創作內容

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第一部士兵的女兒 圖麗的髮飾

作者:SPT草包│2016-12-02 17:46:21│巴幣:2│人氣:308
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~
以下犯上的書癡~為了成為圖書管理員而不擇手段~
作者:香月美夜
第一部兵士の娘 トゥーリの髪飾り
第一部士兵的女兒 圖麗的髮飾
原文連結

 門で留守番をした日から数日たったお昼前、母が一生懸命に作っていたトゥーリの晴れ着が完成した。
 從在門看家那天經過數天後的午餐前,母親拚盡全力製做的圖麗的盛裝完成了
 基本はすとんとしたシルエットの生成りのワンピースだ。襟ぐりや袖、裾の縁取りに飾り刺繍がある程度のシンプルなもので、幅広のサッシュが青で、涼しげに彩りを添えている。
 基本是作為俐落剪影的無染色連身裙。在領口與袖子、下擺的鑲邊有著裝飾用刺繡的簡單東西,寬幅的腰帶是藍色,增添著涼爽的色彩。

 可愛いことは可愛いけど、ちょっと物足りない様な気がする。日本の七五三で、子供達が着物だったり、ドレスだったり、見栄えのするカラフルな衣装で撮影するスタジオの広告を見てきた弊害だろうか。
 雖然可愛的東西是可愛,但總覺得有點美中不足。在日本的七五三,是看過小孩子們穿著和服、或者禮服,好看又色彩斑斕的服裝拍攝的攝影棚廣告的弊端嗎。

「どう、マイン? 可愛い?」
「如何,瑪茵? 可愛嗎?」

 どうせなら、もうちょっとひらひらさせるとか、飾りを増やすとかすれば、もっと可愛いのに……。
 終究要做,不如再稍微飄飄然,或增加裝飾的話,就更可愛了的說……。

 心の中ではそう思ったけれど、母が自信たっぷりだし、トゥーリも嬉しそうなので、これで十分な出来栄えなのだろう。
 雖然說在心中是那麼想的,但因為母親充滿自信,圖麗似乎也很高興,這樣就算十分做得不錯了。
 自己満足の写真撮影と違って、神殿に着ていくものだし、あまり派手になるのはダメかもしれない。ここの常識がわからないわたしが服の作りに口を出してはいけないと思う。
 與自我滿足的拍照不同,是要穿到神殿去的東西,搞不好變得太過華麗是不行的。我想不知道這裡的常識的我還是不要對製做衣服亂出主意。

 けれど、口を出しても良い部分を見つけた。
 但是,我發現了出主意也可以的部分。
 それは髪だ。
 那就是頭髮。
 お手入れで艶々になってきたが、トゥーリの髪型は常に後ろで一つの三つ編みにするだけ。洗礼式に髪型を変えるなら、髪飾りくらいは凝った物でもすればどうだろう。
 因保養而變得有光澤,圖麗的髮型只是經常在身後編成一個麻花辮。如果在洗禮式上改變髮型、做個宛如髮飾講究的東西的話如何呢。

 しかし、何をするにも、ここの基準を知らなければ行動できない。幼いマインの記憶に洗礼式に関する記憶など全くないのだから。
 但是,該做什麼,若不知道這裡的基準就無法行動了。因為年幼瑪茵的記憶裡完全沒有有關洗禮式的記憶之類的。

「トゥーリ、可愛いよ!……でも、髪型はどうするの? 洗礼式の時はこうするって決まりがあるの?」
「圖麗、很可愛唷!……但是,髮型該怎麼辦呢? 洗禮式時就這麼決定了嗎?」
「このままのつもりだけど?」
「雖然是有按原樣的打算?」

 ……トゥーリ、それはダメでしょ。せっかくなんだから、もうちょっとおしゃれしようよ。
 ……圖麗,那樣是不行的吧。因為實屬難得,再稍微打扮一下吧。

 思わずカクンと項垂れてしまったが、気を取り直して質問を続けることにした。髪型は変わらなくても、飾りには何か思い入れがあるかもしれないからだ。
 不由自主猛然地垂下了頭,我決定重整事態繼續提問。因為就算無法改變髮型,搞不好可以對裝飾有些什麼深入思考。

