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文庫06附錄番外篇(妲附)

作者:SPT草包│2022-06-29 22:25:24│巴幣:1,016│人氣:781
這附錄…有毒! 咕啊!!
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魔導具師ダリヤはうつむかない
魔導具師妲莉雅永不妥協
作者:甘岸久弥
番外編 父と娘の魔導具開発記録~レインコート~
番外篇 父與女的魔導具開發紀錄~雨衣~

「完成! 父さん、これが『レインコート』!」
「完成! 爸爸,這就是『雨衣』!」
 娘のダリヤが淡い青の、とても薄手で軽いコートを手に駆け寄ってきた。
 女兒妲莉雅手拿淺藍色、非常薄且輕的外套跑了過來。
 コートそのものは、友人であるルチアに仕立ててもらったものの、一番上のボタンはダリヤが今、目の前でつけていた。カルロのイニシャルの刻まれた、象牙に緑文字の飾りボタンである。
 那件大衣是讓身為友人的露琪亞縫製的東西,妲莉雅現在正在眼前扣上最上面的鈕扣。是刻上了卡爾羅的字首,象牙白加上綠色文字的裝飾鈕扣。
「おお、こりゃ軽い!」
「喔喔,這個好輕!」
 袖を通し、肩まで入れて驚いた。思ったよりもはるかに薄く、軽く、そして柔らかい。布に蝋を塗った蝋引きのコートとはえらい違いだ。
 穿過袖子、拉到肩膀就令人吃驚。比我所想的還薄、輕許多,然後很柔軟。跟在把蠟塗在布上的上蠟大衣大相逕庭。
「完璧な仕上がりだ! ダリヤ、よくやった!」
「完美的完成了! 妲莉雅,幹得好!」
「うふふ! だからできるって言ったじゃない! あっ、出かけるためにまとめたばかりなのに、ぐしゃぐしゃにするのはやめて!」
「唔呵呵! 所以我不是說能做到嗎! 啊,為了要出門才剛盤好的,不要亂摸我的頭!」
 とうとうこの日がきてしまった――頭を撫でるのを娘に拒否される日が。
 這個日子終於來了——被女兒拒絕摸頭的日子。
 うちのダリヤもずいぶんと大人になったものである。もっとも、子供の頃に髪をぐしゃぐしゃに撫でてしまったときは、ダリヤの友人に怒られたが。
 我家的妲莉雅也算得上是個大人了。本來在孩提時代亂亂摸的時候都會被妲莉雅的友人罵。
「よし、今晩はレインコートの完成祝いだ! 店に行くぞ!」
「好,今晚來慶祝雨衣的完成吧! 去店裡囉!」
「ええ、ちょうど外は雨ょ!」
「唉唉,等下外面在下雨耶!」
 ひどい雨の夜、親子二人でレインコートを着て、近所の食堂へ夕食をとりに行った。
 暴雨的夜晚,親子二人穿著雨衣,往鄰近的食堂去用晚餐。
 大雨のおかげで、食堂はほぼ貸し切り状態。お任せを頼んだら、大盛りのビーフシチューに、自分にはピクルスが、ダリヤには果物サラダが追加された。
 食堂托大雨福幾乎是包場狀態。交由店家決定後,在大份燉牛肉上給自己追加了泡菜,給妲莉雅追加了水果沙拉。
 熱々のビーフシチューに黒パンを浸し、冷やさぬェールで乾杯した。
 把黑麵包泡進熱熱的燉牛肉裡,用不冰的麥酒乾杯。
 一人前になった娘との夕食は、最高にうまかった。
 與獨當一面的女兒的晚餐好吃到棒呆了。
 レインコート――ダリヤが言い出した、雨を弾く軽いコート。
 雨衣——妲莉雅說出的會彈開雨水的輕便大衣。
 ここまでくるのにいろいろあった。レインコートに使用された布は、『防水布』である。
 走到這裡發生了不少事。被使用在雨衣上的布是『防水布』。
 ある日、『水を弾く布を作りたい』と言い出した娘に、蝋引きの布がすでにあるからかぶるだろうと言ったが、納得してもらえなかった。
 某天,對說出『想製作會彈開水的布』的女兒說了,已經有上蠟的布會重複吧,但沒有被她接受。
「大体、父さんは重いからって、雨でも蝋引きのコートを着ないじゃない」
「還不都是爸爸嫌太重,下雨也不會穿上蠟的大衣不是嗎」
 娘の言う通りである。蝋引きのコートは暑く、重い。どしゃぶりの雨ならばともかく、夏の日には着たくない。あと、四十すぎた肩にもあの重さはちょっとくる。
 就如女兒所說。上蠟的大衣很熱、很重。若是傾盆大雨姑且不論,夏天真不想穿。還有,人過四十那重量對肩膀也有點勉強。
「レインコート……ええと、雨を弾くコートよ! だから、布は軽くて、薄くて、きっちり防水してくれるものがいいの」
「雨衣……呃,是指會彈開雨水的大衣唷! 所以,布是很輕、很薄、會好好防水的東西就好了」
「うちの娘さんは、また無茶をおっしゃる……」
「我家女兒又在亂說話了……」
 拳を握って力説する娘に、そう冗談めかして答えつつも思う。うちのダリヤならば、なんとかするのではないだろうか?、と。
 對握著拳頭強調的女兒如此半開玩笑的回答卻也覺得。若是我家的妲莉雅會不會想到辦法呢?這樣。
 翌日から、娘は魔導具関連の本に追加して、魔物図鑑と薬品、布に関する本を積み上げ、深夜まで読み込んでいた。
 從隔天開始,女兒在魔導具關係的書上堆起追加的魔物圖鑑與關於藥品、布的書,一直研讀到深夜。
 体を壊すなと注意した翌週、色とりどりのスライムを取り寄せ、塔の屋上から庭まで埋め尽くし、幼馴染みに悲鳴をあげさせていた。
 提醒不要搞壞身體的隔週,寄來了色彩斑斕的史萊姆,從塔的屋頂到庭院都填滿了,讓兒時玩伴發出了慘叫。
 干すだけ干したその様は、運送ギルドの屈強な男達までも、門から先へ進むのを躊躇させたほどだ。
 光是乾燥的那個樣子,就連運輸公會的強壯男人們都會猶豫要從門往前進的程度。
 だが、ご迷惑ではないかと一番心配したご近所さんからは、おおむね一言で済んだ。
 但是,從最擔心會不會添麻煩的鄰居那,以一句概要就結束了。
 『ロセッティさんのところだから』
 『因為是羅瑟提先生的地方』
 おそらく、父と自分の魔物素材加工のせいだろう。
 恐怕是父親與自己加工魔物素材的緣故吧。
 昔は今ほど魔物の加工品が出回っていなかったので、自分で素材を作るしかなかったのだ。
 由於魔物加工品以前不像現在有在上市,只能靠自己製作素材。
 カル口の父は庭で水魔馬の骨を削っていて、一部をご近所の犬に持っていかれたことがある。
 卡爾羅的父親在庭院削著的水魔馬骨頭,有被鄰居的狗帶一部份走過。
 追いかけたが、玄関先で犬が大変おいしそうに囓っていて、取り返せなくなったと笑っていた。夜、青くなった飼い主が上等な酒を持って詫びに来て、結局一緒に飲んでいた。
 雖然追上了,但狗在玄關前非常美味地啃著,笑著說拿不回來了呢。晚上,臉色發青的飼主帶著上等的酒來道歉,結果一起喝開了。
 自分も岩山蛇の抜け殻がなかなかいい形だったので、庭で干すついでに、元の形に似せた立体にしたことがある。それを見たご近所の子供に悲鳴をあげられ、その後に大泣きされた。
 自己也有過因岩山蛇的脫殼形狀相當好,就在庭院曬乾,弄成近似原本形狀的立體。看到那個的鄰居小孩發出慘叫,那之後讓他們嚎啕大哭。
 かわいそうになったので、半透明の抜け殻の中に入れ、外を見せたら大変喜ばれた。
 由於有夠可憐,就讓他們進入半透明的脫殼裡面、看看外面後就相當高興。
 その後しばらく、ご近所の子供――その後に大人、そしてなんだか近所では見ない顔の者までが、代わる代わる岩山蛇の抜け殻内体験に来ていた。
 那之後一段時間鄰居的小孩——那之後加上大人,然後總覺得連在附近都沒見過面的人,都輪流來體驗岩山蛇脫殼內部。
 ちょっとした騒ぎになり、衛兵が聞き取りに来たが、中に入れたら笑って帰っていった。
 造成了些許的騷動,衛兵來調查,讓他們進入裡面後笑著回去了。
 なお、長く付き合いがあり、ダリヤと孫をよく遊ばせてくれていたご婦人は、色とりどりのスライムに関して、笑ってうなずいていた。
 另外,關於色彩斑斕的史萊姆,有長期往來、經常讓孫子與妲莉雅玩在一起的婦人笑著點頭。
「水魔馬や岩山蛇と比べたら、スライムなんてかわいいじゃないか。やっぱりダリヤちゃんは女の子だねぇ」
「跟水魔馬或岩山蛇相比的話,史萊姆什麼的不是很可愛嗎。小妲莉雅果然是女孩子呢。」
 ロセッティ家は無事、ご近所から正しい理解を得られているらしい。だが、娘の評判に関しては一抹の不安を感じた。
 羅瑟提家似乎平安無事地獲得了鄰居正確的理解。但是,關於女兒的評價感到了一抹不安。
 そうしてスライムを材料に研究しているうち、ブルースライムが防水布の条件に一致することがわかった。
 就那樣把史萊姆當作材料研究時,明白了藍史萊姆跟防水布的條件相符。
 その後は粉にするため、冒険者ギルドにブルースライムを大量発注した。
 那之後為了做成粉末,跟冒險者公會大量下訂了藍史萊姆。
 一度、匂うほど腐敗していたものが納品されたので、鮮度の良いものをお願いした結果、活きが良すぎるのが届き、自分が時折、生き残りのスライムを仕留めることとなった。
 由於被交貨過一次腐敗到有味道的東西,拜託了新鮮度好的東西的結果,送來鮮活得好過頭的,自己有時還得要幹掉倖存的史萊姆。
 トビアスは時折遠い目をしつつも、スライム干しを手伝っていた。なんとも申し訳なかった。
 托比亞斯有時也會一面看向遠方,一面幫忙作史萊姆乾。多麼的抱歉呀。

