのに、見習いなんてなれるの?」
「這麼說來,芙莉妲為什麼會在商業公會做著實習之類的? 將來在貴族街擁有店鋪對吧? 明明不會成為職員,卻來當實習什麼的?」

 成人したら、貴族のところに行くことが決まっているのに、商業ギルドでフリーダが見習いをしているとは思わなかった。
 明明決定成年的話,要去貴族的所在,卻沒想到芙莉妲在商業公會做起了實習。
 はむっとカトルカールを口に入れながら問いかけると、フリーダはコクリとお茶を飲みながら、答えてくれる。
 一邊將磅蛋糕一把放進嘴裡一邊發問後,芙莉妲一邊喝下了一口茶,一邊給予了答案。

「わたくしがおじい様にお願いしたの。貴族街で店を持つための勉強と人脈作りよ。貴族街で店を開く時にはわたくし一人ですもの。全て一人でできるようにならなければならないし、人脈をできるだけ広げておかなくてはね」
「是我拜託爺爺的。為了在貴族街擁有商店的學習與創造人脈唷。在貴族街開店的時候會是我一個人。變成像是全部要一個人去做才行,必須要盡可能的將人脈擴張呢」
「全部一人? 誰か、その、ユッテさんみたいな側仕えの人は?」
「全部一個人? 沒人嗎,那個,像是優蝶小姐般近侍的人?」
「わたくし以外に貴族街での滞在は許されてないのよ。あちらに行ってから、先方が用意してくださる側仕えはいるから、生活する上で一人というわけではないのですけれど」
「對我以外不被允許滯留在貴族街上唷。因為要去那邊,因為有對方所準備的近侍在,在生活上並不是所謂的一個人就是了」

 それでも、貴族街に行ってから付けられる側仕えが経済や経営に明るいとは思えない。
 即便如此,去到貴族街後我不認為被安排的近侍會明瞭經濟或經營。
 いくら何でも成人したばかりの少女にいきなり味方のいないところで一人で店をしろ、というのは、あまりにも酷ではなかろうか。相談相手の一人くらいは付けられないのだろうか。
 所謂的,不管怎麼說對剛成年的少女突然在沒有同伴的地方一個人開店,會不會太過嚴苛了嗎。是能商量的對象一個人都沒被安排的嗎。

「お店でも完全に一人というわけでもありませんわ。商品の納入等でわたくしの家族は貴族街に出入りすることを許可されているもの。ずっとそばにいてくださるわけではないけれど、心強いでしょう?」
「店鋪也並非是所謂完全一個人喔。對商品的繳納等等我的家人被允許了進出貴族街。雖然說並不是能一直在身邊,但能有所倚仗對吧?」
「……そうだね」
「……也是呢」

 とても心強いなんて思えなかったけれど、真っ直ぐに前を見て自分の運命と戦っているように見えるフリーダに肯定以外の言葉をかけることはできなかった。
 雖然說我不認為非常能倚仗什麼的,但對看著像是筆直地看著前方與自己的命運戰鬥的芙莉妲說不出肯定以外的話語。
 大人びた物言いと考え方はフリーダが身に付けている武器であり、防具だ。ひたすら、磨きをかけて、見知らぬ世界で生き抜いていかなければならない。
 大人般的說話與思考是作為芙莉妲所掌握著的武器,是防具。只管,專研砥礪,必須要在陌生的世界裡活下去。

「わたくしが貴族街で店を始めた後、何が起こっても一通りの対処できるように、今はギルドの見習いと我が家のお店のお手伝いを交互にしているの」
「我在貴族街開始商店之後,為了就算發生了什麼也能做到大致的應對,現在正互相做著公會的實習與我家店舖的幫手」
「フリーダは偉いね。先々のことまですごく考えてるのが、よくわかるよ」
「芙莉妲很偉大呢。就連將來的事情都考慮透徹,我很能明白唷」

 わたしの言葉にふっとフリーダの顔が厳しくなった。真面目な眼差しで静かにわたしを見据えて、口を開く。
 忽然對我的話語芙莉妲的臉變嚴峻了。用認真的眼神靜靜地直視著我,開口了。