「えーと、じゃあ、髪飾りは? 何か付けるの?」
「呃,那麼,髮飾呢? 要戴上什麼呢?」
「そうだね。夏だし、どこかで花でも摘んでこようか?」
「也是呢。那是夏天,就摘哪裡的花來用吧?」
「それじゃ、ダメだよ! せっかくの可愛い服なのにっ!」
「光那樣,是不行的唷! 明明是很難得的可愛衣服!」

 絶対にどこかその辺りで適当に摘んでくるつもりでしょ、その口調!
 絕對是打算在某處那附近敷衍地摘來用的吧,那個語調!
 トータルコーディネートって言葉を知らないの!?……あぁ、知らないよね、当然。
 不知道所謂的整體搭配嗎!?……啊,是不知道呢,當然的。

 ここでは子供の髪型で髪をアップにするのはNGらしいが、編み込みくらいはしてもいいだろうし、髪飾りだって、ないなら作ればいい。
 在這裡於小孩子的髮型上將頭髮提高似乎是禁止的,編髮之類的作就好了,就連髮飾,如果沒有去作就好了。
 レース編みならわたしは作れる。まだ夏までには時間があるのだから。
 如果是蕾絲編織我會製做。因為到夏天為止還有時間。

「わたしがやる! やらせて、トゥーリ。絶対に可愛くしてあげるから」
「我要做! 做吧,圖麗。因為絕對會讓妳更可愛的」

 そう宣言した直後、レース編みのためのかぎ針がないことに気付いた。毛糸用のかぎ針は母が持っているが、あの太さでレースは編めない。
 剛那樣宣言之後,就發現到了沒有為了編織蕾絲用的鉤針。毛線用的鉤針是母親所擁有著,但那個太粗了編不了蕾絲。

 ど、どうしよう!?
 該、該怎麼辦!?

 家族の中で、道具っぽい物を作れそうなのは父だけだ。トゥーリに作ってもらった簪を使いやすいように滑らかに削って、油を塗って整えてくれたのも、実は父だ。
 在家族裡面,能夠製做工具類的東西的只有父親了。為了讓圖麗製做的髮簪能容易使用而削製光滑、塗油整理的,其實是爸爸。

 わたしはちらりと横目で父の機嫌を伺った。
 我側目一掃地打聽父親的心情。
 門でオットーに文字を教えてもらうようになって数日がたったというのに、父の機嫌はまだ悪い。あまりおねだりには向かなそうな機嫌に見えるが、機嫌を損ねたわたしが構わないから機嫌が直せないだけだと思う。
 明明能在門跟歐拓請教文字都過了數天了說,父親的心情卻還不好。看起來不太像是能央求的心情,我想是因為得罪了爸爸的我沒去理會所以才會無法恢復情緒。

 正直、おとなげない父だが、ここはわたしが大人になってあげることにしよう。構って欲しそうな空気を読んで、父にちょっと甘えておねだりしてみれば、父の機嫌も直るし、わたしはかぎ針が手に入るし、一石二鳥だ。
 說實話,是很孩子氣的父親呢,這裡我就做一回大人吧。看懂想要理會般的氛圍,稍微對父親撒嬌央求看看的話,父親的心情也會恢復吧,而我獲得了鉤針,一石二鳥呢。

「父さん、父さん」
「爸爸、爸爸」
「なんだ?」
「怎了?」
「父さんは結構器用だよね? トゥーリの人形を作ったのって、父さんなんだよね?」
「爸爸相當靈巧對吧? 製做了圖麗的人偶,是爸爸的對吧?」
「ま、まぁ、そうだ。コホン! あ~、なんだ、その、マインも人形が欲しいのか?」
「是、是呢,對了。咳! 啊~怎了,那個,瑪茵也想要人偶嗎?」

 怒っているんだと主張するような厳めしい顔で、そのくせ、何やら期待しているような目をして、父がチラチラとこちらを見ながら、聞いてくる。
 用在生氣時像是有主張般嚴肅的臉,那種習慣,總覺得有著像是期待些什麼的眼神,父親一邊時不時地看著這邊,一邊聆聽著。

「ううん。かぎ針が欲しいの」
「不是。我想要鉤針」
「かぎ針? 母さんが編み物に使うやつか? 借りればいいだろう?」
「鉤針? 媽媽用在編織上的那玩意嗎? 借來用的話就好了吧?」

 わたしが答えた瞬間、父の顔がものすごくがっかりした顔になった。もうちょっとでいいから、取り繕って欲しいくらい情けない感情がにじみ出ている。
 我回答的瞬間,父親的臉變成了非常失望的表情。因為還差一點就可以了,我宛如想要彌補般滲透出了可憐兮兮的感情。