 飲みに行った後、ダリヤはレインコートの完成に満足したらしく、珍しく早く眠った。
 去喝酒後,妲莉雅似乎滿足於雨衣的完成,很稀奇的早早就睡了。
 カルロは満腹すぎて、仕事場で何をするともなく、レインコートを眺めていた。
 卡爾羅吃太撐了,在工作區什麼都沒做,眺望著雨衣。
 ふと、ダリヤのレインコート、その一番上の飾りボタンの赤文字が目に留まる。
 忽然,注意到妲莉雅的雨衣、那件最上面的裝飾鈕扣的紅色文字。
 その赤に、一人の女が思い出された。
 那紅色讓人回想起一位女性。
 ダリヤの母は娘と同じく、艶やかな紅花詰草の髪の持ち主だった。
 妲莉雅的母親跟女兒一樣,是鮮豔的紅花詰草頭髮的擁有者。
 二人で夢見た未来は泡のように消えてしまったが、それでも、娘だけはこの腕に残った。
 兩人夢想的未來像泡沫般消失了,但儘管如此,只有女兒留在這臂彎中。
 娘、ダリヤと共にここまで生きられた。それだけで、自分は、自分の人生は十分に幸せだ。
 能與女兒、妲莉雅一同活到現在。只是那樣,自己、自己的人生就十分幸福了。
 作業棚から妖精結晶のランタンを取り出すと、カルロはそっとスイッチを入れる。
 從工作架上拿出妖精結晶的提燈後,卡爾羅輕輕地打開開關。
 中に見える幻は、どこまでも続く空と花畑――テリーザと出かけた、夏の終わりのダリヤ園。付与はしていないが、そこで笑う赤い髪の妻が、はっきりと思い出せた。
 裡面看到的幻覺是無限綿延的天空與花田——與泰莉莎出遊,夏末的大理花園。雖沒有賦予,但能清楚回想起在那裡笑著的紅髮妻子。
「テリーザ……ダリヤは、本当に君に似てきたよ」
「泰莉莎……妲莉雅真的跟妳很像喔」

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「ロセッティ男爵、お届け物です。サインをお願い致します」
「羅瑟提男爵,送信了。拜託請簽名」
 カルロは声渡りの調整を止め、門へと向かった。
 卡爾羅停止調整傳聲,朝門走去。
 秋の日差しの元にいたのは、二頭立ての黒い馬車、濃灰の上下を着た配達人だった。
 在秋季日照下的是雙頭黑色馬車、穿著整套深灰色的郵差。
 受け取ったのは純白の封筒に金の箔押し。流麗な差出人のサインは、赤みを帯びた黒に金粉を散らした――王城のとある部署専用のインクである。
 收下的是金箔壓印的純白色信封。流麗的寄信人簽名是在帶紅的黑色上撒有金粉——是王城某部署專用的墨水。
 自分が受け取りのサインをすると、馬車はすぐに去った。
 自己簽下收受章後,馬車馬上離去。
 見送りながら、じわりと背中に汗がにじんできた。
 一邊目送,汗一邊在背上涔涔滲出。
 ダリヤとトビアスは商業ギルドに納品に行っている。ちょうどいい時間だった。
 妲莉雅與托比亞斯去商業公會交貨了。時間正好。
 カルロは仕事場ではなく、四階の自室に入り、手紙の封を切る。
 卡爾羅不是在工作區而是進入四樓的自己房間,割開信件封口。
 差出人は、自分を王城導具師に三度誘った男だ。三度とも断った。
 寄信人是三次邀請自己成為王城導具師的男人。三次都拒絕了。
 少し前、王族専用の給湯器が壊れたときに修理をしたことがある。魔力的に少々無理がある付与だったが、ちょっとばかり多めに金銭が必要で、その仕事を請け負った。
 不久前,王族專用的熱水器壞掉的時候有去修理。雖是魔力上有點勉強的賦予,但需要多一點點的錢,就承攬下那件工作。
 今回の依頼は、王族専用の給湯器、その改良品制作。
 這次的委託是製作王族專用的熱水器、其改良品。
 丁寧な依頼の言葉、続く文面に思わず手紙を強く握った。
 不由得對以恭敬的委託話語持續的字面用力握住信件。
 『ロセッティ男爵でご無理な場合は、他の魔導具師をご紹介頂きたく。
 『羅瑟提男爵辦不到的情況,請介紹其他魔導具師。
 いずれ制作できるようになる魔導具師で、お若い方でもかまいません』
 即便是遲早都能製作的魔導具師的年輕人也不要緊』
 若くてもいい、自分が紹介できる魔導具師、それはどう考えてもダリヤとトビアスのことで――どうしても、『魔導具師ロセッティ』を、逃がすつもりはないらしい。
 年輕也可以,自己能介紹的魔導具師,那怎麼想都是妲莉雅與托比亞斯——似乎無論如何都不打算放過『魔導具師羅瑟提』。
 一瞬、銀髪銀目の後輩の顔が浮かんだ。しかし、それを即座に振り払う。
 一瞬間浮現銀髮銀眼的後輩的臉。可是立刻把它揮掉。
 オズヴァルドは自分が助けを求めれば、二つ返事で手を差し伸べてくれるだろう。だが、それは、今の彼の家族にも害が及ぶかもしれぬということだ。絶対に頼めぬ、相談もできぬ。
 自己求助歐茲瓦爾德的話,會二話不說的伸出手來吧。但是,那或許是會危害到他現在家人的事。絕對不能委託,也不能商量。
 次に浮かんだのは頼れる先輩だ。彼もきっと協力してくれるだろう。しかし、レオーネの立場は商業ギルド長であり、妻としたガブリエラは元庶民。その家族も巻き込むわけにはいかない。
 接著浮現的是可靠的前輩。他也一定會協助吧。可是,雷歐涅的立場是商業公會長,作為妻子的賈布莉艾菈是前庶民。也不能捲入其家人。
 次々と浮かぶ者達を否定し、そうして気づいた。
 否定了接連浮現的人們,然後注意到了。
 一番身軽なのは、自分だった。
 最沒家累的是自己。