「わたくしもマインに聞きたいことがあるのだけれど、よろしい?」
「雖然我也有想要跟瑪茵打聽的事情,但可以嗎?」
「うん、いいよ」
「嗯,可以唷」

 あぁ、本題がきた。
 啊,正題來了。

 そう思った。フリーダに聞かれることなんてわかりきっている。わたしはニコリと笑ったまま、フリーダを促した。
 那樣想著。被芙莉妲打聽的事情什麼的十分明顯。我仍舊微微地笑著,催促著芙莉妲。

「一体何を考えているの? マインは、本来ならベンノさんのところを早々に見限って、こちらに付くべきでしょう? わたくし、今までずっと待っていたのよ。マインが伝手を求めて、わたくしのところへ来るのを……」
「妳到底在想什麼呢? 瑪茵,本來的話應該會早早放棄班諾先生的所在,而過來這邊對吧? 我,至今一直都在等待著唷。瑪茵謀求門路,來到我的所在……」

 生きるために貴族への伝手を求めるなら、ベンノよりもギルド長とフリーダを頼った方が良い。それは、オットーにも指摘されたことだった。誰だってそう思うだろう。貴族との繋がりが長く深い店の方が、少しでも有利に交渉できるに決まっている。
 如果為了活著而謀求往貴族門路,比起班諾依靠公會長或芙莉妲更好。那是,也被歐拓指出的事情。無論是誰都會那樣想的吧。與貴族的聯繫長久又深遠的店,稍微有利就肯定能談判。
 歴史と権力に基づいた自信を持って勧誘するフリーダの口調が少しずつ熱を帯び、瞳は何とも言えない焦りのようなものが透けて見える。
 基於歷史與權力擁有自信來勸誘的芙莉妲的語氣一點一滴帶著火熱,看得見眼眸透出總有說不出來的焦躁般的東西。

「もう夏が来るというのに、マインは何も行動していない。先のことを本当に考えているの? なるべく早く貴族に渡りをつけなくては、このままでは……」
「明明該稱為已經到夏天了,瑪茵卻什麼行動都沒有。真的有在考慮將來的事情嗎? 不盡早跟貴族她上關係,就這樣下去……」

 フリーダの訴えは同じ身食いであるわたしを心配しての言葉だとわかっている。貴族に渡りを付けてもすぐに契約できるとは限らない。早く、早くと急く気持ちがフリーダの強引さに繋がっているのだとすれば、心配されているのが少し面映ゆいくらいだ。
 明白芙莉妲的控訴是同樣身為身噬而擔心我的話語。就算跟貴族搭上關係也未必能馬上契約。快點、快點的急促心情是正聯繫著芙莉妲的強硬的話,被擔心著就宛如稍微不好意思。
 フッと笑って、わたしもフリーダを真っ直ぐに見詰めた。
 呵地笑了,我也筆直地直視著芙莉妲。

「あのね、フリーダ。わたし、自分なりに考えた結果、家族と一緒にいて、朽ちる方を選んだの」
「那個呢,芙莉妲。我,盡己所能考慮的結果,是選擇跟家人在一起、腐朽那方」
「……え?」
「……咦?」

 目を見張って、口を軽く開いたまま、フリーダは固まった。小さく震えた唇から、信じられない、と微かな呟きが漏れる。
 睜大了眼睛,輕輕張開著口的樣子,芙莉妲僵住了。從小小顫抖的嘴唇裡,微弱地洩露出,我不敢相信的嘟噥。

「半分はもう諦めてるの。トゥーリが泣くから、生きられる方法を探すよって言ったけど、身食いは貴族と契約する以外に生きていく方法はないんでしょ?」
「一半是已經放棄了。因為圖麗哭了,雖然根據尋找能活下來的方法而說了,但身噬是跟貴族訂契約以外沒有能活下來的方法對吧?」