 もうあっちへ行け、と言わんばかりに手を振って、わたしを追い払おうとするなんて、親の態度として良くないでしょ。せめて、最後まで話は聞こうよ。
 像是在說、夠了到那裡去揮著手,驅趕著我什麼的,作為父母的態度不是很好對吧。至少,話要聽到最後吧。

「あのかぎ針の形のもっともっと細いのが欲しいの。毛糸じゃなくて、糸を編むために使うから。……父さん、細いかぎ針って、すごく難しいと思うけど、作れる?」
「我想要那個鉤針的形狀更加更加細的。因為不是毛線、而是為了編織絲線用的。……爸爸,細小的鉤針,雖然我認為非常困難,做得到嗎?」

 やや潤ませた上目遣いで、じっと見つめながら、胸の前で手を組んで、出来るだけ可愛いおねだりポーズをとってみる。
 用稍微濕潤向上看的眼神,一邊緊盯凝視著,一邊將手交叉在胸前,試著拿出盡可能可愛的央求姿勢。
 日本の二次元の可愛さがこの世界で通用するかどうかはわからないが、親馬鹿に対する娘の可愛さは全世界共通……だったら、いいな。
 日本二次元的可愛在這個世界通用嗎如何的我不知道,但對於笨蛋父母女兒的可愛是全世界共通的……這樣的話,可以嗎。
 わたしの可愛さが通じたのか、父が無精ひげを撫でながら、うーんと考え込んだ。
 我的可愛相通了嗎,父親一邊摸著鬍渣,一邊嗯地沉思著。

「……木でいいんだろう?」
「……用木頭就可以了嗎?」
「うん! できる?」
「對! 做得到嗎?」
「やってみよう」
「做看看吧」

 父のプライドを少々刺激したようで、早速父は物置からごそごそと数種類のナイフと木を持ってきて、削り始めた。
 像是稍微刺激到了父親的自尊,爸爸趕快從儲藏室東翻西找地拿來了數種小刀與木頭,開始削製。
 ナイフを使い慣れている父の仕事は速い。細めの枝をシュシュッと削っていけば、あっという間に皮がなくなり、中心部の固い素材だけになった。
 習慣使用小刀的父親工作很迅速。將細小的樹枝咻咻地削起來的話,轉眼之間皮就不見了,變成了只有中心部位的堅硬素材。
 その後は手本とする毛糸用のかぎ針を見ながら、手元の木を丁寧に削っていく。
 那之後一邊看著當作範本的毛線用鉤針,一邊仔細地削起了手上的木頭。

「毛糸でこの太さってことは、糸ならこれくらいか?」
「毛線用的這個太粗了,絲線的話這種大小呢?」
「う~ん、もうちょっと細くできる?」
「嗯~,能再細一點嗎?」
「これくらいか?」
「這個樣子嗎?」
「それくらい!」
「就那個樣子!」

 太さが決定したら、別のナイフに変えて、かぎ針の針先を作り、整えていく。職人技とまでは言わないが、わたしにはできないことなので、素直に父を称賛する。
 粗細決定的話,就改用其他小刀,製做鉤針的針頭,修整起來。說不上達到工匠技能,但因為是我做不到的事情,就坦率地稱讚父親。

「素敵、父さん! もう形ができちゃった。あとね、これに糸が引っかからないくらいすべすべになるように磨いて、油で滑らかにしてくれると、とっても助かるんだけど」
「好棒,爸爸! 已經有形狀出來了。之後呢,為了不讓線在這裡勾住要磨得光溜溜,再用油潤滑,就真的幫大忙了」
「任せておけ」
「就交給我吧」

 娘に褒められて父としての自信が回復したのか、父は上機嫌で細いかぎ針をせこせこと磨き始めた。
 作為被女兒誇獎的父親的自信恢復了嗎,父親心情很好的開始小心翼翼地磨起了細小的鉤針。

