創作內容

1 GP

Muv Luv Alternative - Next Answer 主線 (00-60)

作者:WitchFive│2017-10-28 12:30:18│巴幣:2│人氣:312
這是以前 mobage 夢寶谷的遊戲 Muv Luv Alternative - Next Answer

營運已經結束了 [ 2015 / 02 / 25 ~ 2016 / 02 / 25 ]

當年截下來的主線劇情,放在這吧。

每話開始及結束都有一段劇情,中間則是打怪的遊戲時間,所以會寫 op ed 來區分

台本中會看到一個『誰』很常出現,這是指玩家哦。
如想看圖文版,請見 https://nextanswer.github.io/  。


000 - 開場動畫




001 - 日本・横浜

OP
========
香月夕呼
「それじゃ最初の任務だけど…基地から全員を避難させるわ。その支援をして頂戴」
「知ってると思うけど、この横浜基地は旧横浜ハイヴの上にある。反応炉も機能したままでね」

『誰』
「はい。でも桜花作戦直前にBETAの襲撃を受け、反応炉は破壊されたと聞いています」

香月夕呼
「正しくは『破壊した』よ。BETAは反応炉に引き寄せられるから」
「けどそれが突如復活した。大量のBETAと共にね」

『誰』
「それも確率時空世界が統合された影響か…」

香月夕呼
「基地は壊滅的ダメージから回復していない。反応炉までの道は瓦礫の山で閉ざされているわ」
「奴らが這い上がってくる前に全員を避難させる。第一陣は既に送り出した」
「続く脱出部隊を守るのが、あんたの初仕事よ。しっかりやんなさい――まりも!」

神宮司まりも
「は!既にBETAは基地の敷地内他、周囲の旧市街にも出現しています」
「大尉はそれらを迎撃し、脱出部隊の進路を確保して下さい」
「作戦終了後は速やかに帰投し、香月司令と合流して下さい。その後、我々も脱出します」

『誰』
「――了解ッ!!」

ED
========
香月夕呼
「何とか無事に送り出せたわね。ま、初めての指揮にしては上出来と言っていいでしょう」

神宮司まりも
「横浜基地の爆破を確認――が、反応炉の破壊には至りませんでした…」

香月夕呼
「ま、当然よね。事態終息の暁には元の破壊された状態に戻ると信じる他ないわね」

『誰』
「それより我々はどこに向かっているんですか!?脱出隊とは方向が違うようですが…」

神宮司まりも
「はい、南極基地に向かいます。人類防衛機構の拠点にて本格的に反抗体制を整えます」
「まずは太平洋岸沿いに西進。途中、可能な限り物資を調達し沖縄から台湾へ渡ります」
「収容数の関係で、戦術機は陸路と海上輸送を部隊毎にローテーションして進みます」
「なお一部職員を乗せた輸送船は先行してマニラを目指しており、我々とはそこで合流予定です」

『誰』
「なるほど太平洋ならBETAと遭遇するリスクもほぼ無く、安心できますね」

香月夕呼
「その常識、今でも通用するといいんだけどね。ま、どのみち選択肢はそれだけだけど」
「じゃ、出発の準備を急がせて。再びBETAが出てくる前に、ここを離れるわよ」

『誰』
「――了解!」



002 - 日本・九州地方

OP
========
神宮司まりも
「全部隊、旧大分県に上陸。――!?司令、救援要請です!!」

香月夕呼
「…朝鮮半島からの南下組か。ここまで来れるなら拾ってやると伝えなさい」

『誰』
「――司令!?それは見捨てると言うようなものです!」

神宮司まりも
「北九州市の南、旧須野村付近にBETA群を多数確認。向かえば交戦となってしまいます」

『誰』
「…くっ。我々にそんな余裕はない。俺達にはどうすることもできないのか…」

神宮司まりも
「司令!部隊指揮官を名乗る、日本帝国斯衛軍・篁唯依中尉から通信が入っています!」

香月夕呼
「タカムラ…ユイ?その名前どこかで…ああ。ふうん…あの子ねえ…」

ノイズ
『こちらは日…帝国斯衛…第…篁…である!』

『誰』
「香月司令、ご存じなんですか?帝国斯衛軍に知り合いが…」

香月夕呼
「ちょっとした有名人よ。『誰』!あんたやっぱり救援に向かいなさい」

『誰』
「え――!?」

香月夕呼
「それに旧須野村のBETAも気になる。何故そんな所に…。ついでに見て来て頂戴」

ED
========
神宮司まりも
「大尉、お疲れ様でした。篁中尉の部隊も収容済みです」

香月夕呼
「『誰』、研究施設があったって?やっぱりね。ちゃんと破壊したでしょうね?」

『誰』
「勿論です。無人でしたし。しかし何故、研究施設があるとわかったんですか?」

香月夕呼
「確率時空をこれだけ歪ませるなんて無茶苦茶を可能にするのは人類の力じゃ無理だから」
「BETA由来の技術を使えば、そこにBETAが寄ってくる…。ま、そういうことよ」

『誰』
「…よくわかりませんが、所在の不明な施設を発見するヒントにはなりそうですね」

香月夕呼
「さ~て、あたしはあんたが持ち帰ったデータを分析するわ。まりも、後は任せたわよ」

『誰』
「了解!では準備が整い次第出発します。鹿児島から沖縄へ渡ります」



003 -  日本・沖縄地方

OP
========
CP
「――全軍補給完了しました」

『誰』
「閉鎖された米軍基地か…。補給が出来たのは幸運だったが、到底万端とは言えないな」

CP
「大尉、台湾に着けば更に補給が受けられる手筈になっています。少しの辛抱です」
「――ッ!?海中よりBETA群接近!!上陸コースです!」

香月夕呼
「ったく、こんな時に…。一体どこから湧いて来てんのよ」

CP
「司令!台湾からの通信です。統一中華戦線がBETAと交戦中!」

香月夕呼
「――全軍出撃準備!上陸するBETAを迎撃後、すぐ台湾に向かうわよ!」

『誰』
「台湾は一体どうなってるんだ?本当に補給なんてできるのか?」

篁唯依
「ホワイトファング1よりCP!出撃準備完了!」

香月夕呼
「ファング中隊出しなさい!――『誰』、あんたも急いでッ!」

ED
========
CP
「司令、BETAの出没元が判明しました。フィリピン・ルソン島北東部にあるハイヴです!」

篁唯依
「ハ…ハイヴ!?馬鹿なッ!そんなところにハイヴなど存在していないはずだ!」

香月夕呼
「存在してた世界があったってことよね…楽観してた訳じゃないけど厄介ねー」

CP
「事変以降、衛星の観測データがノイズで受信できず、地球の全容を把握できない悪影響ですね」

『誰』
「ルソン島といえば、マニラの目と鼻の先です。まさかマニラは既に…」

香月夕呼
「先行の輸送船団は今どこ?」

CP
「不明です。通信状態が極めて悪く、数日前から途絶状態です。ただ合流予定日はそろそろ…」

篁唯依
「香月司令、このままでは輸送船団の全滅もあり得ます!」

香月夕呼
「それ以前に台湾よ。どこまで無事なんだか…。とにかく、急いで渡るわよ!」



004 - 中華民国・台湾

OP
========
崔亦菲
「俗名『トゥゲガラオハイヴ』フェイズ2の初期状態と推測されます――」

香月夕呼
「ご苦労さん。で?イーフェイ中尉だっけ?あんたたち、合流を望んでるって?」

崔亦菲
「はい、本国から完全に孤立し、台湾島もBETAによって壊滅的被害を受けました」
「先の戦闘で、残された部隊も我々以外全滅しました」
「このままここで朽ちる訳にはいきません。ぜひ我等、暴風小隊の合流を許可して下さい!」

CP
「――司令、台湾島南端よりBETAが上陸、北進中!ハイヴからの増援です!」

香月夕呼
「…ちょうどよかったわ。『誰』、バオフェン小隊と一緒に出撃しなさい」
「あんたたちの働き次第では合流を許可するわ」

崔亦菲
「――了解!」

ED
========
香月夕呼
「ツイ・イーフェイ中尉、あなた達、バオフェン小隊の合流を許可しましょう」

崔亦菲
「は、ありがとうございます!」

香月夕呼
「でもさっそく後悔するかもよ?…まりも、説明して」

CP
「は…『誰』大尉、香月司令は先程、『トゥゲガラオハイヴ』制圧を決断されました」

『誰』
「え――本気ですか!?この戦力で…ハイヴを制圧!?自殺行為ですッ!!」

香月夕呼
「マニラは辛うじてまだ無事だとわかったの。けど壊滅するのは時間の問題よ」
「そして先行船団もBETAの餌食になるでしょう。正論は通じない。選択肢はこれだけよ」

『誰』
「…了解。崔中尉、覚悟を決めて死力を尽くしましょう――ッ!」



005 - フィリピン・トゥゲガラオ1

OP
========
篁唯依
「ホワイトファング1よりCP!第6層E11広間を確保した!」

崔亦菲
「バオフェン1よりCP!H-13の『縦坑』からC-4の『広間』に抜ける!」

『誰』
「早い…。さすがだ。篁中尉に崔中尉、調べてみればいずれも歴戦の衛士…」
「俺達も決して後れはとっていない筈だし、これなら何とか戦力の脆弱さを補えるかも…」

CP
「HQより全戦術機部隊へ!これより300秒後に作戦を第2段階へと移行する!」

『誰』
「全員聞いたな?これから先またいつハイヴとぶつかるかわからない」
「腕ならしのつもりで、さっさと制圧するぞ!!」

ED
========
『誰』
「篁中尉!崔中尉!無事でなにより!さすがは歴戦の衛士」

篁唯依
「大尉こそ見事な指揮です。戦術機捌きも群を抜いておられる」

崔亦菲
「大尉の経歴が気になるわ。こんな衛士がいたなんてね。帰ったらゆっくり話しません?」

『誰』
「ふたりに認められるなんて嬉しいね。じゃあ、早く反応炉を破壊して帰るとしよう」

一同
「「――了解ッ!!」」



006 -フィリピン・トゥゲガラオ2

OP
========
CP
「HQより全戦術機部隊!作戦を第4段階に移行!繰り返す――」

『誰』
「よし、一気に進むぞ!ファング中隊が作戦の要だ、傷一つ付けさせるなッ!!」

崔亦菲
「――暴風1了解ッ!絶対にS-11を大広間に届けるわよ!暴風全機、進めぇっ!」

『誰』
…高性能爆弾S-11。反応炉破壊用の爆弾とは言え、肉薄しなければ効果は薄い。
いかに篁中尉と言えども、反応炉に迫るのは至難の業。俺達が絶対に道を作る!!

篁唯依
「『誰』大尉!大尉の的確な援護があれば作戦は必ず成功するでしょう!」

崔亦菲
「無茶しすぎないで下さいよ!?暴れるのは私達暴風に任せてタカムラ中尉を頼みます!」

『誰』
「――了解ッッ!!」

ED
========
『誰』
「…反応炉の破壊を確認。トゥゲガラオハイヴを制圧しました」

神宮司まりも
「HQ了解――大尉、見事な指揮でした」
「先程、先行輸送船団との交信に成功し、ルソン島北西90Kmの地点にいることがわかりました」

『誰』
「…間一髪だったな。沿岸部の残存BETAを片付け終わった頃に沖を通過だ」

香月夕呼
「ただ、悪い知らせもあるわ。残念だけどひと足遅かった。マニラは壊滅的状態ね」
「何とか補給はできそうだけど、こんな場繋ぎじゃこの先保たない――というわけで」
「マレーシアに寄り道するわ。ブルネイに向かう。状況的にここはまだ無事でしょうから」
「ま、寄り道って程でも無いわ。それで補給ができるんなら、決して無駄じゃない」
「そんな訳だから、さっさと戻って来なさい。帰り道油断して怪我するんじゃないわよ?」

『誰』
「「「了解ッ!」」」



007 - インドネシア・バリクパパン1

OP
========
香月夕呼
「束の間の休暇を満喫してるトコ悪いけど、あんたに一働きしてもらいたいのよ――まりも」

神宮司まりも
「このブルネイから見て、丁度島の反対側に、バリクパパンという都市があります」
「そこに大規模BETA群が存在していることが確認されました」

香月夕呼
「これはハイヴじゃない。例の研究施設である可能性が極めて高いわ」

『誰』
「なるほど。この件、篁中尉や崔中尉には…」

香月夕呼
「明かす気はないわね。だからあんたに行ってもらいたいのよ」

『誰』
「了解しました」

神宮司まりも
「島の中央には険しい熱帯雨林が広がり、縦断は極めて困難です。北回りの海路で移動となります」

『誰』
「…結構時間がかかるな。では、準備が整い次第、早速出動します!」

ED
========
『誰』
「はい、司令の予想通り、例の研究施設でした。旧須野村との違いは特別ありません」

香月夕呼
「了解。レポート送っといて。それじゃ休暇の続き満喫して良いわよ~」

『誰』
「…壊滅した街で休暇も何も。それより、世界には何も変化がありませんか?」

香月夕呼
「無いわね。2つ破壊した位じゃ何も変わらない程、施設の数が多いってことかもね」
「とにかく今は、南極基地に行くことが最優先よ。これ以上のロスは人類の存続に関わるわ」

『誰』
「そうですよね…わかりました。それでは司令達の合流をお待ちしています」
…そうだ、早く司令を基地に無事届け、大局を見据えた戦略を立てて貰わなければ――
そうしなければ、本当に人類は滅亡してしまうかもしれない。…俺が、やらなければ!



