Vol.1
「どうしよう……。またやっちゃった」
私はしょんぼりしていた。
目の前には、いくつかのプランターや植木鉢。葉を付けているのは数種類のハーブ。私が会社に許可を得て、事務所の裏の小さなスペースで育てている。
そのハーブたちにじょうろから水をかけながら、十数分前のことを思い出す。
仕事でミスしちゃったのだ。
しかもこれがはじめてじゃない。同じミスを、前にも何度かした。
「どうして、課長のときばっかり、手が滑るんだろう……」
お茶を淹れようとしたら、手を滑らせちゃって。熱々のハーブティーを、課長の股間にぶちまけた。
「お茶汲み、向いてないのかな……」
でも、お茶汲みこそ今の私の仕事。
本来の業務の方はもう長い間していない。うちは二人一組で動くのが基本だけど、私にはパートナーがいないので。
ずっとずっと、待機状態みたいな立場。
そんな私にもかろうじてできそうなことが、オフィスでのお茶汲みだった。
ハーブを育て始めたのも、その影響。
種類によってハーブは効能が違う。季節、天候、出す相手によって、なるべく出すお茶は変えている。そうやって自分なりに工夫してきたつもり。
でも飲んでもらう前にこぼしちゃったら、その工夫も台無しだよ。
私は、目の前に置かれている鉢植えのひとつをそっと手に取った。
水やりをしたばっかりなので、ハーブの葉の表面には透明の小さな雫がいくつも浮かんでいる。
「これ以上、みんなの足を引っ張るわけには……」
そうつぶやいたとき。
風が吹いた。
まだ少し冷たさの残る風は、私の髪を揺らして。ハーブの葉も揺らして。
葉の上の雫が風に飛ばされて、私の頬にかかった。
冷たい。
濡れた頬を、指で拭う。
ついでに、目尻からこぼれ落ちそうになっている別の雫も拭った。
泣いている場合じゃない。ミスした分まで、取り返さないと。
私は鉢植えを元の位置に戻すと、立ち上がった。
「明日も、お茶汲みがんばろう……!」
オフィスに戻ろうと駆け出したら。
「あっ」
段差にけつまずいて、転んだ。膝、すりむいた。
「が、がんばろう……」
電撃G's Magazine 2015年1月号掲載
「怎麼辦……。又搞砸了」
我正垂頭喪氣著。
在眼前的是幾個花架與盆栽。有帶著葉子的是數種的香草。我獲得了公司的許可,在事務所裡面的小空間種植著。
在用灑水壺幫這些香草澆水的同時,我想起了數十分前的事。
我在工作上犯錯了。
而且這並不是第一次,同樣的失誤在之前就犯了好幾次。
「為什麼總是在社長的時候時手滑呢……」
正在泡茶時,手滑掉了。熱騰騰的香草茶灑在了課長的胯下。
「是不是不適合倒茶呢……」
但是,倒茶就是我現在的工作。
本來的工作已經好一段時間沒做了。我們是以兩人一組來行動做為基礎的,但是因為我沒有搭檔。
似乎一直一直都是待機狀態的立場。
這樣的我似乎還有勉強能做的事,就是在辦公室倒茶。
開始種植香草也是因為這個影響。
香草根據種類會有不同的功效。季節、天候、出自不同的人泡出來的茶也不盡相同。
就是這樣,我打算靠自己的方式來做。
但是在喝之前就灑出來的話就白費功夫了啊。
我小心翼翼的用手去拿放在眼前的一個盆栽。
因為剛剛才澆過水,香草的葉面上附著了幾個透明的小水珠。
「不能再給大家扯後腿……」
就這樣喃喃自語的時候。
風吹了過來。
稍微還有點冷的殘風,吹拂著我的頭髮。也吹拂著香草的葉子。
葉子上的水珠被風吹散了,落在了我的臉頰上。
好冷。
我用手指擦拭淋濕的臉頰。
順手的,將似乎是從眼角潰然而下的別的水珠也擦掉。
現在不是哭的時候。不把失誤掉的部分取回來的話。
我把盆栽放回原來的位置,站了起來。
「明天,也要努力的倒茶……!」
當我要跑回辦公室時
「啊」
絆到了顛簸而摔倒了。膝蓋擦傷了。
「加、加油吧……」