「こんな形であなたと再会するなんて、思っていませんでした」
「竟然會在這種形式下跟妳再一次相見,我真的是連想都沒想過。」
「わたしもよ、ダフネン……いえ、ボリス・ジンネマン」
「我也是哦,達夫南……不,波里斯‧貞奈曼。」
「イソレット……」
「伊索蕾……」
「……さあ、急ぎましょう。こうしている間にも、月の島は蹂躙されているわ。貴方が倒したはずの異界の怪物と、その配下に」
「……好了快點吧,在我們像這樣說話的時候,月之島正被應該被你擊倒的異界的怪物與牠的部下們踐踏破壞著呢,」
「……はい。」
「……嗯。」
何時か必ず戻ろうと誓った場所。そして何時か必ず、その傍らで生きようと願った人。
發誓過總有一天一定會回去的地方,以及祈許過總有一天一定要在身旁一同活著的人。
僕はその二つと最悪の形で再会することとなった。
我在最壞的形式下,與這兩者再次相遇了。
月の島は、イソレットの故郷であり、僕が二年間暮らしたその島は異界の怪物、ゴルモダフの侵攻により壊滅の危機に瀕しているのだ。
月之島,是伊索蕾的故鄉,也是我生活了兩年的地方。而這座島,現在正因為異世界的怪物──紅眼惡魔的侵略而瀕臨毀滅的危機。
「見えたわ、月の島よ」
「看見了,是月之島哦。」
「本当に……戻ってきたんですね」
「我真的……回來了呢。」
「あるいは引き寄せたのかもしれないわね。貴方の剣、ウィンターラーが」
「亦或是被你的劍,冬霜劍給牽引回來的呢。」
「っ……」
「……」
僕は水平線の向こうに現れた月の島を見つめながら、思い出していた。
看著出現在水平線另一頭的月之島,我想起來了。
四年前、初めて彼女と会話を交わしたあの日のこと……。
四年前,與她第一次交談的那一天的情景……。
遥か昔、巨大な王国が「最悪」によって滅亡した。
很久很久以前,一個巨大的王國因為一個兇惡的東西而遭到滅亡。
国民は何隻かの船に乗って王国を脱出したが、ただ一隻の船だけが生き残り、とある島へ流れ着いた。
雖然國民們搭乘了好幾艘的船從王國逃脫出來,但是就只有一艘船存活下來,漂流到一座島嶼上。
それが月の島の住民の先祖だ。
那些人,便是月之島居民們的祖先。
生き残ったにも関わらず、彼らは嘆き悲しんだ。
無關乎自己生存下來這件事,他們不停悲嘆著。
何故なら、彼らの王は沈んだであろう、別の船に乗っていたから。
因為他們的王,乘坐在別的應該已經沉沒在海底的船上。
月の島の民は最悪から自分たちだけが生き残ったことを大きな借り、あるいは重りだと考えていた。
月之島的島民們對於自己從「兇惡」中存活下來這件事,一直覺得是個很大的恩惠,亦或是重擔。
そして、故郷を離れて放浪しているという意味で、自らを巡礼者と呼んだ。
而他們以離開故鄉在外地流浪的意思,稱呼自己為「巡禮者」。
巡礼者見習い僕に課せられたのは、真の巡礼者となるための修行であり、イソレットはその先生だったのだ。
身為巡禮者的見習生的我被要求要去做的,是為了成為一個真正的巡禮著的修行,而這個修行的老師正是伊索蕾。
「山の中にある草原……目印は三つ並んだ丸い址、その横に立つ二本の木か……お、あったっ。あれだっ! ……ーーっ!?」
「山裡的一座草原……標地物是三個並排在一起的圓形遺址,其旁邊座落著的兩棵樹嗎……哦,有了,就是那個!……──!?」
風に揺れる草原に、イソレットは立っていた。
伊索蕾她,就站在隨風搖擺的草原當中。
僕はその姿を、今でもありありと思い出すことが出来る。
我現在依舊可以將她當時的模樣,鮮明地回想起來。
彼女は美しくて、そして……とても寂しそうだった。
她那時候是多麼地美麗,且看起來是……多麼地寂寞。
その存在自体がまるで別の世界に属しているような、恐ろしい伝説の中の、手を触れることも出来ない女神のような、そんな人だった。