008 - インドネシア・バリクパパン2

OP
========
神宮司まりも
「『誰』大尉、重大な問題が発生しました」
「輸送船団の旗艦に致命的なトラブルが発生し、航行不可能となりました」
「香月司令は、彼等をこの地に残すという苦渋の決断を下されました」

『誰』
「確かに俺達には猶予がない。やむを得ないか…。それで?俺の新たな任務とは?」

神宮司まりも
「この島の全島調査です。戦術機部隊は残せませんので、島の安全確認が必要です」

『誰』
「なるほど。既に北は俺達が調査済みだから、南と西か…」

神宮司まりも
「こちらはブルネイより西回りで調査隊を派遣します。大尉は南から西側へ向かって下さい」

『誰』
「了解――」

ED
========
『誰』
よもや最後の最後、島の西端でBETAに遭遇するとは…。
だが奴らはどうもスマトラ島から渡海してきたようだ。一体何故…?
調査部隊のレポートを総合すると、もうこの島には研究施設はない。もちろんハイヴもだ。
…俺がいくら考えてもわかる訳がない。司令の見解を待つ必要があるな。
しかし…こんな状態で船を置いて行けるんだろうか。せめて護衛の部隊が必要じゃないのか?
とにかく、補給線の到着までは気を抜かず見張っていよう。またいつ来るかわからない…。



009 - インドネシア・シンカワン1

OP
========
『誰』
「――ッ!?な、何だ…オープン回線で通信が――!?」

ノイズ
『こちら……BETA…戦中!付近…いないか!?救援…請…!シンカワン…で……交戦中!』

『誰』
――シンカワンと言ったか!?ここから北に100Kmの場所!行けない距離じゃない…がッ!
俺達は既に…燃料も装備も底をつきかけている――いや!
それでもこれを見捨てることは俺には出来ない!尽きかけているのは人類そのものなんだ!
救える命を救わなければ、俺達は何のために戦うというんだ…。
綺麗事だというのはわかってる。だけど――
「全機緊急出撃!救援要請受託!絶対に助け出すんだッ!!」

ED
========
『誰』
「はあ…はあ…はあ…お、終わった…のか?」

タリサ・マナンダル
「あんた助かったよ。あたしはタリサ・マナンダル少尉。所属はネパール軍だ」
「…とは言え、あたし達は国籍を問わず合流を重ねた混成部隊さ。マレー半島撤退のお仲間って訳」
「みんな、長い間の撤退戦で戦術機も強化装備も借り物でさ、細かな動きができなくてね」
「そこに今回の戦闘だったから、正直もう駄目かと思ってた。ホント、サンキューな!」

『誰』
「そうか…俺は『誰』。人類防衛機構軍特務大尉だ。だけど間に合ってよかった…」

タリサ・マナンダル
「え――た、大尉ィッ!?や、あ、あの――し、失礼しましたーー!!!」

『誰』
「ははは、気にしなくていいよ」
「それはそうと、状況を説明してくれないか?BETAが海を渡ってきた理由を…」

タリサ・マナンダル
「自分達はスマトラ島で奴らが群がる奇妙な研究施設を発見し、これを破壊したものの――」
「奴らは蜘蛛の子を散らすように四方に離散、その一部に押されて渡海を余儀なくされました」

『誰』
「研究施設を破壊…!?スマトラ島にもあったのか…」
「わかった。間もなく我が軍の増援が到着する。詳しい話は収容後に聞かせてくれ」



010 - インドネシア・シンカワン2

OP
========
香月夕呼
「渡りに船って、こういうのを言うのね~!ようこそ人類防衛機構軍へ!歓迎するわ~」

タリサ・マナンダル
「はあ…よろしくお願いします。それで、司令直々の命令とは何でしょうか?」

香月夕呼
「重要な任務を与えるわ。あんたたち、ブルネイに残って監視防衛部隊になりなさい」

タリサ・マナンダル
「…はい?えっと、一緒に南極に行くんじゃないんでしょうか?」

香月夕呼
「輸送船団がブルネイに長期駐留するのは知ってるでしょ?なら、BETAから守る部隊が必要よ」

タリサ・マナンダル
「あれ…?それに割く戦力はないって……」

香月夕呼
「だからあ!そこにあんた達が来たんじゃない!というわけでよろしく~!」

タリサ・マナンダル
「ええ~~!!い、いや不満は特に無いですが、何か釈然としない…」

CP
「――司令!海底からBETA群上陸!恐らく離散BETAの最後の一団かと思われます!」

香月夕呼
「じゃ、『誰』、チョビ、しっかり迎え撃ってやりなさい」

タリサ・マナンダル
「あ、あたしはチョビなんかじゃなーーいっ!」

ED
========
『誰』
「マナンダル少尉、それじゃ後のことは頼んだぞ」

タリサ・マナンダル
「はーい、お任せ下さい。あたし等の腕を信用して行ってきて下さいってね!」
「ただ、なるべく早く迎えに来て欲しいかな~。ブルネイは孤立しちゃってるからね」
「街が無事でも補給には限界があるし、もしもBETAが押し寄せてきたら…」

『誰』
「わかってる。俺達も全力で南極を目指すよ」

タリサ・マナンダル
「うん、それじゃ気をつけて。絶対死ぬんじゃないよ!」

『誰』
「ああ…そっちもな」
…ん?いつの間にかタメ口?ふふ…まあいいか。



011 - オーストラリア・グレートバリアリーフ

OP
========
『誰』
「グレートバリアリーフ…。こんな世界でも綺麗ですね。無事で良かった…」

香月夕呼
「豪州は世界の食料庫よ。世界の軍需工場たる南米と共に、人類の要、無事でなきゃ困るわよ」

CP
「司令…ケアンズ沖の珊瑚礁上に複数のBETAが確認されたとの報告が。残念ながら豪州は…」

香月夕呼
「…楽観なんてガラにも無いことするんじゃなかったわ」

『誰』
「司令!すぐに出撃命令を!BETAを叩かなければ――」

香月夕呼
「南下が優先よ。『誰』、艦の進路上にいるBETAだけを叩きなさい」

『誰』
「…り、了解!確かに、これ以上戦力を失うような真似はできないか…」

ED
========
香月夕呼
「BETAの様子は?」

神宮司まりも
「追ってくる気配はありません。海上を移動していることが奏功しているのかもしれません」

『誰』
「奴らは人間や戦術機を優先的に襲う。だが俺達が海上にいる事で襲撃の難易度が上がったから…」

香月夕呼
「そんな単純な話かしら。ま、いずれにしても幸運だったわ。さっさと進むわよ」
「ロックハンプトン沖に来たら、先遣部隊をブリスベンに向けて出すわ。準備しておいて」

神宮司まりも
「了解!ブリスベンでどこまで補給が可能か、速やかに調査し報告させます!」



012 - オーストラリア・クイーンズランド州東南端

OP
========
『誰』
「え――!?先遣部隊が…光線級に迎撃…!?そんな馬鹿なッ!光線級が…」

香月夕呼
「…これで豪州には、少なくともフェイズ3以上のハイヴがあるって事になるわね…」

『誰』
「ここにそんな規模のハイヴが。このままじゃ、本当に人類はおしまいになってしまう!」
「司令!自分に出撃命令を!光線級をそのままにしてはおけません!」
「ブリスベンの街の様子も調査しないと!この船の資源はもう僅かしかありません」

神宮司まりも
「『誰』大尉の危惧通り、ブリスベンで補給しなければ、先に進むことは不可能です」

香月夕呼
「…『光線級吶喊』か。危険は大きいけどこの際仕方無いわね。確実に遂行してきなさい」

『誰』
「――了解!」

ED
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香月夕呼
「…了解。ブリスベンは辛うじて無事だってことね?」

『誰』
「はい、多少ならば補給を受けられます。ただ、到底我々の希望には足りません」

香月夕呼
「そこでの補給の後、シドニーに向かいましょう。豪州政府に文句言われるだろうけど構わないわ」

『誰』
「了解!ではお待ちしています」
これまで最後方だった豪州が、最前線になってしまった。政府は大混乱だろうな…。その上――
大切な物資を俺達が持って行ってしまう…。文句が出るのも当然だろう。
だが、そうしなければ人類全体が窮地に立たされる。理解が得られればいいんだが…。



013 - オーストラリア・シドニー

OP
========
神宮司まりも
「…以上が、豪州軍から得られた情報です」

『誰』
「フェイズ4のエアーハイヴ…。光線級が出現した時から覚悟はしていましたが…」

神宮司まりも
「エアー湖は豪州大陸の中心よりやや南東寄りの場所にあります。現在のハイヴの勢力圏は――」
「同心円状に大陸全域に渡っており、グレートバリアリーフやブリスベンはその外縁です」
「シドニー及びキャンベラでも、50キロの地点まで接近を許してしまっているとのことです」

香月夕呼
「…で、豪州軍の要求は、補給をさせる代わり、BETAの迎撃に協力しろって事なのね?」

『誰』
「司令、補給を受けなければならない以上、やむを得ないのでは?」

香月夕呼
「そうね、ここはひとつ気前よく全面協力すると伝えて頂戴。『誰』、よろしく」

『誰』
弱みを見せない為には仕方ない。だがどうも司令には更に何か思うところがありそうだが…?

ED
=========
神宮司まりも
「状況終了、『誰』大尉、直ちに帰投してください。深追いするのは禁物です」

『誰』
「了解――しかし奇妙だ。何故BETAは突然キャンベラに進路変更したんだ!?」

香月夕呼
「良かったじゃない。おかげで豪州軍は全滅せずに済んだ。BETAに感謝しなくちゃね」
「まったく、最後方にいて練度不足って何よ。でかい口叩く割にはさっぱりだったわね」

『誰』
「でかい口…協力要請の際、何か言われたんですか?」

香月夕呼
「…とりあえず戻って来なさい。色々気になる事もあるし、即応体制を整えといて頂戴」

『誰』
「了解!」
BETAの転身や豪州軍の動きは奇妙だ。司令はどうやら見当が付いているようだが…。



014 - オーストラリア・キャンベラ

OP
=========
神宮司まりも
「司令!キャンベラの豪州軍から密告が…。軍部はハイヴ制圧にG弾を使用するとのことです!」

『誰』
「G弾!?BETA由来の元素で作られた人類には過ぎた兵器…。何故そんな物が豪州に!」

香月夕呼
「秘密裏に米国から持ち込んだんでしょ。やっぱりね、BETAはそれに引き寄せられたのね…」

『誰』
――そうか!豪州軍の秘密とはこれだったのか!しかしこれはあまりに拙いぞ!!

香月夕呼
「確かにG弾を2発も使えばハイヴは確実に制圧できるし、あれば使いたくなるのも解るわ」

『誰』
「何言ってるんです!横浜はそれで草木1本自生できない土地になったんですよ!?それに――」
「横浜で使った2発は想定を遥かに下回る威力だった!もしそれが想定通りだったら?」
「被害の規模や影響は計り知れません!人類の食料庫たる豪州が失われたら人類は――」

香月夕呼
「冗談よ、そんな事あたしが一番解ってるわよ。あたしの危惧は、首都キャンベラが襲われる事」
「もし基地が襲われてG弾が暴発したら首都は消滅。事実上人類は終わりって事よね?」

『誰』
「そ、そうか…。す、すぐにキャンベラに向け出撃します!」

ED
=========
香月夕呼
「キャンベラの被害は甚大か…。次に襲われたら一巻の終わりね。さて…どうするか――」

『誰』
「司令!ハイヴを――エアーハイヴを我々で制圧しましょう!」
「戦力が圧倒的に不足なのは承知の上です。が、このままではG弾が使われてしまいます!」
「首都で暴発してもハイヴ制圧に使われても、G弾が爆発した時点で取り返しが付きません!」
「桜花作戦も、絶望的状況で発令されたと聞きました。俺の部隊を信用してください!」

香月夕呼
「…『誰』、偶然ね。あたしも同じ事を考えていたわ」
「今の人類に分が良い賭けなんて1つもない。常に最悪から勝利を勝ち取らなきゃいけないのよ」

『誰』
「解っています!俺達はその為に存在してるんです。ハイヴは俺達が制圧します!」

香月夕呼
「わかった。『誰』、必ず反応炉を破壊しなさい」

『誰』
「――了解ッ!!」



015 - オーストラリア・内陸部

OP
========
『誰』
「…不思議な光景だ。自然の地形がまだ残ってる。BETAの支配地域なのにこれは一体…」

篁唯依
「確かにフェイズ4ハイヴの周辺とは思えない情景です」

『誰』
本来BETA支配地域の地形は、火山以外全て均され、草木も根こそぎ滅ぼされてしまう。
何故ここはその定石から外れているんだろう?
…ここが元々自然豊かな場所だという事が関係あるだろうか?他世界の統合によって――
ここにハイヴのある世界と無い世界が融合した事で、矛盾が発生したのかもしれない。

崔亦菲
「理由はさておき。それなら、ハイヴ制圧後の失地回復も早いって事よね!」

篁唯依
「確かに。人類の食料庫はまだ回復の余地が十分あると考えて良いのではないでしょうか」

『誰』
「そうだな。みんなの士気も上がるだろう。さて、中尉達は作戦通りに頼むぞ!」

一同
「「了解!」」

ED
========
篁唯依
「ファング中隊、所定位置に配置完了」

崔亦菲
「暴風中隊、こちらも配置完了」

『誰』
「よし、両中隊は豪州軍を援護しながらハイヴ周辺のBETAを掃討してくれ」
「俺は光線級吶喊を仕掛け、そのままハイヴに突入する。確認後後に続け!」

一同
「「了解!」」

CP
「作戦開始まで300秒――」

『誰』
「…………」



016 - オーストラリア・エアーハイヴ1

OP
==========
CP
「作戦開始まであと60秒――」

香月夕呼
「『誰』、篁、崔――あんた達には期待してるわよ。しっかりやんなさい」

一同
「「「了解ッ!!」」」

『誰』
「司令、くれぐれもG弾を発射させてしまわないよう、よろしくお願いします!」

香月夕呼
「解ってるわよ。余計な事は考えなくていいわ」

CP
「作戦開始まであと5、4…3、2、1――」

『誰』
「作戦開始!全機進めッッ!!」

ED
==========
『誰』
「クソッ!やってもやってもキリが無い!光線級の数が多すぎる――いや!」
「やはりこっちの数が圧倒的に少ないんだ。畜生、討伐記録は更新中だっていうのに!」
「このままじゃハイヴ突入前に砲弾も燃料も尽きてしまう!長刀にも相当なダメージが!」

ノイズ
「――なら後は任せて頂こう!貴隊は一旦下がり補給後、直ちに突入されたし!」

『誰』
「――!?だ、誰だ!?」

ノイズ
「こちらは人類防衛機構軍所属『インフィニティーズ』小隊!貴隊を援護する!!」

『誰』
「南極基地からの援軍か!?まさか司令が――よし!全機一旦下がって補給だ!急げッ!」



017 - オーストラリア・エアーハイヴ2

OP
==========
レオン・クゼ
「インフィニティ2よりCP!第8層W20広間を確保した!」

『誰』
インフィニティーズ…。元米国陸軍第65戦闘教導団。何故こんなところに…?
彼等はBETA大戦後の人類間戦争を米国優位に進めるため、設立された部隊の筈だ…。
恐ろしく腕が立つのは解るが、対BETA専門の部隊じゃない。
それなのに何故米国は、彼等を人類防衛機構に差し出した?一体何を考えている?
もしかして米国も、『この世界』では相当追い詰められてるのか?独力では身動きできない程に?
…何にせよ各国軍が少しでも多く共闘できる事は喜ばしい。特に米国が協力的なのは有難い。
俺達は国家間の利害を超えて手を組む以外に、生き残る方法はもう残されていないんだからな。
「よし、全機補給が済み次第発進する。兵站を奥へと延ばして行くぞ!!」