 ふっ、計算通り。
 噗,跟計算一樣。

 黒笑いを浮かべるわたしと違って、トゥーリは天使のように純真な笑顔を浮かべる。
 與浮現了賊笑的我不一樣,圖麗浮現了像是天使般純真的笑容。

「マイン、なんだか父さんの機嫌よくなったね。よかったぁ」
「瑪茵,總覺得爸爸的心情變好了呢。太好了」
「うんうん、よかったね」
「對啊,太好了呢」

 不機嫌だったのは、わたしが原因だったなんて言わないよ。
 會心情不好,原因什麼的我是不會說的唷。
 機嫌をとるのが面倒で、あえて空気読まずに放置したなんて言わないよ。
 因為討好很麻煩,不刻意看氣氛就置之不理什麼的才不會說的唷。
 わたし、幼女だから、どうして機嫌悪いのかなんてわかんないってことでよろしく。
 因為我、是小女孩,對於怎麼會心情不好什麼的我不知道是很恰當的。

 父が頑張って磨いてくれているので、完成したかぎ針をすぐに使えるように、わたしは糸を漁り始めた。
 由於父親很努力在打磨著,為了能馬上使用完成的鉤針,我開始物色絲線。
 トゥーリの晴れ着を作るためにたっぷりと準備された糸がまだ少し余っている。布を織るために使った白というか、生成りの糸は他にも使い道があるだろう。
 為了製做圖麗的盛裝被充分準備的絲線還稍微有剩。是說為了織布而使用白色嗎,無染色的絲線還有其他的用法吧。
 しかし、縁飾りやサッシュに使った色とりどりの糸は、布を織るには中途半端な長さしか残っていない。それほど使い道はないと思う。
 可是,使用在邊飾或腰帶上五顏六色的絲線,為了織布而只剩下了半長不短的長度。我想那種程度沒有用法了吧。

「母さん、この色が付いてる糸ちょうだい」
「媽媽,請給我這個有顏色的線」
「何するの?」
「要做什麼呢?」

 わたしが糸を欲しがるとは思わなかったらしい母が目を丸くした後、怪訝そうに眉を寄せる。
 似乎沒想到我會想要絲線的母親嚇到目瞪口呆之後,詫異似地皺起了眉頭。

「『レース編み』しようと思って」
「我想著要做『蕾絲編織』」
「え?」
「哎?」
「トゥーリの髪飾り作るの」
「我要做圖麗的髮飾」

 麗乃の母は、広告を丸めて籠を作るだけではなく、次々と色んな手芸にはまっていった。大きなお世話だったが、麗乃に何とか本以外の趣味を持たせようとした母は、どのブームにも麗乃を巻き込んだ。つまり、「おかんアート」歴は麗乃も長い。
 麗乃的母親,不是只製做將廣告搓圓的籃子,而是不斷地沉迷在各種手工藝中。是備受關照了嗎,打算好歹要讓麗乃持有書本以外的愛好的媽媽,對哪種熱潮都把麗乃給捲進去。也就是說,「老媽藝術」的經歷麗乃也很長。

 実は数多く経験した「おかんアート」の中で、完成作品が比較的役に立ったのが、レース編みだった。道具さえあれば、レース編みで髪飾りを作ることには自信がある。麗乃の人生は一度終わったけれど、一体何が役に立つかわからないものだ。
 其實在經歷眾多的「老媽藝術」之中,完成作品比較派得上用場的,是蕾絲編織。連工具都有的話,有自信製做蕾絲編織的髮飾。雖然說麗乃的人生結束過一次,但不知道到底什麼是派得上用場的東西。

 けれど、麗乃として人生を知るはずがない母は、わたしに糸を渡すことに難色を示した。きっと、わたしに渡したら無駄になることが多いので、もったいないと思っているに違いない。
 不過,應該不知道作為麗乃的人生的母親,對交給我絲線面有難色。一定是,交給我的話多數就白費掉了,肯定正想著很浪費。

「髪飾りって、洗礼式の時だけしか使わないんでしょ? ちょっとした飾りにそれだけの糸を使うのがもったいないわ。髪飾りなんて、花で十分じゃない。これ以上可愛くしなくても、トゥーリは可愛いもの」
「髮飾,只有在洗禮式的時候使用的對吧? 使用那些絲線稍微裝飾很浪費吧。髮飾什麼的,用花不就足夠了。就算無法更加可愛,圖麗就是可愛的東西」
「これ以上可愛くなれるなら、してもいいじゃない。可愛いは正義だよ!」
「如果能變得更加可愛,不是做也可以嗎。可愛就是正義唷!」

 わたしがグッと拳を握って主張すると、母は何故か溜息を吐いて、話は終わりだと言わんばかりに背を向けた。
 我使勁握拳主張著,母親不知為什麼嘆了一口氣,像是在說談話結束而轉過身去。
 慌てて、母のスカートを掴んでおねだりする。
 情急之下,抓住母親的裙子央求著。