 数日後、カルロは迎えの馬車に乗り、持ち物検査すらもなく、王城奥へ入った。
 數天後,卡爾羅坐上迎接的馬車,連攜帶物檢查都沒有,就進入了王城深處。
「王の住まい、その入浴施設の大型給湯器の修理をお願いできませんか?」
「能不能拜託你修理國王住處的那個入浴設施大型熱水器呢?」
 黒の三つ揃いに艶のありすぎる靴。黒い目の男は固めた笑顔でそう言った。
 黑色三件式西裝加太有光澤的靴子。黑眼男人以固定的笑容如此說著。
 黒檀のテーブルの上、並べられた仕様書と設計図に、カルロは緑の目を曇らせる。
 卡爾羅的綠色眼睛因陳列在黑檀桌上的規格書與設計圖而蒙上陰影。
 入浴施設の給湯器には、熱湯も水蒸気もいらない。なぜサウナをはるかに超える高温の水蒸気を、広範囲に飛ばす必要があるのか――横にあるのは魔封銀で囲った通路。そこを通らなければ、王の住まいには入れない。
 入浴設施的熱水器裡不需要沸水與水蒸氣。為何有需要讓遠遠超過桑拿的高溫水蒸氣廣範圍地放出呢——在旁邊的是用魔封銀圍住的通道。不通過那裡就進不去國王的住處。
 熱湯よりも熱い水蒸気の吹きつける中、魔法無しで進める者はまずいない。
 比開水還熱的水蒸氣吹襲中,不可能會有不靠魔法前進的人。
 なるほど、見事な防衛装置――いいや、対戦装置だった。
 原來如此,漂亮的防衛裝置——不對,是對戰裝置。
「お話の一つですが、これの小型化は可能でしょうか?」
「我有句話想問,這個的小型化是有可能的嗎?」
「私には無理ですね。温度は――もう少し上げられるかもしれませんが」
「我是不可能的呢。溫度——或許可以再稍微提高些」
 給湯器、いいや、水蒸気噴射機の小型化は、できるかできないかで言えば、おそらく可能だ。だが、そうすればこの男は、王の守りではなく、外の戦いに持っていくだろう、そう思えた。
 要說熱水器、不,水蒸氣噴射機的小型化能不能做到,恐怕是有可能。但是,那麼做的話這個男人是不會保護國王,而是帶去外面的戰場吧,我是這麼認為的。
 魔導具は武具にはなるが、武器ではない、少なくとも、自分には。
 魔導具雖能成為武具,但不是武器,至少對自己來說。
「口セッティ男爵、もし、あなたが『大出力ドライヤー』を本気で作ったら、大型の魔物も一気に倒るものができるでしょう。それがどれだけの民を救うか、この国を豊かにするか、お考え頂けませんか?」
「羅瑟提男爵,假如你肯認真製作『大出力吹風機』的話,就能一口氣打倒大型魔物了吧。那能拯救多少的人民,豐富這個國家呢,你有沒有考慮過呢?」
 ぬくみを一切感じさせぬ黒の目が、揺るぎなく自分に問いかけた。
 感覺不到一切溫度的黑色眼睛堅定的問著自己。
「私では力不足です。視野が狭く、魔力も足りません。効力のある武具は作れないでしょう」
「我力有未逮。視野狹隘,魔力也不夠。做不出有效力的武具吧」
「ご謙遜を。金貨でも地位でも素材でも、お望みのものをおっしゃってください。できるかぎり添いましょう」
「你真謙虛。不論是金幣或地位還是素材,請說出你所期望的東西。我會盡可能滿足」
「そうじゃないんです――武器としての魔導具、それは悪いことじゃありません。国を守る力の一つになるならすごいとでしょう。ただ、私は作れない、それだけです」
「並不是那樣——作為武器的魔導具,那並不是件壞事。如果能成為保護國家的力量之一是很厲害的吧。只是,我不會做,就只是那樣」
 男が自分に向けわずかに瞳孔を広げる。どうやら己の返事は、その神経を逆撫でしたらしい。彼は一度だけ、浅い咳をした。
 男人朝向自己瞳孔微微擴張。看來自己的回答似乎忤逆了他的神經。他只淺淺咳了一下。
「男爵から子爵。業績によっては、あなたの次世代に伯爵の地位をお約束しましょう。『ダリヤ・ロセッティ伯爵』……なかなか良い響きではありませんか? すべてにおいて安泰だ」
「從男爵到子爵。根據業績我能承諾你的次世代會是伯爵的地位。『妲莉雅•羅瑟提伯爵』……不是相當響亮嗎? 一切都安泰了」
 男が初めて心から笑いかけてきた。まるで勝ち名乗りだった。
 男人第一次打心底笑了起來。簡直像宣佈勝利者。
 この野郎――まったく、俺の弱点をよくご存じだ。腸が焼けるほどに理解した。
 這個混帳——真是的,非常明白我的弱點。理解到令人火大的程度。
「大変魅力的なお誘いですが、私どもは、生活向け魔導具を作る職人です。騎士でも商人でもありません。今回の王の大型給湯器は、私が魔導具師としてお受け致します。できるかどうかはやってみないとわかりませんが」
「這真是相當有魅力的邀請,但我們是製作生活向魔導具的職人。既不是騎士也不是商人。這次國王的大型熱水器,我會作為魔導具師受理。能不能做到要做了才會知道」
 男は笑みを消すと、二度、指先で黒檀のテーブルを叩く。
 男人消去笑容後,用手指頭敲了黑檀桌兩次。
「口セッティ男爵、希望の報酬額は? できる限り応じましょう」
「羅瑟提男爵,你希望的報酬金額是多少? 我會盡量答覆你」
「私の希望は二つです。うちの弟子二人とも、生涯、王城の魔導具制作に声をかけないでください。それと、ランベルティ伯爵家に国からの援助金を戻してください」
「我的希望有兩個。我家的兩位弟子一生都請不要去攀談製作王城的魔導具。還有,來自國家的援助金請轉給給蘭貝魯堤伯爵家」
「受けましょう。共に信用のない間柄です、神殿契約を行い――」
「我接受了。我們共同都是無法信任的關係,去進行神殿契約——」
「いえ、結構です。代わりに公証人による書類を。公証人はこちらで出します。もちろん、公にするつもりはありませんので、名をそろえて保管を頂ければと」
「不,不必了。取而代之請經由公證人寫下文件。公證人由這邊推派。當然,我不打算公開,共同屬名保管就好」
 男が疑いを込めて目を細める。無理もない。
 男人瞇起蘊含疑惑的眼睛。那也很合理。
 目の前の彼であれば、簡単にもみ消すことができる条件だ。いや、その前に自分を葬り去ることもたやすい相手だろう。
 若是眼前的他,是能簡單地搓掉的條件。不,是在那之前就能輕易葬送掉自己的對象吧。
 約束は、貴族である彼が背負う名、その名誉に懸けた方がいい、カルロはそう判断した。
 約定最好還是賭上身為貴族的他所背負的名字、那份名譽比較好,卡爾羅如此判斷。
「わかりました。その条件をお受けしましょう。私から二つ質問です。もしあなたの弟子が王城魔導具師を希望した場合は?」
「知道了。我接受那個條件。我有兩個疑問。假如你的弟子希望擔任王城魔導具師的情況呢?」
「本人の意志を尊重してやってください」
「請尊重本人的意志去做」
「ランベルティ家——元細君の実家には、あなたの口利きだと知らせますか?」
「蘭貝魯堤家——前夫人的老家,要讓他們知道你的斡旋嗎?」
「いえ、知らせないでください」
「不,請別讓他們知道」
「本当に理解できない……」
「我真的無法理解……」
 ぽつり、その薄い唇から言葉がこぼれた。当人も驚いたのか、そっと指で口を押さえる。
 從那薄薄的嘴唇溢出的一句話。本人也很吃驚嗎,輕輕地用手指壓著嘴巴。
 しかし、次に自分を見つめ返したときは、見事な固定形の笑顔だった。
 可是,接著凝視回自己的時候,已是漂亮的固定形笑臉。
「カルロ・ロセッティ男爵、この名にかけて、以後はお声がけ致しません。ですが、王城魔導具師、いいえ、私の元で魔導具師になってもよいと思われた日は、いつでもご連絡を」
「卡爾羅•羅瑟提男爵,賭上這個名字,以後我都不會去攀談。但是,王城魔導具師,不對,想到要在我身邊成為魔導具師也可以的日子,無論何時都請聯絡」
 それは四度目の、そして最後の、王城魔導具師への誘いだった。
 那是第四次的、然後是最後的邁向王城魔導具師的邀請。

