三、
器械が止まった音とともに、「五階です」と録音が流された。自動ドアが開いたら、最初に目に映ったのは、形成外科の診療室の扉だった。淡い紫色の床に手術着と同じな緑色をしている椅子がくっついている。診療をまつ人はあまりいなくて、病室のようにクーラーの風が流れた音が聞こえた。
シャーロの姿が見えない。一体どこに行くつもりなんだよ。僕はちょっと怒った。彼女は悪くないのは知っているが、こんな足の状態で一人で病院を回してさすがにイラついてきた。
でも、なぜここにきたのか。形成外科、あの子に必要な治療では見えないが。
「助けてください！」
すごく小さくて、すぐ空気に溶け込んだ彼女の声が聞こえた。方向は診療室の中だ。僕は真っ白な扉に近寄って、背中を隣の壁に頼った。
「そんなこと言っても……」
もう一人の声が聞こえた。微かな風霜が聞こえて、穏やかな男性の声だ。診療室という情報を含めて、多分医者さんの声だと推測した。
「お願いします！私…どうしてもあの人とあいたいです！」
「うーん、困ったなー、私ももちろん助けたいが……でも、私の病人でもないし…、力になれないと思うけどな」
「そう、ですか……」
頼みは医者さんに断られて、シャーロががっかりしたのは明らかに聞こえた。
「ごめんね」
「わかりました…では、失礼します」
彼女はすぐ出て来た。僕は一瞬逃げようかなと思ったが、なぜ逃げるのかもわからないし、こんな足で逃げると言ってもただの冗談だけだ。
失望している彼女は、床を見つめていて、僕のこと気付かなかった。飴色の帽子は小犬の耳みたいに垂れているように見えた。
「おはよう」
「うわ！うぇ！？何、何で？」
「ちょうど一階で君を見たから」
「あ、なるほど…じゃないです！どうしてそんな怪我で一階に行きましたか！」
「君に聞きたいことあるから」
「私、私に？」
「あのさ」
僕はゆっくり足を移動して、目の前の椅子に座った。都合よい角度になったら、シャーロが涙を我慢している顔を見てしまった。
「ここで、形成外科だよね？」
「……」
彼女の唇が震えていた。
「これ、ただ僕の予測だけど、もしかしてー」
聞かないで。お願い、やめて。彼女がこぼれた涙はそう言っているようで、僕は絞め殺されたように息を止めた。
僕らは黙ったままで、ずっと見交わした。そして、彼女は軽く首を横に振って、柔らかく微笑んだ。
僕は何とか分かった。同じ顔、同じ声なのに、今飴色の探偵服を着ている人は、もうシャーロではないこと。
「……お医者さんと初めて会ったのは、十年前のことです」
「……やっぱりか」
形成外科。病気や怪我などによってできた身体表面が見た目のよくない状態になったのを改善する外科で、頭や顔面を含めた体全体を治療する対象としている。
そうだ。例えば、ひどい火傷とか。
「どうやらあの人なんでも君に教えたようですね」
「ごめん、やっぱ彼に聞かない方がいいかな」
「大丈夫です。私もいずれ言おうと思っていました」
シャーロは自分の表情を隠すためのようで、うなだれた。
「お母さんは、ここで治療を受けました」
十年前、彼女の家は放火された。犯罪者はすぐ捕まれたが、彼女のお母さんはその事故で亡くなってしまった。
「お母さんは、私を守るためにひどい火傷をした」
「あの日、お父さんは仕事で出かけて、まだ小学校に入学してない私とお母さん二人しかいなかった。私はお母さんとままごとをしていた途中、突然何か燃やしている音が聞こえて、焦げ臭いにおいも嗅いだ」
「お母さんは心配で、部屋の扉を開けて覗いたら、リビングはもう……炎に飲み込まれた。あの時、お母さんは多分びっくりしたでしょう、彼女は扉を開けたままで動きを止まった。幼い私はお母さんを助けようと思って、ちょこちょこ走ったら、事件が起きった」
「木の床ですから、炎はものすごく早く広がったが、煙のせいでうまく見えなかったから、鼻先に高温を感じた時はもう遅いんだ。そして、私が炎に触られる前に、お母さんは私を抱きしめた。すごく強い力で私を腕の中に抱きしめて、『大丈夫よ』と私の耳で呟きながら、背中で扉を閉めた。」
「家具が燃えてる音とお母さんの匂いしか感じられなかった。消防士さんたちが来た時、リビングはもう真っ黒になった。何もかも燃やされた。私とお母さんがいた部屋は、ちゃんと扉を閉めたおかげで、扉と一部分の床しか焦げなかった。」