「ねぇ、母さん。ここの余ってる糸でいいから、ちょうだい。せっかく父さんが作ってくれるんだから、かぎ針使いたいの。もうちょっとでできるんだよ。お願い」
「我說,媽媽。這裡剩餘的絲線就可以了,給我吧。因為好不容易爸爸幫我做了,我想用鉤針。在等一下下就完成了唷。拜託了」

 かぎ針が無駄になるよ、と父に助けを求めて視線を向けてみる。
 試著向父親求助鉤針變得白費了,地轉動視線。
 父はわたしの視線の意味を読みとったのか、自分の手にあるかぎ針が無駄になるのが嫌だったのか、わたしから父への尊敬が消えることを恐れたのか、わたしに加勢してくれた。
 父親領會了我的視線的意義了嗎,還是討厭在自己手上的鉤針白費了呢,又或者是害怕來自我對父親的尊敬消失了呢,替我援助了。

「珍しくマインが裁縫に興味しているんだから、余った糸くらいやったらどうだ?」
「正因為很難得瑪茵對縫紉很有興趣,給些剩餘的絲線的話如何?」
「……そうね」
「……是呢」

 しばらく考え込んでいた母が渋々といった表情で、使い道に困るくらいの長さの糸をいくつかくれた。
 暫時在沉思的母親用所謂不情願的表情,給了幾個在用法上很為難的長度的絲線。

「やったー! 母さん、ありがとう。父さん、大好き」
「太好了! 媽媽,謝謝妳。爸爸,最喜歡你了」

 わたしが万歳して、大袈裟に喜んで見せると、父がにやけだした。かぎ針を磨く手にすごく力が入っていて、鼻息が荒くて、ニヤニヤしている。ぶっちゃけ、ちょっと気持ち悪い。
 我歡呼了起來,誇張地展現喜悅時,父親自個笑了起來。磨著鉤針的手特別用力了起來,呼吸急促,獨自傻笑著。坦白說,有點噁心。

 機嫌もとれたみたいだし、ちょっと不気味だし、以後放置でいいよね?
 好像哄騙成功了,有點毛骨悚然,之後放著不管也可以了吧?

 父の暑苦しいほどの愛情がこもったかぎ針をもらったので、早速レース編みを始める。小さい花をたくさん作るのだ。
 由於得到了洋溢著父親悶熱般愛情的鉤針,所以趕快開始了編織。要製做很多的小花。

 ちまちまちまちまちま……。
 持續緩慢地不斷編織著……。

 レース編みはこの前失敗したパピルスもどきと同じように、ちまちま編むもので、根気が必要だ。そうは言っても、わたしが作り始めた花は小さい花なので、15分もあれば、1つは出来上がる。
 蕾絲編織就跟以前失敗的仿造紙莎草一樣,是要持續不斷編織的東西,需要有耐性。就算那麼說,由於我開始做的花是小花,有15分鐘的話,就能做出來一個。
 わたしはテーブルの上に、コロンと黄色の花を転がして、次の花へとりかかった。トゥーリが出来上がったレースの花を感心したように、しげしげと見つめた後、首を傾げた。
 我在桌子上,滾動著翻滾的黃色花,著手向下朵花。圖麗像是佩服著做出來的蕾絲花般,仔細端詳後,疑惑不解。

「ちょっと小さすぎない?」
「不會有點太小了嗎?」
「小さい花を集めた飾りにするんだよ」
「是要收集小花做為裝飾唷」
「ふーん」
「喔」

 大きい花にしちゃうとね、完成前に飽きて面倒になった時に困るでしょ?
 做大花時呢,在完成之前就厭倦而變得麻煩時很傷腦筋對吧?