 その後、確認のため、王の住まいに通じる通路を通り、脇の小部屋に入った。
 那之後,為了確認,通過通往國王住處的通道,進入旁邊的小房間。
 移動は男と自分、そして護衛騎士の一人だけ。通路手前には何人も騎士がいたが、そこまでだ。そこからは誰とも会わなかった。
 只有男人與自己、還有一位護衛騎士在移動。在通道跟前有幾位騎士,但也只到那裡。那之後遇不到任何人。
「中で挑戦している者がおります。おそらくは無理でしょうが」
「裡面有人正在挑戰。恐怕是做不到了」
 冷たい声を聞きつつ、給湯室のドアを開ける。
 一面聽著冰冷的聲音,一面打開熱水室的門。
 まぶしい光に思わず目を閉じかけ、はっとした。
 不由得對耀眼的光芒閉上眼睛,領悟到。
 誰かの付与魔法の途中だ。この魔力量であれば魔導師か――叩きつけるような強く荒い魔力に、素材が唸るような強風を返す。
 是某人在賦予魔法的途中。這個魔力量的話是魔導師嗎——素材對扔過來般的強烈魔力,回以嚎叫般的強風。
 ずるずると崩れかかる男の前、テーブルの上に見えた、天狼の牙。
 看到慢慢滑下快垮掉的男人面前的桌子上,是天狼牙。
 咄嗟に駆け込んで、男をテーブルから引き剥がし、倒れる前に支えた。
 我立刻跑進去,把男人從桌邊扯開,在倒下前支撐住。
「大丈夫ですか?」
「你沒事吧?」
「……すみません」
「……對不起」
 消え入るような声が帰ってきた。カルロから見ればまだ若い、墨色の髪に藍鼠の目をした青年だ。支えた身体は、思わぬほど冷たかった。テーブルの上、丸い白銀の結晶体が光っている。
 返回了消失般的聲音。在卡爾羅看來還很年輕,是有著墨色頭髮加藍鼠眼睛的青年。支撐的身體是從沒想過般的冰冷。圓型的白銀結晶體在桌子上發著光。
「結晶化はなんとかなったか。天狼の牙が無駄にならずによかった」
「總算結晶化了嗎。沒浪費掉天狼牙真是太好了」
 平坦な声で言いながら、黒衣の男は倒れた彼に魔力ポーションを投げ渡す。
 黑衣男人一邊以平坦的聲音說著,一邊將魔力回復藥丟給倒下的他。
「付与の方はなんとかなりそうか?」
「賦予那邊能想點辦法嗎?」
「申し訳ありません。二度、失敗を……」
「非常抱歉。我不會、再失敗……」
 懸命に身を起こして答える青年を支え、魔力ポーションを飲ませる。自分が青年を支えても、黒衣の男は目を細めるだけだった。
 支撐著拚命起身回答的青年,讓他喝下魔力回復藥。就算自己支撐著青年,黑衣男人也只是瞇起眼睛。
「これが魔導回路です。理論上は作れます。しかし、王城の魔導具師達二人が失敗、魔力豊富な者でさえ、この通りです」
「這就是魔導迴路。理論上是能作成。可是,王城的兩位魔導具師都失敗了,連魔力豐富的人都像這樣」
 壁一面を使った巨大な魔導回路。仕様書と設計書よりも一段ひどい。何よりひどいのは――
 使用了一整面牆壁的巨大魔導迴路。比規格書與設計書更過分一階。比什麼都還過份的是——
「天狼の牙の付与は、一気に引かないと魔力線が途切れる場合がありますから、これは、早さと魔力量の両方が要りますね……」
「天狼牙的賦予若不一口氣拉好,魔力線是會有中斷的情況,這需要快速與魔力量兩方面呢……」
 天狼の牙はやんちゃでわがままな素材だ。勝手に魔力を引きずって持っていく。足りなければ付与者が止めようと思っても無理に剥がしていく。それは素材をこんなふうに結晶化するときだけではない。魔導回路を引き、定着させるときも同じだ。
 天狼牙是頑皮又任性的素材。會擅自把魔力拖出帶走。不夠的話就算賦予者想停止也會強行剝奪。那不只是像這樣把素材結晶化的時候。拉魔導迴路,讓其定著的時候也一樣。
 この回路を引き切るには、魔力ーションを飲みながら挑むしかない。
 要拉完這個迴路,只能一邊喝魔力回復藥一邊挑戰。
 一体、何本いるものか――限界まで魔力を上げたカル口には、もはや、余裕はない。
 到底是需要幾瓶呢——魔力提高到極限的卡爾羅已經沒有餘裕了。
「ここをご覧頂いた以上、守秘がありますので、お断りされても困りますが。ロセッティ男爵だけでご無理なら、ご希望の魔導具師を呼びましょう。どなたでも結構ですよ」
「讓你看到這裡之後,就有要保守秘密了,被你拒絕也很讓人困擾。只有羅瑟提男爵一個人辦不到的話,就去叫來你希望的魔導具師吧。哪一位都可以喔」
 これがこいつのやり方だ。自分の周り、蜘蛛の糸を張り巡らせるように取り込もうとしてくる。そうして、自分も、自分が願った者も、逃げることはできなくなる。
 這就是這傢伙的做法。就像在自己周圍佈滿蜘蛛絲般騙取進來。就這樣,不論是自己,還是自己拜託的人都變得無法逃脫。
 だが、逆に手はある。カルロが一人でやり――誰も呼ばなければよい。
 但是,能反將一軍。卡爾羅一個人來做——不叫任何人就好。
「魔力ポーションを一ダースほど頂けますか?」
「能給我一打魔力回復藥嗎?」
「構わないせんが。それはご無理のない範囲ですか?」
「沒關係。那是不勉強的範圍嗎?」
「報酬を、どうぞよろしくお願いします――」
「報酬還請拜託你了——」
 その後に爵位付けでその名を呼べば、初めて男が狼狽した。
 那之後帶爵位叫了他的名字後,男人第一次很狼狽。
 口を開き、何かを言いかけ――その黒い目で、じっと自分を見つめる。
 張開嘴要說些什麼——用那黑色眼睛一直盯著自己。
 カル口は無言で、笑みだけで答えた。
 卡爾羅只以無言的笑容回答。
 何もかもを謀ってきたであろう、目の前の男。だが、きっと自分のことは理解できまい。
 是眼前的男人策劃起了一切吧。但是,他一定無法理解自己。
「わかりました。すぐ届けさせます。それと――うちの者に付与を教えてやってはくれませんか? 魔力はそれなりありますが、攻撃魔法も治癒魔法もなく、魔導具師にしかなれない男です」
「知道了。我馬上讓人送來。還有——能不能去教教我家的人賦予呢? 雖有相當的魔力,但沒有攻擊魔法或治癒魔法,只能成為魔導具師的男人」
 うちの者というのは、藍鼠の目をした男――まだ若いこの青年のことらしい。
 所謂我家的人是有著藍鼠眼睛的男人——似乎是還很年輕的這位青年。
 うつむいた彼は、きつく唇を噛んでいた。
 低頭的他緊緊咬著嘴唇。
 魔導具師にしかなれない男――魔導具師になれたら上等ではないか。それだけを目指してきた俺の前で、よくそれを言い切った。まったく、わかり合える気が微塵もしない。
 只能成為魔導具師的男人——能成為魔導具師不是最好嗎。在只以那為目標的我面前,還真敢斷言那點。真是的,感覺一點都無法互相理解。
「弟子ではないのでお教えはできませんが、魔導具師同士なら観せることはできますよ」
「因為他不是弟子我不能教他,但若是魔導具師同伴就能讓他參觀唷」
「個人の魔導具師は付与を観せないことが多いと伺っていましたが、ロセッティ男爵もそうですか?」
「聽說個人魔導具師很多不會讓人參觀賦予,羅瑟提男爵也是那樣嗎?」
「はい、魔導具師以外の、『他人』がいると集中できませんので」
「是的,有魔導具師以外的『別人』在也無法集中」
 『だからお前はさっさと出ていけ』、その思いを込め、笑顔で言ってやった。
 『所以你趕快出去』,以含有那個想法的笑臉說了出來。
「わかりました。では、後はどうぞよろしくお願いします」
「我知道了。那麼,之後就請你萬事拜託了」
 男は拍子抜けするほど素直に、護衛騎士を伴って出ていった。
 男人坦率到很掃興,伴隨著護衛騎士出去了。
 後に残されたのは、墨色の髪の青年と自分だけ。青年は即座に深く頭を下げてきた。
 之後被留下的只有墨色頭髮的青年與自己。青年即刻深深低下頭。
「申し訳ありません! 私が不甲斐ないばかりにご迷惑を……」
「非常抱歉! 都是我太不中用才給您添麻煩……」
「お気になさらないでください。私が若い頃は、失敗に次ぐ失敗で、うまくいかないことの方が多かったものです。ええと……」
「請你不要在意。我年輕的時候接連失敗,無法順利進行的更多。呃……」
「カルミネ・ザナルディと申します。『カルミネ』とお呼びください、ロセッティ男爵」
「我叫卡爾米涅•札納爾迪。請叫我『卡爾米涅』,羅瑟提男爵」
 その後、しばらくカルミネと話した。
 那之後暫時與卡爾米涅聊天。
 彼はダリヤが作った防水布に、いたく感心していた。罠かと思ったがそうではないらしい。
 他對妲莉雅所作的防水布相當佩服。雖然我認為是陷阱但似乎不是那樣。
 カルミネもまた、防水に似たものを目指していた。その試行錯誤がダリヤに重なるほどだった。一度ダリヤに開発話を聞いてみたいと言う彼に、並べたら面白そうだと思ってしまった。
 卡爾米涅也再次以類似防水的東西為目標。其反覆試錯是到了跟妲莉雅重疊的程度。感覺跟說著想聽一次妲莉雅的開發話題看看的他併排的話會很有趣。
 そんな彼がなぜ、大型給湯器をと思ったが、魔力の多さだけで命を受けたが、天狼の牙を扱ったこともなく、魔力の制御も下手で失敗続き、今回限りで元の仕事に戻れと言われているそうだ。
 雖想著那樣的他為何會來做大型熱水器,但只是魔力很多而接受命令,卻無法處理天狼牙,不擅長魔力的控制而不斷失敗,似乎被說了僅限這次就會回到原本的工作上。
 おそらくはこの者も、武具としての魔導具開発は向いていない、そう確信できた。
 恐怕這個人也不是面向開發作為武具的魔導具,我能如此確信。
 『多いだけでまっすぐにも進まない魔力』――そう卑下するカルミネに、近くの金属板を一枚持たせ、魔力を布にして巻く方法を教えた。なかなかに呑み込みが早く、魔力ポーションが届いたときには、金属板をきれいに均一な魔力で覆っていた。
 『就只是很多卻無法向前進的魔力』——讓如此自卑的卡爾米涅,拿一片附近的金屬板來,教他把魔力當成布來捲的方法。理解得相當快,在魔力回復藥送來的時候,漂亮地以平均的魔力覆蓋住了金屬板。
 その後、二人そろって、壁の巨大な魔導回路に向かう。
 那之後兩人一齊朝向牆壁的巨大魔導迴路。
 白壁に薄黒いインクで下書きはされている。後はカルミネが先ほど作った天狼の牙の結晶体、そして、準備された炎龍のウロコなどの結晶を一緒に付与するだけ。
 在白色牆壁上被以淺黑色墨水打底。之後就只是一起賦予卡爾米涅先前製做的天狼牙結晶體,還有被準備好的炎龍鱗片之類的結晶。
「カルミネ様、途中で絶対に止めないでください」
「卡爾米涅大人,請絕對不要在中途停止」
 上着を脱ぎ、シャツの袖を肘が出るほどまくった。久しぶりに、結婚腕輪なんぞをつけてきた。赤い石のついたそれを、わざと外さぬままに付与を始める。
 脫掉外套,把襯衫的袖子捲到露出手肘。久違地戴起了結婚手環。沒有特意脫下帶有紅色石頭的手環就開始賦予。
 魔力ポーションの瓶を空け、テーブルに並べた。カルミネが早くも声をあげそうになっている。止めてくれるなよ、目だけでそう伝えると、青年はぎゅっと拳を握っていた。
 把魔力回復藥的瓶子清空排在桌子上。卡爾米涅幾乎要發出快點的聲音。不要停下來喔,只以眼神如此傳達後,青年緊緊握起拳頭。
 カルロは右手を挙げ、ゆっくりと魔力を流しはじめる。
 卡爾羅舉起右手,開始緩緩地流入魔力。
 薄い虹色の己の魔力、そこに乗る白銀と深紅の光――左から右へ描いていく魔導回路は、細い上に魔力をとてつもなく吸う。一定に揺らぎなくと気をつけていても、わずかに集中が切れればブレる。
 在自己淺虹色的魔力那裡乘載著白銀與深紅色的光芒——從左至右逐漸描繪的魔導迴路不僅纖細還很不合常理的吸著魔力。就算小心著要統一不能搖晃,集中有些許著中斷就會偏移。
 今している魔導回路構築、そして付与魔法は、きっとダリヤには怒られる。
 現在在做的建構魔導迴路,還有賦予魔法,一定會被妲莉雅罵。
 身体を壊すことを承知で魔力ポーションを飲み、魔導具を仕上げる――魔導具師の師匠としても、父親としても、泣いてひっぱたかれるぐらいに怒られる自信がある。
 知道會搞壞身體還喝魔力回復藥,完成魔導具——即便是作為魔導具師的師傅、作為父親,也有自信是會被氣到哭著打我。
 だが、やらなければならない仕事、誰にも譲れない役目というものはあるのだ。
 但是,有著名為不做不行的工作,無法讓給別人的職責。
 子を守るためならば、親という生き物は無茶もする。すべての親がそうではないかもしれないが、少なくとも自分は、そのぐらいには娘が愛せた。
 若是為了保護孩子的話,名為父母的生物是會亂來的。或許並不是所有的父母都會那樣,至少自己是那麼樣般地愛著女兒。
 その盾と成れるのならば、白い砂となっても幸福だと言い切れる程度には。
 是能斷言若能成為她的盾的話,化作白砂也很幸福的程度。
「くっ……」
「咕……」
 鼓動が速くなり、息が苦しくなり、吐き気がこみあげたところで魔力ポーションを瓶から直飲みした。魔力切れが、思ったよりずっと早い。
 心跳變快,呼吸變得痛苦,在嘔吐感湧現的時間點就直接從瓶子喝起魔力回復藥。魔力中斷比我所想的還要早很多。
 二本、三本、四本と、瓶を床に投げ捨てながらの付与になった。
 兩瓶、三瓶、四瓶後,就變成一邊將瓶子丟到地上的賦予了。
 ありがたいことに、新しい魔力ポーションの瓶は、カルミネが蓋を開けて手渡してくれた。
 令人感謝的是新魔力回復藥的瓶子是由卡爾米涅打開蓋子交給我的。
 七本目を飲んだ時、身体の内がきしんだ。そして己の魔力が一段、ぶわりと増えた。
 喝到第七瓶的時候,身體裡面嘎吱作響。然後自己的魔力輕輕地增長了一階。
 虹色が一段濃くなり、白銀と深紅の光を巻き込むように付与が続く。
 虹色變濃了一階,賦予就像捲入白銀與深紅光芒般持續。
 こんなときなのに笑えた。学生時代、あれほど憧れた高魔力。こんな形で実現するとは考えもしなかった。魔力の増える高揚感に、ほんの少しだけ、吐き気が引く。
 這種時候我卻在笑。學生時代那麼樣憧憬的高魔力。從沒想過會以這種形式實現。因魔力增加的昂揚感只引起一些些的嘔吐感。
 しかし、そのまま壁面の九割を付与、八本目を飲んだところで、視界が一瞬暗くなった。
 可是,就那樣賦予牆面的九成,在喝到第八瓶的時間點,視野一瞬間變暗了。
「くっ!」
「咕!」
 魔力に、身体がついていかない。自分には過ぎた魔力に、己が喰われはじめている。
 身體跟不上魔力。自己開始被多過自身的魔力侵蝕。
 それでも止めずにいると、虹色の魔力が、血の赤を帯びていく。
 儘管如此也沒停止後,虹色的魔力逐漸帶有血紅。
 奥歯を噛みしめてさらに魔力を流せば、頭ががんがん痛みはじめた。
 咬緊牙根更是流入魔力後,腦袋開始劇痛。
 揺らぐ視界、水に溺れたように呼吸は浅く、胸も痛い。
 搖曳的視野,呼吸就如溺水般很淺,胸口也很痛。
 震える両手、割れる爪。大きくあふれた魔力が、赤黒い炎となって両腕を焼いていく。
 顫抖的雙手,裂開的指甲。大大溢出的魔力化為紅黑色的火焰燒灼著雙臂。
 喉を塞いだ血を吐き捨て、カルロは懸命に付与を続ける。
 吐掉堵住喉嚨的血,卡爾羅拚命地持續賦予。
 そんな己を嘲笑うように、天狼の牙、炎龍のウロコ、その結晶が鮮やかに瞬いた。
 彷彿嘲笑那樣的自己,天狼牙、炎龍鱗片,那些結晶鮮明地閃爍。
「上等だ、魔物ども――!」
「有種啊,魔物們——!」
 過去最高の素材、過去最高の魔力、これ以上の付与は二度とない。
 有史以來最好的素材、最高的魔力,不會再有更棒的賦予了。
 倒れるな、『魔導具師ロセッティ』、それは父から継ぎ、娘と息子に継ぐ名だ。
 別倒下,『魔導具師羅瑟提』,那是繼承自父親,要繼承給女兒與兒子的名字。
 魔物ごときに負けてたまるものか。
 哪會輸給魔物之流。
 自分の魔力が虹色を完全に消し、赤くなり、そして――真っ黒に染まっていく。
 自己的魔力完全消去了虹色,變成紅色,然後——逐漸染成漆黑。
 胸の最奥、魔力ではなく、命が抜ける感覚を、カル口は初めて知った。
 卡爾羅第一次知道胸口最深處,不是魔力而是生命洩漏的感覺。
「定着っ!」
「定著!」
 ひどく熱い風が吹き、壁一面が燃えるように赤く光る。
 炙熱的風吹起,一整面牆彷彿燃燒般發著紅光。
 天狼が、炎龍が――ひどく哀しげに鳴いた気がした。
 感覺天狼、炎龍——非常悲痛地鳴叫著。
「これで、完成と……」
「這樣就、完成了……」
 魔導回路が動くのを確かめた瞬間、視界がぐるりと回る。気がつけば、硬い床に転がっていた。
 要確認魔導迴路作動的瞬間,視野天旋地轉。注意到時已倒在堅硬的地板上。
「カルロ殿! しっかりしてくださいっ!」
「卡爾羅殿! 請振作點!」
 叫びと共に、数本まとめてポーションを浴びせられるという貴重な体験をした。
 有了所謂與叫喊一同讓人淋了集中數瓶回復藥的貴重體驗。
 運悪く鼻に入ってしまい、カルロは大きくむせる。頼むから顔にかけるのをやめてくれ。
 運氣不好進到了鼻子裡面,卡爾羅大大的嗆到了。拜託了請不要倒在臉上。
「……大丈夫です。もったいないことをさせました……」
「……我沒事。讓你破費了……」
 赤くぼろぼろに火傷をしていた手は、痛みと痕を消していく。手の爪はすべて落ち、新しいものに替わっていた。形はちょっと良くないので、爪切りが必要そうだ。
 燒傷成紅紅破破爛爛的手,疼痛與痕跡逐漸消失。手的指甲全部脫落,替換成新的。形狀有點不好,似乎需要剪指甲。
 残念ながら、袖の焼けたシャッは買い換えるしかない。
 儘管很遺憾,袖子燒焦的襯衫只能買來換了。
 血が滲むほど唇を噛んだカルミネが、黙ってハイポーションを差し出してきた。どうやら飲めということらしい。遠慮なく、礼を言って飲んだ。
 咬著嘴唇到要滲血般的卡爾米涅默默遞來了回復藥。看來似乎是要讓我喝。不客氣的道謝後喝掉。
 さすが、高価なハイポーション、内側でくすぶっていた痛みまで一気に消える。
 不愧是昂貴的高等回復藥,就連內側的悶痛也一口氣消失。
「なぜ、こんな無理をなさったのですか!?」
「為何要這樣勉強呢!?」
 どうやら気づかれたらしい。血を吐き、身体を焼く付与である、隠しようがない。
 看來似乎是注意到了。無法隱瞞是吐血、燒灼身體的賦予。
「……一時も、目を離したくない魔導具師がおります……俺ができなければ、いずれその者がこの付与をするかもしれません。俺は、それが絶対に許せない……」
「……有位、一刻也不想離開目光的魔導具師……我辦不到的話,那個人遲早會做這個賦予也說不定。那點我絕對無法允許……」
 素直に、心のまま口にする。
 坦率地隨心說出口。
「父親の、矜持というャツですよ」
「是名為、父親的矜持那東西喔」
「父親の、矜持……」
「父親的、矜持……」
 オウム返しに言ったカルミネの、聞こえぬほどに小さく続いたつぶやきは、『うらやましい』――ひどく痛い声だった。
 複誦地說著的卡爾米涅,接著小到聽不見的嘟噥是『真是羨慕』——是非常痛苦的聲音。
 付与を教わる楽しげな顔、自分を心配する懸命な顔、自分ができぬ付与に悔しがる意地――なんとも、この者は、ダリヤに似ている。
 受教賦予的愉快表情、擔心自己的拚命表情、為自己辦不到的賦予懊悔的志氣——這個人、跟妲莉雅多麼地相似。
 カルロに毛布をかけたカルミネは、血に汚れた喉や両腕を、自らタオルで拭いてくれている。顔は平然を装っているが、その目は真っ赤で、手はひどく震え、奥歯がぎりぎりと噛みしめられていた。その様を見ながら、思わず言ってしまった。
 卡爾米涅把毛毯蓋在卡爾羅身上,親自用毛巾擦拭掉被血弄髒的喉嚨與雙手。裝作冷靜的表情,但那眼睛是鮮紅色且手激烈顫抖,臼齒被用力地緊咬著。看到那個樣子不由得說了。
「カルミネ様、いつか、緑の塔に酒を持ってこっそり遊びに来ればいいですよ、娘を紹介します」
「卡爾米涅大人,哪時能帶酒偷偷來綠塔玩就好了呀,我會介紹我女兒」
 自分がその日まで生きているかどうかはわからない。
 不知道自己能不能活到那一天。
 だが、魔導具の話を互いにできれば、案外、よい魔導具師仲間になれるかもしれない。
 但是,若能互相聊及魔導具的話題,意外地或許會成為不錯的魔導具師同伴。
 目眩の強さに抗えず、目を閉じていろいろ話しながら、カル口はいつしか意識を手放し――夜半過ぎ、カルミネに馬車で送られ、こっそりと塔に帰った。
 無法抵抗暈眩的強烈,閉著眼睛說了很多話,卡爾羅不知不覺放掉了意識——過了半夜,被卡爾米涅用馬車送走,偷偷地回到了塔裡。