她就仿佛是屬於別的世界裡的存在,如同恐怖的傳說中,那連手都無法觸摸到的女神一般的人。
「理解できないわ」
「我無法理解。」
「始めて会った時もそう言ってましたね。理解できないって。あなたにとって僕は最初の生徒だと聞きました」
「第一次見面的時候您也是這樣說呢。我聽說對您而言,我是您第一個學生。」
「だから理解できないと言っているの。何故、わたしが貴方に神聖チャントを教えなければならないの」
「所以我才說我不能理解,為什麼我非得教你聖歌不可?」
「僕に教えるのが嫌なんですか?」
「您討厭教我聖歌嗎?」
「貴方だから、嫌だというわけではないわ」
「因為是你,所以也不是說到討厭的地步。」
「僕が……ナウプリオンの弟子だからですか?」
「那麼是因為……我是奈武普利溫的徒弟嗎?」
「……私の前で、二度とその名を口にしないで」
「……別再一次地,在我面前從嘴巴說出那個名字。」
「っ……」
「唔……」
「今からでも、やめるつもりはないの?」
「你現在也沒有打算要放棄嗎?」
「他に神聖チャントを教えてくれる人がいるんですか?」
「有其他能教我聖歌的人在嗎?」
「……いないわ。教えられるのはわたしだけ」
「……沒有,能教的只有我。」
「では、諦めるわけにはいきません」
「那麼,就更不能輕言放棄了。」
「……はぁ、どうして棒術ではなく神聖チャントなの」
「……唉,為什麼是聖歌而不是棒術呢?」
「え……?」
「欸……?」
「真の巡礼者になるには四つの成果を証明しなければならない。かつては、真の巡礼者となるための修行の科目にはさまざまのものがあったわ。けれど今は歴史、魔法、教養、そして棒術を習うと決まっている。なのに、どうして神聖チャント選ぶ必要があるというの」
「要成為真正的巡禮者,必須證明四項成果才行。以前,要成為真正的巡禮者所必須修行的科目可是很多樣的,而現在卻決定只要修習歷史、魔法、修養還有棒術即可。但是你,有什麼必要一定得選擇聖歌當修行的科目嗎?」
「……僕が、剣を持つ許可を得ているからです。だから、棒術習う必要はないと言われました」
「……因為我,得到了帶劍的許可,聽人家說這樣便不用再學習棒術了。」
「……そう。じゃあ、貴方がここに来たのはわたしのせいでもあるわね」
「……是嗎。那麼,你會來這裡也有些是我的錯呢。」
「……僕は、あなたに感謝しています。あなたのおかげで、僕はこの剣を奪われずに済んだから」
「……我其實,很感謝您。多虧有您在,我才不用被別人奪去這把劍。」
「……別に、感謝されるようなことじゃないわ」
「……沒什麼,這不是什麼需要被感謝的事。」
リンー♪。
鈴─♪。
「……あれ?」
「……欸?」
「何を見ているの」
「你在看什麼?」
「その白い髪です。金髪に混じって、どうして白い髪があるのか気になって」
「我在看那撮白髮。有點在意為什麼會有白髮混在金髮裡頭。」
「……別に、特別なことではないわ。髪の毛の色は二色だからといって、どうしてそんな目で見られなければいけないの」
「……這不是什麼特別的事情吧?為什麼就因為頭髮的顏色有兩種,便要被那種眼神看待呢?」
「あ、ごめんなさい……。……」
「啊,對不起……。……」
「……それじゃあ、何か歌ってみて」
「……那麼,試著唱點什麼吧。」
「歌うって、歌を……ですか?」
「唱,是指唱歌……嗎?」
「それ以外に何があるというの」
「除了唱歌以外還能唱什麼嗎?」
「いえ、その……どうして歌う必要があるのかと思って」
「不是,我只是想說……有什麼必要要唱歌。」
「……貴方、神聖チャントについて何も聞かされていないの」
「……你該不會,連聖歌是什麼都沒有被知會一聲吧?」
「……はい。行けばわかると言われて」
「……是的,聽人家說只要來了就知道了。」