 本音は心の中にしまっておく。
 真心話就先放在心裡。
 トゥーリの髪飾りは大口を叩いた以上、完成させなければならないので、途中で飽きても大丈夫なように、小花をまとめるようなデザインに決めた。
 既然對圖麗的髮飾講了大話,就必須要完成了,為了在中途厭倦也不要緊,決定了彙整小花般的設計。
 実際、麗乃の時に大きいデザインは嫌になって途中で止めてしまったのだ。危険は排除しておくに限る。
 事實上,在麗乃時代有過大型設計在途中變得討厭而中止了。預先排除危險而限定。

「レースのリボンも考えたんだけど、ある程度の長さがないと結べないし、途中でその色の糸がなくなるかもしれないでしょ? だから、小花をいくつも作ってるの」
「雖然也考慮過蕾絲的緞帶,但是沒有某種程度的長度就綁不起來,在途中那個顏色的絲線很有可能就沒了對吧? 所以,要做成幾朵小花」
「マイン、ちゃんと考えてるんだね」
「瑪茵,好好地考慮過了呢」
「そうだよ! トゥーリのためだもん」
「沒錯唷! 是為了圖麗咩」

 最後にできた分をまとめる感じの髪飾りにするから、飽きた時点で完成するとか、糸がなくなれば、別の色の糸で新しい花を作ればいいから、糸が無駄にはならないとか、いろいろ考えたんだよね。
 因為是要做在最後彙整了完成的份的感覺的髮飾,該說是要在厭倦的時間點完成嗎,因為沒有絲線的話,用別的顏色的絲線製做新的花就行了,還是絲線不會白費呢,考慮過各式各樣的呢。

 ちまちまちまちまちま……。
 持續緩慢地不斷編織著……。

 いくつか小花が完成したところで視線を感じて、わたしはふと顔を上げた。母が興味を引かれたように、わたしの手元を覗きこんでいた。
 感受到了因完成了幾朵小花的視線,我忽然抬頭。母親像是被引起了興趣,望向了我的手邊。
 母はこの辺りで美人と言われる裁縫上手だ。こういう手仕事は気になるのだろう。完成した小花を手の平で少し転がして見つめている。
 母親在這附近被說是美女而很擅長縫紉呀。像這種手工很在意的吧。將完成的小花在手掌上稍微滾動凝視著。

「……それほど難しくはないのね」
「……那種程度不會很難呢」
「母さんは毛糸を編み慣れてるから、いくつかのパターンだけ覚えちゃえば、母さんの方が上手に作れると思うよ? やってみる?」
「因為媽媽習慣編織毛線,只要記住一些樣式的話,我想媽媽就會做得很拿手了唷? 要做看看嗎?」

 わたしがかぎ針を渡すと、母は小花を見ながらすいすいと作り始めた。時折、指先で小花を転がして網目を確認するだけで、あっという間に1つ出来上がる。
 我交付鉤針後,母親一邊看著小花一邊輕快地開始製做。不時,用指頭轉動小花只為了確認網眼,轉眼間就做好一個了。

 わぉ、さすが裁縫美人。編み目を見れば、編み方はわかりますか。つきっきりで教えてもらって、嫌々ながら覚えたわたしとは大違い。
 哇,不虧是裁縫美女。看過針腳,就知道了編織方法了嗎。與寸步不離地教導,一邊厭惡一邊記住的我大不同。

「すごいね、母さん」
「好厲害了,媽媽」
「こんな編み方を知っていたマインの方がすごいわ。マフラーやセーターを編むことはあるけど、こんな飾りを作ろうと思ったことはなかったもの」
「知道這種編織方法的瑪茵才厲害喔。雖然有編過圍巾或毛衣,卻從來沒有想過要製做這種裝飾」

 生活するだけで手一杯のこの世界では、装飾品に気を向ける余裕なんてないし、誰も作っていないので、そもそもレース編み自体を見たことがない可能性もある。
 在光是生活就忙得不可開交的這個世界,沒什麼轉注到裝飾品上的餘裕,由於誰都沒做過,原本就有沒見過蕾絲編織本身的可能性。
 わたしは服に飾りが付いていて当たり前の世界で育ったから、知っているが、こんな小さな飾りさえ、この世界では異質らしい。
 因為我是在裝飾衣服是理所當然的世界裡長大的,所以知道,就連這樣的小裝飾,在這個世界似乎是不同性質的。

「それで、マイン。たくさん作ったこの花をどうやって頭に飾るの?」
「接下來,瑪茵。該怎樣將做了很多的這些花裝飾到頭上?」

 テーブルの上に転がる花から完成品を思い浮かべることができないらしい母に、わたしはできるだけわかりやすく説明する。
 對似乎無法從在桌子上滾動的花去想像出完成品的母親,我盡可能簡單易懂地說明。