「消防士を見た私はずっと手を放さなかったお母さんに『お母さん、もう助かったよ』と呼びかけたら、やっと気づいた。お母さんはすでに気を失ったことと、背中に焦げた皮膚と血しかないになったこと」
「……」
その後、お父さんと二人今住んでいるマンションに引っ越しした。彼女は苦笑しながら、話を終わらせた。
これが、十年前のことだった。しかし、それでは何もわかっていない。彼女は事件について詳しく言ってくれたが、一番大事なところはまだわからない。
「それが君が言ってる犯人のこと？」
「……」
彼女は黙った。
話すつもりはないようだが、人の心は嘘をつかないのだ。
シャーロの真っ黒な、蜘蛛のような仮面。
ついにここにきた。僕は何のため、誰のため、こんなことをやっているのか。僕とシャーロの関係。そこまで基本的な質問だが、僕はずっと無視してきた。でも、もう逃げられる場所がない。ちゃんと立ち向かわなければならないのだ。
「犯人」というのは、一体どういうことなのか、今彼女に聞けばわかる。でも、そんな恐ろしい仮面僕一度も見てなかった。人の本心を隠すではなく、人の心をまるごとに飲み込むような仮面。
聞くか、聞かないか。僕は鼻が冷やされるぐらいの力で深呼吸をした。
「その放火をやった人もう捕まれたでしょう？」
「は、はい」
「じゃ、その犯人は……」
彼女は両手で自分を抱きしめたが、雪の中に裸で立っているようなほど腕が震えていた。
「……わ、わたし……」
「……」
言葉はすでに脳内にできていたが、彼女の様子を見て、口にする勇気がなかった。
理性の輝きがなくなっている目、強く震えている肩、止められない涙の雨。彼女の心がひどく揺らいでることは疑う余地がない。
「私……」
だめだ。シャーロの仮面をどんどん大きくなっている。錯覚かどうかはわからないが、僕にはそんなことを確認するつもりはない。
「もういいー」
「私……です」
「え？」
「私……です。お母さんを殺した犯人……、私、私ー」
「シャーロ？」
「シャーロ……違います……私はー」
彼女の唇が閉まった前に、目が先に閉じた。
「シャーロ！」
彼女は気絶したようだ。幸い僕か彼女の前に座っていたため、彼女はそのまま椅子にぶつけることはなかった。つまり、椅子ではなく、僕の体に倒れた。
でも、これはどうすればいいんだ？まずこの子をちゃんと休ませないといけないと思うけど、僕の怪我のせいでこの子を移動させたりするのは無理してもできないだろう。困ったなと僕が悩んでいる最中に、診療室のドアが開いた。見たことない顔だか、桜色のナース服で看護師さんということをわかった。
「あ、あの」
どうやって説明すればいいのかって考えたが、彼女は何も言わずにシャーロを抱きかかえて、僕のことをガン無視して診療室に戻った。
数秒を経ったら、ドアはもう一度開けられた。
今回はちゃんと僕の方に向いて話していた。
「あなたも入って」
「え？」
「先生は話があるようです」
診療室の黒い椅子に座ったら、目の前にいるのは、厳しい顔をしていて、威圧感が溢れ出す、年が見える男性。細かく保管された白衣は新品のような雪色が輝いた。四角のメガネに隠された瞳に、顔の深い皺より目立つ智慧が見えた。
「あの子とは、いつ知り合ったのですか」
「あ、はい、その、多分一ヶ月前だと思います......」
簡単な質問されただけなのに、緊張感が止められなかった。
「一ヶ月しかないないんですか」
「はい、そうと思います」
先生はびっくりしたようだが、僕は確かなことを伝えた。
「あの、彼女は…」
「あ、大丈夫です。裏のベッドで寝てます」
「そう…ですか」
多分僕の緊張を見抜いたから、彼はメガネを外して、安心ささせる微笑みをくれた。
「その足、よくここまで来ましたね」
「え？いや、これは……」
「君のことでしょう」
「え？」
「あの子は会いたい人がいるって最近ずっと言っていますが、それは君のことでしょうね」
「会いたい……人？」
「ええ、今日もあの人のことでここに来ました。会いたい人がいたが、面会が禁じられたって」
「はい...」
「あ、ちょうど君も、病院で静かに休む必要がある人に見えるから、ちょっと推理をしました」
先生は冗談の口調で勝手に外出するのはだめだよと言っているように軽く笑った。