ED
==========
香月夕呼
「『誰』、そっちの様子はどう?」

『誰』
「援軍のおかげで順調です。この補給が済み次第、一気に反応炉目指して進みます」
「しかし司令、一体どうやって南極基地と連絡を付けたんですか?」

香月夕呼
「大気の影響を受けないような大規模通信機を作ったのよ。ガラにも無く前からコツコツと」
「アテにしていた補給が軒並み外れたせいで、完成まで随分かかっちゃったけどね」
「もっとも、南極基地に行けばこれ以上の設備がある。だからとっとと向かいたいわ」

『誰』
「了解、一気に片付けます!」



018 - オーストラリア・エアーハイヴ3

OP
==========
『誰』
「それにしても正直なところ、シミュレーターより楽です。BETAの数が少ないですね」

香月夕呼
「それは私も気になってたわ。ハイヴまでの道中にも自然が残っていた…」
「他世界の融合による影響だと思うけど、不幸中の幸いよね」

『誰』
「はい、これより反応炉まで一気に進み、破壊してきます」

香月夕呼
「ええ、よろしく」

ED
==========
『誰』
「――反応炉の破壊に成功!繰り返す!反応炉の破壊に成功!!」

ノイズ
「…………」

『誰』
「…?どうしたCP、こちらの声が聞こえないのか?」

ノイズ
「…………」

『誰』
「…CP?聞こえるか?一体何が起きた?CP、聞こえたら返事を――」

神宮司まりも
「――CPより全戦術機部隊!!即時撤退せよ!繰り返す、即時撤退せよ!!」
「エアーハイヴ目がけG弾が発射された!撤退せよ!安全圏まで至急退避せよっっ!!」

『誰』
「な――な、何だって!?冗談だろ!?こっちはハイヴの最深部だぞ!」
「帰路にも残存BETAがいるんだぞ!どうしてこんな――撤退!全機撤退だッッ!!」



019 - オーストラリア・エアーハイヴ4

OP
==========
篁唯依
「大尉!そちらの状況は!?間に合いますかッ!?」

『誰』
「わからない!残存BETAに進路を阻まれている!!それより――」
「CPと連絡が付かない!一体何があったかわかるか!?」

崔亦菲
「わかりません!G弾がいつ落ちてくるかも全然!とにかく逃げて下さい!」

『誰』
「ちくしょうっ!一体何がどうなってやがるっ!」

ED
==========
『誰』
「地上に到達した!!誰か情報をくれっ!G弾は今どこにいるっ!?」
「データリンクが上手くいってない!レーダーに反応がない!誰か応答しろ!!」

篁唯依
「――『誰』大尉!それで…正常です。我々にもまったくわかりません!」

『誰』
「――何だって!?」

CP
「CPより全戦術機部隊――」

『誰』
「――!?」

神宮司まりも
「G弾発射の報は誤報である!繰り返す、G弾発射の報は誤報である!」

『誰』
「ご…誤報…!?一体…何が起きたんだ?ん!?このコール音は!」

神宮司まりも
「『誰』大尉、秘匿回線での通信です。G弾の件は――」
「発射直前で司令の手によって阻止されました。しかしその際司令部内に大混乱が生じ――」
「誤報の訂正はおろか、通信が一時的に途絶状態になったのです。現在は回復しています」

『誰』
「…了解。とにかく詳しい事は帰投してから聞く」



020 - オーストラリア・内陸部復路

OP
=========
崔亦菲
「G弾発射の報せは、本当に単なる誤報だったのかしら?もしかして実際に――」

篁唯依
「崔中尉、その件はこれ以上詮索すべきでない。特に今は帰投が先決だ」
「残存BETAも相当数いる。余計な事に気を取られていると命を落とすぞ」

崔亦菲
「はいはい了解」

『誰』
…崔中尉の疑問はもっともだ。豪州軍上層部は色々ときな臭い。拙い事になってなければいいが。
とにかく今は、残存BETAを確実に仕留めることを考えよう。

ED
=========
香月夕呼
「お帰り~。悪かったわね~、びっくりしたでしょ?実はあたしもなのよ~」

『誰』
「一体何が起きたんですか?G弾発射は単なる誤報ですか?それとも――」

香月夕呼
「ストップ。それ以上の詮索は無しよ。ここから先は高度な政治が付きまとう事になる」

『誰』
「…わかりました」

香月夕呼
「ま、豪州軍の程度は、あんたも想像できるでしょ?そこから導いた結論で大体合ってるわ」
「でも彼等は初めからG弾を隠し持っていた訳じゃなさそうね。ある日突然そこにあった――」

『誰』
「…隠し持っていた世界と統合されてしまった結果という訳ですね?」

香月夕呼
「そう。その上、突然フェイズ4ハイヴを抱えることになったら同情の余地はあるかしら」
「まあいいわ。悪いけどゆっくり休息している暇はないわ。すぐにメルボルンに移動よ」

『誰』
「メルボルン…そこから南極へ向けて出発ですね?」

香月夕呼
「そういう事。後始末は豪州軍に任せればいいから」

『誰』
「――了解!」



021 - 豪州・タスマニア島1

OP
========
『誰』
「もうすぐタスマニアですね。ところで司令、我々は南極の何処に向かっているんですか?」

香月夕呼
「マクマード・スコット基地よ。マクマード基地とスコット基地を併合して造ったのよ」
「詳しい事は図書室にでも行って調べて頂戴。で、現在は南極条約を無視して軍備増強中ってトコ」

神宮司まりも
「司令、ニュージーランド南端のスチュワート島に例の研究施設があるという話ですが…」

香月夕呼
「ああ、南極組が見つけて観察を続けてたってやつね?あたしを待ってたのは賢明よね~」
「とりあえずMS基地への到着を優先するけど、その後はそこを調査するわ――『誰』!」

『誰』
「はい!」

香月夕呼
「その時は施設を破壊しちゃダメよ。今度は施設の詳細を調査したいから」

『誰』
「了解!やっとその余裕ができましたね。無傷でBETAだけを排除してみせます」

神宮司まりも
「――司令、タスマニア島西岸に小規模のBETA確認!エアーハイヴからの離散組のようです」

香月夕呼
「…何処に向かってるんだか。泳がしたいトコだけど仕方ないわ。じゃ、『誰』よろしく」
「豪州軍には割ける戦力なんてもうないでしょ。それに気になる事もあるし。行って頂戴」

『誰』
「――了解!」

ED
========
神宮司まりも
「大尉からのデータを分析した結果、司令の想像通りBETAは施設に向かっていたようですね」

『誰』
「司令、前から気になっていたんですが、何故BETAは施設に向かおうとするんでしょうか?」

香月夕呼
「活動エネルギーの補給でしょ。エアーハイヴの反応炉が破壊されたからこっちに――」

『誰』
「ち、ちょっと待ってください!それじゃ研究施設には反応炉があるってことですか!?」

香月夕呼
「それをこれから調べるんでしょ。それより残存BETAの更なる出現に備えて、あんたを置いてくわ」
「MS基地から迎えをやるから、合流し次第施設に向かいなさい。それまでそこで頑張ること」

『誰』
「――了解!では豪州軍に補給要請をお願いします。部隊を割く余裕はなくてもそれぐらいは…」

神宮司まりも
「大尉、既に要請済みです。どうぞご安心ください。それではお気を付けて」



022 - 豪州・タスマニア島2

OP
========
神宮司まりも
「MS基地HQより全軍に通達!香月夕呼司令は1345時、無事MS基地に到着した――」

香月夕呼
「やっほー、元気?」

『誰』
「司令、ご無事で何よりです!これでBETA反攻作戦が本格化するんですね!」

香月夕呼
「そういう事。で、既に迎えがそっちに向かってるわ。合流後はそこの指示に従いなさい」

『誰』
「了解!――ん!?司令、BETAです!それではちょっと狩ってきます」

香月夕呼
「よろしく。油断してつまんない事で死んだりしないで頂戴よ?あんた使い勝手いいんだから」

『誰』
「…知ってましたけど、酷い言われようですね。まあ、大丈夫です――では!」

ED
========
神宮司まりも
「――このため研究施設の破壊は厳禁です。以上で作戦の確認を終わります」

『誰』
「了解。こちらはあと3時間程でスチュワート島に到着します。ところで――」
「南極はどんな感じなんですか?正直、想像がつかないんですが」

香月夕呼
「案外暖かいわよ。バナナで釘が打てるって聞いてたのに全然無理。面白くないわ」

神宮司まりも
「それには-40度程必要ですが、MS基地は厳寒期でも-30度を下回る事はまずありませんから」
「氷点下には違いありませんが、基地内は温暖で広い上、海抜も低いので過ごしやすいですね」

『誰』
「なるほど。とにかく無事に任務を終えて、そちらに行くのを楽しみにしています」



023 - ニュージーランド・スチュワート島

OP
=========
『誰』
「…案の定、施設周辺にはBETAが群がってるか。まずはあれを引き剥がさないと…」

CP
『全戦術機部隊に告ぐ!300秒後に作戦開始!潜入部隊を待たせるなよ!』

『誰』
「――了解ッ!!」
「…いよいよ事変の謎に迫る時が来た…。何としても有益な情報を香月司令に送り届けなければ…」

ED
=========
CP
「『誰』大尉、入手した情報をマクマード・スコット基地に転送完了しました!」

『誰』
「わかった。追加の調査命令に備え、暫くここで待機する。全機、BETAの接近に注意しろ」

香月夕呼
「――『誰』、データを受け取ったわ。1つ質問だけど、これ全ての部屋の映像よね?」

『誰』
「自分は中に入っていない上、映像も見ていませんが、そうだと聞いています」

香月夕呼
「戦術機サイズの通路や部屋も、人間がちゃんと調べたわよね?」

『誰』
「もちろんです」

香月夕呼
「じゃあ…地下に続く隠し扉があった…なんてことはない?」

『誰』
「無い筈です。これまで施設を爆破した際も、そうしたものを確認したことはありません」
「もしかして、反応炉の存在が確認出来なかった…という事でしょうか?」

香月夕呼
「そうね。少なくともひと目見ただけじゃ解らなかった。ま、あるかどうかも不明なんだけど」
「とりあえずわかったわ。もう一度分析してみる。それでも無ければあんた達は帰ってきていいわよ」

『誰』
「了解!」



024 - 南極・マクマード・スコット基地

OP
========
『誰』
「『誰』大尉、ただ今帰還しました!…しかし、司令室の雰囲気はあまり変わりませんね」

神宮司まりも
「大尉、早速ですが当マクマード・スコット基地を中心とした、我々の現状をご報告します」
「現在、大陸沿岸部を中心に存在する各国の観測基地を接収、拠点として利用する為の作業中です」
「しかし大陸は豪州の2倍程の広さがある上、環境も過酷です。その為、作業は難航しています」
「標高4000mを超える地域は-60度を下回る事もありますので」

香月夕呼
「それでも四方を大海に囲まれているし、いろんな意味で拠点には最適なのよ」

『誰』
「わかります。それにしても本当に南極条約はどこかに行ってしまったんですね」

香月夕呼
「この後に及んで軍事利用禁止とか言ってる場合じゃないし。さて次の予定だけど――まりも」

神宮司まりも
「は!大尉には休暇の後、極寒環境下でのBETA戦を想定した訓練を行って頂きます」

『誰』
「――了解!」

ED
========
『誰』
「…寒冷地を想定した訓練はこれまでも行ったことはあるが、南極では勝手が違うな」
「特にクレバスには細心の注意を払わないと、一気に数十m滑り落ち――ん?司令部から呼び出しだ」
「何かありましたか?」