 翌週、友であるオルランド商会長からいつものように飲みの誘いがきた。けれど、指定された店はちょっとばかり遠かった。
 隔週,身為朋友的歐爾蘭德商會長發來一如往常的飲酒邀約。但是,被指定的店家稍微有點遠。
 南区の店、三階の個室で向かい合い、少しばかりいいワインと料理が並ぶ。奢りだという彼に甘え、ありがたく食事を終えた後、ずいぶんと年代物の赤ワインがやってきた。
 在南區店鋪的三樓隔間面對面,擺上有一點點好的葡萄酒與料理。承蒙說要請客的他,結束令人感謝的餐點後,上來了有相當年分的紅酒。
 何かあったと、ぴんときた。
 感覺到有什麼事。
「で、何があった? テオ」
「那麼,有什麼事嗎? 提奧」
「カルロ、その――まだ誰にも言っていないのだが」
「卡爾羅,那個——我還沒跟任何人說過」
「なんだ、あらたまって。俺に愛の告白か?」
「怎麼了,那麼鄭重。是要對我做愛的告白嗎?」
 茶化して言った自分に、友はいつもの笑いを返さなかった。
 朋友沒有對開玩笑說的自己回以往常的笑容。
「愛ではないが、親友への告白ではあるな」
「雖然不是愛,但有給好友的告白呢。」
「そうか。じゃぁ吐け!」
「是嗎。那就快說!」
「……私の時計の砂が、あと一年ない」
「……我的時間之沙還有不到一年」
 ごとり、持っていたグラスが転がった。
 拿著的酒杯叩地倒下。
 残りの酒は一口か二口。それがテーブルに広がるのもかまわず、カルロは聞き返す。
 剩下一、兩口的酒。不在意它在桌上擴散,卡爾羅反問回去。
「おい、笑えない冗談は……」
「喂,不好笑的笑話……
 言いかけて、友の目の色で理解する。
 才要說出就因朋友的眼神而理解了。
「妻には……もう少ししたら話そうと思っている。あれもあまり体調がよくないんだ。イレネオは心配ない。もう少し商会の取り回しを教えたかったが、時間さえあればできるだろう。あれはどこに出しても生きていける商人だ。気がかりなのはトビアスなんだ。だから――病気がわかったときから、ダリヤちゃんとの結婚を願っていた」
「妻子……我想再過一會兒就會跟她說。她身體也不怎麼好。我不擔心伊雷涅歐。我想再教點商會的接待,但有時間他就能做到吧。他是去到哪都能活下去的商人。我擔憂的是托比亞斯。所以——從知道生病的時候開始,就期望他能與小妲莉雅結婚」
 友人からは、息子トビアスとダリヤの結婚を何度か相談されていた。
 友人來商量好幾次兒子托比亞斯與妲莉雅的結婚。
 双方とも年齢が近くて健康。同じ仕事をしていて理解はあり、親戚筋も問題はなく――条件としては悪くない。だが、兄妹のような二人に夫婦となる姿が想像できず、自分は話を進めずにきた。
 雙方年齡接近又健康。做著同樣的工作有所理解,親屬也沒有問題——作為條件並不壞。但是,無法想像像兄妹的兩人會成為夫婦的姿態,自己就沒有接著說下去。
「いくら友達のお前にでも一方的に願うだけでは、魔導具師、そして男爵に対して失礼だろう」
「即便再怎麼是朋友也只是單方面的拜託,對魔導具師、然後是男爵都很失禮吧」
 商人の声になって、テオは続けた。
 變成商人聲線的提奧接下去。
「ダリヤちゃんが、お前の心配するような目立つことにならぬよう、うちの商会を傘として使ってくれ。イレネオにも伝えてある。もし、貴族の誘いでダリヤちゃんが望まぬものがきたら、うちで付き合いのある貴族に止めてもらえるように願おう。金貨も出せる限り積む」
「為了不讓小妲莉雅變得像你所擔心的顯眼,就把我家商會作為保護傘拿去用。我也有傳達給伊雷涅歐。假如,小妲莉雅不期望的貴族邀約來到,我會拜託有跟我家往來的貴族去制止。也會盡可能存金幣」
 それが効く相手だけではない、そう言いかけて、友の懸命さに黙り込む。
 幾乎都要說出那可不只是有面子的對象,但對朋友的拚命保持沉默。
 「大丈夫だ、カルロ」
 「沒事的,卡爾羅」
 昔から見慣れた悪ガキのような――いいや、今は互いにいい歳だ、まるで悪役商人のような笑いで、テオは続けた。
 就像從以前就看慣的壞小鬼般——不對,現在彼此都有年紀了,提奧以簡直就像惡役商人般的笑容接下去。
「もし、本当にまずい誘いがきたら、お前とダリヤちゃんとうちの息子を、他国へ長い旅に送るぐらいはできる」
「假如真的來了糟糕的邀請的話,我能把你與小妲莉雅與我兒子送去別國做漫長旅行」
 それは内密にこの国から他国に出すということで――友の手も、いつのまにか長くなっていたらしい。だが、そんな危ない橋はもう渡らなくてもいいのだ。
 那是指秘密地從這個國家去到別國一事——朋友的手似乎在不知不覺間伸長了。但是,那麼危險的橋已經可以不用過了。
「テォ、いつ知った?」
「提奧,你何時知道的?」
「一昨日だ。付き合いのあるお方から伺った」
「是前天。從有往來的人那問來的」
「その件なら、先週済んだ。俺は、付与代わりに、弟子達に手を出さない約束を公証人入りで頼んだ。ああ、偶然だが、俺の持ち時間もそうなくてな。こんなところまでくされ縁か――」
「那件事的話,上禮拜就結束了。代替賦予,我拜託了加入公證人不要對弟子們出手的約定。啊啊,雖是偶然,但我擁有的時間也不多了呢。連這種地方都是孽緣嗎——」
「カルロ、お前っ……!」
「卡爾羅、你……!」
 笑い話に変えようとして失敗した。
 打算變成笑料卻失敗了。
 自分とて、残り時間がそうないと言ったではないか。それよりも悲痛な声で、俺の名前を呼ぶのはやめてくれ。その右手で、痛いほどに人の左手をつかむのはやめてくれ。
 不該說自己剩下的時間不多了嗎。不如說請不要用悲痛的聲音叫我的名字。請不要用那隻右手抓痛別人的左手。
 ただ一度奥歯をぎりりと噛み、いつものように笑ってみせる。
 只用力地咬了一次臼齒,彷彿一如往常地笑給他看。
「トビアスが気がかりだと言ったな。心配するな。あれは間違いなく腕のいい、一人前の魔具師になる。それと――ダリヤとの結婚話を受けよう」
「你說很擔憂托比亞斯呢。別擔心。他毫無疑問是本領不錯,能成為獨當一面的魔導具師。還有——我接受跟妲莉雅的提親」
「……ありがとう、カルロ」
「……謝謝你,卡爾羅」
「礼を言うのはこっちだ」
「要道謝的是這邊」
 互いに礼を言い合って、グラスに半分だけワインを注ぎ足した。
 彼此互相道謝,在酒杯裡只倒滿一半的葡萄酒。
 二度目の乾杯は、少しだけ湿った音がした。
 第二次的乾杯發出有點嘶啞的聲音。
「……俺の人生で、家族を除いたら、カルロに会ったのが一番の儲けものだったかもしれん」
「……我的人生裡除去家人的話,遇見卡爾羅或許是最賺錢的事」
「魔導具でそれなりに儲けさせたからな。俺の人生では――なあ、これ一歩間違うと、口説き文句にしか聞こえないんだが」
「因為我靠魔導具讓你賺了不少呢。我的人生——吶,這搞錯一步聽起來就只是追求的話語了」
「やめてくれ、カルロ。妻に逃げられたくない」
「住手吧,卡爾羅。我不想讓妻子跑了」
「けっ! あのオズから、かっさらったのに、何言ってやがる」
「哎! 明明從那個歐茲那搶走,你在說什麼」
「カルロ、『あれ』は妻の仕事仲間だっただけだ。かっさらった覚えはないぞ」
「卡爾羅,『那個』只是妻子的工作夥伴。我不記得有搶走喔」
「テオ、お前、オズがいないところでは『あれ』呼びで、絶対『オズヴァルド』とか『ゾーラ商会長』と呼ばないよな?」
「提奧,在歐茲不在的地方都是叫『那個』,絕對不會叫『歐茲瓦爾德』或『佐拉商會長』呢?」
 じと目だけで答えた友は、だばりと赤ワインを足してきた。カル口はあふれそうになったそれをあわてて啜り、つい笑ってしまった。テオも続けて笑いだした。
 只以瞪眼來回答的朋友添滿了紅酒。卡爾羅慌張的啜飲就要滿出來的那個,不小心笑了。提奧也接著笑了出來。
 砂がわずかとなった時計を背負いながら、それでもこんなくだらない話で笑えるのだ。出会った頃も今も、そう変わりはないのかもしれない。
 雖然背負著所剩不多的時間,但儘管如此還是會因這種無聊話而笑了。不論是相遇時刻還是現在,或許都不曾改變。
 できることなら、あちらでも酒を酌み交わしたいものだが――こればかりはわからない。
 如果可以的話,也想在那邊對飲——但就只有這點不知道了。
 そして、一年どころか、わずかな季節の後、カルロは友の背をあちらへと見送った。
 然後,不要說一年了,些許季節之後,卡爾羅目送朋友的背影前往了那邊。
 あまりに早すぎた。
 未免太早了。