「...すみません」
「医者として君を今すぐ帰らせるのが一番と思いますがー」
「その前に、その、先生は彼女とは」
「とは？」
「その、どうやって知り合ったんのですか」
「……」
僕の質問に対して、先生は予想通りに黙った。
仮面だ。でも、悪い仮面ではない。嘘をつきたいより、事実を話したくないだけの感じがする。
ここは攻めないと、何も聞き出せるはずがない。
僕は決心してからここに来たのだ。自分でも、理解したい、分かりたいことがあるのだ。
「やはり……お母さんがその接点ですか」
「そこまで知っていたのか」
「はい、10年前の火事のことは、全て彼女から聞きました」
「そうなんですか」
先生は軽く頷いて、いつの間に指で机に置いた万年筆を弄び始めた。
「でしたら、彼女が探偵ごっこを始めた理由も」
「彼女はお母さんを殺した犯人を捕まえたいって言いましたが……」
僕はさっきのシャーロを思い出した。犯人の話しをしたら、彼女は話の最後で気絶した。しかし、その直前に答えは確かに彼女の喉から出た。
犯人は、「私」だった。
「じゃその犯人のことも知っていたでしょう」
「よくわからないですが、彼女は彼女自身って言っていました、でも、さすがにそれはちょっと...」
「それは本当ですよ」
「え？」
「事実かどうかはともかくですが、少なくともあの子はそう信じています。自分が母親を殺したってこと」
「それは...どういうことですか」
診療室の空気は先生が万年筆を弄んでいた手と共に止まった。
「彼女のお母さんは、あの火事でひどく負傷しました。残念ながら私の力不足で、彼女を助けることはできませんでした」
「つまり......」
「つまり、彼女のお母さんの死因は紛れもなく火傷でした」
「じゃ何でシャーロは自分が犯人って思い込みますか」
「それは、彼女が初めて面会に来た時の話です」
「病人のため、入院してから長い間私は面会を禁止しました。しかし、彼女のお母さんの状況は毎日どんどん悪化しし続けていました。最後、私は治療を諦めまして、親族の面会も許可しました」
「あの日、あの子は僅かの七歳だけでした。私はお父さんに病況についてちゃんと伝えまして、面会の前にもいろいろ厳しく警告しましたが、さすがにそんな小さい子には事実を言えませんでした。私は嘘をつきました。そして、彼女は事実をしらないまま、数ヶ月会えなくて、大好きなお母さんを監禁していた病室のドアを開けました」
「あそこにいたのは、彼女が知ってるお母さんではありませんでした。火傷で残した傷跡、生きるため機械に埋まられた体。彼女はお母さんと認識できませんでした。ドアが開けられた音に気づいて、お母さんは激痛を耐えながら、娘の方にゆっくり振り向いた。そして、笑った。娘を安心させるように痛みを忘れて、半分以上傷跡に奪われた顔で頑張って笑いました。だが、その努力の結果は、娘の青白い顔色と漏らした呟きでした。あの子はー」
「『お母さん...怖いよ...』って言いました」
「シャーロ！」
彼女はいつの間に起きて、僕と先生の話を聞いていて、勝手に話を進めた。
「三日後、お母さんはなくなりました。私は謝らず、何も言えずに永遠にお母さんと別れた」
「体、大丈夫ですか」
「大丈夫です、ベットに寝させてくれてありがとうございます、先生」
シャーロは何もないように速やかにベッドから離れた。
「......」
僕は言葉を失った。今彼女は誰だ？シャーロなのか？それとも、元の彼女か？
「怖いと思っても、言っちゃダメだよ。自分の母親にそんなこと言ってダメだよ。それは君を守ったお母さんなのに、どうしてそんなひどいこと言うの？お父さんに何度も叱られたが、私はごめんなさいを言うしか何もできませんでした。」
七歳の子に全身の火傷を見せたら、怖がるのも仕方ないことだ。だが、それはもうすぐなくなるお母さんだから、少なくとも怖いは言いたくなかっただろう。
でも、彼女はそれさえできなかった。理由も、言い訳もない。ただただ、できなかった。
「お母さんは、私の言葉で傷つかれて、生きる希望をやめました」
「そんなことー」
「あります。私は何度も言葉で他人を傷つけました。だからわかります」
「君はただ七歳の子供でしたよ」
「それで許されると思いますか」