 何か方法がないか、フリーダを助けるためにギルド長は、権力もお金も伝手も使える物は全て使って死に物狂いで探したはずだ。いくつも魔術具をかき集め、時間を稼ぎながら、契約以外に少しでも有効な手段がないか、調べただろう。
 沒有沒什麼方法呢,公會長為了幫助芙莉妲,應該是不論權力金錢還是門路能用的東西全都用上了不怕死地瘋狂尋找。一邊蒐羅了幾個魔術具、爭取時間,一邊有沒有契約以外稍微也有效的手段呢,調查著吧。
 そのギルド長が知らないなら、何も手段がなかったと諦めるしかなかったなら、より良い条件を持つ貴族を選びだし、フリーダが契約するしか選べる道がなかったなら、答えは決まっている。
 如果那個公會長不知道,如果什麼手段都沒有就只能放棄了,選擇擁有較好條件的貴族,如果芙莉妲除了訂契約沒有能選擇的道路,答案是決定好的。

「……わたくしは知りません」
「……我不知道」
「本音としては、どこかでもう1個くらい魔術具が手に入らないかな? とは思ってるけど、貴族と契約したいとは思ってない。魔術具以外に身食いを何とかできる代用品ってないんでしょ?」
「作為真心話,是否能在哪裡再獲得一個左右的魔術具呢? 雖然那樣認為,但不認為想跟貴族訂契約。沒有魔術具以外能設法對付身噬的替代品對吧?」
「わたくしが知っていれば、とっくに使っているわ」
「我能知道的話,老早就使用了喔」

 苛立ったようにじろりと睨まれて、わたしは軽く肩を竦めた。
 被不耐煩似地狠狠盯著,我輕輕聳了聳肩。

「だよね? 今日ね、わたしがフリーダに質問しようと思ってたのは、貴族以外の人から魔術具を買うことってできないのかなってことなんだ。もしくは、魔術具を自分で作るとか……できないんだよね?」
「是吧? 今天呢,我認為要對芙莉妲提問的是,能不能從貴族以外的人那買到魔術具這件事。或者,自己來製作魔術具之類……做不到的吧?」

 無いなら作ってしまえばいいじゃないと思ったけれど、残念ながら、麗乃が読んだ本の中に魔術具の作り方はなかった。ファンタジー小説やゲームの中で、そんな言葉が出てきたけれど、実際の参考になるはずがない。
 雖然說我認為如果沒有去做不就好了,但雖然很可惜,不過在麗乃讀過的書裡面沒有魔術具的作法。在幻想小說或遊戲裡面,雖然說出現過那樣的話語,但應該無法成為實際的參考。
 そして、魔術具を作る工房が、この街には無かった。
 而且,製做魔術具的工坊,這座城市裡沒有。

「魔術具を作るためには魔力が必要なので、魔力を持つ貴族以外には作れないそうよ。ですから、魔術具の作り方を知っている人が城壁よりこちらにいないの」
「由於為了製做魔術具需要魔力,擁有魔力的貴族以外都做不了的唷。因此,知道魔術具的作法的人比起城牆不存在於這邊」
「そう。……作り方がわかったら自分で作ろうと思ったんだけど、やっぱり無理みたいだね」
「是喔。……雖然我認為作法知道的話就能自己製做了,但果然好像不可能呢」

 魔力を持つ貴族にしか作れないなら、魔術具の工房は高い城壁の向こうにしかない。作り方がわかれば、資金は潤沢にあるので何とかなるかと期待したけれど、やはり甘かったようだ。
 如果只有擁有魔力的貴族能製做,魔術具的工坊只存在於高高城牆的對面。雖然說作法知道的話,由於資金很充裕期待著能設法解決,但果然似乎太天真了。

「……自分で作るというのは考えつきませんでしたわ」
「……所謂自己製做是從沒考慮過的喔」
「フリーダはお嬢様だから。わたしは欲しいと思った物は自分で作らないと手に入らない環境で生きているから、一番に思ったのは自分で何とか作れないかな……だったよ」
「因為芙莉妲是大小姐。因為我是在想到想要的東西自己無法製做就得不到的環境裡生活著的,最先想到的是能不能自己設法製做呢……這樣唷」