神宮司まりも
「昭和基地からの連絡で、激しく破壊されたタンカーが漂着したとのことです」

香月夕呼
「海流から推測すると、南米かアフリカの南端から流れてきた可能性が高いわね」

『誰』
「…まさかそのタンカー、BETAが破壊したと言うつもりですか?」

香月夕呼
「わからない。でもそうなら最悪ね」

『誰』
「豪州に続きその両大陸までBETAの支配下となると、人類は…」

香月夕呼
「とにかく行って調べてきて。篁とツイの部隊も連れて行きなさい――で」
「途中にあるマラジョージナヤ基地の様子も見てきて頂戴。連絡が付かないのよ」

『誰』
「了解、急ぎ出撃します」



025 - 南極・マックロバートソンランド

OP
========
『誰』
「プラトー基地に着いたのはいいが…この吹雪じゃ身動きが」取れないな…」

篁唯依
「さすがに戦術機の映像補正でも多少視界を広げるぐらいしかできない状況では…」

イーフェイ
「ここからマラジョージナヤ基地まであとどのぐらい?」

篁唯依
「――大尉!モーソン基地から救援要請です!BETAが出現した模様ッ!」

イーフェイ
「なっ!?モーソン基地と言えば、確かマラジョージナヤ基地の南東だったわよね!」

『誰』
「BETAが現れただと…!?今ここを発つのは危険だがやむを得ない。全機出撃だ!」

一同
「「了解!!」」

ED
========
イーフェイ
「…これで終わり?随分少ないじゃない。もしかして『はぐれ』かしら?」

『誰』
「そうかもしれないが…。だとしたら一体、奴らはどこからはぐれて来たんだ?」

イーフェイ
「そして、一体何処へ向かっているのか…。昭和基地に漂着したタンカーとの関連も気になるわ」

『誰』
「昭和基地は無事なのか?」

篁唯依
「はい、定時交信は今でも確立されていて無事です。BETA襲撃といった報告も受けていません」

イーフェイ
「ん~~、とにかく急ぎましょう。何だか気持ちが悪いのよね。今ひとつ腑に落ちないわ」

『誰』
「その前にマラジョージナヤ基地を忘れるな。こっちは未だに反応無し――いくらなんでも変だ」

篁唯依
「そうですね、準備が整い次第出発しましょう」

イーフェイ
「ええ!」



026  - 南極・エンダービーランド

OP
========
篁唯依
「…もうすぐマラジョージナヤ基地が見えてくる筈ですが…」

崔亦菲
「この視界じゃ無理じゃない?それほど大きな施設じゃないらしいし…」

『誰』
「…じゃあ、あの妙な影は…何なんだ?」

篁唯依
「あれは――基地ではないぞ!ま、まさか研究施設が南極にもあったとは…」

『誰』
「可能性としてはあり得る話だ。どうりで呼びかけに反応がなかった訳だ…」

崔亦菲
「モーソン基地を襲ったBETAはこの施設と関係がある…に決まってるわよね」

篁唯依
「種を明かせば簡単だったな。――大隊規模のBETA接近!『本隊』はこいつらか!」

『誰』
「全機兵器使用自由!視界が悪い、くれぐれも討ち漏らすんじゃないぞ!」

一同
「「――了解!!」」

ED
========
篁唯依
「大尉、申し訳ありません…。施設を破壊してしまいました」

『誰』
「こんな状況での戦闘なら仕方無い。それより――地下に続くこの穴は何だ?」
「今まで施設の地下にこんな空間はなかった。それは確かな事だったのに…」

崔亦菲
「大尉、氷のトンネルが続いているようですよ?もしかして、これってBETAの通り道…?」

『誰』
「…下りてみよう」
「施設の地下の状況を、俺が見逃していただけなのか、今回が特別なのか、解るかもしれない」

篁唯依
「私が先行します。崔中尉は殿を」

崔亦菲
「了解。気をつけなさいよ?」



027 - 南極・地下氷穴

OP
=========
篁唯依
「広大なトンネル…もはやこれはハイヴの横坑というべきか…。南極の地下に何と巨大な…」

『誰』
「南極大陸は、平均しても2.5kmの厚さの氷で覆われているからな…」

崔亦菲
「けど、さっきから、突然行き止まりになったりしてるわね。エアーハイヴの時と同じだわ」

『誰』
「あれは、世界の融合と関係しているようだ。ハイヴ周辺に自然が数多く残っていたのと同じだ」

崔亦菲
「ハイヴのある世界とない世界が融合した場合、それは地下にも影響するって言うんでしょ?」

『誰』
「言われてみれば当然の事だよな。で、だ。それならここは何なんだ?ハイヴにしては小さすぎる」

崔亦菲
「生き残っているのはこの道だけ。確かにおかしいわよね」

篁唯依
「大尉!レーダーに感あり。この奥にBETAがいる模様です!数は――」

『誰』
「それが施設から逃げ込んだBETAなのか、南極の地下がハイヴ化しているのか――」

崔亦菲
「こいつ等を倒して先に進めば解るわよね…。とにかくぶっ飛ばしてやるわ!」

ED
=========
篁唯依
「大尉、この先は行き止まりです」

『誰』
「…マッピングによれば、これで全ての通路は網羅した筈だ。本当に小規模だったな」

崔亦菲
「見落としようもないから、これで終わりって事?ホントにホント?ここはハイヴじゃない?」

『誰』
「うん、ハイヴどころか、単に行き止まりの多い横穴だ」

篁唯依
「しかし、この横穴の存在自体が奇妙だという点は解決できないままでしたね…」

『誰』
「…まあいい。全てを香月司令に報告して分析してもらおう。俺達は昭和基地に急ぐぞ」

一同
「「了解!」」



028 - 南極・昭和基地

OP
=========
篁唯依
「――昭和基地より緊急通信!BETA接近につき、救援請う!繰り返す――」

『誰』
「マラジョージナヤで討漏らした奴か!?拙い、急ぐぞ!!」

崔亦菲
「昭和基地にはどっかの部隊がいたりしないの!?迎撃に出しなさいよッッ!!」

『誰』
「海岸沿いに北上して別の基地に向かっている!俺達が追いつくのが一番早い!急げッ!」

崔亦菲
「想定外の戦闘続きで弾薬も燃料も危ないんだけど!」

篁唯依
「ファング1より暴風1。愚痴るな、条件は皆同じだ。それとも怖じ気づいた事の誤魔化しか?」

崔亦菲
「はあ!?ふざけてんじゃないわよ!やってやるわ、ほら、急ぎなさいよッ!」

篁唯依
「――大尉!昭和基地に向かうBETA群に追いつきました!」

崔亦菲
「なんだ、数は多くないわね。ったく、面倒掛けてくれるわ!ここで必ず全滅させるわよ!」

『誰』
「崔中尉の言う通りだ。全機、戦闘開始ッッ!!」

ED
=========
篁唯依
「こちらファング1、中隊全機、周囲にBETAの反応無し!」

『誰』
「了解――だが全機全周警戒!まだ気を緩めるな。1匹たりとも見逃すんじゃないぞ!」

香月夕呼
「――『誰』取り込み中のとこ悪いんだけど」
「あんたから報告を受けた…何?氷の地下洞窟?の事なんだけど、そんなもの無かったわよ?」
「それどころか、研究施設すら見当たらず、マラジョージナヤ基地がそこにあったって」

『誰』
「基地が…あった!?そんな馬鹿な――いや、もしやそれは世界が元に戻ったという事か?」

篁唯依
「ですがこれまで施設を破壊した際、それが消えたという報告は受けたことがありません」

香月夕呼
「今まで破壊した跡地に今行けば、どうなってるのかしら?空間が元に戻る時間は一様じゃないのかも」

篁唯依
「『誰』大尉!北西方面に向けて渡海を開始したBETAが発見されました!」

香月夕呼
「北西に渡海?もしかして…。『誰』、この話は後よ。すぐ後を追いなさい」
「BETAを間引いた後、発信器を打ち込んでそのまま行かせるのよ」

『誰』
「発信器…行き先を調べるのか。了解!」



029 - 南極・東オングル島沖

OP
=========
『誰』
「…奴ら、完全に南極から離れようとしているな…。一体どこに向かおうとしてるんだ?」

香月夕呼
「恐らくブーベ島よ。『世界で最も隔絶した孤島』と呼ばれる島が、2500km先にあるの」
「旧ノルウェー領の無人島で、気象観測所しかなかった筈なんだけど、もしかしたら…」

『誰』
「そこにハイヴか研究施設が…?BETAの奴ら、どれだけ鼻がいいんだよ!」

香月夕呼
「とにかく指示通り、上手く間引いて発信器を打ち込むの。いいわね!」

ED
=========
CP
「司令、BETAが多年氷帯を抜け、海に入りました。後は発信器の信号頼りです」

香月夕呼
「お疲れ。ところで話の続きよ。マラジョージナヤは複数の世界が融合していた可能性があるわ」
「研究施設がある世界、南極の地下にBETAが掘った洞窟がある世界、そしてこの世界…」
「だから施設の地下に洞窟があるのは例外なのよ。あんたが言うように、普通は無い…」

『誰』
「で、その世界は、施設の破壊によって全部切り離され、本来のこの世界の姿に戻った…?」

香月夕呼
「そういう仮定が成り立つわね。予想はしてたけど、世界は随分複雑に絡み合っているようね…」

『誰』
「一体、あの施設に何があればそんなトンデモないことが起きるんだ?司令には解るんですか?」

香月夕呼
「さあね~。何にしろもっと情報が無いと確証には至らないわね。こんな例外もあるワケだし」
「――で、ブーベ島の事だけど。そんな訳で行って来て。何があるかその目で確かめて来て」

『誰』
「え!?2500kmはさすがに無理ですよ!補給だって――」

香月夕呼
「昭和基地に設備があるわ。砕氷能力を持った戦術機母艦もね。日本帝国舐めないで欲しいわね」

香月夕呼
「いや~さすがあたし。先見性あるわ~。BETAより先に着いて頂戴ね。宜しく~」

『誰』
「り、了解…」



030 - 南極・ブーベ島

OP
=========
『誰』
「――あれがブーベ島か。ただの氷の島にしか見えないな…」

CP
『――総員、戦闘配置に付け!ブーベ島にBETAを確認!総数不明だが相当数に上る!』

『誰』
「何だと!?俺達は発信器を追い越したんだぞ!?」

篁唯依
「『誰』大尉!カメラを最大望遠に!島の中央部に巨大な研究施設が!!」

『誰』
「何だあれは…。今までとは大きさが違う。あれがBETAを引きつけているのか!?」
『――司令本部より通達!全戦術機部隊は研究施設を調査後速やかにこれを破壊せよ!』
『発信器を取り付けたBETAが上陸する前に、速やかに施設を調査し破壊せよ!本艦は――』

ED
=========
『誰』
「よし!施設の破壊完了!…篁中尉、気づいたか?」

篁唯依
「施設中央部の巨大な機械の事ですね?BETAの反応炉に似ていました…」

崔亦菲
「香月司令の読みは正しかったって事なの?けどこれまで見た施設にそれらしいものは――」

『誰』
「やはり小型故に見落としたという事だろう。これまでの施設にもどこかにあったんだ」
「人類が反応炉を造り上げた世界…。この世界よりも進んだBETA研究…本当なのかよ」

崔亦菲
「ならその結果、一体何を得たのかしら?まさかそれが世界の融合だなんて言わないわよね?」

『誰』
「わからない。だが何であれ、それは無関係ではないし、その結果人類は絶滅の危機に瀕している」
「世界の謎を解き明かす為には、もっと多くの情報が必要なのは間違いないようだ」

篁唯依
「――『誰』大尉!海底の発信器がアフリカ喜望峰に転進したとの連絡が入りました」

『誰』
「アフリカにハイヴか研究施設があるという事か…。豪州同様アフリカも無事ではなかったな」

篁唯依
「もはや地球上に人類が無事に生きられる土地はないという事でしょうか…」

『誰』
「篁中尉、希望は捨てるな。世界を元に戻せる事がわかったんだ。戦い続けよう!」
「恐らく俺達は、喜望峰に向かうよう指示される筈だ。準備を整えておいてくれ」



031 - 南アフリカ・ケープポイント

OP
=========
『誰』
「ここがアフリカ大陸喜望峰か。美しい海と自然の中に遺棄された観光バスが物悲しいな」

篁唯依
「大尉、アフリカ連合軍から緊急通信!救援要請です!発信源は――ケープタウン!」

『誰』
「了解。暴風中隊は俺達と同行。ファング中隊は後方で待機だ」
「アフリカの状況は覚悟していたとは言え、救援要請を聞くと絶望的な気持ちになるな」

イーフェイ
「ねえ!大尉って良い腕してますよね?私、大尉みたいな強い衛士、興味あるんですよ」
「BETA撃破のスコアで、私が勝ったら、ひとつ何でも言う事聞いてもらえません?」

『誰』
「中尉、キミはいきなり何を――」

イーフェイ
「――っと、話してる間に目標地点に到着!ったく、会いたくない奴がうじゃうじゃいるじゃないの!」
「それじゃ大尉、さっきの約束忘れないでくださいね!暴風全機行くぞッッ!!」

『誰』
「げ、撃破スコア勝負の話か?そんな勝負を受けた覚えはない!お、おい、待て、崔中尉…!」

ED
=========
『誰』
「視認できるBETAは全て片付けたな」

イーフェイ
「目標地点のケープタウン市街地を視認。…ところで大尉、私、負けちゃいましたね~」
「でもやっぱり上官は強くなきゃ。悔しいけど嬉しいから満足だわ」

『誰』
「ありがとう中尉。俺が悲観的になっていたから、励ましてくれたんだろう?」

イーフェイ
「あら、気づいてました?ま、でも約束は約束。私が負けたんだから何かしないと…」

『誰』
「別に気にしなくても――」

イーフェイ
「いいえ、ダメよッ!そうだ!私に勝ったご褒美に今度、手製麻婆豆腐を御馳走します」

『誰』
「麻婆豆腐か…悪く無いね。それを糧に踏ん張るとするか」
「よし、市街戦に備えて各自装備の点検だ!」

一同
「了解!」



032 - 南アフリカ・コメキー市街

OP
========
『誰』
「アフリカ連合軍支援のため、BETAとの戦闘を継続する。応答しろ、ファング1」
「どうした?ファング1。篁中尉?何かあったのか…?くっ…応答が無い」

イーフェイ
「…大尉!BETAと交戦中のアフリカ連合軍所属機と思われる戦術機部隊を確認!」
「篁中尉のことも気になるけど、今は目の前の敵に集中して!」

篁唯依
「…大尉!……『誰』大尉こちらファング1……」

『誰』
「何があった、ファング1!?」

篁唯依
「コメキー市街中心部に駐留中、南西より現れたBETAの大群に急襲を受け被害は甚大!」
「救援を要請します!このままでは全滅の恐れも!」

『誰』
「くっ、バオフェン中隊はこのままアフリカ連合軍の救援へ!俺達はコメキーへ向かう!」

イーフェイ
「バオフェン1了解!大尉…タカムラを守って!ライバルに死なれたら困るのよ」

『誰』
「ライバルね…。約束する。ここは任せたぞ。死ぬなよ、中尉」

イーフェイ
「大尉こそ。麻婆豆腐の約束、果たすまで死ぬんじゃないわよ」

『誰』
「――中隊全機、ファング中隊救援のため、南西40kmコメキー市街へ向かう!ついて来いッ!」

ED
========
『誰』
「くそ…!まだBETAは半数以上残っている!補給部隊は撤退を急げ!」

篁唯依
「大尉!救援に感謝します!補給部隊が全滅せずに済みました!」

『誰』
「無事だったか、ファング1!この数のBETA相手によく堪えた!さすがだ!」

篁唯依
「突然現れた欧州連合軍中隊に助けられました」

『誰』
「欧州連合軍が…?」

イーフェイ
「欧州連合軍及びファング中隊、尚も戦闘継続中!戦況は劣勢!大尉は右翼を!」

『誰』
「了解!とにかく話は後だ!奴らを1匹も討ち漏らすなよ!」



033 - 南アフリカ・コメキー

OP
=========
『誰』
「よし、あらかた片付いたな。全機、被害状況を報告せよ!」

篁唯依
「こちらファング1、損害データを送ります。こちらは軽微ながら、欧州連合軍の被害は甚大です」
「彼らはまともな補給も受けていない状態で我々の支援に入り犠牲となりました…」

『誰』
「くそ…!食い散らかしやがって化け物どもめ…!人間を何だと思っている…!」
「とにかく一度話がしたい。欧州連合軍の指揮官は誰だ?応答願いたい――」

篁唯依
「『誰』大尉!あそこを見てください!衛士です!追われているようですが…」

『誰』
「あ、あれは――あの人は!どうしてここに…」

神宮司まりも
「……ッ!」

篁唯依
「兵士級に追われている…!」

『誰』
「神宮寺軍曹ぉぉぉ…ッ!!!」

ED
=========
篁唯依
「敵BETAの全滅を確認。何とかなりましたね、大尉」

神宮司まりも
「戦術機が大破してしまい、機を捨てて脱出したところを運悪く奴らに見つかった。助かったぞ」

『誰』
「数瞬遅れていたら、兵士級に頭をもっていかれそうだった。ひやひやしたぞ…」

神宮司まりも
「私は帝国軍所属、神宮司まりも少佐だ。帝国軍欧州派遣大隊の指揮を執っている」

『誰』
「へえ、俺の知っている神宮寺軍曹とは経歴も所属も……少佐…!?」
「し、失礼しました!自分は『誰』!階級は大尉であります!」

神宮司まりも
「よろしく『誰』大尉。さっそくだが…私の隊はほぼ全滅している。そこで――」
「指揮権は大尉に委ねる。我々を同行させて欲しい。無論貴官の指揮に余計な口は挟まない」