「えーとね、こういう端切れで小さい円を作って、1つ1つ縫いつけるの。そうしたら、花束みたいになるでしょ? それを『ピン』にぐるぐる……って、『ピン』!?」
「那個呢,用這樣的碎布作個小圓,一個一個縫上去。那樣的話,就變得很像花束了不是嗎? 在『簪子』上將那個轉啊轉……的,『簪子』!?」

 自分で説明しながら、一気に血の気が引いた。思わず悲鳴のような声を上げてしまったわたしに驚いて、母がビクッとなる。
 自己一邊說明,一邊一口氣臉色刷白。對不禁發出悲鳴般聲音的我吃驚,母親嚇了一跳。

「マイン、急になんなの!?」
「瑪茵,突然怎麼了!?」
「……どうしよう、『ピン』ないよね?」
「……怎麼辦,沒有『簪子』呢?」

 大変だ! この世界にはピンがない。少なくとも、この家の中では見たことがない。それに、髪ゴムもない。紐で縛るような世界で、せっかく作った飾りをどうすればいい!?
 不好了! 這個世界是沒有簪子的。起碼,在這個家裡從沒見過。而且,髮圈也沒有。在像是用繩子綁住的世界,難得製做的飾品該怎麼辦才好!?

「と、ととと、父さーん!」
「爸、爸爸爸、爸爸!」

 父を放置するのは即座に止めて、おねだり体勢に入った。口だけで説明するのは難しいので、石板を持ちだして、絵を描きながらねだってみる。
 立即中止將父親置之不理,進入央求體態。由於只用嘴很難說明,我拿出石板,一邊畫圖一邊強求看看。

「わたしの簪みたいに片方は先を尖らせて、反対側はこんな風にちょっと平らに削って、小さい穴開けた短めの簪が欲しいんだけど、作れる!?」
「我想要跟我的髮簪一樣一端將前頭削尖,相反方像這樣稍微削平一點,開個小洞的短髮簪,不過能做嗎!?」
「まぁ、これなら、かぎ針より簡単だ」
「是呢,如果是這個,比鉤針還簡單呢」
「ホントに!? 父さん、すごい! 今までで一番尊敬するよ!」
「真的嗎!? 爸爸,好厲害! 至今為止最尊敬了唷!」

 感激したわたしが大サービスでハグすると、父が「フッフッフッ、勝ったな」と小さく呟いた。どうやらまだオットーに張り合っていたらしい。
 感激的我用大大的服務態度擁抱時,父親小小嘀咕著「呵呵呵,贏了呢」。看來似乎還在跟歐拓競爭著。

 機嫌良く父が短めの簪を作ってくれたので、ボタンを縫いつけるような感じで、簪の穴にレースのミニブーケを縫い付けた。
 因為心情很好的父親製做了短的髮簪,用像是縫鈕扣的感覺,將蕾絲的小型花束縫進了簪的洞中。

「うん、完成! トゥーリ、晴れ着来て、ここに座って」
「嗯,完成! 圖麗,盛裝過來,坐在這裡」

 夏物の晴れ着を着たトゥーリが竈に一番近い椅子に座る。わたしは自分の椅子をトゥーリの後ろにズリズリと移動させて、靴を脱ぐと椅子の上に立った。
 穿著夏裝盛裝的圖麗在最靠近爐灶的椅子上坐下。我將自己的椅子硬拖著移動,脫掉鞋子後站上椅子。
 トゥーリの三つ編みを解いて、櫛を入れ、両脇から編み込みをしていく。トゥーリの髪はふわふわのテンパなので、編み込みのハーフアップにすると、目を見張るくらい華やかな雰囲気になる。
 解開圖麗的麻花辮,放入梳子,從兩邊逐漸編織起來。由於圖麗的頭髮蓬鬆雜亂,編織成公主頭後,變成了令人瞠目般的華麗氛圍。

 編み込みの先をぎゅっと縛った粗末な紐の上に、落ちないように簪をそっと刺した。トゥーリの青緑の髪に黄色や青、白の小花がよく映える。
 在緊緊地綁著編髮前端的粗糙的繩子上,為了不掉落而輕輕地將髮簪刺進去。在圖麗的藍綠色頭髮上黃色與藍色、白色的小花很好地映照著。

「うん、可愛い!」
「嗯,很可愛!」
「まぁ、ホント! すごく可愛いわよ、トゥーリ」
「哇,真的! 非常可愛喔,圖麗」
「マインは手先が器用だな。体力はないが、手先を使う仕事なら見つかるかもしれないぞ?」
「瑪茵手指很靈巧呢。沒有體力,如果是使用手指的工作說不定能發現呢?」