 クスクスと小さく笑い合う。リンシャンも、髪飾りも、紙も、煤鉛筆も、菜箸も、わたしが作ったものは必要にかられたから、できたものばかりだ。
 小小地互相竊笑著。因為凜香也好,髮飾也好,紙張也好,煤炭筆也好,長筷子也好,我製做的東西都是被需要的,盡是能做到的東西。

「マインはそれほど家族が大事? このまま熱に呑まれて死ぬことが怖くはないの?」
「瑪茵是那麼樣重視家人? 就這樣被熱吞食而死不會害怕嗎?」

 ぽつりとフリーダが尋ねた。
 芙莉妲一句話詢問了。

「うーん、なんでだろう。死にたくないとは思うけど、あまり怖いとは思わないんだよね」
「唔嗯,是為什麼呢。雖然我認為不想死,但不認為有那麼害怕呢」

 一度死んだ記憶を持つわたしにとって、マインの生は神様がくれたおまけのようなものだった。やっと生きることが楽しくなってきたけれど、根本的なところは多分変わっていない。
 對於擁有死過一次的記憶的我來說,瑪茵的生命是神明大人所給予附贈般的東西。雖然說活著終於變得快樂起來,但根本的地方大概毫無變化。

「……今は周りに本がないから、家族の他に大事なものがないの。死ぬことを選んだんじゃなくて、家族といることを選んだだけなんだよ」
「……因為現在周圍沒有書本,沒有比其他家人還重要的東西。並不是選擇死亡,而只是選擇跟家人在一起唷」
「本?」
「書本?」
「そう。お金が結構貯まったから、一冊くらい買えないかな?」
「對。因為存了相當的錢,是否能買到一本左右呢?」

 わたしが首を傾げると、フリーダは困ったように笑った。
 我疑惑歪著頭後,芙莉妲傷腦筋似地笑了。

「本が欲しいなら、貴族街に行けばいいではありませんか。あちらにはあるでしょう?」
「如果想要書本,去貴族街就好了不是嗎。在那裡會有的對吧?」
「あ~、契約条項に本読み放題ってあれば、ホイホイついて行ったかもしれないけど、飼い殺しするようなお貴族様が、貧民のわたしにそんな貴重なものを読ませてくれると思う?」
「啊~,雖然契約條件上有隨意讀書的話,就會被引誘而跟過去也說不定,但妳認為會做出眷養到死般的貴族大人,會讓貧民的我去讀那樣貴重的東西嗎?」
「マインの生活環境から考えると難しいでしょうね」
「從瑪茵的生活環境考慮是很困難的吧」

 貴族から見れば、識字率が低いこの街の貧民がわたしだ。たとえわたしが文字を知っていても、自分が持つ高価で貴重な本に触らせたくないと思うのが普通だ。勝手に読んだら、殺されても仕方がない。
 從貴族來看的話,是識字率很低的這座城市的貧民的我。譬如就算我知曉文字,會認為不該觸摸自己擁有昂貴且貴重的書本是很普通的。擅自閱讀的話,就算被殺了也沒辦法。
 そして、わたしはある意味で自分をよく知っている。本を前にして理性が保てるはずがない。本に飛びついて、殺される自分が容易に想像できてしまう。
 而且,我在某意義上是非常明瞭自己的。在書本面前應該是無法保有理性的。撲到書本上,被殺的自己是很容易做到想像的。

「……だから、死ぬまでに何とか本の量産体制を作ろうと思っているけど、難しいだろうね。身食いについては寿命だと思って、半分は諦めてる。家族に迷惑いっぱいかけてるから、今のうちにたっぷり稼いで、残してあげたいとは思うけどね」
「……所以,雖然想到要在死之前設想製做書本的量產體制,但很困難呢。想到關於身噬的壽命,一半放棄了。因為給家人添了滿滿的麻煩,我認為要在現在之內賺得滿滿的,想要遺留下來就是了呢」