 塔での夕食中、カル口は深く咳き込んだ。口を押さえつつ、なんとか声を出す。
 在塔裡的晚餐中,卡爾羅深深咳個不停。儘管摀著嘴巴,但也總算發出聲音。
「か、唐揚げが、喉に……!」
「炸、炸雞卡到喉嚨……!」
「もう、急いで食べるから! お水持ってくる!」
「真是的,爸爸吃太快了! 我去拿水來!」
 台所に駆けていくダリヤに隠れ、ハンカチで口の赤いものをきつく拭う。そして、上着のポケットに偲ばせていたポーションを一気飲みした。
 瞞著跑去廚房的妲莉雅,用手帕重重擦去嘴裡的紅色。然後一口氣喝掉藏在上衣口袋裡的回復藥。
 すぐ痛みは薄れるが、もつのはせいぜい三日である。しかも効き目は次第に薄れている。
 疼痛馬上變淡,但最多也只能撐三天。而且效果會逐漸淡化。
 どうやら、過ぎた魔力は身を壊し、ポーションでも治らぬというのは本当らしい。
 看來過量的魔力弄壞了身體,即便是回復藥也治不好似乎是真的。
 自分の砂時計も残りの粒が見えはじめたようだ。弟子達に気づかれぬよう、体調のいいときに付与を教え、それ以外は調べものだと言って書斎で休んだ方がいいだろう。
 自己的沙漏好像也開始看到剩餘的沙粒了。為了不讓弟子們注意到,身體好的時候教授賦予,除此以外就說要調查東西在書齋休息會比較好吧。
 ふと気がつけば、ダリヤの髪が地味な濃い色味になっていた。『大人っぽくなったでしょう?』そう整えた笑顔で言われたが、おそらくは目立たせぬためだろう。
 忽然注意到,妲莉雅的頭髮變成不起眼的深色感。『變得很像大人對吧?』雖然被以端正的笑容那麼說了,但恐怕是為了不醒目吧。
 お前は紅花詰草の髪が最も似合っている、そう言おうとしてやめた。
 妳最適合紅花詰草的頭髮,我放棄打算這麼說。
 髪の色をすすめたのはトビアスか、それとも、ダリヤ自身がオルランド商会内での見た目を考えたか――ここから手を伸ばせなくなる自分が、聞いてはいけない気がした。
 推薦髮色的是托比亞斯嗎,還是妲莉雅自己考慮到在歐爾蘭德商會內的外表呢——感覺這之後無法伸出手的自己不能問。
 あと何度、こうして娘とを囲めるのか。
 還有幾次能像這樣跟女兒團聚呢。
 皿の上、半分になった唐揚げは、まだ白い湯気を上げている。
 盤子上剩下一半的炸雞還冒著白色蒸氣。
 せっかくの愛娘製、絶品の鶏唐揚げ、その味がよくわからなくなったのが残念だ。
 很遺憾難得愛女製的絕品炸雞,變得不是很明白它的味道了。
 こんなことなら、思いきり胸焼けをしてでも、元気なうちにもっと食べておくのだった、そんな後悔すら浮かんでくる。
 如果會變這樣,就算要讓胃酸吐個痛快,也要在有精神的時候先多吃點,連那種後悔都浮現了。
 当時もよく食べすぎて胃薬を飲んでいた覚えがあるが――自分はなかなかに強欲だ。
 有印象當時也經常吃太多而喝胃藥——自己相當貪婪。
「はい、お水! もう、涙目になるほどむせるなんて……」
「來,喝水! 夠了噎到都淚眼汪汪了……」
「すまん!」
「抱歉!」
 抑えていたが、目の水分が少々増えていたらしい。
 雖抑制著,但眼睛的水分似乎稍微增加了。
 ただ謝ることしかできず、カルロは水を飲み、二枚目のハンカチで顔をごしごしとこする。
 卡爾羅僅僅只能道歉、喝水,用第二條手帕用力擦著臉。
「今度はちゃんと噛んで食べてね、父さん」
「這次要好好咬過再吃呢,爸爸」
 娘の笑顔に、まだ隠せる、まだ騙せると安堵した。ずるい父親ですまない。
 面對女兒的笑臉,還能隱瞞,很安心還能隱瞞。很抱歉我是個狡猾的父親。
 味のぼやけた唐揚げを、うまいと絶賛して食べた夜だった。
 是享用絕讚著味道模糊的炸雞很美味的夜晚。

