電擊徒然草 第71回 上遠野浩平さん

電撃の作家さんたちが、日頃の想いのままを書きつづるこのコーナー。今回は『ブギーポップは笑わない』他、数々の人気タイトルの作者、上遠野浩平さんの登場だ！

第七十一回　上遠野浩平さん

私はつまらんことはグジグジといつまでも憶えているのだが、忘れるときは完璧に忘れてしまうので、人生がワリと飛び飛びな感じである。寝起きで「何々しなきゃ」と思ったことが、実は何年も前に終わってたことで混乱したりして、いや記憶って困りもんですね。

上遠野浩平さんの最新刊『ブギーポップ‧クエスチョン 沈黙ピラミッド』は好評発売中！

【電撃文庫作品】
ブギーポップは笑わない
ブギーポップ‧リターンズ VSイマジネーターpart1
ブギーポップ‧リターンズ VSイマジネーターpart2
ブギーポップ‧イン‧ザ‧ミラー「パンドラ」
ブギーポップ‧オーバードライブ 歪曲王
夜明けのブギーポップ
ブギーポップ‧ミッシング ペパーミントの魔術師
ブギーポップ‧カウントダウン エンブリオ浸蝕
ブギーポップ‧ウィキッド エンブリオ炎生
ブギーポップ‧パラドックス ハートレス・レッド
ブギーポップ‧アンバランス ホーリィ＆ゴースト
ブギーポップ‧スタッカート ジンクス‧ショップへようこそ
ブギーポップ‧バウンディング　ロスト‧メビウス
ブギーポップ‧イントレランス オルフェの方舟
ブギーポップ‧クエスチョン 沈黙ピラミッド
ビートのディシプリンSIDE1
ビートのディシプリンSIDE2
ビートのディシプリンSIDE3
ビートのディシプリンSIDE4
冥王と獣のダンス
機械仕掛けの蛇奇使い

『嘘と本当と。』

まだ私がいたいけな少年だった頃『大人はウソツキだ』というフレーズが（ごく一部で）流行ったことがあるが、そのときに「ウソツキではなくて、まちがいをするだけなんだ」という説明があった。そういう言い訳を笑っていられた私も今や「ウソツキ！」と言われてしまうような歳になったのであるが、しかし自分がやってきたことを「まちがいでした」と言ってすませられるのかどうか、なんか自信がない。嘘は幾つもついてきたような気がするが、その中にはなんか、うまく行ってしまって世間的には間違いにならなかったようなこともあって――「嘘なのに……」という後ろめたさと、でも嘘をつかないと先に進めなかったなあ、という実感もあって、やっぱり大人はウソツキなのかも知れないとか思ったりするが、同時に「じゃあ他の人たちもみんなウソツキなのか」と考えるとざわざわ嫌な感じがする。昔某社の編集さんから「最初から嘘のつもりではなく、結果として嘘になりました」みたいなことを言われて原稿が没になったりしてたことを想い出したりして。で、そんな風に言ってた人と音信不通どころかその出版社そのものがなくなったりしてしまうと、もう嘘っつーかなんつーか、ぜんぶデタラメじゃん、みたいな気分であったなあ、当時は。今も似たよーなもんだけど。といって自分のことも適当に、後で嘘になってもいいやとか割り切るのも、それこそ間違い以外の何物でもないので、とりあえずはやりますと言ったことはやろうと思っている。……この変な文章が一体なんの話かというと、書くと言った小説を片づけない内に別の作品ばかり書いてることの言い訳なんですが、これも嘘をついてる訳ではないのです。いや本当に。
（でもテキトーにやっててもホントになることもあるぜ）
（そうそう。それが最高なんだが）

BGM "DANCE OF THE DREAM MAN" from TWIN PEAKS

次回の「電撃徒然草」掲載は3月10日となります。お楽しみにっ☆