『誰』
「了解しました。補給を受ける間アフリカ情勢の詳細をお聞かせください」
「全機!補給と機体点検を急げ!バオフェン中隊との合流に向かう!」



034 - 南アフリカ・ケープタウン

OP
========
イーフェイ
「さすが、大尉。見事にお姫様奪還、成功させたわね」

篁唯依
「ひ、姫様奪還!?…何を。人を囚われの姫みたいに…」

『誰』
「崔中尉は、そんな態度だが篁中尉のことを心配していたぞ。神妙な顔をしてな」

篁唯依
「そうか。それは素直に嬉しい。崔中尉もアフリカ連合軍救援、ご苦労だった」

イーフェイ
「ふん、こんなの大した事ないわよ」

『誰』
「だが喜んでばかりはいられない。神宮寺少佐から受け取った情報によるとアフリカの情勢は深刻だ」
「少佐は帝国軍欧州派遣部隊としてエジプトで戦線を維持してきたが劣勢。アフリカへ撤退」
「だがアフリカはBETAの侵略を受け、全土が前線と化していた為、更なる戦闘を強いられた」
「そんな満身創痍の中、篁中尉の救援要請を受信し、駆けつけてくれたんだ」
「アフリカはもう後方じゃない。人類生存に不可欠な要衝が、次々と失われている…」

イーフェイ
「…事情はわかった。でも大尉、落ち込んでる場合じゃないでしょ?最近、考えてる事が暗いわよ!」

篁唯依
「――大尉、大隊規模のBETA群確認!迎撃しましょう!」

『誰』
「…俺がネガティヴになってどうする。よし迎撃だ!――また崔中尉に助けられたな」

イーフェイ
「貸しは作っといて損ないんで!それじゃお先に!暴風中隊全機私について来なさいッ!」

『誰』
「よし、俺達も出るぞ!中隊全機、兵器使用自由!」

ED
========
イーフェイ
「さすがに連戦はきっついわね~。休暇貰ってプール行きたいわ。温水でサウナ付きの」

篁唯依
「温泉か…それはいい。疲れが一瞬で取れる」

『誰』
「温泉に浸かれば、疲れが一瞬で取れる、か。『ツカレ』だけに……」

イーフェイ
「うん?何か言った、大尉?…あ、そうだわ」
「アフリカ連合軍の報告だと、部隊を襲ったBETAは南西から来たらしいわよ」
「で、今倒した奴らも南西からこっちに移動してきたじゃない。あんた達もそうだったでしょ?」

篁唯依
「確かに。という事はここから北東方面に何かがあるという事か、『何か』が…」

『誰』
「神宮司少佐に話を聞いてみる。補給中は、各自部下に休息を取らせておいてくれ」

一同
「「了解」」



035 - 南アフリカ・ベン=エティーブNR1

OP
========
イーフェイ
「うわ。何よ、このBETAの数孵化したカマキリの卵みたいに群れてるんですけど」

『誰』
「神宮司少佐の情報通りだな。ベン=エティーヴ自然保護区か。けどこれじゃ――」

イーフェイ
「まるでBETA保護区じゃない。それより、研究施設があるのは地下なんですよね?」

『誰』
「ああ。アフリカ連合軍が発見し、監視していたとの事だ。まったく、ひた隠しにしやがって…」
「噂では、施設にアフリカ連合軍のマークが描かれていたものの、軍部には憶えがないらしい」

篁唯依
「つまり、どこかの世界のアフリカ連合軍が作ったという事か…。その噂が事実だとすれば――」

イーフェイ
「初めて研究施設の所属が明らかになるわね。軍が人工反応炉の研究に関わってた…ま、あり得るか」

篁唯依
「そんな風に言われるから隠蔽したのだろう。今更駆り出された現場の衛士達はたまらないな…」

『誰』
「それでも叩く気になったんだ。神宮司少佐がどう交渉したのかは知らないが、絶対に成功させる」
「部隊を2つに分ける。A部隊は突入後、内部の調査。B部隊は地上Aゲートの維持」
「A部隊は俺達とバオフェン中隊、B部隊は残り全機に任せる」
「よし、全機作戦開始!誰一人死ぬんじゃないぞ!」

ED
========
イーフェイ
「Aゲート確保!地下施設入り口まで500!一気に行きましょう!突入命令をッ!!」

『誰』
「よし、A部隊、俺に続け!蹴躓いて転ぶなよ!手は貸してやれないからな!」

イーフェイ
「了解!」

『誰』
「一刻も早く、内部の調査を終えて帰還する!彼らの負担を1秒でも減らすんだ!



036 - 南アフリカ・ベン=エティーブNR2

OP
========
イーフェイ
「『誰』大尉!!横の通路!気をつけて!突撃級よ!」

『誰』
「ああ。わかってる。……ッ!バオフェン1!後方より、BETA多数!気をつけろ!」
「…中尉から離れろ化け物共ッ!」

イーフェイ
「…謝謝。助かったわ。私ってば見事に押し倒されちゃったわね。BETAに」

『誰』
「その減らず口を聞くと安心するよ、全く…。怪我はないか?」

イーフェイ
「私は大丈夫だけど、機体が片腕になっちゃったわ。でも、まだ戦える!」

『誰』
「その意気だ。最後までついて来い」

イーフェイ
「了解!って言いたい所だけどBETAに挟まれちゃったわね」
「後方は私達が抑えるから、大尉は先に行って!」

『誰』
「しかし、その機体では…」

イーフェイ
「崔亦菲と、その部下達を侮らないで欲しいわね!片腕だって抑えてみせるわ」

『誰』
「すまない、崔中尉…。すぐに戻る!」

イーフェイ
「了解!それじゃ行くわよ!バオフェン中隊の恐ろしさ!味わいな、BETA共!」

ED
========
『誰』
「よし、施設の調査終了だ!無事か、バオフェン1!崔中尉!!」

イーフェイ
「こちら、バオフェン1。無事だけど小破状態でこれ以上の戦闘は不可能かも…」

『誰』
「了解した!各機、崔機を援護しつつ、撤退を開始する!」
「兵器使用自由!思う存分中から施設をぶっ壊してやれ!」

一同
「――了解!!」

『誰』
「ファング中隊達、B部隊は外で無数のBETAを抑えている!急いで戻るぞ!」



037 - 南アフリカ・山岳地帯

OP
=========
篁唯依
「お待ちしていました!大尉!ご無事で何よりです!」

『誰』
「ファング中隊こそ、よく俺達の帰り道を確保してくれた。感謝する!」
「残存BETAの殲滅を!…と言いたいところだが、この数はさすがに対処しきれないな」

イーフェイ
「残弾は残り少ないし、戦闘継続は困難よ!撤退しましょう!」
「後はアフリカ連合に任せればいい!彼等なら喜んで施設を粉々にするでしょうよ!」

篁唯依
「そんな事ができるか!今アフリカ連合軍を置いて行けば、彼等が全滅してしまうのは明らかだ!」
「噂の独り歩きを恐れ、研究施設の事を隠蔽していたのは上層部だ!前線で戦う彼等に罪は無い!」
「ましてや、その愚策の尻ぬぐいに差し出された者達だぞ!ここで死なせる訳にいくかっ!」

『誰』
「篁中尉、ここで俺達が斃れる事は人類の命運に直結する。冷静になれ!」

篁唯依
「ッ!!」

イーフェイ
「『誰』大尉、撤退するなら南へ!BETAの数が少ない!」

『誰』
「了解!バオフェン中隊は、小破状態の崔機を援護しつつ、先行しろ!」
「殿は俺達とファング中隊が努める!やれるかファング1!?」

篁唯依
「――了解、やれます」

『誰』
「よし、行けッ!バオフェン1!」

ED
=========
CP
「全部隊の撤退を確認!後は我々だけです!」

『誰』
「よし、この戦域から離脱する!」

篁唯依
「…………」

神宮司まりも
「イーグル1よりファング1。神宮司だ。篁中尉、レーダーを見ろ!」

篁唯依
「これは…アフリカ連合軍の増援!?」

神宮司まりも
「崔中尉の言う通りだ。アフリカ連合軍は施設破壊の理由を欲しがっていたんだ」
「貴官らのおかげでそれができた。だから彼等は重い腰を上げた!わかるか?」
「貴官らの存在がアフリカ奪還の一助となったのだ。この戦いで命を落とす者が無駄死にな訳がない」

篁唯依
「神宮司少佐…」

神宮司まりも
「『誰』大尉、我が隊はここに残ってBETA殲滅を継続する。世話になった!」

『誰』
「少佐ッ!?」

神宮司まりも
「これだけの戦力があれば、簡単に全滅などするまい。元より我々にも果たすべき責務がある!」

『誰』
「神宮司少佐…ありがとうございました!!」

神宮司まりも
「行け!そしてこの世界を元に戻すんだ!」

『誰』
「――了解ッ!全機発進!バオフェン中隊に追いつくぞッ!!」



038 - 南アフリカ・ウースター1

OP
=========
イーフェイ
「…あーもう、うるさいわね!あ、大尉の事じゃなくて。さっきからアラートが喧しいの」
「ガタが来てるの分かってるけど整備も修理もこの状況じゃできな……きゃっ!?」

『誰』
「どうした!?バオフェン1!?応答しろッ!崔中尉!?――くそ!崔機に致命的トラブル発生!」

篁唯依
「こちらファング1!後方より大隊規模BETA群接近中!距離1000ッ!!」

『誰』
「中尉、強化装備の通信機で聞こえているな!?今すぐ再起動しろ!」

イーフェイ
「やってます!けど…一体どうなっちゃってんのよ!何にも映らないし反応もない!」

篁唯依
「――距離800ッ!!」

『誰』
「バオフェン2、指揮を引き継げ!崔機の回復が最優先だ!」

篁唯依
「――距離600!」

イーフェイ
「判断ミスだわ!私ひとりの為に部隊が危険に晒されるなんて!それにさっきは――」

『誰』
「状況が違う!中尉は救えるんだ!中隊全機、吶喊!」

ED
=========
『誰』
「BETAの第一波を殲滅!しかし第二波の反応ありだ!距離4000!」

篁唯依
「この数…まさか神宮司少佐達は…」

『誰』
「討ち漏らしているだけだろう。それより崔機はどうなった!?」

イーフェイ
「まだダメね!」

『誰』
「崔中尉、機体を放棄して脱出しろ!やむを得ない」

篁唯依
「いけません大尉!これから先、中尉の機体が無くなってしまいます!」
「補充の見込みが皆無な状況ではまだその選択は早すぎます!担いで輸送する許可をッ!」



039 - 南アフリカ・ウースター2

OP
=========
『誰』
「BETAの第二波が迫っている。再起動は無理か?」

イーフェイ
「残念ながらこれ以上は無理です」

『誰』
「わかった。篁中尉の言う通り、この先中尉の機体が無くなるのは大きな損失だ」
「バオフェン中隊は崔機を抱えて撤退だ!俺達は迎撃に打って出る!」

イーフェイ
「戻るって事ですか!?ダメです!せめてウチの奴らも――」

『誰』
「BETAの規模から言って、ある程度は必ず抜けてしまう。その時の為の護衛だ」

イーフェイ
「危険です!もう弾薬も推進剤も限界の筈です!せめて一緒に撤退を――」

『誰』
「議論している暇は無い。行けッ!俺達はBETAを迎え撃つぞ!」

ED
=========
『誰』
「弾薬も推進剤も尽きたか…。この数、さすがに想定外だったな」

篁唯依
「ですが後続はいません。やはり少佐達は生きて頑張っている…我々もあと少しだったのですが…」

『誰』
「――よし!弱音は終わりだ。俺達は死ぬわけに行かない。できることを考えよう」

篁唯依
「はい、では私以外の者は撤退を。S-11を使います――勿論自爆する気はありません」
「遠隔操作で爆破するんです。大尉達は先に安全圏まで下がってください」

『誰』
「無理だ。BETAは中尉の避難が済むまで待ってなんかくれない!S-11を排除しようとする!」
「かぶりついて爆発したら、あの威力じゃ中尉は消し炭も残らず消滅する。遠隔操作は非現実的だ!」

篁唯依
「BETAの死骸に埋めれば少しは――」

『誰』
「その『少し』にどれ程の意味が?S-11の威力を知ってるだろ!逃げ切れない!現実を見ろ!」

篁唯依
「我々は常に分の悪い賭けに勝ってここまで来たんです。今も同じ…やるべきです!」

『誰』
「それは論点のすり替えだ。どうしても言うのならオレが――なっ!警告音!?」

篁唯依
「大尉!BETAが次々と…こ、このマーカーは!?」

???
「聞こえるか?こちらは欧州連合軍所属ツェルベルス大隊。アイヒベルガー少佐だ」

『誰』
「ツェルベルス大隊…アイヒベルガー少佐だと!?」

???
「どうやら間に合ったようだな。これより貴官を援護する!」



040 - 南アフリカ・ウースター3

OP
=========
アイヒベルガー
「『誰』大尉、弾薬の補給は完了したか?」

『誰』
「は!お初にお目にかかります、アイヒベルガー少佐!救援に感謝致します!」

アイヒベルガー
「感謝なら神宮寺少佐にする事だ。貴官を追わせたのは少佐だからな」
「だが喜んでばかりもいられない。我々が抜けた事でBETAの一団がこちらに向うのを許した」
「大分片付けたが、残りをここで迎え撃つ。貴官らは撤退しろ」

『誰』
「いえ、共に戦わせてください!何度も助けられたまま撤退しては、隊の士気は致命的に低下します」
「身勝手なのは承知しています。足手纏いにはなりません!ここで戦わせてください!」

篁唯依
「『誰』大尉…」

アイヒベルガー
「…よかろう。大隊各機に告げる。これよりBETAの一群を迎え撃つ」
「いつもの如くやれ。そしていつもの如く帰還せよ。祖国と人類に尽くせ――以上だ」

『誰』
「――了解ッッ!!」

ED
=========
『誰』
「BETA反応無し。状況終了。終わったか…」

ジークリンデ
「『誰』大尉、ひとつお訊ねしてもよろしいですか?」

『誰』
「ファーレンホルスト中尉、何でしょう?」

ジークリンデ
「貴官は香月司令の直属として独自の任務を受け動いている筈ですが、これからどうするのですか?」
「答えられる範囲で構いません。ですが今やアフリカ大陸は最前線。貴隊だけでは動けないでしょう」

『誰』
「我々はアフリカの現状を把握し、南極司令本部に報告します。次の行動はその結果次第です」

アイヒベルガー
「確かに今や人類は、広域情報の統制ひとつ満足に行えない状態だ。必要な手順だな」
「ではその報告に追加するがいい」
「大陸中央部、コンゴ共和国の密林地帯にフェイズ4ハイヴが存在している」