 翌日、カルロはいつもは行かぬ貴族街の魔導具店へ足を向けた。
 隔天,卡爾羅走向平時不去的貴族街魔導具店。
「魔導書を二冊――いや、一冊で」
「兩本魔導書——不,一本」
 二冊に分けずとも、二人で一冊を見てくれればいいだろう。
 不用分成兩本,兩個人看一本就可以了吧。
 迷ったが、赤茶の革の表紙に橙紅榴石のついたものを選んだ。
 雖然迷惘但選了赤茶皮革的封面加上橙紅榴石。
 真っ白な魔導書、これを一冊埋め尽くすくらいの時間はあるだろう。あとは弟子達に、できるかぎり実技を教えてやるだけだ。
 雪白的魔導書,要把這個填滿一本的時間是有的吧。之後只剩盡量教導弟子們實技。
 魔導書を持って塔に戻ると、本棚運びにかこつけて、トビアスを四階の書斎に呼んだ。
 帶著魔導書回到塔裡後,藉故要搬書櫃,把托比亞斯叫來四樓書齋。
 父を亡くした後、トビアスはひどく落ち込んでいた。それでも、付与は一つの不良品も出さず、きちんとこなしていた。気持ちと仕事はきちんと切り換えが利く、しっかりした男だ。
 父親死後托比亞斯非常消沉。儘管如此,賦予也沒出現過一個不良品,好好的做完了。能好好有效切換心情與工作,是可靠的男人。
「トビアス、中身はこれから書くが、この魔導書に先に紅血付与をしてくれ」
「托比亞斯,內容我之後會寫,先替這本魔導書做紅血賦予」
「師匠、まだ早いのでは? 俺はまだ未熟で……」
「師傅,還早吧? 我還不成熟……」
「もう大丈夫だ。それと――いきなりの話になるが、ダリヤを、守ってやってくれないか?」
「已經沒問題了。還有——雖是過於唐突的話,但你能不能保護妲莉雅呢?」
 えっ、と小さく声をあげ、弟子はひどく不思議そうな顔をした。
 咦、發出小小的聲音,弟子一臉非常不可思議的表情。
「俺は魔導具のことしかわからない男でな。ダリヤには、人付き合いも商売も教えてやれなかった。できれば前に立って、かばってやってくれ。お前は商会の勉強もきっちりこなしていたし、しっかりしているからな」
「我是只知道魔導具的男人呢。無法教導妲莉雅跟人交流或做生意。可以的話你要站在前面給予庇護。因為商會的學習你也好好做完了,會妥善應對呢」
「そんなことはありません、まだまだです。師匠、医者に酒を少し控えろって言われたからって、弱気にならないでください」
「沒有那種事,我還不夠格。師傅,請不要因為被醫生說了要稍微控制喝酒就變得軟弱」
 笑って答える弟子は、父親であるテオとよく似ていた。
 笑著回答的弟子跟身為父親的提奧非常相似。
 そして、自分とも似ていた。
 然後跟自己也很像。
 付与で、移動で、雑用で、ダリヤの安全を、気づかれぬように守っていた。
 不被注意到地在賦予、移動、跟雜用上保護妲莉雅的安全。
 唯一の気がかりは、ダリヤが兄のような想いは持っていても、恋はしていないことだが――それでも、穏やかな家族として暮らしていければいい、そう思うことにする。
 唯一擔憂的是就算妲莉雅對此擁有著像哥哥般的感情,也不會去戀愛——儘管如此,能作為平穩的家人生活就好了,我決定這麼想。
 オルランド商会はテオが亡くなってから、いまだ勢いを完全には取り戻していない。イレネオが必死に取りまとめているが、できる息子とはいえ、いまだ父ほどの力はない。
 歐爾蘭德商會從提奧去世後,現在也還沒完全取回勢頭。伊雷涅歐雖拚命地調停,但雖說是能幹的兒子,現在也還沒有父親般的力量。
 いざというとき、ダリヤとトビアスをかばえるだけの力はないだろう。
 有個萬一的時候,沒有能夠庇護妲莉雅與托比亞斯的力量吧。
 今はとにかく、目立たぬ方がいい。オルランド商会が力を盛り返すまでは――数年かけて安定すれば、きっと弟子達は安全なままでいられるはずだ。
 現在姑且不論,不醒目最好。直到歐爾蘭德商會重振力量——花費數年安定下來的話,弟子們一定也應該會很安全的。
 カルロはそう思いながら、一番弟子の紅血付与を見守った。
 卡爾羅一邊如此想著,一邊注視著一號弟子的紅血賦予。

  ●●●●●●

 春の日差しがあるのに視界が揺らぎ、足元が危うい。
 明明有著春天的陽光視野卻在搖晃,腳下很危險。
 カル口は眠気を装ってあくびをし、仕事場への階段をゆっくりと下りた。
 卡爾羅假裝想睡的打個哈欠,緩緩地走下往工作區的樓梯。
「商業ギルドに素材の受け取りに行ってきます」
「我們要去商業公會領取素材」
「帰りに食料品をまとめて買ってくるわ」
「回來時會買足食品回來的喔」
 出かけようとするダリヤ達に、カルロはわざと明るい声で返す。
 卡爾羅故意以明朗的聲音回答打算要出門的妲莉雅他們。
「ああ、よろしく。ついでに赤ワイン一ダースも追加で頼む!」
「啊啊,拜託了。順便也拜託你們追加一打紅酒!」
「もう、父さんたら! 今月は絶対飲みすぎ、働きすぎよ」
「夠了,爸爸真是的! 這個月絕對會喝過頭,操勞過頭啦」
「師匠、ほどほどにしないと本当に医者行きになりますよ」
「師傅,喝酒不適度就真的要去找醫生了喔」
 呼吸の合った二人に言われ、はいはいと仕方なさげに答える。予想通りだった。
 被默契一致的兩人說了,沒辦法地回答好好。一如所料。
「さて、俺はこれを調整するか」
「好了,我來調整這個吧」
 カルロはダリヤ達の手前、椅子に座り、すでに完成した魔導ランタンを引き寄せる。
 卡爾羅在妲莉雅他們的面前坐在椅子上,把已經完成的魔導提燈拉過來。
 それを分解するふりで、立ち上がって見送ることはしなかった。
 由於是假裝在分解那個,就無法站起來目送。
 今日は少々、胸の痛みが強い。うっかりよろめけば、二人そろって心配させることになる。
 今天的胸痛有點強烈。不注意踉蹌的話,會讓兩人一齊擔心的。
「あぁ、扉は開けておいてくれ。少し換気をしたい」
「啊啊,先去把門打開。我想稍微換氣一下」
 わかりました、と素直に返すトビアス、それに続くダリヤが、自分の前を歩き過ぎていく。
 坦率地回答我知道的托比亞斯,跟在其後的妲莉雅走過自己面前。
 本当は、部屋の空気など悪くない。
 其實房間的空氣不壞。
 ただ、これが二人を見る最後ではないかと、つい馬鹿なことを考えてしまった。
 只是,這會不會是能看到兩人的最後呢,無意間思考起了蠢事。
 ちょっと調子が悪いだけで、ずいぶんと弱気になりかかっている。まったく似合わぬ話だ。
 只是身體有點不好,就變得相當軟弱起來。是完全不適合的話題。
 幸い、二人はカル口のあせりに気づくことはなく、慌ただしく荷物を持ちはじめる。
 幸好兩人都沒注意到卡爾羅的焦躁,匆匆忙忙的開始拿起行李。
「ダリヤ、それは俺が持っよ。昨日雨だったから、足元が滑るし」
「妲莉雅,那個我來拿吧。昨天下雨,腳下很滑」
「お願い、トビアス」
「拜託了,托比亞斯」
 素っ気なくも重い荷物を受け取り、娘の足元を気にする兄弟子に安堵した。
 對不客氣的接下沉重的行李,注意著女兒腳下的師兄很安心。
 婚約というのに、手をつないだ二人を見た覚えがない。顔を赤らめる場も、隠れて出かけているそぶりもない。
 明明有了婚約,卻不記得有看過牽手的兩人。沒有臉紅的情況或偷偷出門的舉動。
 時折、盛り上がって聞こえてくるのは魔導具と素材の話ばかりで――どうにも兄と妹のようにしか思えない。
 偶爾聽到的熱烈談話淨是魔導具與素材的話題——無論如何都只能認為像是哥哥與妹妹。
 親の轢いた轍を進むのは、若人の本意ではないかもしれぬ。
 走在父母鋪好的道路上或許不是年輕人的本意。
 恋に進まぬままの結婚に、まだわかり合わぬままの関係に、心配がないとは言えない。
 戀愛沒有進展就結婚,還無法互相了解的關係,不能說不擔心。
 できるものならば、もっと長く、もっと先まで、この二人を見守りたい。
 如果能做到的話,我想守望這兩個人更長、更久。
 道を間違えたら違うと言ってやり、転んで立てぬようであれば手を差し伸べたい。
 搞錯路了就說錯了,跌倒站不起來的話就想伸出手來。
 魔導具師としての教えも足りず、父としてしてやれたことも少なく、未練は山とある。
 作為魔導具師的教導也不夠,作為父親要做的事也不少,有山高的留戀。
 だが、自分が二人にできることは、おそらくもう、多くない。
 但是,自己能對兩人做的事恐怕已經不多了。
 魔導書をできるだけ急いで書かなければ――
 必須要盡快寫好魔導書——