「……はぁ、神聖チャントは魔法の力がこもった歌のことよ。人の魂を浄化する聖なる歌。月の島の民なら、誰でも短いチャントの一つや二つは歌うができるわ」
「……唉,聖歌是指賦有魔法力量的歌,能夠淨化人的靈魂的神聖之歌。如果是月之島的島民,不管是誰都能唱出一首或兩首短歌。」
「でも、教えられるのはあなただけなのですね」
「但是,能教聖歌的就只有您呢。」
「……神聖チャントを受け継いだ者たちはわたしを残して、みんな死んでしまったわ。この前の疫病でね」
「……繼承聖歌的人只剩下我,其他人都已經死了,死於之前的瘟疫。」
「疫病……」
「瘟疫……」
「説明はここまでよ。さあ、歌ってみて。チャントは単なる歌とは違うけれど、歌の一種ではあるわ。歌が歌えなければ、そこに神聖な力をこめることもできないのよ」
「說明就到此,來吧,試著唱看看。聖歌雖然跟普通的歌不同,卻也是歌的一種,如果連歌都不會唱,那就連賦予歌神聖的力量都做不到了。」
「……」
「……」
「どうしたの?」
「怎麼了嗎?」
「……最後まで歌える歌がありません」
「……我沒有能唱完整首的歌。」
「一つもないのっ!?」
「連一首都沒有!?」
「ないわけではありませんが、神聖チャントを教える先生の前で、可愛いリスがどうしたこうしたみたいな歌を歌うわけにもいかないかと思って……」
「也不是說沒有,只是想說不得不在教聖歌的老師面前,唱什麼『可愛的倉鼠怎麼了牠這樣了』之類的歌嗎……」
「……くす……くすくす」
「……呼……呼呼。」
「……」
「……」
「どうしたの?」
「怎麼了?」
「先生も、笑うんですね」
「老師您,也會笑呢。」
「……どういう意味なの」
「……你什麼意思?」
「事実を言ったまでです。僕は今まであなたのことを恐ろしい伝説の中に出てくる女神みたいだと思ってましたから」
「我只是闡述事實而已,畢竟我一直以來都覺得您是個如同在恐怖的傳說裡出現的女神。」
「……わたしが恐ろしいの」
「……我很恐怖嗎?」
「いやっ、そうじゃなくてっ! 恐ろしいのは伝説の方で……」
「不是,我不是這個意思!恐怖的是傳說不是您……」
「だから、その恐ろしい伝説に出てくる女神というのは恐ろしくないの」
「所以說,在那個恐怖的傳說裡出現的女神不恐怖嗎?」
「……、恐ろしいはずです……」
「……,應該是很恐怖……」
「……そう」
「……是嗎。」
「先生に失礼なことを言ってしまって、すみません……」
「對老師您說出這樣失禮的話,真的很抱歉……」
「別に怒っていないわ。それより、先生なんて呼ばないで。気持ち悪いわ」
「沒什麼,我沒在生氣。比起這個,別再稱我為老師了,很噁心。」
「では、どう呼べばいいですか?」
「那,該怎麼稱呼您?」
「名前で呼べばいいでしょ?」
「用名字稱呼不就行了?」
「……あなたは先生ですし、僕より年上です。名前を呼ぶわけには行きません」
「……您是老師,而且又比我年長,不能就這樣隨便地叫名字。」
「貴方がわたしをどう呼ぶか、わたしが決めたらいけないというのっ? ……いいわ。そう呼ぶのが嫌なら呼ばないで」
「你的意思是你要怎麼稱呼我,由我來決定是不行的嗎?……好,你討厭叫我名字的話就不要叫。」
「あぁ………………わかりました、名前で呼びます。…………イソレット」
「啊………………我知道了,我叫您的名字就是了。…………伊索蕾。」
「貴方の名前は?」
「那麼你的名字呢?」
「僕は、ダフネンです」
「我叫做,達夫南。」
何故、僕がこの月の島で暮らすことになったのか。
為什麼,我會來到這座月之島上生活呢?
何故、ポリスという名ではなく、ダフネンという名で呼ばれることになったのか。
為什麼,我被稱呼的並不是「波里斯」這個名字,而是變成「達夫南」呢?
それを語るには、時をもう少し遡る必要がある。