『誰』
「なんですって!?」

ジークリンデ
「ですが、そのハイヴは不完全で、本来の規模を維持できてはいません」

『誰』
「豪州のエアーハイヴと同様の状況だと思われます。詳細な情報交換が必要ですね」

ジークリンデ
「豪州にもハイヴが…。現在、欧州連合軍・アフリカ連合軍はこれを制圧する予定でいますが…」
「そのような情報や、南極司令本部の協力が得られれば、作戦の成功率は大幅に上がります」

『誰』
「わかりました。今の話を香月司令に伝え、判断を仰ぎます」

ジークリンデ
「頼みましたよ」

アイヒベルガー
「…大隊各機、これより帰還する。では『誰』、また会おう」

『誰』
「――はっ!!」



041 - コンゴ・ヌワンム=ディトゥ基地1

OP
========
アイヒベルガー
「――当ムワンヌ=ディトゥ基地の出撃は明朝0600時。ハイヴ戦に備え、各自休息を取っておけ」
「『誰』大尉、貴官らの協力に感謝する。思う存分、我々に貸しを作って行くがいい」

『誰』
「し、少佐…。自分と香月司令の通信内容を何故…」

アイヒベルガー
「貴官の通信終了後、香月司令より改めて俺宛に通信が入り言われた。顔が見たかったんだそうだ」

『誰』
「あ~『黒き狼王』の顔が見たいって言ってたなあ…。何だかいろいろすみません…」

アイヒベルガー
「一向に構わん。コンゴハイヴを落とせるのなら、気が済むまで付き合ってやる」
「しかし、崔中尉の傷は思いの外重かったな。作戦への不参加は残念な事だ」

『誰』
「ですがその分は我々が補います。数々のご恩には、貸しを作る事でお応えします」

アイヒベルガー
「フッ、貸しと言えるだけの価値ある戦いを見せようと言う事か。期待している――ん!警報!?」

『誰』
「わかってはいましたが、そうそう都合良く休息を取らせてはもらえないようですね」

アイヒベルガー
「それが前線に立つ者の宿命だ。ついてこい、『誰』大尉。ツェルベルス、出るぞ!」

ED
========
『誰』
「さすがはツェルベルス大隊と言ったところか。各隊との連携は芸術性さえ感じるぞ…」

ララーシュタイン
「その連携に一朝一夕で合わせた貴官らも流石である!明日のハイヴ突入がまこと楽しみであるな!」

『誰』
「はっ!ありがとうございます、ララーシュタイン大尉!大尉の指揮下に入れた事、光栄です!」

アイヒベルガー
「第2中隊は、北アフリカ戦線に第3小隊を残して来ざるを得ず、戦力の低下に正直苦慮していた」
「それを補って余り有る増強だ。ハイヴ突入の先兵として心強い。存分に腕を振るえ」

『誰』
「はっ!元よりその所存です!」

アイヒベルガー
「ツェルベルス1より各機。状況終了、これより帰還する」
「帰還後は明日に備え休息を取っておけ」

『誰』
「「「――了解!」」」



042 - コンゴ・ヌワンム=ディトゥ基地2

OP
========
ララーシュタイン
「ローテ1より各機!傾聴である!現在ハイヴ20km圏内に突入。BETA共が蠢いておるっ!」
「だが雑魚の相手は程々にせよ!狙うは光線級!彼奴等めは必ず殲滅するのであるっ!!」

『誰』
「――了解!大尉の言葉は何気ないひと言にも重みがある。さすがは七英雄の1人だ」
「この目で『音速の男爵』たるゆえんを拝める日が来るとは…武者震いが止まらない」
「それにしても、見渡す限りの密林だな。これでハイヴが近くにあるなんて。しかも光線級まで…」

ルナテレジア
「大尉が懸念される通りですわ。奴らのレーザーは森林火災を発生させます」
「密林はBETAの足止めとして私達に有利な反面、大きなリスクでもあるのですわ」

『誰』
「せめてもの救いは、BETAがハイヴの修復と周辺の地均しに注力している事と…」
「ハイヴが不完全な事で、BETAの数がセオリーを大きく下回っていると思われる事か――むッ!」

ルナテレジア
「BETAですわ!」

ララーシュタイン
「仕掛けてくる愚者のみ蹴散らし他は後続に任せればよいッ!いざ、戦闘開始であるっ!」

『誰』
「俺達も『ローテ』に続くぞ!ファング中隊も後れをとるなよ!」

ED
========
ルナテレジア
「目標まで残り15km。光線級の攻撃はありませんでしたわね」

篁唯依
「しかし油断は禁物だ。ところでヴィッツレーベン少尉、少尉は何か私に言いたい事でもあるのか?」
「昨日から先程の戦闘でも、私との距離を常に保ち、様子を伺っていたようだが?」

ルナテレジア
「見抜かれていたのですか…失礼致しましたわ。実は日本の戦術機に興味があったのです」
「芸術品とも称されるタイプゼロ…いえ、タケミカヅチをこの目で直接見られるなんて――」
「極東の最前線たる日本に赴く機会など一生ないと思っていたところにそちらから現れた時の感動――」
「ああ…私は死んでもいい…」

篁唯依
「そ、そうか。そこまでとは…。だが死なれるのは困る。この作戦が終わったら間近で見せてやろう」

ルナテレジア
「光栄ですわ!死んでいる場合ではありませんわね。その機体に傷を付ける訳にも…」
「俄然やる気が漲って来ましたわ!」

篁唯依
「ほう、少尉が私を護ると?見上げた心意気だ。必ず生きて戻るがよい!」



043 - コンゴ・ムバンダカ密林地帯1

OP
========
篁唯依
「先の戦闘以来、BETAは大人しいものですね、大尉」

『誰』
「大人しいと言えば、崔中尉は基地で大人しくしているだろうか」

篁唯依
「大丈夫でしょう。足を骨折しているのですから。その分うるさく文句を言っていそうですが…」」

『誰』
「――ッ!?光線照射警報!?全機乱数回避ッ!!」

篁唯依
「…何と言うことだ。一瞬にして密林が炎に包まれてしまった…」

『誰』
「叩ける時に叩いておかなければ光線級はアキレス腱を食いちぎる。必ず奴らを潰すぞッ!」

篁唯依
「「「了解ッ!」」」

ヘルガローゼ
「こちらローテ6!光線級を確認!これより吶喊する!」

『誰』
「目標は小さい!木陰に隠れるゴブリンを追い立てろ!ファング1はローテ6に続け!」

ヘルガローゼ
「ヘルガローゼ・ファルケンマイヤー少尉です!インペリアルのサムライとの共闘、光栄です!」

篁唯依
「貴官の実力、見せて貰おう!いくぞッ!!」

ED
========
ヘルガローゼ
「さすがは、篁中尉。お噂通りの疾風迅雷ぶり。いずれ一度、直接お手合わせを願いたいものです」

篁唯依
「少尉こそ、ツェルベルス大隊所属の衛士らしい見事な機体捌き、感服した」

『誰』
「お互いの健闘を讃え合う姿は美しいが、そこまでだ!火勢が増してきている!引くぞ!」

篁唯依
「ハイヴを目前にして口惜しいが、炎に遮られ、各隊は寸断。撤退は已む無し、か…」

『誰』
「大規模な森林火災になりそうだ。炎に尻を焼かれる前に撤退する!ララーシュタイン大尉に続け!」

一同
「「了解!」」



044 - コンゴ・ムバンダカ密林地帯2

OP
========
『誰』
「…全機ついて来ているか!?この熱量では戦術機といえども長くは持たないぞ!」

ヘルガローゼ
「こちらローテ6!『誰』大尉、ファング1が遅れています!」

篁唯依
「…こちら、ファング1!周囲を炎とBETAに覆われ孤立!先に行ってください!」

『誰』
「どこだ?どこにいる…?くそ、高熱でセンサー類の精度が――見つけたぞ!」

『誰』
「中尉、そこで待っていろ!BETAを4匹倒す前に迎えに行くっ!!」
「ローテ6は先に行け!本隊と合流するんだ!」

ヘルガローゼ
「大尉!窮地の者に背を向けては我が騎士道に反します!ましてこの状況では共に行動した方が――」

『誰』
「――よし来いッ!貴様は当面俺の指揮下に編入する。囚われの姫君を救出するぞ!」

ヘルガローゼ
「了解ッ!!」

ED
========
篁唯依
「大尉、救出に感謝します。ですが…私は6匹倒しました」

『誰』
「ふっ…そうかすまない。少し遅刻してしまったな。だが無事で何よりだった」
「ファルケンマイヤー少尉もよくやった。ツェルベルス大隊の精鋭ぶりには感服するな」

ヘルガローゼ
「いえ、大尉や中尉の機体捌きも私には学ぶ事ばかりでした」

篁唯依
「後方より多数のBETA接近!炎とBETAか。全てを焼き尽くす地獄の炎と悪魔のようだ」

『誰』
「そんなものは吹き飛ばしてやりたいところだが、今は撤退が最優先だ。行くぞ!」

一同
「「了解!」」



045 - コンゴ・ムバンダカ密林地帯3

OP
========
『誰』
「この森林火災はどこまで広がっているのだろうか。外気温が凄い事になっているな…」
「センサー類の感度と精度が落ちている。全周警戒を怠るな?」

ヘルガローゼ
「『シントウメッキャク』の極意が戦術機にも通じれば良いのですが…」

篁唯依
「なるほど『火もまた涼し』か。よくそんな言葉を知っているな。だが少し用法が違うぞ」
「それは、心を無にすれば苦を苦と思わなくなるという意味で、物理的な影響をなくせる訳ではない」

ヘルガローゼ
「つまり心の有り様を説いた言葉と言うわけですね?それは勉強になりました」

『誰』
「よし、もう少しで森林地帯を抜ける――何だと?ここにもBETAがっ!?」

篁唯依
「前方に味方機確認!交戦中!――だが少ない!圧倒的に不利だ!」

『誰』
「まだ部隊の多くが森の中か!?よし俺達が援護するぞっ!」

ED
========
『誰』
「まずいな、こちらの戦力が圧倒的に少ない…!このままでは押し切られる!」
「ララーシュタイン大尉の姿もまだ見えない。一体どうなってるんだ!?」

ララーシュタイン
「ローテ1より各機!不覚にも我が機体はBETAの攻撃により中破したのであるっ!!」

『誰』
「な…なんだって!?大丈夫ですかララーシュタイン大尉!今救出に――」

ファーレンホルスト
「心配は無用ですよ――」

『誰』
「支援攻撃…!?誰だ…!?BETAが倒されていく…。白いEF-2000?まさか!」
「ファーレンホルスト中尉!後方支援の第一中隊か!」

ジークリンデ
「ララーシュタイン大尉は私達が援護します。大尉指揮下の部隊は後退を継続してください」
「合流地点は今送った座標です。一端退いてください。状況を立て直します」



046 - コンゴ・コンゴハイヴ1

OP
==========
『誰』
「目標地点、ポイントα到達。突入予定の『門』を視認」
「BETAの数はこの規模のハイヴにしては少ない。充分突破可能だ」

ルナテレジア
「光線級の攻撃も無く、今回はさしたる被害も出ず、無事に目標に到着できましたわね」

『誰』
「これもララーシュタイン大尉が鬼神の如き戦いでBETAを排除してくれたおかげだ…」
「俺の倍以上のスコアを叩き出すとは、さすがは『音速の男爵』」
「同じ大尉として中隊の指揮を引き継いだとは言え…正直俺には荷が重いのではないのか…」

ヘルガローゼ
「僭越ながら『誰』大尉、少々我々を買いかぶり過ぎではないでしょうか」
「確かに我々には、恵まれた上官と多くの経験に裏打ちされた誇りがあります」
「しかしことハイヴ戦に於いては、大尉の方が経験豊富…何より幾度も生還されているではないですか」

ルナテレジア
「私達は大尉に率いられる事で、より一層、作戦の成功を確信しているのですわ」

『誰』
「…すまない、つまらん弱音を吐いてしまった。お詫びに帰還したら飯を奢ろう」

ルナテレジア
「ヘルガ共々期待しておりますわ。では大尉、そろそろお時間です」

『誰』
「よし、全機突入――!!」

ED
==========
ルナテレジア
「ポイント確保!予想よりも更にBETA個体数が少ないですわね」

『誰』
「忌むべき状況を齎した融合世界。だが、その災禍はBETA達にも降りかかったようだな」
「このハイヴが本来の機能を持っていない事はもはや疑う余地が無い。俺達で十分破壊できるぞ!」
「橋頭堡が確保されるまでポイントを維持する!くれぐれも油断はするなよ!」



047 - コンゴ・コンゴハイヴ2

OP
==========
篁唯依
「偵察部隊からの報告によるとハイヴ内の横坑の殆どが不自然に埋まり寸断されているそうです」

『誰』
「主縦坑へのルートは特定できたか!?」

篁唯依
「はい、しかしそこは新しい枝坑でかなり狭いとの事です。今データを送りました」
「横坑の寸断によって、主たる通路が全て失われた為に、急ぎ造ったものと思われます」

『誰』
「なる程…確かにそうなる可能性はある。BETA個体数が想定以上に少ないのもそのせいか…?」

篁唯依
「通路が狭い為にBETAの移動に制限が加わっているという事ですね?だとすれば――」

『誰』
「ああ、そこを抜けた先で、大歓迎を受ける可能性もある。用心しなければ…」

篁唯依
「探査部隊が通路に入ると言っていますが…」

『誰』
「待て!そこでBETAに遭遇して下手に動いたら、逆に身動きが取れなくなるぞ」
「俺達が先に行くと伝えろ!この程度、おまえ達の練度ならできる。全機後に続けッ!」

ED
==========
ルナテレジア
「ハイヴ内に人工的な建造物!?不自然ですわ…!」

篁唯依
「…大尉、これは。まさか」

『誰』
「ああ、この造り。例の研究施設と酷似している…」

ルナテレジア
「これが研究施設ですか…。ですが、なぜこのような場所に…」

『誰』
「ハイヴの無い我々の世界と、ハイヴのある世界、そして施設がある世界――」
「それら複数の世界が融合した結果という事だろう。以前南極で同様の状況に遭遇した事がある」