 家族の言葉にはにかんで笑っていたトゥーリが、あっちを向いたりこっちを向いたり、髪や飾りを触ったりしていたが、しばらくして、むぅっと頬を膨らませた。
 對家人的話羞澀地笑著的圖麗,一會兒轉向那邊一會兒轉向這邊,又摸起了頭髮與裝飾,一段時間後,不爽地鼓起臉頰。

「マイン、後ろに飾られたら、わたしからは全然見えないよ?」
「瑪茵,後面被裝飾的話,從我這就全完看不到了唷?」
「それはそうだけど……仕方ないじゃん」
「那個是那樣沒錯……不過沒辦法呀」
「でも、どんな風になってるか知りたいんだもん」
「但是,變成了什麼感覺呢我很想知道呢」

 この家には鏡がないので、どんな感じになっているか、見せてあげることもできない。
 由於在這個家裡沒有鏡子,到底變成了什麼感覺呢,也無法展示給圖麗看了。
 どうしようかな、としばらく考えていたが、トゥーリがものすごく不満そうな顔をするので、ミニブーケの簪を抜いて、自分の簪の傍に挿してみた。
 該怎麼做好呢,暫且思考著,因為圖麗做出非常不滿般的表情,所以拔起迷你花束的髮簪,試著插到自己的髮簪旁邊。

「こんな感じになるよ。どう?」
「變成這樣的感覺了唷。如何?」

 わたしの髪に挿された飾りを見て、トゥーリが歓声を上げる。
 看到被插到我的頭髮上的裝飾,圖麗發出了歡呼聲。

「うわぁ、可愛い! すごい! ねぇ、母さん。わたしの髪もこんな感じ?」
「嗚哇,好可愛! 好厲害! 我說,媽媽,我的頭髮也是這樣的感覺嗎?」
「マインが綺麗に髪を結ってくれたし、この糸の色はトゥーリに合わせてあるから、トゥーリの方が似合うわよ」
「因為瑪茵綁出了漂亮的頭髮,這個絲線的顏色又很配合圖麗,很適合圖麗喔」
「そっかぁ。そうなんだ。うふふっ……」
「是喔。是那樣喔。呵呵……」

 頬を真っ赤に染めて、ものすごく嬉しそうに笑み崩れたトゥーリが、わたしの髪から飾りをそっと外す。
 雙頰染上鮮紅,非常高興似地笑翻了的圖麗,輕輕地從我頭髮上取下裝飾。

「ありがと、みんな。すごく嬉しい」
「謝謝,大家。我非常高興」

 春を目前にトゥーリの晴れ着のトータルコーディネートが完成した。これで夏の洗礼式ではトゥーリが一番注目されるのは間違いないだろう。
 在春季臨到眼前時完成了圖麗盛裝的整體搭配。這樣在夏季的洗禮式圖麗無疑是最受矚目的了。

 そして、母がレース編みにはまったようで、父が作ってくれたかぎ針が気付いた時には母の裁縫箱に入っていた。
 然後,母親好像沉迷於蕾絲編織,父親所製做的鉤針在注意到時已經放進了母親的針線盒了。

 ……まぁ、いいけど。
 ……算了,也好。

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 無事に髪飾りが完成しました。
 平安無事地完成了髮飾。
 この世界では、本来、レース編みや細かい刺繍って貴族のお嬢様や奥様の手仕事です。質の良い糸をたっぷり使う贅沢品です。
 在這個世界,本來,蕾絲編織或纖細刺繡都是貴族的大小姐或太太的手工。是能夠充分使用品質優量的絲線的奢侈品。
 貧乏な庶民の目に触れることはまずないです。レースより先に作らなくてはならないものがたくさんあるし、余った糸だって継ぎ接ぎや服の補修のために大事に取っておくのが普通です。
 是不會先觸及到貧窮庶民的眼中。無法先從蕾絲做起就不行的東西有非常多,普通就連多餘的絲線也要為了縫補或衣服的修補而慎重地預留下來。
 余ってるならいいじゃん、と考えるマインは、全く庶民に埋没できてませんね。
 考慮著如果有剩餘就好了,的瑪茵,完全無法被埋沒進庶民裡。

 次回はやっと春です。森に連れて行って欲しいマインが努力する話です。
 下回終於是春天了。想要被帶去森林的瑪茵努力著的故事。
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