「少なくとも君のお母さんは君を恨んでいないでしょう」
「じゃどうしてそんなことになるんですか！お母さんはよくなっているよって先生が言ったのに！」
「あれは...」
あれは多分嘘だ。その時の雰囲気、状況などを読み取れながら、つくり出しだ物。あの頃のシャーロには理解できないだろう。
「私です！お母さんを殺した人！お母さんに生きることをやめさせた人！」
シャーロはまたさっきの状態のようになった。すぐ気絶するような顔、止められない涙。
でも、僕は一つ理解できなかった。
彼女は、誰た。
「ね」
「何ですか」
「シャーロはどうした？」
「......何の話ですか」
「君はシャーロじゃないでしょう」
「私ー」
私はシャーロだと言おうとした様子にみ見えたが、なぜか途中で止まった。
彼女は、苦しんでいるのだ。
僕はなんとなくわかった、シャーロのその真っ暗な仮面。そのたまに見える、蜘蛛のような仮面。今でも、かぶっている仮面。
あれは多分、元のシャーロのことだ。今まで私が言ったことは、実は全部嘘だ、すべては私の本心ではないという信念が強すぎて、彼女はその仮面を作り出した。私は一回でもほ自本当のことを言ってないとそう自分を欺くために。そして昔の自分を捨てるために、シャーロというキャラを作った。
今回は誰にも傷つけない。だから、もう一度チャンスをください。
この残酷すぎた社会に入らせるチャンスを。
「君は今までの自身を捨てようとした」
「……」
「だからその飴色の偽りを着ていた」
「私……」
「シャーロという名前で、自ら逃げた」
彼女は人生をやり直そうとした。この他人に傷つく誠実さはもう耐えられないのだ。
僕はやっとわかってきたとこの数秒の嬉しさに沈んでいたうち、彼女は行動をとった。
簡単に言えば、彼女は診療室から逃げ出した。
怯えいた表情と足を怪我させるほど乱暴な走り方と共に。
「シャーロ！」
自分のミスは今更気づいた。やりすぎた。何度も自分に注意したのに、それでもやっちまった。
彼女を傷付かないようにしても、結局彼女の人生十七年の問題だから、傷を残さないのは最初から無理だわかったはずだ。
「あの子、初めてその格好で病院に来たのは、一ヶ月半くらい前のことでした。」
ずっと静かに話を聞いていた先生は突然切り出した。
「結構印象深い病人なのですぐ彼女のことを思い出しました」
「もちろん、その格好については聞きましたが、結局設定みたいな答しかもらいませんでした。私自身は心理学の専門ではないので、これ以上深く聞こうとしませんでしたが、それ以後彼女はいつも犯人探しますなどの話しつづけて、ここに来ていました、私も昔助けられなかった病人の娘だったら、多少面倒を見ても構わないんだと思っていましたが」
「でも彼女はいつも僕の病室に来ていましたが」
「あの子が来るのは常に朝食をあとですから、もしかしたら時間がずれているかもしれません」
なるほど、僕の病室に出たらいつもここに来たのか。そして昼でまた僕の病室に帰る。
「あの子のことを助けようと思いましたが、どうすればいいのかがわからなかった。そもそも、何に苦しんでいるのすら知りませんでした。最初私もお母さんのことだろうと思いましたがー」
「実は彼女自身の問題でした」
告白事件にもお母さんの事件にも、確かに彼女はひどく傷つかれたが、両方とも正解に導く手がかりしかなかった。
正解は多分そうだろう。
私は、どうやってこの社会に生き続ければいいのか。
「あの、一つ聞いていいんですか」
「はい？」
「彼女のお母さんは、本当に彼女のせいで……」
「正直に言えば、それはお母さん本人以外、誰でもわからないことでしょう。でもあの怪我は復元できないと判断したのは確実なことです、ただ小さかった彼女に嘘をつきました」
「そうですか、わかりました、いろいろとありがとうございます」
先生は微笑んた。
「こちらこそ、彼女を助けるのは、多分君しかいないと思います」
「もちろん、できれば僕も彼女のこと助けたいのですが、でも彼女はどこにー」
僕は先生の心当たりがあるような顔にひかれた。
「屋上に行ってみれば？」
「屋上？」
「君の病室に通い始める前は、いつも屋上に行くらしいですよ」
「そうなんですか、わかりました……けど、そんなところに行かせて先生として大丈夫ですか」