篁唯依
「…大尉、施設の人工反応炉と思しきものが見当たりません」

『誰』
「融合の際に元の世界に置いて来たか、あるいは分断してこのハイヴのどこかにあるか…」

篁唯依
「後者だとしたら厄介ですね。2つの反応炉を両方破壊しなければ作戦成功とはなりません」

『誰』
「ハイヴの攻略難度は下がったが、そう簡単に終わらせてはくれないようだな…憎たらしいぜ」



048 - コンゴ・コンゴハイヴ3

OP
==========
『誰』
「施設の調査部隊は速やかに内部の調査に入れ。残りは彼等が出てくるまでここを護るぞ」

篁唯依
「では『誰』大尉、行って参ります!」

ヘルガローゼ
「大尉、さっそくBETA反応です。座標から判断すると…偽装横坑を移動しているようです」

『誰』
「スリーパードリフト…。どこから現れるかわからないぞ。全機警戒を怠るな」

ヘルガローゼ
「――8時の方向にBETA出現!交戦開始!12時の方向にも感あり!」

『誰』
「まさか陽動という訳でもないだろうが、嫌らしいやり方だ。よし、付いて来い!」

ED
==========
篁唯依
「『誰』大尉、お待たせしました!反応炉はここにはありません!」

『誰』
「了解!主縦坑はもうすぐだ!全機一機に抜けて最深部を目指すぞ!」

篁唯依
「しかし、これだけの量を放って向かえば、兵站の確保が…」

『誰』
「後ろに控えているのは、大隊長アイヒベルガー少佐だぞ!心配は要らない!」
「このハイヴ戦も、通常より楽とは言え、ここまであっさり来られたのはそのおかげだ!」
「俺達は突き進めばいい!いくぞ!各機、続け!」



049 - コンゴ・コンゴハイヴ4

OP
==========
篁唯依
「大広間への侵入成功!反応炉を確認!――あれは!?」
「人工反応炉と思しき物体が、反応炉に取り込まれています!」

『誰』
「でかいな…。あの研究施設の全容はブーベ島と同レベルの大きさがあったってことか…」

篁唯依
「奴らがやったのでしょうか?反応炉を巨大化させる事に何か意味が…?」

『誰』
「短期間に多くのBETAを生み出す為に必要だったのかもしれないな」

篁唯依
「BETA共の群がり具合を見れば納得もいきますね…。尋常な数じゃない」

『誰』
「あいつ等を倒せば反応炉への道が開ける。全機、ありったけの弾を食わせてやれっ!」

篁唯依
「「「了解ッッ!!」」」

ED
==========
ヘルガローゼ
「反応炉の破壊を確認!作戦は成功です!」

『誰』
「味方の損害は!?」

ヘルガローゼ
「ローテ中隊、全機健在です!しかし、ファング中隊が…!多数のBETAに囲まれ劣勢!」
「S-11設置の為に深くまで突入していたんです。その為に脱出も遅れ――」
「…ファング1、中破!まずい、要撃級が篁機に接近…!」

『誰』
「もう弾薬が、クソッ!!!死なせるかぁぁぁ!!!」

ヘルガローゼ
「ちょ、長刀を投げただと…!?要撃級、沈黙!各機、大尉を援護しろ!」

『誰』
「大丈夫か、篁中尉!!」

篁唯依
「S-11は全弾起爆しました。反応炉は…?」

『誰』
「安心しろ、完全に破壊した。機体は動くか?…ん?バイタルに異常が…。怪我しているのか?」

篁唯依
「だ、大丈夫…です。しかし、ファルケンマイヤー少尉には申し訳無い事を…」
「武御雷を見せてやると言ったのに、この有様…。斯衛軍人として――」

『誰』
「わかった喋るな。篁中尉が負傷、機体は抱えて運ぶ。全機撤退するぞ!」



050 - コンゴ・ムバンダカ密林地帯4

OP
========
アイヒベルガー
「『誰』大尉ご苦労だった。貴官の指揮によって無事反応炉は破壊され、損害も軽微で済んだ」

ジークリンデ
「篁中尉は後方支援部隊へ預け、応急処置を受けています。命に別状はないそうですよ」

『誰』
「ありがとうございます。しかし…崔中尉に続き篁中尉まで戦線離脱となると、任務続行は不可能か…」

ジークリンデ
「しかし南極へ戻るにしても、時間がかかる上、大陸の調査は途中…。そこでひとつ策を講じました」

『誰』
「策…ですか?」

ジークリンデ
「北上し、エジプト戦線への協力を要請します。欧州、中東からのBETA流入を阻止するのです」
「そこには我が大隊のローテ中隊第2小隊の他、欧州派遣軍からも増援が送られています」

『誰』
「欧州派遣軍!神宮司少佐の部隊!そうか、それならこちらの協力を取り付けやすい!」

アイヒベルガー
「俺達はアフリカ大陸のBETAを殲滅し、貴官らは大陸への流入を阻止する…」

ジークリンデ
「大陸の奪還に一定の目処が立てば、大尉の任務への協力も得られると思いますが…?」

『誰』
「その通りです!さっそく香月司令に伺ってみます。その為にはまず、進路上の残存BETAを――」

アイヒベルガー
「そうだ、排除する。全機、これで終わりだ。抜かるなよ」

ED
========
香月夕呼
「なるほど、エジプト戦線ね…。こっちとしては『誰』が任務継続できるなら文句はないけど」

『誰』
「了解しました。ではそのように。篁、崔の両中尉は完治するまでこの地に残します」

香月夕呼
「でも長期の協力は無理よ?早々に欧州派遣部隊の増援ごと出て行く事になるけど、いいわけ?」

アイヒベルガー
「構いません。補充の目処は立っています」

香月夕呼
「ねえ、その指揮を執っているのはどこの基地?コネクションを確立したいんだけど」
「まともに状況を把握できる地域が少なくてね~。人類って殆ど絶滅したんじゃないかしら?」

アイヒベルガー
「BETA襲撃で致命的ダメージを負った基地が多いのでしょう。衛星が生きていても使えない」

香月夕呼
「たとえ使えても、南極基地の事が周知されていなければ連携も取れないでしょうが」
「そうなのよね…。だからアフリカが取り戻せれば、随分対策が立てやすくなる」
「とりあえずよろしく。ああそうだ、『誰』はちゃんとあんたに貸し作った?」

アイヒベルガー
「はい、なかなかの逸材です。何かあればいつでも」

香月夕呼
「よくやったわ『誰』!それじゃ後は出発までゆっくり休んでいいわよ。お疲れ~」

『誰』
「ありがとうございます、司令。今日は、ゆっくり眠れそうだ…」



051 - エジプト・アシュート近郊砂漠地帯

OP
=========
『誰』
「これがエジプトの砂漠か。話には聞いていたが、本当に地平の先まで砂しか無い。太陽も輝いている」
「もしこんな所でエンジントラブルでも起きたら死ぬかもしれないな。サンオイルは未所持だぞ…」
「それよりアイヒベルガー少佐が用意してくれた増援との合流地点、アシュートまであと僅かだが…」
「ん?あの光にこの音。…砲撃!?…BETAと交戦中の部隊を視認!全機これより支援に入る!」
………

ブリギッテ
「…援軍か!?いや、違うな。指揮官機は『誰』大尉とお見受けする!」
「西独陸軍第44戦術機甲大隊ツェルベルス所属、ブリギッテ・ベスターナッハ中尉です!」
「現在は、ローテ中隊第3小隊と、アフリカ連合軍及び欧州連合軍の混成部隊を指揮しています」
「以下、オアーゼ中隊、貴官の指揮下に加わります!」

『誰』
「彼女達が少佐の約束してくれた増援か。了解!オアーゼ中隊、話はBETA共を片付けてからだ!」

ブリギッテ
「了解。オアーゼ2!Mk-57の威力、新しい指揮官殿に披露しろ!仲間の背中は撃つな!」

イルフリーデ
「オアーゼ2、了解ですわ。良い所、見せちゃいま…って!?」
「味方は撃ちませんからね……?」

ED
=========
ブリギッテ
「馬鹿め!私の眼から逃れられると思ってるのか!?撃破!よし、BETAの全滅を確認!」

イルフリーデ
「さすが、小隊長。凄い勢いでスコアを伸ばしていますわね!」

ブリギッテ
「今は中隊長だ。小隊長ではないと言っているだろう。それより、噂通り良い腕ですね、大尉」

『誰』
「ありがとう。ツェルベルスのキミ達こそ、驚くほどの腕前だ。…ちなみに噂とは?」

ブリギッテ
「大尉も御存知のジーク様…いえ、ファーレンホルスト中尉から今度の指揮官は…その――」
「腕良し、声良し、見た目良しのナイスガイ大尉と聞きましたが。噂に嘘偽りなしですね」

『誰』
「…なんだそれは?ナイスガイ!?噂の一人歩きも甚だしいぞ!?」

ブリギッテ
「ご謙遜を。それでは、まず前線のカイロ基地にて機体の防塵処理及び補給を受けるように進言します」

『誰』
「砂漠戦を考慮しての防塵処理か。ところでファーレンホルスト中尉からは――」

『誰』
「欧州派遣軍の部隊もここに駐留していると聞いていたんだが…」

ブリギッテ
「それでしたら、現在出撃中です。数日すれば戻ってくる事でしょう」

『誰』
「そうか、わかった。よし、全機!カイロ基地へ向かう!シャワーは順番に使え!」



052 - エジプト・カイロ

OP
=========
『誰』
「防塵処理済みとは言え、外観は何一つ変わっていなかったし、コクピットも当然そのままだな」

イルフリーデ
「戦術機は劣悪な環境での運用も考慮された作りになってますが、砂漠では相応の対策が必要です」
「熱対策や防塵処理を施さなければ最新鋭の戦術機でも長時間の運用は命取りになりかねません」

『誰』
「戦術機と言えば、オアーゼ中隊にEF-2000は3機のみだった。主編成はE-4Eのようだが?」

イルフリーデ
「御存知の通り、ツェルベルスの本隊はアフリカ側の奪還に全力を注いでいますからね」
「私達はアフリカ連合軍と欧州軍の混成部隊として、最前線の維持を命じられていますわ」
「でも私はお留守番なんです。コンゴハイヴ攻略作戦に、私も参戦したかったのですが…」

『誰』
「そ、そうか。まあ前線にいれば手柄も立て放題では………待て。最前線がカイロ基地だと?」
「本来の世界でエジプト最前線はイスマイリヤ基地だったはずだ…」

ブリギッテ
「本来の…?先日、イスマイリヤはBETAの攻撃により陥落。現在、カイロまで前線を退いています」

『誰』
「…そうか。それは悪い知らせ……ッ!?警報?CODE:991か!基地防衛に当たる!各機続け!」

ED
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ブリギッテ
「……面白い。そう来たかッ!だが、私には全てお見通しだ!――もらったぁ!」

『誰』
「…中尉は本当に凄い勢いでBETAを撃破していくな。敵捕捉及び射撃精度に優れている」

イルフリーデ
「中尉の左眼には照準装置とリンクしているレーザーコネクタが埋め込まれているんですよ」
「視認し、照準。その動作を省き、視認と同時に照準が可能なので、その攻撃たるや正に迅雷です」

『誰』
「あの眼帯の下に、そんな秘密が。ツェルベルスの隊員は皆が皆、尋常では無い能力を持っている」
「ま、まさか全員が何かしらの強化装置を組み込まれ――」

イルフリーデ
「それはありませんわね。みんな生身の普通の軍人さんです。中尉以外は」

ブリギッテ
「……ほう。私だけ普通ではない改造人間のように言うか、少尉」

イルフリーデ
「え…!?し、失言でした!申し訳ありません…!」

『誰』
「両名とも仲が良いな。だが続きは基地でやれ。よし、全機帰投する!夕飯には間に合わせるぞ!」



053 - エジプト・カイロ周辺砂漠地帯

OP
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ブリギッテ
「イスマイリヤ基地の奪還作戦?本気ですか?あそこは最早BETAの巣!奪還は不可能に等しい!」

イルフリーデ
「大隊規模の守備隊が押し切られた物量ですわ…。中尉の仰る通り、我々の戦力では…」

『誰』
「守備隊の大半は旧型のF-4Eを使用し、兵の練度も低かった。それでは前線瓦解も無理はない」
「それだけアフリカの奪還が重要で主力をそちらに割いていたと想像に難くないが――」
「中尉のオアーゼ中隊はどうだ?新兵に毛が生えた程度のお飾り兵士か?」

ブリギッテ
「我がオアーゼ中隊に教本が必要な兵は一人たりとも存在しません!」

『誰』
「ならばよし。前線奪還作戦は既に基地司令へ報告、了承を得ている。それに勝算はある」
「偵察部隊からイスマイリヤ基地のBETA数は充分対処できる程度に落ち着いると報告を受けている」

イルフリーデ
「鼠の大群が押し寄せるかの如く大勢いましたのに。あのBETA達お家に帰っていったのかしら…」

『誰』
「奴らがホームシックにかかったかどうかは分からないが、ともかくこれはチャンスだ」
「そしてその作戦の第一段階として俺達はカイロ南東の砂漠に現れたBETAを倒しに行く」
「俺は砂漠での戦闘は素人だ。今後予想される砂上でのダンスに備えてレクチャーを頼む!出撃準備!」

ED
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ブリギッテ
「油断してると痛い目に遭うぞ!そこだぁっ!!撃破!!」

『誰』
「油断して痛い目か。ふむ。俺に言っているのかと一瞬、緊張したがBETAに対しての発言か…」

イルフリーデ
「途中から砂漠戦のレクチャーも忘れて敵殲滅に勤しんでいますわね…中尉ったら」

ブリギッテ
「大尉!砂中のBETAには振動センサーは役に立たない!不意の戦闘を常に……そこか!」
「撃破!…不意の戦闘を常に意識すること!…砂中に潜ろうが、無駄だ!そこッ!…撃破ッ!」

