電擊徒然草 第70回 久住四季さん

電撃の作家さんたちが、日頃の想いのままを書きつづるこのコーナー。今回は『ミステリクロノ』シリーズの作者、久住四季さんの登場だ！

第七十回　久住四季さん

一九八二年四月一日、島根県生まれ。読者の方からいただいたお手紙は、読んだあといつもそばに置いて励ましと戒めにさせてもらってます。状況的にお返事するのが厳しくて申し訳ないのですが……どうかひらにご容赦をば。

久住四季さんの最新刊『ミステリクロノII』は今月発売！

【電撃文庫作品】
トリックスターズ
トリックスターズＬ
トリックスターズＤ
トリックスターズＭ
トリックスターズＣ PART1
トリックスターズＣ PART2
ミステリクロノ
ミステリクロノII

『自分の世界とそれ以外』

今を遡ることウン年前、高校で合唱部に在籍していたとき、一つ下の後輩女子とこんな話をしたことがありました。
「そういえば」「はい？」「絶対音感あるんだっけ」「ありますよ」「ほうほう」「先輩の声は大体“ミ”で、笑うと“ソ”になりますね」「うわすご」「そうですかあ？」「そうでしょ。だって普通はそんなのわかんないじゃん」「まあそうですけどねー。あーでもわたし、昔はこれが普通だと思ってたんですよ」「うん？」「だから皆も普通にわかってるんだろうなーと思ってたんです」「話し声の音階が？」「はい」「え～？」「なにがえ～ですか」「他の人はわからないんだって気づいたの、いつ？」「小四ごろですかね」「え～？」「だからなにがえ～ですか」
え～ですよ。
だって人の話し声を音階で判別できる聴音能力だよ？　そんなの皆が皆持ってるわけないじゃん。まったくカマトトぶっちゃってさ、ははん。――と当時の久住四季はそんなふうに思ってました。小憎たらしいやつだったのです。それゆえの「え～？」でした。
けれどもこのときの「え～？」、実は「自分の見えている世界と他人の見えている世界は全然違う」という当たり前のことに気づいてなかったからゆえなのだとウン年を経た今では思うわけです。人間はそれぞれ見えている世界が全然違っていて、それは別に絶対音感のあるなしなんて大袈裟な能力差でなくとも、立場や考え方、もっとおおざっぱにその日の機嫌や気分とかでもそうでしょう。「他人の気持ち、他人の立場になって物を考えられる、心優しい人間におなりなさい」とかエラソーなお題目をたれたいわけではないですが、しかし我が身をふりかえってみるに、もっと相手の気持ちや立場でちゃんと考えられればいろんな人とうまくやれるのに、具体的には打ち合わせで困らせたり校正整理で手間取らせたりせずにすむのに、と思うと、これはやっぱり誰もがちゃんと考えるべきお題目だよなあ、とか。だから締切間近で切羽詰まっている久住四季のそういう世界を、どこかの誰かにも慮ってほしいなあ、とか。え～？
なにがえ～ですか。

さ～て次回は2008年1月に『ブギーポップ‧クエスチョン 沈黙ピラミッド』を刊行する上遠野浩平さんの登場だ！　お楽しみに～♪