「まあ、よくないでしょう」
先生は「は、は、は」って笑った。
「むしろ彼女いずれバカなことをするのがなんとなく予想がついた」
「じゃどうしてー」
先生はメガネを外した。顰めた眉毛の間に、数えないほど悲しみが重ねっていた。
「結局、彼女はそれを望んでいるでしょう」
「そうだったらもっとー」
「長年に医者として務めてきて分かりました。病人は誰でも治療を望んでいるわけではないということ。苦痛より死を選ぶ人は、確かにいるのです」
「そう...ですか」
「まあ、この話はまたチャンスがあれば話しましょう。今は早く屋上に行ってください」
屋上にたどり着いたのは、結構時間がかかった。
最上階まではエレベーターでいいのだが、それからもう一階登らないとならないので、僕の足にとって大変な仕事だった。
空は曇っていた。灰色の雲から雨の糸が降り始まった。シャーロは鉄の手すりを掴まって、7階から下を見ていた。
「私は一体誰ですか」
彼女は僕を見ずに話した。
「自分を忘れようとして、見捨てようとして、結局自分のことが仮面になっちゃいました」
雨は強くなった。彼女の声が聞こえる前雨の音に覆われないように、僕は近寄って行った。
「もう誰も傷つけたくないのに、どうすればいいのかわからないんです」
君は間違っていない。この嘘に満たされた世界のせいだ。僕はそう言いたかったが、言葉が声になれなかった。
結局こんなこと言っても、嘘になる。こんな嘘で彼女を救えるとは思えない。
「私、たまにそう思います。ここから飛び降りたら楽になるんでしょうと」
彼女は微笑んたが、僕には笑える話ではなかった。
「……バカなことするなよ」
僕がそう言ったら、彼女はやっとこっちを振り向いた。
「あの日、私ここから降りたら、突然お母さんの病室に行きたくなった。そこに行ってみると、誰もいなかった。私は最後お母さんとあった時のことを思い出して、思考が止まって、その病室で立っていた。そして、足に怪我があった一人が戻ってきた。」
それは多分僕のことだ。
「じゃバナナも...」
「お母さんはバナナが大好きだったんだ。糖分が多くて、人を元気させる果物だよって」
なるほど、無意識でも、自分がキャラを作っているのは知ってるのか。
謎は解けたが、一番大切なところはまただ。
彼女を助けたいなら、今だ。救いたいなら、今だ。僕は彼女を助けるためにすべての鍵を持っていた。
もうにげない。僕の考えから、僕の思いから。
俺は何も言わないために、こんな足で病室からこんなところに来るわけじゃない。
今すぐ全部伝えたい。シャーロの心の底まで伝えたい。
彼女は悪くないことを、彼女は彼女のままでいいことを。
そして、僕はどう彼女のことを思っていることを。
僕は強く松葉杖を掴んで、最後の決心をした。
「僕はー！」
「ね」
「？」
ごめん。
と、彼女は微笑みながらそう言った。
気づいたら、彼女は浮いていた。
でも、人は浮かべないのだ。僕がその常識を理解できるまで、事態はすでに勝手に進んだ。
「え？」
ポンーー！すごく大きい音が建てた。そして、僕はようやく目覚めた。
彼女は飛び降りた。この7階の屋上から。
無情の雨はさらに強くなった。
結局彼女は誰なのか。
結局僕はどう彼女のことを思っているのか。
結局なんでいつも屋上に行ったのか。
結局彼女はなんで自殺を選んだのか。
僕は全てを知る、伝える機会を失った。
病院から退院し、大学に戻り、僕は元の生活に戻して、何年も経った。
その病院で出会った少女のことは、今でもはっきり覚えている。
そう、忘れるわけがない。
いつもシャーロックホームズの真似をしていて、元気な声で挨拶をする女の子。
昔、仮面ライダーが好きだった。
血のように赤い戦闘服、クワガタムシの仮面、エフェクトに満たされた戦闘のシーン。
こんなにかっこいい人が世界を守っているんだって、幼い自分はテレビの前でそう思った。
憧れたのは、仮面の上で、正義という力で敵を倒したライダー。
でも、テレビから離れた年齢になると気付いた。人間は、立ち向かわなければならないものは、仮面の下に刻んでいる、真実という傷だ。
それは人を自殺させるまで、痛い傷だ。
この事、僕は数年前の夏で学んだ。
あの仮面をかぶられない少女から。
創作內容
仮面、三（日文小說）
靈感寫作 (1)