 見送る自分に、ドアの前、二人が同時に振り向いた。
 兩人在門前同時轉過身來對目送的自己。
「行ってきます、師匠」
「我走了,師傅」
「行ってくるわ、父さん」
「我要走了喔,爸爸」
「二人とも、気をつけてな……」
「你們兩個要小心呢……」
 カルロは出ていく二人に声をかけながら、内につぶやく。
 卡爾羅一邊對出門的兩人喊話,一邊在心裡嘟噥。
 助け合い、励まし合い、腕のいい魔導具師になってくれ。
 互相幫助、互相激勵,成為本領不錯的魔導具師吧。
 健やかで、困りごとなく、傷少ない日々をおくってくれ。
 要過著健康、沒有困擾、少受傷的日子。
 ただ穏やかに、家族そろって長く共にいられること、それがきっと幸せな人生で――
 只是平穩地、家人一塊長久在一起,那一定就是幸福的人生——
 いいや、それは本人が選ぶことだろう。
 不對,那是本人要選擇的吧。
 ただ、お前達それぞれに幸福であってくれ、それだけを祈る。
 只要你們各自是幸福的,只祈禱那點。

 ドアの向こうからは、さわやかな春の風が吹き込んでくる。
 從門的對面吹進來清爽的春風。
 陽光はひどくまぶしく、遠ざかる二人の背中が見えなかった。
 陽光非常耀眼,看不到兩人遠去的背影。
—————————————————————
啊啊啊啊啊~~~~~
誰能去砍死那個混帳啊!!
居然害卡爾羅爸爸早死!
還有托比亞斯!居然早就知道卡爾羅爸爸留了魔導書!!
啊啊啊啊啊!!!!!
為什麼要給媽媽娘家那邊錢啊!!??看地位明明就錢很多!?
我好擔心故事中後期媽媽娘家那邊的人會跑出來亂…




注意!

下方爆雷。




以下反白
最新393我們的妲莉雅終於有自覺了!!
但是因為顧慮到沃魯夫過去的心理創傷,逼著自己對沃魯夫隱瞞…
ヽ(#`Д´)ノ└───┘你們要拖多久啊~~~
引用網址:https://home.gamer.com.tw/TrackBack.php?sn=5497670
Some rights reserved. 姓名標示-非商業性 2.5 台灣

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留言共 8 篇留言

里歐‧潘恩
看前面笑得跟白癡沒兩樣,愈後面愈沉重...
老媽的娘家可能已經沒有力量了,在製作妖精燈的時候,不就送了信通知說老媽已過世。
當初硬是要老媽回娘家再嫁可能是為了獲得對方家族的援助,但在老媽過世之後援助或許就斷了。
也使得老爸必須匯錢給娘家...

06-29 22:51

SPT草包
看完文庫7附錄後,我突然覺得是因為妲莉雅的魔力配不上娘家那邊的地位所以才招贅了那個賤男人。06-30 00:03
淡味紅茶
老爸不是去修熱水器的嗎?怎麼修一修剩下半條命啊?搞了半天調和天狼跟炎龍之後做出來的到底是什麼...?

06-29 23:16

SPT草包
不是說了嗎,水蒸氣噴射機啊,就想像那邊裝了台鍋爐會對入侵者炸裂吧…?大概?06-29 23:59
淡味紅茶
那請問後面的劇情,這個裝置有上場的時候嗎?還有之後會說明媽媽離開的原因嗎?

06-30 06:55

SPT草包
沒有XD,媽媽的事文庫7附錄會說。06-30 14:22
里歐‧潘恩
我只希望台版能夠順順的出玩...

06-30 11:13

SPT草包
台版…不要再說了(遮,角川跟東立都沒下文了…06-30 14:22
KL
其實我一直覺得 對於兩情相悅卻各有心結的男女 雖然過分 作者也應該安排一下劇情 讓過去曾傷害過男方/女方的人出來當配角 再故意傷害一次曾傷害過的男/女主角 然後在加害者被保護者們殺氣騰騰的包圍時 自知理虧卻又嘴硬不肯認錯的加害者 將會試圖嘲笑對方只會躲在保護層中 甚至打算藉由讓對方認定當初會受傷是他自找的來讓對方再起不能(得不到就毀了的概念) 卻反被跨越了自己內心的陰影的原受害者的男/女主角給親手擊敗 這樣才能讓兩人各自有所跨越

06-30 20:47

SPT草包
妲莉雅那邊已經出現過一次了,被露琪亞搞得找不到能搭訕到更進一步的女性www,雖然妲莉雅接受了對方的道歉。06-30 22:17
KL
導致沃魯夫的陰影的女人應該很多吧 看作者有沒有辦法挑一個出來找打(我想到裙下野獸裡面有個認為內向又土的女主不配男主 好像還私下要女主別再接近男主 即便說了就算當男主洩慾對象也OK 卻因為無論如何都無法接受男主的真實 最後不甘的退出的傢伙)

06-30 23:44

SPT草包
是很多,可作者都沒說,對妲莉雅有意思的人在番外還會出現說。07-01 06:36
花喵
覺得老卡很偉大但也很自私,被留下的家人在甚麼都不知道的情況下突然要接受親人離世是最難受的,如果可以跟女兒全盤托出工作跟身體的事情,讓女兒有心理準備比較好吧,只是為了維護男人跟父親的尊嚴,怕女兒擔心甚麼的...結果只是造成主角更大的痛苦。而且女主自己前世也是過勞走的不是嗎,如果知道老卡接了這麼一個毀身體的工作後,搞不好有女主介入,擁有前世的醫療知識,可以讓老卡多活幾年,及早接受治療,或說服他放棄工作,跟女兒拿積蓄去遊山玩水去鄉下療養豈不美哉?

還有這個前未婚夫...唉...也真的很想記老卡眼光差一筆,本來以為初期過了就沒他戲份,為什麼一直冒出來刷存在感啦吼!每次刷每次前夫都很讓人生氣,就連後來那次合作我也覺得很沒必要吼吼。好想知道女主媽那邊到底發生甚麼事?老卡不惜讓自己弄到快死也要把酬勞全給女主媽家(給最愛的女兒不行嗎QQ!),人家怎麼對他的都忘了嗎> <真的超怕女主媽老家後期出來亂,看女主變超級有錢人又想揩人家一筆油還是利用女主人脈之類的。

07-06 05:24

SPT草包
所以這篇我看得很胃痛,也翻的很胃痛,卡爾羅爸爸做的大概就是老一輩爸爸會做的行為,但真的說出來會比較好,媽媽家那邊我真的不懂,看了文庫7附錄後還是不懂Orz07-06 06:31
花喵
(汗)所以媽媽家目前最新還是重重謎團就是了...搞這麼神秘不知道作者是不是埋了甚麼主線爆點準備以後要用,還有同母異父的弟弟,真好奇之後那邊會怎麼發展。

仔細想想,前夫家從父親那代,應該就靠女主爸賺了不少了吧,感覺就是把女主家當搖錢樹,光是女主發明防水布搞不好就讓前夫家賺到做夢都會笑,所以前夫甩了女主還想把女主研發的商品都吃乾抹淨真的是很狠,但女主人太好,還外包生意給他們做,要不是前夫哥還算常識人,不然女主完全有能力把前夫家拚倒吧,真的不信整個王都那麼大找不到其他合適商會合作幫忙,唉人善被人欺,還好後來遇到超優天降(物理)。

07-07 05:49

SPT草包
噗哈哈哈,天降!!XD07-07 06:28
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