 わたしが冗談めかしてクスッと笑うと、フリーダはきらりと茶色の目を光らせた。
 我開著玩笑竊笑了後,芙莉妲讓茶色的目光一瞬間發亮了。

「では、わたくしがカトルカールのレシピを買いましょうか?」
「那麼,我能買下磅蛋糕的食譜嗎?」

 完全に商人の目になってしまったフリーダを見て、わたしはうーんと唸った。
 看到完全變成商人的眼神的芙莉妲,我嗚嗯地呻吟了。
 カトルカールは基本的なお菓子なので、期間限定の独占販売くらいなら別に構わないが、ベンノのリンシャンのように全ての権利を独占されるのは困る。お菓子の発展を阻害するに違いない。
 由於磅蛋糕是基本的點心,如果是期間限定的獨佔販售並不特別介意,但像是班諾的凜香被獨佔了全部的權利會很困擾。肯定會阻礙點心的發展。

「……小金貨5枚で一年間はフリーダが独占販売する権利なら売るよって言ったらどうする?」
「……要說如果用小金幣5枚一年間作為芙莉妲的獨佔販售權利來賣的話如何?」
「もちろん、買いますわ」
「當然,會買喔」

 迷いなど一瞬も見せない即答だった。
 迷惘之類一瞬間也沒顯現的立即回答。

「……もちろん、なんだ? もしかして格安ってこと?」
「……當然,什麼的? 難道是很廉價嗎?」
「まぁ、そうですわね。カトルカールや植物紙のように前例のない物の独占販売権は大金貨を越えることは珍しくないもの」
「對,就是那樣呢。像是磅蛋糕或植物紙沒有前例的東西的獨佔販售權是超越大金幣也不稀奇的東西」
「大金貨……」
「大金幣……」

 どうやら、わたし、ベンノさんに激安で知識と情報をバラまいていたようです。
 看來,我,好像對班諾先生以超廉價吐露了知識與情報。

「値段を吊り上げます?」
「要抬高價格嗎?」
「ううん、いいや。一年間だからね。独占販売権を小金貨5枚で売るよ」
「不了,不用。因為是一年間呢。將獨佔販售權以小金幣五枚賣了唷」

 一度出した値段を吊り上げていく気にはなれず、わたしは首を振った。
 不在意把提出過一次的價格抬高,我搖了搖頭。

「では、契約書を作りましょう」
「那麼,來做契約書吧」
「え? もしかして、契約魔術!?」
「咦? 難道,是契約魔術!?」

 また血を見たり、知らない人の安否を気にしたり、怖い展開になるのだろうか。わたしが思わず身体を震わせると、フリーダが呆れたように溜息を吐いた。
 又會看到血,又是在意不知道的人的安泰,會變成恐怖的展開吧。我不假思索地顫抖著身體後時,芙莉妲吃驚似地嘆了一口氣。

「……あのね、マイン。契約魔術というのはそう簡単に使うものではないの。魔力や権力を持つ相手で、自分が圧倒的に不利な状況にある場合に、高額の魔術具を使ってでも利益を確保するために使うものなのよ。わたくし達の間では、正式な契約書である羊皮紙で普通の契約をすれば十分でしょう?」
「……我說呀,瑪茵。所謂的契約魔術並不是那麼簡單就能使用的東西。以擁有魔力或權力的對象,在有著自己壓倒性不利的狀況的場合下,為了即便使用高額的魔術具也要確保利益才會使用的東西唷。在我們之間,作為正式的契約書用羊皮紙做成普通的契約就足夠了對吧?」
「そうなんだ」
「是那樣呀」

 最初の契約が契約魔術だったので、わたしの感覚が少しおかしくなっているようだ。
 由於最初的契約是契約魔術,我的感覺似乎稍微變得很奇怪。
 しかし、フリーダの言うことが正しいなら、魔力や権力を持つ相手でもないわたし達を相手に、何故ベンノは契約魔術を使ったのだろうか。不思議だ。
 可是,如果芙莉妲說的是正確的,將並不擁有魔力或權力的對象的我們為對象,為何班諾先生要使用契約魔術呢。不可思議呀。