『誰』
「あ、ああ、了解だ。俺の分のお友達も残しておいてくれ、中尉。もう少し砂上戦経験をだな…」

イルフリーデ
「あら。じきに目標は全滅ですね。それでは私がのんびりと砂上戦についてお教えしますね、ふふ」

『誰』
「戦闘中にのんびりか…。さすが、ツェルベルス隊の士官は肝が座っているな…」

ブリギッテ
「砂中からだと?甘いな!私の眼を出し抜こうなどと!散れ!BETAの殲滅を確認!」

『誰』
「よし、オアーゼ2!模擬戦でも何でも頼む!のんびりでもいい!じっくり教育してくれ…」



054 - エジプト・イスマイリヤ

OP
========
『誰』
「カイロからイスマイリヤ基地まで緑地が続いているのか。砂上戦闘の訓練は必要無かっただろうか?」

ブリギッテ
「ルートを外れれば、そこは砂漠。砂上戦を経験しようとした、大尉の判断は正しいかと」

『誰』
「そうだな。できれば奴らに有利な砂漠での交戦は避けたい所だが…」

イルフリーデ
「大尉、進行上にBETAを確認!ご指示を願います!」

『誰』
「突破を最優先とする!追ってきた奴らの頬を叩く!オアーゼ1、好きなだけ暴れろ、道を拓け!」

ブリギッテ
「了解。フッ、私が突撃前衛を任されるとはな。オアーゼ1、吶喊する!」

イルフリーデ
「ずるい…。私も突撃前衛、やりたいのになぁ…」

『誰』
「ま、また今度、機会があればな。少尉のEF-2000は前衛装備に換装されていないだろう…」

イルフリーデ
「許可さえ頂ければ、ハルバードを片手に、いつでも吶喊致します!」

『誰』
「そうだな!よし、許可……できるか…ッ!各機、後衛を守りつつ、突撃!」

ED
========
ブリギッテ
「ビルベイス市街地を突破!BETAの群れを振りきった!」

『誰』
「素晴らしい働きだ、中尉!カイロからイスマイリヤまで約半分、残り約70kmだ!」
「各機、機体のチェック及び弾薬の確認を怠るな!」

イルフリーデ
「大尉、よろしいでしょうか!イスマイリヤ奪還作戦が無事終わり次の作戦が、もしもあれば――」

『誰』
「ポジションの変更希望なら、却下だ。少尉には砲撃支援の才がある。前衛に拘る必要は無い」

ブリギッテ
「私も同意見です、大尉。何度も言っているだろう、少尉。お前には後衛が向いている」

イルフリーデ
「…了解ですわ!ですが、突撃前衛への夢は諦めませんからね!」



055 - エジプト・イスマイリヤ前線基地1

OP
========
イルフリーデ
「イスマイリヤ基地まで五分!偵察部隊からの報告によればBETAの数は想定範囲内!」

『誰』
「よし、充分に殲滅可能だ!各機、こういう作戦の場合、一番の敵は慢心だ!油断はするなよ!」

ブリギッテ
「しかし、本当にBETAの頭数が少ない。アンバールハイヴにでも引き返したのだろうか」

『誰』
「確か、イスマイリヤから東北東へ約1000kmに存在するハイヴだったか?」
(アンバールハイヴ。元の世界にも存在したフェイズ5のハイヴだ)
(もしかして、この複合世界では今まで攻略したハイヴ同様、正常に機能しておらず…)
(ハイヴの修復建造を優先しているという事だったりするのか?)
「楽観視はできないが、基地奪還のチャンスだ!施設類も修復すれば使えるように見える!」
「急造のカイロ基地では通信設備すら不十分だった!イスマイリヤを取り返し、前線を押し上げる!」

一同
「「了解!」」

ED
========
イルフリーデ
「偵察部隊から報告!当基地から半径50km圏内、BETAの存在は見られません!」

『誰』
「奪還作戦は成功だな。各員、充分に身体を休め、次の任務に備えてくれ!」
「技術部隊が到着次第、通信設備の修復を再優先で急がせろ!解散!漸く南極基地と連絡が取れるか」

イルフリーデ
「まだ報告は終わっていませんわ、大尉。BETAの頭数が少なかった理由が分かりました」
「当基地から北へ70kmの位置にBETAが多数集まっている地点を確認し――」

『誰』
「アフリカ連合の軍事施設か何かだろう?」

イルフリーデ
「ええ。『突然現れた軍所有施設』大尉達が追っている例の施設と同じものでしょうか」

『誰』
「恐らくそうだろう。次の目標が決まったな。御苦労だった、少尉。次の指示があるまで休んでくれ」

イルフリーデ
「大尉も…ちゃんと休んでくださいね」

『誰』
「ああ。休むのも任務の内だしな。何事も戦ってばかりでは続かない。…ありがとう、少尉」



056 - エジプト・イスマイリヤ前線基地2

OP
========
『誰』
「これが母なるナイルか。肉眼で見るのは初めてだな。基地のそばにこんな美しい光景があるとは」

香月夕呼
「あんたねぇ。何を呑気な事、言ってるのよ。それにナイルはカイロ市内にも流れてるわよ」

『誰』
「カイロ基地にいた時は、風景どころではなくてですね…」

香月夕呼
「私にもナイルの映像送りなさい。折角、イスマイリヤの通信設備直したんでしょ?有効活用して」

『誰』
「広域偵察を行った際に得たデータもついでに送信しておきます…。本当に自由ですね、香月司令…」

香月夕呼
「ふうん。やっぱり通信映像越しでナイル川を見ても、臨場感に欠…東500km地点に研究施設?」

『誰』
「ええ。アンバールハイヴと当基地の丁度、中間地点に存在します」

香月夕呼
「それ、BETAがうんざりしそうな程に集まってそうねえ。まずはそこから北の施設を――」
「うん?急にどうしたのよ、『誰』。怖い顔して。食あたり?恋の悩み?」

『誰』
「ち、違います!各機、対岸に無数のBETAを視認!これより基地防衛に入る!兵装使用自由!!」

ED
========
香月夕呼
「もう全滅させたの?相変わらず、手際が良いわねえ、『誰』」

『誰』
「ありがとうございます、司令。そうでなければ百回は死んでます。激戦につぐ激戦だった…」

香月夕呼
「…何、遠い目しているのよ。二階級特進の百連発なんて、あんた階級が、えらい事になるわね」

『誰』
「えらく…偉くなる……階級的に。という事ですね…。『エライ』だけにッ」

香月夕呼
「何か言った?それじゃ次の激戦はそこから北の研究施設攻略作戦といきましょうか」

『誰』
「お言葉ですが、東の施設よりはマシだとは言え、北の施設にも対処し切れない数のBETAが…」

香月夕呼
「まぁ、貰ったデータを、ざっと見ても、基地を空っぽにするくらいの戦力は必要よねぇ」
「でも心配要らないわ。そこは私がバックアップを用意してるから」
「あんた達は研究施設攻略作戦の準備でもしつつ、今日は歯磨いて寝て、ゆっくり休んでなさい」

『誰』
「りょ、了解。『バックアップ』期待しておりますッ…!」



057 - エジプト・イスマイリヤ北

OP
========
イルフリーデ
「目標施設までの距離1000!BETA、凄まじい数です!」

『誰』
「これまた報告通りの大所帯だ。俺達の偵察部隊は実に優秀でありがたいことだな。まあ――」
「見なかった事にして帰投したい所だが、そうもいかないのが俺達軍人さんだ」
「この化け物の群れを突破し、お宝を目指せ、か。相変わらず無茶をさせてくれる」

ブリギッテ
「怖気づきましたか?大尉」

『誰』
「さて、どうかな。だが、死と隣り合わせで喜ぶ馬鹿は滅多にいない。恐ろしいものだろう、戦争は」

ブリギッテ
「…違いない。こんな数のBETAを前にして恐怖を感じない者はいません」

『誰』
「まぁ、無茶は毎度の事か。各機!これより無謀とも言える突入作戦を行う!」
「バックアップが用意されているらしいが、無茶はするな!命と明日を大事にしろ!全機突撃!」

ED
========
『誰』
「……なんて数だ!進入ゲートまで近寄れやしない!施設外周に辿りつけたのも奇跡だ…!」
「被害データ確認!二階級特進者が出ていないのが二つ目の奇跡だ…!くっ…撤退も視野に……ん!?」
「支援砲撃!?司令の言っていた、バックアップかッ!」

龍浪響
「遅くなりましたッ!!こちらウォードッグ1!これより支援します!!」

千堂柚香
「『誰』大尉!私達は帝国陸軍欧州派遣部隊ウォードッグ中隊です」
「ウォードッグ中隊及び、随行部隊の計三個中隊、貴官の指揮下に加わります」

『誰』
「これは心強いバックアップだ。無事に帰投したら、香月司令に花束でも贈ってやるか」
「了解した、ウォードッグ!援軍感謝する!まずは、施設侵入経路の確保だ!続け!」

一同
「「了解!!」」



58エジプト・研究施設1

OP
========
千堂柚香
「こちら、ウォードッグ2。ゲート確保に成功。いつでも突入可能です」

『誰』
「良い手際だ、ウォードッグ2及び、ウォードッグ1!見事なコンビネーションだな」

千堂柚香
「そうですか?嬉しいです。よく言われれるんですよね。私達はお似合いの夫婦だって」

龍浪響
「だ、誰もいってねーよ…!なんでそうなるんだ!お、お前こそ、大尉に何言ってるんだよ…ッ!」

『誰』
「面白い奴らだ、頼もしい。よし夫婦の呼吸、BETA共にたっぷり披露してやれ!」

一同
「「了解!」」

龍浪響
「…って、了解!じゃなくて!何か違うだろ…!?ま、まあいいか。俺達の実力見せてやる!」

『誰』
「ウォードッグ並びにオアーゼ中隊は俺に続け!残りの部隊はゲートの確保!後ろは任せる!」
「施設内への突入を開始する!迷い犬になっても保護はできない!しっかりついてこい!」
「それにしても、香月司令も人が悪い。バックアップって、単に帰投した欧州派遣軍の事じゃないか」
「でも、都合良く駆けつけられた裏には何か働きかけがあったのかもしれないな…何にせよ心強い!」

ED
========
イルフリーデ
「目標、人口反応炉の破壊を確認!尚も施設内BETA多数!撤退を進言します!」

『誰』
「もっともな意見だ、オアーゼ2!俺もこんなBETAの寄り合い所に長居はしたくはない!撤退だ!

龍浪響
「なんて美しい人なんだ…」

『誰』
「は…!?な、何を言い出す、ウォードッグ1…!」

イルフリーデ
「う、美しい人?私の事かしら?どうもありがとう…ございます」

龍浪響
「ど、どういたしまして!…ッ!?大尉、後方よりBETA多数接近!…出口方向からだ!」

『誰』
「ゲートからだと…?まさか、表に残した部隊に何か…」

龍浪響
「…大尉!ゲートの確保に当っている部隊から次々に救援要請が…!17機同時にシグナルロスト!」

『誰』
「17機だと…?クソッ…!もうそんなに犠牲が…!」
「…行きも怖ければ帰りも怖いか。どこかの民謡よりもたちが悪いな。全機!血路を開き撤退するぞ!」



059 - エジプト・研究施設2

OP
========
ブリギッテ
「邪魔だ、どけぇぇッ!!!!何としても突破し、突撃前衛の任、全うしてくれる!」

千堂柚香
「す、凄い。あのEF-2000の動き。何より諦めない姿勢…。ベスターナッハ中尉…」

ブリギッテ
「何を呆けている、そこの不知火!ウォードッグ2だったか!貴様、死にたいのか!」

千堂柚香
「も、申し訳ありませんっ!私もはああああぁ…っ!」

ブリギッテ
「良い動きだ、ウォードッグ2!やればできるじゃないか。む…?あれはッ!大尉!ゲートを視認!

『誰』
「よし、後ひと踏ん張で空を拝めるぞ!諦めるな!続け!」

ED
========
『誰』
「なんとか、外部に出られたな…」

龍浪響
「ちくしょう…。外にいた奴らは全滅じゃねえか…!ちくしょう!」

ブリギッテ
「…酷い有様だ。せめて私が残っていれば…」

『誰』
「指揮官は俺だ。二人が死者の命を背負う必要は無い。急ぎ、この戦域から離脱するぞ」

龍浪響
「あいつらは、ずっと一緒に戦ってきた部下で戦友なんだ…!俺は仇を討つ!!」

ブリギッテ
「単機で何ができる!どうするつもりだ!」

龍浪響
「1匹でも多くBETA共をぶっ潰して、あいつらの手向けにしてやるんですよ!」

『誰』
「軍隊はセンチメンタルな感情で動くものではない。勝手な振る舞いは許可できない」
「だが、気持ちは痛いほど理解できる。オアーゼ1!敵勢力は数を減らしているように見えるが!」

ブリギッテ
「はっ!ゲート確保に当たっていた部隊が命と引き換えに、相当数の敵を撃破してくれたようです!」

『誰』
「優秀な連中だったようだ。現状の戦力とBETAの数を比較し、充分に対処できると判断!

龍浪響
「…『誰』大尉!」

『誰』
「推進剤も弾薬も多くは余っていない!手早くかたをつける!ミイラ取りがミイラにはなるな!
「機体のチェック、残弾の確認!客は待ってくれないぞ!手早く行え!」



060 - エジプト・研究施設外周

OP
========
イルフリーデ
「ウォードッグ2、聞こえますか?こちら、オアーゼ2。千堂少尉でよろしかったでしょうか」

千堂柚香
「はい。フォイルナー少尉。自己紹介も、まともにできない状況でしたね…」

イルフリーデ
「戦闘の合間に自己紹介でしたわ。未だに周囲には多数のBETA。本当に慌ただしい」

千堂柚香
「お互い無事に帰って、その時はゆっくりとお話したいです」

イルフリーデ
「帰ったら、まずは寝たいなぁ。その後はお話しましょう。寝坊していたら起こしてくださいね」

千堂柚香
「はい。その時は斧を持って、起床のお手伝いをさせてもらいます」

イルフリーデ
「ええ。よろしくお願いし………えっ?今、なんて…?」

『誰』
「各機!機体のチェックは完了したか!?」

イルフリーデ
「…完了しましたわ。……。斧…?」

『誰』
「行くぞ!戦友達に降りかかった災禍よりも悲惨な死を、BETA共にくれてやれ!」

ED
========
ブリギッテ
「敵の全滅を確認。お疲れ様です、『誰』大尉」

『誰』
「ああ。中尉も御苦労だった。エジプトについてから、散々世話になったな。本当に支えだったよ」

ブリギッテ
「有難いお言葉です。私の方こそ大尉の存在は頼もしく…尊敬差し上げる次第です」

『誰』
「そうか、ありがとう…ふふ…」

ブリギッテ
「ふふふ…」

ジークリンデ
「楽しそうね、ブリギッテ」

ブリギッテ
「ジ、ジ、ジ、ジーク様…!?」

ジークリンデ
「あら、任務中は名字と階級名で呼び合うのが基本でしょう?ダメよ、ブリギッテ」

ブリギッテ
「ファーレンホルスト中尉こそ…思いっきり、ファーストネームを使っているではありませんか!」

ジークリンデ
「だって、今、イスマイリヤ基地で休暇中だもの、私」

ブリギッテ
「なるほど。いや納得してもいいのだろうか…?」

『誰』
「ツェルベルス本隊も無事帰還できたようでなによりです、ファーレンホルスト中尉」

ジークリンデ
「お陰様で、アフリカのBETAはほぼ壊滅。後はアフリカ連合に任せて私達は先に帰投しました」
「それよりも大尉。あなた達には我々と共に、ある作戦に加わって頂く事になります」
「既に香月司令は協力要請を受諾してくださっているので安心してくださいね」

『誰』
「…手回しが良いな。それで一体、俺達は、どんな作戦に従事する事になるんですか?」

ジークリンデ
「フェイズ5、アンバールハイヴ」
「その攻撃作戦における突入部隊。今回も隊指揮をお願いします」


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給你一顆紅心~讓你能保有一整天的好心情~祝你有個愉快的一天喲(<ゝω・)~❤看更多我要大聲說昨天23:43


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