「それにしても、滅多に使うものではないのに、マインはいつどこで契約魔術なんて知ったの?」
「就算是那樣,明明是並不常使用的東西,瑪茵是何時在哪裡知道了契約魔術之類的?」
「……ベンノさんに怒られそうだから、秘密」
「……因為似乎會被班諾先生責罵,是秘密」
「あら、少しは学習してるのね」
「啊啦,稍微學習了呢」

 ふふっと笑いながら、フリーダが棚の上にあるベルに手を伸ばした。チリリンと鳴らすとユッテがほとんど音を立てずに入ってくる。
 一邊呵呵地笑著,芙莉妲一邊對在架子上的鈴伸出了手。叮叮地響了後優蝶幾乎沒發出聲音的進來了。

「契約書の準備をお願い」
「拜託準備契約書」

 ユッテが準備してくれた羊皮紙にフリーダが羽ペンを使って契約内容を書きこんでいく。わたしが買った木製のペンより、豪華で見栄えはするけれど、使いにくそうに見えるのは気のせいだろうか。
 在優蝶給準備的羊皮紙上芙莉妲使用羽毛筆寫進了契約內容。雖然說比我買的木製筆,還豪華且好看,但看起好像很難使用並不是錯覺嗎。
 契約書作りは商業ギルドで見習いをしているフリーダにとっては、普段している作業で、わたしにとってもここしばらくの間に見慣れたものだった。
 製做契約書對在商業公會做著實習的芙莉妲來說,是平常在做的作業,對我來說也是暫時之間見慣了的東西。
 内容に間違いがないか確認した後、フリーダとギルドカードを合わせて精算する。
 對內容確認了毫無疑問嗎之後,與芙莉妲合併公會卡做結算。

「一年というのはどうしてですの?」
「所謂一年是為了什麼?」
「一年あれば、カトルカールの元祖はフリーダの店ってみんながわかるでしょ? それに、他の人にも砂糖が行き渡っているかもしれないから、新規参入の余地は残しておきたいの」
「有一年的話,大家都會知道磅蛋糕的元祖是芙莉妲的店對吧? 而且,因為砂糖也會普及到其他人那裡也說不定,想要預先留下新加入的餘地」
「新規参入?」
「新加入?」
「レシピを公表すれば、色々挑戦する人も増えて、どんどん新しいお菓子ができるかもしれないでしょ? おいしいお菓子って、幸せな気持ちになれるから、色んな人が作って、いっぱい広がるといいと思ってる」
「公布食譜的話,做各式各樣挑戰的人也會增加,搞不好會不斷地做出新的點心對吧? 因為美味的點心,會變成幸福的心情,各式各樣的人去製做,我認為會滿滿地擴展就好了」
「ハァ、自分の利益を度外視するマインは商人に向いていませんわよ」
「唉,將自己的利益置之度外的瑪茵不適合當商人唷」

 公式の契約書となる羊皮紙に、わたしとフリーダがサインする。これで、わたしがフリーダにカトルカールの一年間の独占販売権を与えるという契約が成立した。
 在成為正式的契約書的羊皮紙上,我與芙莉妲簽了名。這樣,我給予芙莉妲名為磅蛋糕一年間的獨佔販售權的契約成立了。

「でも、まぁ、レシピ公表は一年後にわたしがいたら、の話かな? いなかった時はレシピの公表はフリーダに任せるよ」
「但是,算了,食譜公布是一年後我在的話,的話題呢? 不在的時候食譜的公布就拜託芙莉妲了唷」
「わたくしは自分の利益を最優先しますから、一年後、必ず自分で公表してくださいな」
「因為我會將自己的利益最優先,一年後,請必定自己去公布呢」

 ツンと顔を逸らしたフリーダの顔は泣きそうに見えた。
 大大別過臉去的芙莉妲的臉看起來快要哭了。

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 砂糖GETしました。料理の幅が増えそうです。
 獲得了砂糖。料理的幅度增加了。

 次回は洗礼式です。衣装と髪飾りのお披露目です。
 下回是洗禮式。是服裝與髮飾大公開。
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